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先天梅毒

執筆者:

Mary T. Caserta

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2015年 10月
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梅毒。)

先天梅毒は,梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を原因菌とし,胎盤を介して胎児に伝播する多臓器感染症である。初期の徴候は,特徴的な皮膚病変,リンパ節腫脹,肝脾腫,発育不良,血液が混入した鼻汁,口周囲の亀裂,髄膜炎,脈絡膜炎,水頭症,痙攣,知的障害,骨軟骨炎,および仮性麻痺(Parrot atrophy of newborn)である。晩期の徴候は,ゴム腫性潰瘍,骨膜病変,麻痺,脊髄癆,視神経萎縮,角膜実質炎,感音難聴,および歯牙変形である。診断は臨床的に行い,顕微鏡検査または血清学的検査により確定する。治療はペニシリン投与である。

胎児への経胎盤感染のリスクは全体で約60~80%であり,その可能性は妊娠後半に高くなる。母親が無治療の第1期または第2期梅毒であれば,通常は母子感染が生じるが,潜伏梅毒や第3期梅毒からの母子感染率は約20%に過ぎない。妊娠中の無治療の梅毒は,死産および新生児死亡の有意なリスク上昇と関連する。梅毒に感染した新生児の臨床像は,早期先天梅毒(出生から2歳まで)と晩期先天梅毒(2歳以降)に分類される。

症状と徴候

多くの患者は無症状であり,生涯にわたり不顕性のままのこともある。

早期先天梅毒は,一般的に生後3カ月以内に発症する。その臨床像としては,手掌や足底の特徴的な水疱性発疹または銅色の斑状皮疹,鼻および口の周囲やおむつの当たる部位の丘疹状病変,点状出血性病変などがみられる。全身性リンパ節腫脹や肝脾腫がしばしばみられる。乳児は発育不全に陥り,特徴的な粘液膿性または血液の混入した鼻汁により鼻閉を起こすことがある。少数の乳児では,髄膜炎,脈絡膜炎,水頭症,または痙攣が発生し,また知的障害がみられる乳児もいる。生後8カ月以内には,骨軟骨炎(軟骨骨端炎)により(特に長管骨と肋骨に生じた場合)X線上の特徴的な変化を伴う四肢の仮性麻痺を来すことがある。

晩期先天梅毒は通常,生後2年以降に発症し,鼻,鼻中隔,および硬口蓋を侵す蛍光のあるゴム腫性潰瘍,脛骨のサーベル状変形(saber shins)や前頭骨および頭頂骨の隆起につながる骨膜病変を引き起こす。神経梅毒は通常無症状であるが,若年性の麻痺や脊髄癆を発症することがある。視神経萎縮が生じることもあり,ときに失明に至る。角膜実質炎は最も頻度の高い眼病変であり,頻繁に再発し,しばしば角膜瘢痕の形成につながる。感音難聴はしばしば進行性で,あらゆる年齢で出現する。Hutchinson切歯,桑実状臼歯,口周囲亀裂(裂溝),および上顎骨の発育異常とその結果生じる「ブルドッグ様」顔貌は,まれではあるが特徴的な後遺症である。

診断

  • 早期先天梅毒:臨床的評価;病変,胎盤,または臍帯の暗視野顕微鏡下鏡検;母親および新生児の血清学的検査;ときに髄液検査

  • 晩期先天梅毒:臨床的評価,母親および小児の血清学的検査

早期先天梅毒

早期先天梅毒の診断は通常,妊娠早期にルーチンに施行し,しばしば第3トリメスターと分娩時に再施行する母体の血清学的検査の結果から疑われる。母親に梅毒感染の血清学的所見がみられる新生児には,徹底的な診察,皮膚または粘膜病変があれば暗視野顕微鏡下鏡検または蛍光抗体染色,および定量的な非トレポネーマ血清検査(例,迅速血漿レアギン[RPR]試験,VDRL[Venereal Disease Research Laboratory]試験)を行うべきである;臍帯血は,検査結果の感度および特異度が低いため,血清学的検査に使用しない。胎盤または臍帯は,可能であれば暗視野顕微鏡下鏡検または蛍光抗体染色によって分析すべきである。

疾患の臨床徴候が認められるか,血清学的検査で本疾患が示唆される乳幼児には,腰椎穿刺を施行して髄液の細胞数,VDRL,およびタンパクの検査を行い,さらに血算と血小板数,肝機能検査,長管骨X線,ならびに臨床的に適応があればその他の検査(眼科的評価,胸部X線,神経画像検査,および聴性脳幹反応)を行うべきである。

