血管確保

執筆者:Cherisse Berry, MD, Rutgers Health, New Jersey Medical School
レビュー/改訂 修正済み 2022年 12月
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血管確保のためにいくつかの手技が用いられている。

末梢静脈カテーテル法

大半の患者では,輸液および薬剤投与は経皮的な末梢静脈カテーテルで対応できる。ブラインドでの経皮的留置が困難な場合,超音波ガイド下に留置を行うことで通常はうまくいく。経皮的カテーテル挿入ができないまれな症例では静脈切開を行える。典型的な静脈切開部位は,前腕の橈側皮静脈および足関節の伏在静脈である。しかしながら,成人でも小児でも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:peripherally inserted central catheter)ラインまたは骨髄ラインが一般的になったため,静脈切開が必要になることはまれである。

末梢静脈カテーテル留置のステップ-バイ-ステップの手順については,末梢静脈カテーテル挿入および超音波ガイド下末梢静脈カテーテル挿入を参照のこと。

一般的な合併症(例,局所感染,静脈血栓症,血栓性静脈炎,輸液の血管外漏出)は,挿入時の入念な無菌操作をすること,およびカテーテルを72時間以内に交換または抜去することによって減らすことができる。

中心静脈カテーテル法

長期的または確実な血管確保が必要な患者(例,抗菌薬,化学療法,または完全静脈栄養のため),および末梢静脈確保が難しい患者は,中心静脈カテーテル(CVC)を必要とする。CVCにより,末梢静脈には濃すぎるまたは刺激が強すぎる輸液の注入,および中心静脈圧(CVP)のモニタリングが可能になる。

CVCは頸静脈,鎖骨下静脈,大腿静脈から,または上腕の末梢静脈を経由して(PICCライン)挿入できる。カテーテルの種類および挿入部位の選択は,しばしば個々の医師および患者の背景によって変わるが,通常,頸静脈CVCまたはPICCラインが,鎖骨下CVC(出血および気胸のリスク上昇と関連)または大腿CVC(感染リスク上昇と関連)より好まれる。心停止の間は,心肺蘇生(CPR)によって胸腔内圧が上昇しているため,大腿静脈のCVCを介して注入される輸液および薬物は横隔膜より上方に循環できないことがしばしばある。この場合,鎖骨下または内頸静脈からの挿入が好まれる。

超音波ガイド下での内頸静脈ラインおよびPICCライン留置は今や標準的管理であり,これにより合併症のリスクを減少できる。可能であればCVC挿入前に凝固障害は是正すべきであり,鎖骨下アプローチは,静脈穿刺部位のモニタリングが不可能で圧迫もできないため,凝固障害が是正されていない患者で使用すべきではない。

中心静脈カテーテルの挿入手順については,以下を参照のこと:

超音波ガイド下経皮的カテーテル挿入の動画
超音波ガイド下大腿静脈カテーテル挿入
超音波ガイド下大腿静脈カテーテル挿入

クロルヘキシジン綿棒を使用して右鼠径部の皮膚を消毒する。中心静脈カテーテル挿入の準備では,我々は広範囲の消毒を行っている。消毒液が乾いたら,無菌の広いバリアを設置する。滅菌ドレープは,下半身全体と術者の間をベッドを含めて覆うようにかけるべきである。滅菌されたプローブカバーを使用して,無菌でない超音波ゲルが塗布された超音波プローブをカバーして把持する。超音波プローブを把持してから,無菌のカバーを注意深くプローブに被せることで,無菌のプローブでリアルタイムに超音波検査を行えるようにする。

続いて,カテーテルの準備を進める。カテーテルの青色のポートと白色のポートにはキャップを取り付け,滅菌生理食塩水を使用して各ポートをフラッシュする。ここで用いたカテーテルでは,キャップを取り付けたカテーテルの白色と青色のポートをフラッシュしている。茶色のポートは遠位ポートで,そこからワイヤーを出すことになるためキャップはないが,ポートをフラッシュしたら,滅菌生理食塩水のシリンジを取り外す前に,このラインをクリップする必要がある。

ここでは1%リドカインを使用するが,滅菌ラベルを貼付して,全てのシリンジが無菌であることを確認できるようにする。次に滅菌済みの超音波ゲルを皮膚に塗布し,右大腿動脈と大腿静脈を横断面で観察する。大腿動脈は画面の左上側に見える。圧をかけると,右大腿静脈は圧迫されるが,より表層かつ左側にある右大腿動脈は圧迫されないのがわかる。1%リドカインを使用して,皮膚とその下の軟部組織に局所麻酔を施す。

