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チロシン代謝異常症

執筆者:

Lee M. Sanders

, MD, MPH, Stanford University

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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チロシンは,いくつかの神経伝達物質(例,ドパミン,ノルアドレナリン,アドレナリン),ホルモン(例,サイロキシン),およびメラニンの前駆物質となるアミノ酸であり,その代謝に関与する酵素の異常により様々な症候群が引き起こされる。

フェニルアラニンおよびチロシンの代謝異常には数多くの疾患がある(を参照)遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチおよび遺伝性代謝疾患が疑われる場合の検査も参照のこと。

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フェニルアラニン・チロシン代謝異常症

疾患(OMIM番号)

欠損タンパクまたは酵素

欠損遺伝子または遺伝子群(染色体座位)

備考

フェニルケトン尿症(PKU),古典型および軽症型(261600)

フェニルアラニン水酸化酵素

PAH(12q24.1)*

生化学的プロファイル:血漿中フェニルアラニン上昇

臨床的特徴:知的障害,行動面の問題

治療:フェニルアラニン制限食,チロシン補充

ジヒドロプテリジン還元酵素欠損症(261630)

ジヒドロプテリジン還元酵素

QDPR(4p15.31)*

生化学的プロファイル:血漿中フェニルアラニン上昇,尿中ビオプテリン高値,血漿中ビオプテリン低値

臨床的特徴:軽症PKUと同様であるが,神経伝達物質の欠乏が認識されないと,知的障害,痙攣発作,およびジストニアが発生する

治療:フェニルアラニン制限食,チロシン補充,ロイコボリン,神経伝達物質補充

プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ欠損症(264070)

プテリン-4α-カルビノールアミンデヒドラターゼ

PCBD(10q22)*

生化学的プロファイル:血漿中フェニルアラニン上昇,尿中ネオプテリンおよびプリマプテリン高値,血漿中ビオプテリン低値

臨床的特徴:軽症PKUと同様であるが,神経伝達物質の欠乏が認識されないと,知的障害,痙攣発作,およびジストニアが発生する

治療:フェニルアラニン制限食,チロシン補充,神経伝達物質補充

ビオプテリン合成欠損症

GTP-シクロヒドロラーゼ(233910)

GCH1(14q22)*

生化学的プロファイル:血漿中フェニルアラニン上昇,尿中ビオプテリン低値,尿中ネオプテリン低値(GCH)または高値(PTSおよびSPR)

臨床的特徴:軽症PKUと同様であるが,神経伝達物質の欠乏が認識されないと,知的障害,痙攣発作,およびジストニアが発生する

治療:テトラヒドロビオプテリンおよび神経伝達物質補充

6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(261640)

PTS(11q22-q23)*

セピアプテリン還元酵素(182125)

SPR(2p14-p12)*

チロシン血症I型(肝腎型;276700)

フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ

FAH(15q23-q25)*

生化学的プロファイル:血漿中チロシン上昇,血漿中および尿中サクシニルアセトン上昇

臨床的特徴:肝硬変,急性肝不全,末梢神経障害,ファンコニ症候群

治療:フェニルアラニン,チロシン,メチオニン制限食;ニチシノン;肝移植

チロシン血症II型(眼球皮膚型;276600)

チロシンアミノトランスフェラーゼ

TAT(16q22.1-q22.3)*

生化学的プロファイル:血漿中チロシンおよびフェニルアラニン上昇

臨床的特徴:知的障害,掌蹠角化症,角膜潰瘍

治療:フェニルアラニンおよびチロシン制限食

チロシン血症III型(276710)

4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ

HPD(12q24-qter)*

生化学的プロファイル:血漿中チロシン上昇,尿中4-ヒドロキシフェニル誘導体上昇

臨床的特徴:発達遅滞,痙攣発作,運動失調

治療:フェニルアラニンおよびチロシン制限食,アスコルビン酸補充

4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ

非遺伝性

生化学的プロファイル:血漿中フェニルアラニンおよびチロシン上昇

臨床的特徴:通常は未熟児に発生;大半が無症状

ときに哺乳不良および嗜眠

治療:有症状例にのみチロシン制限およびアスコルビン酸補充

ホーキンシン尿症(140350)

