Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

尿素サイクル異常症

執筆者:

Lee M. Sanders

, MD, MPH, Stanford University

最終査読/改訂年月 2016年 1月
ここをクリックすると家庭版へ移動します
本ページのリソース

尿素サイクル異常症は,異化状態またはタンパク負荷状態下での高アンモニア血症を特徴とする。

他の多くのアミノ酸・有機酸代謝異常症と同様,尿素サイクル異常症とその関連疾患にも多数の病型がある(表を参照)。遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。

原発性尿素サイクル異常症(UCD)には,カルバモイルリン酸合成酵素(CPS)欠損症,オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症,アルギニノコハク酸合成酵素欠損症(シトルリン血症),アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(アルギニノコハク酸尿症),およびアルギナーゼ欠損症(アルギニン血症)がある。さらに,N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症も報告されている。酵素欠損がより「近位」になるほど高アンモニア血症の重症度も高くなるため,各疾患の重症度の順序は,高い方からNAGS欠損症,CPS欠損症,OTC欠損症,シトルリン血症,アルギニノコハク酸尿症,アルギニン血症となる。

UCDの遺伝形式は,OTC欠損症がX連鎖性である以外は全て常染色体劣性である。

icon

尿素サイクル異常症とその関連疾患

疾患(OMIM番号)

欠損タンパクまたは酵素

欠損遺伝子または遺伝子群(染色体座位)

備考

オルニチン-トランスカルバモイナーゼ(OTC)欠損症(311250)

OTC

OTC(Xp21.1)*

生化学的プロファイル:オルニチンおよびグルタミン上昇,シトルリンおよびアルギニン低下,尿中オロト酸の著しい上昇

臨床的特徴:男性では,反復性嘔吐,易刺激性,嗜眠,高アンモニア血症性昏睡,脳浮腫,痙性,知的障害,痙攣発作,死亡

保因者の女性では,発育遅滞,低身長,タンパク嫌悪,および分娩後高アンモニア血症から,欠損症の男性と同様の重度の症状まで,多様な臨床像を呈する

治療:緊急治療を要する高アンモニア血症の発作に対する血液透析,安息香酸ナトリウム,フェニル酢酸ナトリウム,フェニル酪酸ナトリウム,必須アミノ酸混合物とアルギニンを添加した低タンパク食,シトルリン,実験的な遺伝子治療,肝移植(治癒が得られる)

N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症(237310)

N-アセチルグルタミン酸合成酵素

NAGS(17q21.31)

生化学的プロファイル:尿中オロト酸正常~低値以外はOTC欠損症と同様

臨床的特徴:保因者が無症状であることを除いて,OTC欠損症と同様

治療:OTC欠損症と同様であるが,加えてN-カルバミルグルタミン酸補充

カルバモイルリン酸合成酵素(CPS)欠損症(237300)

カルバモイルリン酸合成酵素

CPS1(2q35)*

生化学的プロファイル:尿中オロト酸正常~低値以外はOTC欠損症と同様

臨床的特徴:保因者が無症状であることを除いて,OTC欠損症と同様

治療:安息香酸ナトリウムおよびアルギニン

シトルリン血症I型(215700)

アルギノコハク酸合成酵素

ASS(9q34)*

生化学的プロファイル:血漿中シトルリンおよびグルタミン酸高値,シトルリン尿,オロト酸尿

臨床的特徴:発作性の高アンモニア血症,発育不全,タンパク嫌悪,嗜眠,嘔吐,昏睡,痙攣発作,脳浮腫,発達遅滞

治療:シトルリン補充が推奨されないことを除いて,OTC欠損症と同様

肝移植

シトルリン尿症II型(603814,603471)

シトリン

SCL25A13(7q21.3)*

生化学的プロファイル:血漿中シトルリン,メチオニン,ガラクトース,およびビリルビン上昇

臨床的特徴:新生児期発症の場合,胆汁うっ滞は生後3カ月までに消失する

成人期発症の場合,遺尿症,遅発初経,睡眠覚醒サイクルの逆転,嘔吐,妄想,幻覚,精神病,昏睡

治療:肝移植;その他に確実な治療はない

アルギノコハク酸尿症(207900)

アルギノコハク酸リアーゼ

ASL(7cen-q11.2)*

生化学的プロファイル:血漿中シトルリンおよびグルタミン酸上昇,尿中アルギノコハク酸上昇

臨床的特徴:発作性の高アンモニア血症,肝線維化,肝酵素上昇,肝腫大,タンパク嫌悪,嘔吐,痙攣発作,知的障害,運動失調,嗜眠,昏睡,結節性裂毛

治療:アルギニン補充

アルギニン血症(107830)