イントロデューサー針を約45度の角度をつけて刺入し,プローブから離した位置から静脈と同じ深さまで針を進める。針を進めるにつれて,徐々に先端が静脈内に入っていくのが見え,ここで静脈血の逆流がみられる。針のハブを把持してシリンジを抜き,拍動のない血流であることを確認する。次に,滅菌済みのワイヤーをシースと針を通して挿入する。プローブを縦方向に回転させると,ワイヤーが針の中を進むにつれて静脈に入っていくのを見ることができる。

大腿部では,ワイヤーは30cmの深さまで進めることができる。ここでシースを抜去し,ワイヤーはそのまま留置する。ワイヤーを離すと静脈内を移動してしまう可能性があるため,ワイヤーを絶対に離さないことが重要である。ここで針を引き抜き,ワイヤーを留置したままにすると,超音波画像上で静脈内にワイヤーがあることが確認できる。ここまで来たら,プローブを離すことができ,これで挿入部位を直視できるので,挿入部位に滅菌ガーゼを用い,さらにメスを使用してワイヤー上の皮膚に小さな切り込みを入れることができる。次にダイレーターをワイヤーの上から挿入し,ダイレーターの反対側でワイヤーを把持する。ダイレーターをねじるように前進させ,挿入経路を皮下組織から大腿静脈内まで拡張させていく。

ここで,ワイヤーを留置したままダイレーターを抜去する。次にワイヤーを引き戻しながら中心静脈カテーテルの中に通し,カテーテルの反対側にある茶色の遠位ポートでワイヤーを把持できるようにする。ワイヤーをカテーテルの遠位端で把持したら,カテーテルを端まで完全に進める。ここで,ワイヤーを滅菌されたシース内に引き戻し,体外に完全に引き抜く。ワイヤーを完全に引き抜いたら,茶色のポートをクリップする。

最後のニードルレスキャップを茶色のポートに挿し,クリップを外してから,血液をシリンジ内に吸引して,ポートに空気が入らないように注意しながらライン全体をフラッシュする。ここで中心静脈カテーテルの白色および青色のポートを滅菌生理食塩水でフラッシュする。中心静脈カテーテルに隣接する部分の皮膚に局所麻酔を施し,バイオパッチを青い面が天井に向くように挿入部位に貼付する。これはクロルヘキシジンを浸透させたパッチで,カテーテル関連血流感染症のリスクを最小限に抑える効果がある。

縫合糸を用いてカテーテルを2カ所で固定する。これを固定したら,中心静脈ラインに無菌の閉鎖性ドレッシングを適用して手技を完了する。ここでは,器械結びで2カ所に縫合することで中心静脈ラインを固定している。

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超音波ガイド下鎖骨下静脈カテーテル挿入
超音波ガイド下鎖骨下静脈カテーテル挿入

患者にトレンデレンブルグ体位[ph 00:15]をとらせた後,クロルヘキシジン綿棒を用いて左前胸壁全体を消毒し,更に頸部も半分の高さまで,続いて左肩も広範囲に消毒する。良好な消毒効果を得るには,クロルヘキシジンが完全に乾燥するまで少なくとも2分間放置する必要がある。ここでは,幅の広い滅菌ドレープを穴の中央に挿入部位が来るように適用している。この滅菌ドレープで患者の頭部とベッドのほぼ全体を覆うべきである。

ここでは,1%リドカインを吸い上げて局所麻酔に使用している。滅菌野に持ち込む液体には充填したシリンジにラベルを貼る必要があるため,1%リドカインと表示した滅菌済みのラベルをシリンジに貼付する。生理食塩水のシリンジには,あらかじめラベルが貼られているため,滅菌済みのラベルを新たに貼る必要はない。ここでは,鎖骨下静脈ラインに対してリアルタイムに超音波ガイドを行えるようにするために,リニアアレイプローブに滅菌済みのカバーを装着している。滅菌カバーで滅菌ドレープ全体を覆うようにすべきである。

次に滅菌済みのゴムバンドを巻いて,滅菌カバーを所定の位置に固定する。ここでは,滅菌生理食塩水を用いてカテーテルの全てのポートをフラッシュしている。これを行う際に,従来のニードルキャップからニードルレスキャップに取り替え,このトリプルルーメンカテーテルの青色および白色のポートに,これらのキャップを装着する。トリプルルーメンカテーテルの茶色のポートは遠位ポートであり,最終的にはこの茶色のポートを通してワイヤーを回収することから,このポートにはキャップを装着しない。茶色のポートをフラッシュしたら,シリンジを取り外す前にポートをクリップする必要がある。

ここでは,挿入部位の皮膚と皮下組織に局所麻酔を施している。リニアアレイプローブによる平行法(in-plane technique)により,針を皮膚から腋窩静脈までの縦断面で観察することができる。このとき,針先が静脈に入ろうとしているのが見える。ちょうど今,針が血管内に入ったところで,このよう血液が吸引されるようになる。次に針のハブを把持してシリンジを取り外し,先端がJ字型になったワイヤーを針のハブに通し,カーブを心臓の方に向ける。針を通してワイヤーを徐々に進めていくと,ワイヤーが静脈を通過していく様子が描出される。ワイヤーは皮膚から20cmの深さまで進める。

次にシースを抜去し,続いてワイヤーの上から針を抜去する。その後,挿入部位のワイヤー上にメスで小さな切れ込みを入れ,その創内でワイヤーを自由に動かせることを確認する。ここでは,ワイヤーに沿ってダイレーターを挿入しており,そのままダイレーターを捻るように徐々に前進させることで,皮下組織の挿入経路を腋窩静脈まで拡張する。ここでダイレーターを抜去するが,意図せずワイヤーを引き抜かないように注意する。次にワイヤーに沿ってカテーテルを挿入してから,ワイヤーが茶色の遠位ポートの手前で把持できるようになるまでワイヤーを徐々に引き戻す。

茶色のポートの手前でワイヤーを把持できる状態になったら,適切な挿入深度,すなわち左鎖骨下静脈では通常16~17cmの深さまで,カテーテルを挿入できるようになる。ただし,超音波ガイド下では,さらに3cmを追加することになる。そのため,このカテーテルは皮膚から19cmの深さまで挿入する。ここでは,青色,白色,茶色の順に3つのポート全てを滅菌生理食塩水でフラッシュしている。

続いて,カテーテル関連血流感染症のリスクを最小限に抑えるため,薬剤を浸透させたパッチまたはバイオパッチを挿入部位に貼付する。ここでは,局所麻酔として1%リドカインを適用してから,縫合糸を用いてカテーテルを2カ所で固定している。器械結びでカテーテルを所定の位置に縫合することができる。ここでは,開窓部からバイオパッチと挿入部位全体が見える配置で滅菌済みの閉鎖性ドレッシング材を適用し,続いて3つのポートが通る開口部を最小限にするために,底部に羽状の部分を適用している。以上で完了である。

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経皮的鎖骨下静脈カテーテル挿入
経皮的鎖骨下静脈カテーテル挿入

クロルヘキシジン綿棒を用いて右前胸壁の無菌的前処置を行う。綿棒を前後に動かして,前胸壁と右肩の広範囲を消毒する。

ここでは,対象の領域に滅菌ドレープをかけている。この滅菌ドレープでベッド全体を覆っている。

ここでは,滅菌生理食塩水でトリプルルーメンカテーテルの3つのポート全てをフラッシュしている。トリプルルーメンカテーテルのキャップは,通常のものからニードルレスキャップに変更してもよい。トリプルルーメンカテーテルの白色および青色のポートには,ニードルレスキャップを装着している。茶色のポートはトリプルルーメンカテーテルの遠位ポートで,最終的にワイヤーを出すポートであるため,ニードルレスキャップを装着しない。

茶色のポートをフラッシュする際には,シリンジを外す前にラインをクリップする必要がある。

イントロデューサー針,滅菌済みのワイヤー,メス,ダイレーターなどの必要な器具を全て手に取りやすい位置に配置する。ワイヤーはJ字型の曲線を心臓の方に,鎖骨下静脈ラインの場合は足の方に向けるが,これは右側でも左側でも同じである。

ここでは,皮膚と鎖骨骨膜の局所麻酔に使用する1%リドカインをシリンジに吸い上げている。

無菌の溶液を入れたこれらのシリンジには,無菌野ではラベルを貼る必要がある。フラッシュ用の滅菌生理食塩水には塩化ナトリウムのラベルがあらかじめ貼られているが,1%リドカインのシリンジはそうではないため,このように,滅菌済みのラベルを使用することで1%リドカインのシリンジに表示を付けることができる。

ここでは,両手を使って鎖骨の弯曲を同定しているが,これは鎖骨下静脈ラインを挿入する際に同定しなければならない最も重要なランドマークである。鎖骨の弯曲を同定したら,その弯曲部から三角筋溝側に1cm離れた位置を挿入部位とする。その挿入部位で,このように1%リドカインを使用して局所麻酔用を行う。鎖骨の骨膜を挿入経路に沿って麻酔できるまで深く針を進める。

ここでは,イントロデューサー針を鎖骨の下に,床面とできるだけ平行になるように挿入している。胸骨切痕に示指を置き,シリンジを持っていない方の手の母指を使って鎖骨の下にある針を示指先端と胸骨切痕の方に誘導し,このように静脈血の逆流が見えるまで針を進める。その後,イントロデューサー針を約2mm進める。次にシリンジを取り外してから,針にワイヤーを通して20cmマークのところまで進めていく。

続いて,ワイヤーを慎重に操作しながら,ワイヤー上の針を抜去する。メスで皮膚に小さな切れ込みを入れる。ここでは,ワイヤー上でダイレーターを進めて,皮膚と皮下組織を通して鎖骨下静脈までの経路を拡張している。ダイレーターを捻るように進めていき,鎖骨下ラインの挿入ではダイレーターのハブの位置まで挿入する。

ダイレーターを抜去する際には,ワイヤーのコントロールを維持する。ワイヤーに沿ってカテーテルを挿入する。カテーテルの茶色のポートからワイヤーが出る形になる。ワイヤーの遠位端を茶色のポートを出たところで把持し,カテーテルを適切な挿入深度まで進めるが,右鎖骨下ラインの場合は皮膚から約15cmである。左鎖骨下ラインの場合は,皮膚から約17cmまでカテーテルを進める。

ここでは,カテーテルからワイヤーを引き抜き,直接ワイヤーシースに戻している。こうすることで,ワイヤーを引き抜く際にカテーテルまで引き抜かれないようにカテーテルをコントロールすることができる。

続いて,最後のニードルレスキャップを茶色のポートに挿入する。滅菌生理食塩水を入れたシリンジの中に血液が入るのが見えるまで,茶色のポートに血液を吸引する。その後,このポートを生理食塩水でフラッシュする。

続いて青色のポートと白色のポートをフラッシュするが,青色のポートと白色のポート両方でライン内に少量の出血が見えるまで生理食塩水を吸引するだけでよい。その後,生理食塩水で血液を押し流す。

ここでは,挿入部位から約2cmの位置に白と青のクリップを置いて,中心静脈ラインを4カ所で皮膚に固定できるようにする。1%リドカインを使用して,4カ所で皮膚を麻酔する。

ここでは,クロルヘキシジンを浸透させたバイオパッチを適用しており,パッチの青い面を天井に向けて挿入部位に貼付する。これにより,中心静脈ラインに関連した血流感染症のリスクが低下する。

曲針を取り付けた持針器を使って,これら4カ所で中心静脈ラインを縫合固定する。ここでは,器械結びで縫合を固定している。

4カ所を全て縫合したら,バイオパッチを含めた挿入部位が開窓部から見える配置で無菌の閉鎖性ドレッシング材を適用する。続いて,無菌の閉鎖性ドレッシング材の切込み部分に中心静脈ラインの3つのポートを通して,ここからポートが出るようにする。

2枚目の閉鎖性ドレッシング材には羽状の部分があり,それらを中心静脈ラインの3つのポートの下に入れることで中心静脈ラインを完全に固定する。滅菌済みのペンを用いて,自分のイニシャルと中心静脈ラインを挿入した日時を記入する。

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経皮的大腿静脈カテーテル挿入
経皮的大腿静脈カテーテル挿入

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経皮的内頸静脈カテーテル挿入
経皮的内頸静脈カテーテル挿入

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超音波ガイドを用いた経皮的内頸静脈カテーテル挿入
超音波ガイドを用いた経皮的内頸静脈カテーテル挿入