4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ複合体

HPD(12q24-qter)*

生化学的プロファイル:軽度の高チロシン血症,尿中ホーキンシン上昇

臨床的特徴:発育不良,ケトン性代謝性アシドーシス

治療:フェニルアラニンおよびチロシン制限食,アスコルビン酸補充

ホモゲンチジン酸酸化酵素

HGD(3q21-q23)*

生化学的プロファイル:尿中ホモゲンチジン酸上昇

臨床的特徴:濃色尿,組織黒変症,関節炎

治療:なし;色素沈着を軽減するためのアスコルビン酸補充

眼皮膚白皮症I型(A型およびB型;203100)

チロシナーゼ

TYR(11q21)*

生化学的プロファイル:血漿中および尿中アミノ酸に異常なし,チロシナーゼの欠損(IA型)または減少(IB型)

臨床的特徴:皮膚,毛髪,虹彩,および網膜の色素の欠損(IA型)または減少(IB型);眼振;失明;皮膚癌

治療:化学線からの皮膚および眼の保護

*遺伝子が同定されており,分子基盤が解明されている。

OMIM = online mendelian inheritance in man(OMIM databaseを参照)。

新生児一過性チロシン血症

代謝酵素(特に4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ)の一過性の未成熟によりときに血漿中チロシン濃度の上昇に至ることがあり(通常は未熟児で,特に高タンパク食を与えられている場合にみられる),その代謝物がルーチンに行われるフェニルケトン尿症(PKU)の新生児スクリーニングで検出されることもある。

乳児の大半は無症状であるが,嗜眠および哺乳不良を呈することがある。

チロシン血症は,血漿中チロシン高値によってPKUと鑑別される。

ほとんどの症例は自然に治癒する。症状がみられる患児には,食事でのチロシンの摂取制限(2g/kg/日)を行うとともに,ビタミンCを200~400mg,経口,1日1回で投与すべきである。

チロシン血症I型

この疾患は常染色体劣性形質で,チロシン代謝に重要な酵素であるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼの欠乏に起因する。

本疾患は,新生児期における劇症肝不全として,または乳児期後期および幼児期における緩徐進行性かつ不顕性の肝炎,有痛性の末梢神経障害,および尿細管疾患(例,アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシス,低リン血症,ビタミンD抵抗性くる病)として現れることがある。乳児期に合併する肝不全による死亡を免れた患児では,肝癌の発生リスクが著しく高い。

チロシン血症I型の診断は,血漿中チロシン高値によって示唆され,血漿中または尿中サクシニルアセトン高値および血球または肝生検検体におけるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼの活性低下によって確定される。ニチシノンによる治療は急性エピソードに効果的であり,進行を遅らせる。

フェニルアラニンおよびチロシンの含量が低い食事が推奨される。肝移植が効果的である。

チロシン血症II型

このまれな常染色体劣性遺伝疾患はチロシンアミノ基転移酵素の欠損によって引き起こされる。

チロシンの蓄積により皮膚潰瘍および角膜潰瘍を来す。無治療の場合,フェニルアラニンの二次的な濃度上昇により,軽度ではあるが精神神経異常を来すことがある。

チロシン血症II型の診断は,血漿中チロシン濃度が高く,血漿または尿検体でサクシニルアセトンが検出されず,肝生検検体での測定で酵素活性の低下を確認することによる。

本疾患は,フェニルアラニンおよびチロシンの軽度から中等度の摂取制限で容易に治療できる。

アルカプトン尿症

このまれな常染色体劣性遺伝疾患は,ホモゲンチジン酸酸化酵素の欠損によって引き起こされ,ホモゲンチジン酸の酸化産物が皮膚に蓄積して皮膚を黒変させ,さらに関節内に結晶が析出する。

この病態は成人で診断されるのが通常で,黒ずんだ皮膚色素沈着(組織黒変症)および関節炎が発生する。尿が空気に曝露されると,ホモゲンチジン酸の酸化生成物が生じて黒変する。アルカプトン尿症の診断は,尿中ホモゲンチジン酸の上昇を確認することによる(4~8g/24時間以上)。

アルカプトン尿症に効果的な治療法はないが,アスコルビン酸1gの1日1回経口投与によってホモゲンチジン酸の腎排泄を増加させることにより,色素沈着を減弱できる場合がある。

眼皮膚白皮症

チロシナーゼの欠損は皮膚および網膜への色素沈着の欠如につながり,結果として皮膚癌および重大な視力障害のリスクを大幅に高める。しばしば眼振がみられ,羞明がよくみられる。

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