梅毒では長管骨にX線写真に描出される様々な異常が生じることがあり,具体的には以下のものがある:

  • 骨膜反応

  • びまん性または限局性の骨炎

  • 骨幹端炎

骨炎は,ときに「骨幹部がびまん性に虫に喰われたような変化」と表現されることがある。骨幹端炎は,一般に透過性の亢進した部分と骨密度の高い部分が帯状に交差し,サンドイッチ状またはセロリの茎状の外観を呈する。Wimberger徴候とは,脛骨上部の対称性のびらんであるが,他の長管骨の骨幹部にもびらんがみられることがある。長管骨の骨端での過剰な仮骨形成が報告されている。患児の多くでは,これらの所見が複数認められる。

診断は,新生児または胎盤由来の検体中に顕微鏡下でスピロヘータを認めることによって確定される。母体IgG抗体の胎盤を介した移行のため,新生児の血清学的検査に基づく診断は困難であり,母体抗体の移行により,感染のない新生児で陽性の結果が得られることがある。ただし,新生児の非トレポネーマ抗体価が母体の抗体価より4倍を超えて高い場合には,一般に受動的な移行によるものとは考えにくいため,診断は確定または可能性が高いと判断される。母親が妊娠の後期に感染した場合は,抗体の出現前に胎児に伝播することがある。したがって,抗体価は低いが典型的な臨床像を呈する新生児においても,梅毒の可能性は高いとみなされる。疾患の徴候がなく,血清抗体価が低値または陰性の新生児では,梅毒の可能性は低いとみなされ,その後のアプローチは,母体側および新生児側の様々な因子に依存する( 先天梅毒 : フォローアップ)。

胎盤を隔てて輸送されない抗トレポネーマIgM抗体に対する蛍光分析の有用性については議論があるが,このような分析法が新生児の感染を検出するために用いられている。非トレポネーマ検査が陽性の場合は,偽陽性の可能性を除外するため,トレポネーマ特異的検査により確認するべきであるが,症状のある乳児や感染リスクの高い乳児では,確認検査のために治療を遅らせてはならない。

晩期先天梅毒

晩期先天梅毒の診断は,病歴,特有の身体徴候,および血清学的検査の陽性所見による( 梅毒 : 梅毒の診断検査)。角膜実質炎,Hutchinson切歯,および第8脳神経の異常による難聴から構成されるHutchinson 3徴候は,診断価値が高い。標準的な非トレポネーマ梅毒血清学的検査はときに陰性となるが,トレポネーマ蛍光抗体吸収試験(FTA-ABS)は陽性となる。原因不明の難聴,進行性の知能低下,または角膜炎がみられる場合は,本疾患の可能性を考慮すべきである。

フォローアップ

血清反応陽性の全ての乳児と母親が血清陽性の乳児には,VDRLまたはRPR法による抗体価測定を,反応が認めなくなるか,抗体価が4分の1に低下するまで,2~3カ月毎に行うべきである。感染のない乳児と治療が成功した乳児では,非トレポネーマ抗体の抗体価は通常6カ月までに反応なしとなる。受動的に獲得したトレポネーマ抗体はより長く持続し,おそらく15カ月まで認められる。母親,新生児,乳児,および幼児における抗体価の経時的なモニタリングには,同一の特異的非トレポネーマ検査を用いることが重要である。

生後6~12カ月が過ぎてもVDRLまたはRPR試験で反応がみられるか抗体価が上昇する場合には,乳児に再検査(腰椎穿刺による髄液検査,血算と血小板数,長管骨X線,臨床的に適応があるその他の検査など)を行うべきである。

治療

  • ペニシリンの注射剤

妊婦

早期梅毒の妊婦には,ベンジルペニシリンベンザチンを投与する(240万単位,筋注,単回)。晩期梅毒または神経梅毒については,妊婦以外の患者に対する適切なレジメンに従うべきである( 梅毒 : 晩期または第3期梅毒)。ときに,このような治療の後に重度のヤーリッシュ-ヘルクスハイマー反応が発生することがあり,自然流産につながる。ペニシリンアレルギーのある患者には,脱感作を行ってから,ペニシリンによる治療を開始してもよい。

十分な治療を行えば,大半の患者で6~12カ月までにRPRおよびVDRL検査値が4分の1に低下し,2年までにはほぼ全例が陰性化する。エリスロマイシンによる治療は,母親と胎児のどちらにとっても不十分であり,推奨されない。テトラサイクリン系薬剤は禁忌である。

早期先天梅毒

確定またはほぼ確実な症例については,Centers for Disease Control and Prevention(CDC:米国疾病予防管理センター)の2015年版の先天梅毒の診療ガイドラインでは,水溶性結晶ベンジルペニシリン50,000単位/kgを生後7日間は12時間毎,その後は8時間毎,合計10日間となるように静脈内投与するか,またはベンジルペニシリンプロカインを50,000単位/kg,筋注,1日1回で10日間投与するように推奨されている( 新生児に対する主な注射用抗菌薬の推奨用量)。治療が1日以上にわたり中断された場合は,全コースを再度繰り返さなければならない。母親が以下の基準のいずれかを満たす場合には,梅毒の可能性が低い乳児にも本レジメンが推奨される:

  • 未治療である

  • 治療状況が不明である

  • 分娩前4週間以内に治療を受けた

  • 不十分な治療(ペニシリン以外のレジメン)を受けた

  • 母親に再発または再感染の所見が認められる(母親の抗体価が4倍以上上昇)

母親の治療歴が不十分であるが,自身は臨床的に健康で精査結果は全て陰性である,梅毒の可能性がある乳児では,ベンジルペニシリンベンザチン50,000単位/kg,筋注の単回投与が特定の状況における代替治療となるが,フォローアップを確実に行える場合に限定される。

母親が十分な治療を受けており,自身は臨床的に健康である,梅毒の可能性がある乳児では,ベンジルペニシリンベンザチンを50,000単位/kg,筋注で単回投与する。綿密なフォローアップを保証できる場合は,ペニシリンを延期して,非トレポネーマ血清学的検査を3カ月間は毎月,その後は6カ月時に行い,6カ月時点の抗体価が上昇または陽性の場合には抗菌薬を投与するという治療方針もある。

新たに先天梅毒と診断された比較的年長の乳児および小児

治療を始める前に髄液の検査を行うべきである。CDCは,晩期先天梅毒の小児では全例に水溶性結晶ベンジルペニシリンを50,000単位/kg,静注,4~6時間毎で10日間投与するよう推奨している。静脈内投与による治療の完了時には,ベンジルペニシリンベンザチンを50,000単位/kg,筋注で単回投与してもよい。十分な評価を行って全ての結果が陰性となり,かつ症状も認められない場合には,代替治療としてベンジルペニシリンベンザチン50,000単位/kg,筋注,週1回の3回投与を採用してもよい。

多くの患児は抗体陰性にはならないが,レアギン(例,VDRL)抗体の抗体価は4倍低下する。定期的に再評価を行って,治療に対して適切な血清学的反応が得られており,再発を示唆する所見がないことを確認すべきである。

角膜実質炎は,眼科医へのコンサルテーションを行った上で,通常はコルチコステロイドおよびアトロピンの点眼薬により治療する。感音難聴がある患児には,ペニシリンとコルチコステロイド(例えば,プレドニゾン0.5mg/kg,経口,1日1回,1週間に続いて0.3mg/kg,1日1回,4週間,その後は2~3カ月かけて漸減)の併用が有益となりうる。コルチコステロイドについては,これらの病態における厳密な評価は行われていない。

予防

妊婦には第1トリメスター中にルーチンで梅毒検査を行うべきであり,妊娠中に他の性感染症に罹患した場合には再検査すべきである。99%の症例では,妊娠中に十分な治療を行うことで,母親と胎児の双方で治癒が得られる。しかしながら,妊娠の後期に行った梅毒の治療により感染を排除できても,出生後に梅毒の徴候が出現する症例もある。分娩前の母親の治療期間が4週間未満である場合は,胎児への感染を確実に阻止できない可能性がある。

先天梅毒と診断した場合は,他の家族も身体的および血清学的な感染所見がないか検査すべきである。以降の妊娠における母親の再治療は,血清抗体価から再発または再感染が示唆される場合に限り必要である。十分な治療後も血清反応陽性のままとなる女性では再感染の可能性があり,再評価を行うべきである。病変はなく,血清反応陰性であるが,梅毒患者への性的曝露歴がある母親は,梅毒に感染している可能性が25~50%であるため,治療を受けるべきである。

要点

  • 梅毒の臨床像は,早期先天梅毒(出生から2歳まで)と晩期先天梅毒(2歳以降)に分類される。

  • 母親が第1期または第2期梅毒である場合の母子感染リスクは60~80%であるが,潜伏期または第3期梅毒の母子感染リスクは約20%に過ぎない。

  • 診断は臨床所見と母親および小児の血清学的検査による;早期先天梅毒の診断には,皮膚病変のほか,ときに胎盤および臍帯検体での暗視野顕微鏡検査が役立つことがある。

  • ペニシリンの注射剤により治療する。

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