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鎖骨下静脈穿刺

この図には鎖骨下静脈穿刺中の手の位置(鎖骨下アプローチ)が示されている。

中心静脈カテーテル法の合併症

CVCは多くの合併症を引き起こしうる(中心静脈カテーテル関連の合併症の表を参照)。CVC挿入後,患者の1%に気胸が生じる。カテーテル挿入手技の最中に心房性または心室性不整脈がしばしば起こるが,一般に自然軽快し,ガイドワイヤーまたはカテーテルを心臓内部から引き抜くと治まる。全身感染を伴わないカテーテルの細菌コロニー形成の発生率は最大35%に及ぶことがあるが,真の敗血症発生率は2~8%である。カテーテルに関連した静脈血栓症が合併症として認識されることが増えてきており,特に上肢でその傾向がみられる。まれに,誤って動脈にカテーテルが入り外科的な動脈修復を必要とすることがある。カテーテルが血管外に置かれた場合,胸水または縦隔水腫が生じることがある。カテーテルによる三尖弁損傷,細菌性心内膜炎,ならびに空気塞栓症およびカテーテル塞栓症がまれに生じる。

静脈血栓症およびカテーテル敗血症のリスクを減らすため,CVCは可能な限り早期に抜去すべきである。挿入部位の皮膚は清潔にし,局所感染がないか毎日点検すべきである;局所または全身性感染が生じた場合は,カテーテルを交換しなければならない。発熱の続く敗血症の患者では,CVCカテーテルを定期的(例,5~7日毎)に交換するのが有益だと感じている医師もおり,このアプローチによってカテーテルの細菌コロニー形成のリスクを減少できる可能性がある。

(CDCウェブサイトのGuidelines for Prevention of Intravascular Catheter-Related Infectionsも参照のこと。)

表&コラム
表&コラム

末梢ミッドラインカテーテル留置

ミッドラインカテーテル(MC)とは,長さ8~20cmのシングルルーメンまたはダブルルーメンの末梢カテーテルであり,利き手ではない方の肘窩の上または下1.5cmの箇所で尺側皮静脈,橈側皮静脈,または上腕静脈に留置される。MCの留置にはmodified Seldinger法および超音波ガイドを用いる必要があるが,先端が腋窩静脈以下に位置するため,MCは中心静脈カテーテルとはみなされない。したがって,MCの先端が正しく留置されていることをX線で確認する必要はない。

MCの使用基準:

  • 中~長期の静注療法が必要と予想される患者

  • 静脈アクセスが不良で,かつ複数回の穿刺または採血を必要とする患者

  • 状態をモニタリングするために頻回の採血を必要とする可能性が高い患者

MCは末梢静脈カテーテルよりも静脈炎の発生率が低く,中心静脈カテーテルよりも感染率が低いことが明らかにされている(1)。

動脈カテーテル法

非侵襲的自動血圧計の使用により,血圧モニタリングのみを目的とした動脈ラインの使用は減少している。しかしながら,分刻みの血圧測定が必要な不安定な患者,および動脈血ガス採血を頻繁に必要とする患者では,こういったカテーテルが有益である。適応として,難治性ショックおよび呼吸不全などがあげられる。血圧は,血圧計よりも動脈カテーテルで測定する方がいくらか高く出ることがしばしばある。測定点が末梢にいくにつれて,初期の立ち上がり,最高収縮期血圧,および脈圧は上昇するが,拡張期血圧および平均動脈圧は低下する。血管のカルシウム沈着,粥状動脈硬化症,近位部閉塞,および四肢の位置は全て,動脈カテーテルによる測定値に影響を与えうる。

動脈カテーテル留置のステップ-バイ-ステップの手順については,橈骨動脈カテーテル挿入および超音波ガイド下橈骨動脈カテーテル挿入を参照のこと。

動脈カテーテル法
橈骨動脈への動脈カテーテル挿入
橈骨動脈への動脈カテーテル挿入

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橈骨動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入
橈骨動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入

ここでは,消毒はクロルヘキシジン綿棒で行い,滅菌ドレープを使用している。中心静脈ラインの場合と同じように,滅菌ドレープを広くかけているのに注目すること。ここでは,超音波プローブを滅菌されたカバーで覆っている。プローブには無菌ではないゲルがあらかじめ塗布されており,その上から滅菌されたカバーをかける形になる。無菌の1%リドカイン溶液を準備する。ここでは,プローブカバーを固定するために滅菌したゴムバンドをカバーの上に巻いてから,無菌の超音波ゲルを塗布している。1%リドカインを局所麻酔に使用する。