アルギナーゼI

ARG1(6q23)*

生化学的プロファイル:血漿中アルギニン上昇,ジアミノ酸尿(アルギニン尿,リジン尿,シスチン尿,オルニチン尿),オロト酸尿,ピリミジン尿

臨床的特徴:発育・発達遅滞,食欲不振,嘔吐,痙攣発作,痙性,易刺激性,多動性,タンパク不耐症,高アンモニア血症

治療:低タンパク食,安息香酸,フェニル酢酸

リジン尿症性タンパク不耐症(二塩基性アミノ酸尿症II型;222700)

二塩基性アミノ酸輸送体

SLC7A7(14q11.2)*

生化学的プロファイル:尿中リジン,オルニチン,およびアルギニン上昇

臨床的特徴:タンパク不耐症,発作性の高アンモニア血症,発育・発達遅滞,下痢,嘔吐,肝腫大,肝硬変,白血球減少,骨減少症,骨格脆弱化,昏睡

治療:低タンパク食,シトルリン

高オルニチン血症,高アンモニア血症,およびホモシトルリン血症(238970)

ミトコンドリアオルニチントランスロカーゼ

SLC25A15(13q14)*

生化学的プロファイル:血漿中オルニチン上昇,ホモシトルリン血症

臨床的特徴:知的障害,進行性の痙性対麻痺,発作性の錯乱,高アンモニア血症,統合運動障害,痙攣発作,嘔吐,網膜症,神経伝導および誘発電位の異常,白質脳症

治療:リジン,オルニチン,またはシトルリン補充

オルニチン血症(258870)

オルニチンアミノトランスフェラーゼ

OAT(10q26)*

生化学的プロファイル:血漿中オルニチン上昇,尿中オルニチン,リジン,およびアルギニン上昇;血漿中リジン,グルタミン酸,およびグルタミン低値

臨床的特徴:近視,夜盲症,失明,進行性の周辺視野欠損,進行性の脳回転状網膜脈絡膜萎縮,軽度の近位筋緊張低下,ミオパチー

治療:ピリドキシン,低アルギニン食,オルニチンの腎排泄を増加させるためのリジンおよびα-アミノイソ酪酸;プロリンまたはクレアチン補充

高インスリン-高アンモニア血症症候群(606762)

グルタミン酸脱水素酵素活性亢進

GLUD1(10q23.3)*

生化学的プロファイル:尿中α-ケトグルタル酸上昇

臨床的特徴:痙攣発作,反復性の低血糖,高インスリン血症,無症候性の高アンモニア血症

治療:低血糖の予防

*遺伝子が同定されており,分子基盤が解明されている。

OMIM = online mendelian inheritance in man(OMIM databaseを参照)。

症状と徴候

臨床像は軽度(例,発育不良,知的障害,発作性の高アンモニア血症)から重度(例,精神状態の変容,昏睡,死亡)まで様々である。OTC欠損症の女性患者における臨床像は,発育不全,発達遅滞,精神異常,発作性(特に分娩後)の高アンモニア血症を認めるものから男性患者と同様の表現型(すなわち,繰り返す嘔吐,易刺激性,嗜眠,高アンモニア血症による昏睡,脳浮腫,痙性,知的障害,痙攣発作,死亡)まで様々である。

診断

  • アミノ酸の血清中プロファイル

尿素サイクル異常症の診断はアミノ酸プロファイルに基づく。例えば,オルニチンの高値はCPS欠損症またはOTC欠損症を意味し,一方シトルリンの高値はシトルリン血症を意味する。OTC欠損症でカルバモイルリン酸が蓄積すると,オロト酸への代替代謝が生じることから,CPS欠損症とOTC欠損症の鑑別にはオロト酸の測定が役立つ。

治療

  • タンパク制限食

  • アルギニンまたはシトルリン補充

  • フェニル酪酸ナトリウム

  • 場合により肝移植

尿素サイクル異常症の治療は食事でのタンパク摂取制限であるが,同時に発育,発達,および正常なタンパク代謝回転を維持できる十分な量のアミノ酸を与える。

現在ではアルギニンが治療の不可欠な要素となっている。それにより尿素サイクルの中間体を十分に供給することで,より多くの窒素成分が尿素サイクルの中間体に組み込まれるようにして,それらの中間体の排泄を促進する。アルギニンはまた,アセチルグルタミン酸合成の正の調節因子でもある。最近の研究では,OTC欠損症患者においてシトルリンの経口投与の方がアルギニンより効果的であることが示唆されている。

その他の治療は,安息香酸ナトリウム,フェニル酪酸,またはフェニル酢酸によるもので,これらはグリシン(安息香酸ナトリウム)およびグルタミン(フェニル酪酸およびフェニル酢酸)と抱合することによって「窒素排出(nitrogen sink)」を達成する。

このような治療法の進歩にもかかわらず,UCDの多くが依然として治療困難であり,最終的には多くの患者で肝移植が必要となる。肝移植のタイミングが極めて重要である。できれば乳児が成長して移植によるリスクが低下する年齢(1歳以上)に達するまで待機すべきであるが,中枢神経系に回復不能な障害を引き起こす高アンモニア血症(しばしば疾患に合併する)が併発するほど長く待たないことが重要である。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP