慢性的な健康障害を有する小児

執筆者:Deborah M. Consolini, MD, Thomas Jefferson University Hospital
レビュー/改訂 2020年 3月
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    慢性的な健康障害(chronic health condition:慢性疾患と慢性的な身体障害の両方を指す)とは,12カ月以上継続し,通常の活動に何らかの制約が生じる健康状態と一般的に定義される。基準によるが,10~30%の小児が慢性的な健康障害をもつと推定されている。慢性疾患の例としては,喘息嚢胞性線維症先天性心疾患糖尿病注意欠如・多動症うつ病などが挙げられる。慢性的な身体障害の例には,脊髄髄膜瘤聴覚障害または視覚障害,脳性麻痺,四肢機能の喪失などがある。

    小児に及ぼす影響

    慢性的な健康障害をもつ小児には,何らかの活動制限,頻繁な疼痛および不快,成長および発達の異常がみられる可能性があり,またより頻回の入院,外来通院,薬物療法が必要になる場合がある。重度の障害をもつ小児は,ときとして学校生活や仲間との活動に参加できない場合もある。

    慢性的な健康障害に対する小児の反応は,その障害がどの発達段階で発生するかに大きく依存する。慢性的な障害が乳児期に発症する場合と,青年期に発症する場合とでは,小児は異なる反応をみせる。学齢期の場合,通学できないことや仲間との関係を築けないことが小児に最も大きな影響を与えうる。青年では,もし日常生活の多くの場面で親や他の人からの補助を必要とする場合,自立できないことに対して苦悩する可能性がある;親は子どもの能力の範囲内での独立独行を奨励し,過保護を避けるべきである。青年期は,仲間と同様であることが非常に重要な時期であるため,他の同世代の人と違っているとみられることに特につらさを感じる(1)。

    医療従事者は,慢性的な健康障害をもつ小児が適切な医療サービスを受けるための代弁者となることができる。年齢相応の遊戯室の設置や,訓練を受けたチャイルド・ライフ・スペシャリストの監視下における学校プログラムの開始が可能である。小児には,可能であればいつでも友人と交流するように励ます。処置および計画は全て,いつでも可能な時に家族および患児に説明すべきであり,これにより家族は入院中に何が起こりうるのかを知り,不確かさから生じる不安を軽減することができる。

    家族に及ぼす影響

    家族にとって慢性的な健康障害の子どもをもつことは,「理想の」子どもへの希望の喪失,同胞に対する注意の欠如,大きな支出や時間の工面,医療制度の矛盾から生じる困惑,機会の喪失(例,児の世話を主に行っている家族が,そのために職場復帰ができない),社会的孤立などにつながりうる。同胞は,障害をもつ児に多くの注意が向けられることに反感を抱くことがある。そのようなストレスは,特にすでに家族機能に問題が生じている場合には,家族崩壊の原因となりうる。

    乳児の身体的外観に影響する病態(例,口唇口蓋裂水頭症)は,児と家族または養育者との絆にも影響を及ぼしうる。一旦,異常との診断が下されると,親はショック,否定,怒り,悲しみまたは抑うつ,自責の念,不安などの反応を示す。こうした反応は,児の発達のどの時期でも起こることがあり,また父親と母親とで受容の段階が異なる場合があるため,両親の間でコミュニケーションが困難となりうる。親は医療従事者に対して怒りを表すこともあり,また現実を否定するあまりに,児の状態について様々な意見を聞いて回ることもある。

    ケアの連携

    サービスの連携なしには,ケアは危機志向(crisis-oriented)になる。サービスが重複することもあれば,おろそかにされることもある。ケアの連携には,患児の状態,家族および支援システム,患児や家族が生活する地域社会についての情報が必要となる。

    慢性的な健康障害を有する小児のケアを担当する全ての専門家は,確実に誰かがケアの連携を図るよう調整しなければならない。ときには親が連携役になることも可能である。しかしながら,制度利用のための交渉はしばしば非常に複雑であるため,いかに有能な親でも支援が必要になる場合がある。他の調整役候補としては,プライマリケア医,専門のプログラムスタッフ,地域の保健師,第三者支払い機関のスタッフが挙げられる。誰がサービスの連携を行うにしろ,家族と患児がその過程に参画しなければならない。一般に,低所得家庭の慢性障害をもつ小児は他と比べて状況が良くないが,この理由として1つには医療およびケアの連携へのアクセスが不足していることが挙げられる。末期疾患の小児には,ホスピスケアが有益となりうる。

    総論の参考文献

    1. 1.Compas BE, Jaser SS, Dunn MJ, Rodriquez EM: Coping with chronic illness in childhood and adolescence.Ann Rev Clin Psychol 8:455–480, 2012.doi: 10.1146/annurev-clinpsy-032511-143108.

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