まず横断面で橈骨動脈を同定し,画面の中央に捉えた状態でプローブをゆっくり回転させることで,橈骨動脈を縦断面で描出することができる。橈骨動脈の縦断面で見える状態になったら,次に橈骨動脈に針を挿入するが,ここでは平行法(in-plane technique)で針を描出しながら,逆血が見えるまで撓骨動脈に進める。次に,ワイヤーを針の外側または中を通して挿入していき,カテーテルをワイヤーに沿って回転させながら進めていく。カテーテルの下にガーゼをはさんでから,ここでは無菌の4 x 4ガーゼを用いてチューブを把持し,これを動脈ラインに接続している。これは滅菌手袋を汚さないためである。動脈チューブをカテーテルにねじ込んでいる。

ここでは,2-0絹糸をつないだ直針でカテーテルを皮膚に固定している。カテーテルの溝に隣接する部分の皮膚から針を刺入している。続いて,針の根本をカテーテルの溝の下で外側から内側に数回運んでから,カテーテルを皮膚に固定するための結紮を行う。ここでは,縫合糸をカテーテルに固定している。さらに青い面が天井に向くようにバイオパッチを適用している。これはクロルヘキシジンを浸透させたパッチで,カテーテル関連血流感染症のリスクを最小限に抑える効果がある。ここでは,バイオパッチとカテーテルの上に無菌の閉鎖性ドレッシングを用いている。以上で完了である。

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大腿動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入
大腿動脈への超音波ガイド下カテーテル挿入

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動脈カテーテル法の合併症

どの部位からの挿入でも,合併症として出血,感染,血栓症,内膜解離,および遠位部の塞栓などがある。もし局所または全身性の感染徴候があるならば,カテーテルを抜去すべきである。

橈骨動脈カテーテルの合併症には,カテーテル挿入部位の血栓もしくは塞栓,内膜解離,または血管攣縮による,手および前腕の虚血などがある。動脈血栓症のリスクは,細い動脈でより高く(これにより女性でより発生率が高いことを説明できる),カテーテル留置期間が長くなるにつれ上昇する。閉塞した動脈は,カテーテル抜去後に,ほとんどの場合再開通する。

大腿動脈カテーテルの合併症には,ガイドワイヤー挿入に伴うアテローム塞栓症などがある。血栓症および遠位部虚血の発生率は,橈骨動脈カテーテルに比べはるかに低い。

腋窩動脈カテーテルの合併症には,頻度は低いものの血腫形成があり,これは腕神経叢を圧迫して永続的な末梢神経障害を来す恐れがあるため,その際には緊急処置が必要となりうる。腋窩動脈カテーテルをフラッシュすると,空気または凝血塊が入り込む場合がある。これらの塞栓子による神経学的後遺症を避けるため,カテーテル挿入には左腋窩動脈を選択すべきである(左腋窩動脈は右腋窩動脈に比べて頸動脈からより遠位で分岐する)。

カテーテル法に関する参考文献

  1. Alexandrou E, Ramjan L, Spencer T, et al: The use of midline catheters in the adult acute care setting – clinical implications and recommendations for practice.JAVA 16:35–41, 2011.

骨髄内輸液

静脈内にルーチンで投与される輸液または薬物(血液製剤を含む)はどれも,特定の長管骨の髄腔に挿入した頑丈な針を介して投与できる。輸液は,静注の場合と同程度の速さで中心循環に達する。この方法は乳幼児で用いられることがより多く,このような患者では骨皮質が薄く簡単に貫通できるうえ,特にショックまたは心停止のときに,末梢静脈および中心静脈の確保が極めて困難になりうる。しかしながら,より年長の患者でも,現在では特殊なデバイス(例,圧負荷をかける穿刺装置,穿刺ドリル)がより簡単に入手でき,様々な部位(例,胸骨,脛骨近位部,上腕骨)でこの手技を行うことができる。このため,骨髄内輸液は成人でもより一般的になりつつある。

骨髄路確保のステップ-バイ-ステップの手順については,骨髄路確保(用手的手技および電動ドリルを用いる手技)を参照のこと。

骨髄針の挿入

脛骨近位部を4本の指と母指で覆い,固定する;(自己穿刺を避けるため)挿入部位のすぐ後ろに手を置くべきではない。そのかわり,膝を支えるため,タオルをその裏側に置くことはある。針を他方の手掌でしっかりと把持し,関節腔と成長板からやや離れた点を目指す。適度な圧力と回転運動により針を挿入し,皮質を貫通した抜ける感じがしたら止める。プラスチックスリーブ付きの針もあり,スリーブを調整することで骨に深く入りすぎたり反対側まで貫通したりするのを回避できる。

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