アカエイによる刺傷

執筆者:Robert A. Barish, MD, MBA, University of Illinois at Chicago;
Thomas Arnold, MD, Department of Emergency Medicine, LSU Health Sciences Center Shreveport
レビュー/改訂 2020年 4月
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アカエイはかつて北米沿岸で年間約750件の刺傷を引き起こしていたが,現在の発生率は不明であり,大半の症例が報告されていない。エイの毒は,尾の背側にある1本または数本の棘に含まれている。損傷は通常,無警戒の海水浴客が波打ち際や入り江,水のよどんだ場所を歩いている際に,砂に埋まっているアカエイを踏みつけて刺激することで,エイが尾を上前方に突き出して背側の棘(1つまたは複数)を患者の下肢に打ち込むことで発生する。棘を覆う外皮の鞘が破れ,毒が患者の組織内に入り込む。

症状と徴候

アカエイによる刺傷の主な症状は,直ちに生じる重度の疼痛である。痛みはしばしば受傷部位に限局するが,急速に拡がることもあり,90分以内に最大となる;大半の症例では,痛みは6~48時間かけて徐々に消失するが,ときに数日または数週間持続する。失神,筋力低下,悪心,および不安がよくみられ,これらは末梢血管拡張が一因である可能性がある。リンパ管炎,嘔吐,下痢,発汗,全身痙攣,鼠径部または腋窩の痛み,呼吸窮迫,および死亡が報告されている。

通常,創傷は鋸歯状で大量に出血し,しばしば外皮の鞘部分により汚染される。創傷辺縁がしばしば変色し,限局性の組織破壊が部分的に生じることがある。一般に,ある程度の腫脹がみられる。開放創は感染しやすい。

治療

  • 洗浄およびデブリドマン

アカエイによる四肢の刺傷は,棘の破片,腺組織,および外皮を除去するために,海水で愛護的に洗浄すべきである。棘が表層部に埋没していて,頸部,胸部,腹部のいずれも穿通しておらず,四肢を貫通する損傷も生じていない場合のみ,その場で除去すべきである。有意な出血は局所の圧迫で止血すべきである。温水への浸漬は専門家により推奨されているが,アカエイによる刺傷に対する効果的な早期治療であることは実証されていない。

救急診療部では,鞘の残遺物がないか創傷を再度調べ,壊死組織を切除する;必要に応じて局所麻酔を投与してもよい。埋没した棘は他の異物と同様に治療する。体幹を刺された患者は,内臓穿刺の有無をさらに厳密に評価するべきである。全身症状の治療は支持療法による。破傷風予防を行い(ルーチンの創傷管理における破傷風予防の表を参照),受傷肢は数日間挙上しておくべきである。抗菌薬の使用および創傷の外科的閉鎖が必要になることがある。

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