Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

honeypot link

先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症(CMV)

執筆者:

Brenda L. Tesini

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

レビュー/改訂 2020年 7月
ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
本ページのリソース

サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,出生前または周産期の感染によって発生することがあり,最も頻度の高い先天性ウイルス感染症である。出生時にみられることのある徴候は,子宮内胎児発育不全,未熟性,小頭症,黄疸,点状出血,肝脾腫,脳室周囲石灰化,脈絡網膜炎,肺炎,肝炎,および感音難聴である。乳児期後期に感染した場合の徴候としては,肺炎,肝脾腫,肝炎,血小板減少,敗血症様症候群,異型リンパ球増多などが挙げられる。新生児感染症の診断法としては,培養またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査によるウイルス検出が最良である。治療は支持療法が中心である。ガンシクロビルの注射剤またはバルガンシクロビルの経口剤は,聴力の低下を予防し,発達面の予後を改善する可能性があり,新生児期に同定された症候性の疾患がみられる乳児に使用される。

サイトメガロウイルス(CMV)は新生児からしばしば分離される。このウイルスを保有する乳児の大半は無症状であるが,生命を脅かす疾患や深刻な影響を及ぼす長期の後遺症が生じることもある。

CMVの初感染を起こした女性が安全に妊娠できるようになる時期は不明である。胎児へのリスクは判断が難しいため,妊娠中にCMVの初感染がみられた女性はカウンセリングを受けるべきであるが,健康な女性に対して妊娠前や妊娠中にルーチンなCMVの血清学的検査を勧める専門家は少ない。

病因

先天性CMV感染症は,世界中で全出生児の0.2~1%にみられ,初感染または再感染の母体からの経胎盤感染によって発生する。新生児の顕性感染症は,母体の初感染後に生じる可能性がはるかに高くなる(特に妊娠前半)。米国の社会経済的水準の高い一部の集団では,若年女性の50%がCMV抗体を保有しておらず,したがって初感染が生じうる状態となっている。

周産期CMV感染症は,感染した子宮頸管分泌物,母乳,または血液製剤への曝露により生じる。母体由来の抗体に防御効果があると考えられ,曝露した正期産児の大半は無症状に経過するか,感染しない。対照的に 早期産児 早産児 在胎37週未満で出生した児は早産児とみなされる。 未熟性は出生時点での 在胎期間により定義される。かつては,体重2.5kg未満の新生児であればいずれも未熟児と呼ばれていた。早産児は小さい傾向にあるが,多くの体重2.5kg未満の乳児は成熟している場合や 過期産児および過熟児である場合,および 在胎不当過小である場合もあるため,この体重に基づいた定義は不適切である;このような新生児は外観も異なれば,抱える問題も異なる。... さらに読む (CMV抗体をもたない)の場合は,重篤な感染症を起こし,死に至ることもあり,特にCMV陽性の血液が輸血された場合はその可能性が高くなる。このような乳児にはCMV陰性の血液または血液成分のみを輸血するか,CMVが感染した白血球を除去するフィルター処理済みの血液を使用するように努めるべきである。多くの専門家は,そのような白血球除去血液にはCMVの感染リスクがないと考えている。

症状と徴候

先天性CMV感染症の乳児のうち,出生時に症状がみられるのは約10%である。以下のような所見がみられる:

分娩時または出生後にCMVに感染した乳児(特に早産児)では,敗血症様症候群,肺炎,肝脾腫,肝炎(肝不全に至ることがある),血小板減少,異型リンパ球増多などがみられることがある。ただし,経母乳感染の場合は,重度の症候性感染や長期の後遺症が生じるリスクは低い。

診断

  • 尿,唾液,または組織検体を用いたウイルス培養

  • 尿,唾液,血液,または組織検体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査

症候性の先天性CMV感染症は, トキソプラズマ症 先天性トキソプラズマ症 先天性トキソプラズマ症は,Toxoplasma gondiiの経胎盤感染によって引き起こされる。みられることのある臨床像は,未熟性,子宮内胎児発育不全,黄疸,肝脾腫,心筋炎,肺炎,発疹,脈絡網膜炎,水頭症,頭蓋内石灰化,小頭症,痙攣である。診断は血清学的検査またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査による。治療はピリメタミン,スルファジアジン,およびロイコボリンによる。... さらに読む 先天性トキソプラズマ症 風疹 先天性風疹 先天性風疹は,妊娠中の母子感染によって発生するウイルス感染症である。徴候は胎児死亡の原因となりうる多発性の先天異常である。診断は血清学的検査およびウイルス培養による。特異的な治療法はない。予防はルーチンのワクチン接種による。 ( 新生児感染症の概要および Professional.See also page 風疹。) 先天性風疹は典型的には母親の初感染の結果として生じる。予防接種プログラムが大きな成功を収めたことにより,現在の米国では先... さらに読む ,リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染症, 梅毒 先天梅毒 先天梅毒は,梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)を原因菌とし,胎盤を介して胎児に伝播する多臓器感染症である。初期の徴候は,特徴的な皮膚病変,リンパ節腫脹,肝脾腫,発育不良,血液が混入した鼻汁,口周囲の亀裂,髄膜炎,脈絡膜炎,水頭症,痙攣,知的障害,骨軟骨炎,および偽性麻痺(Parrot atrophy of newborn)である。晩期の徴候は,ゴム腫性潰瘍,骨膜病変,麻痺,脊髄癆,視神経萎縮,角膜実質... さらに読む 先天梅毒 など,他の先天性感染症と鑑別する必要がある。

新生児では,尿,唾液,または組織検体を用いたウイルス培養またはPCR法が最良の診断法であり,母親の診断は血清学的検査またはPCRにより可能である( Professional.see page 診断 診断 サイトメガロウイルス(CMV,ヒトヘルペスウイルス5型)は,重症度に大きな幅のある感染症を引き起こす。伝染性単核球症に類似するが重度の咽頭炎を欠いた症候群がよくみられる。HIV感染患者,臓器移植レシピエント,およびその他の易感染性患者において,網膜炎など重度の局所疾患が生じうる。新生児および易感染性患者では,重度の全身性疾患が発生することがある。臨床検査による診断は重症例において役に立ち,培養,血清学的検査,生検,抗原または核酸の検出な... さらに読む )。培養検体は線維芽細胞に接種するまで冷蔵保存すべきである。生後2~3週以内に採取された尿,唾液,その他の体液からウイルスが分離されれば,先天性CMV感染症と診断でき,尿および唾液を使用した場合に最も感度が高い。生後3週を過ぎると,ウイルスを検出しても,周産期感染か先天性感染かを判断できなくなる。どちらの形態で感染した場合も,乳児はその後数年間にわたりCMVを排出することがある。

白血球分画を含めた血算と肝機能検査が役立つことがあるが,特異的ではない。頭部超音波またはCTと眼科的評価も行うべきである。CTでは脳室周囲石灰化像がよくみられる。

感染した新生児には,全例で出生時の聴覚検査をルーチンに行うべきであり,新生児期を過ぎてから難聴が発生して進行することもあるため,綿密なモニタリングを継続する必要がある。

予後

症状がみられた新生児の死亡率は30%に及ぶことがある一方,生存例でも40~90%で以下のような神経学的異常がみられる:

無症状の新生児でも,最終的には5~15%に神経学的後遺症が発生するが,なかでも難聴の頻度が最も高い。

治療

  • 症状のある新生児にはガンシクロビルまたはバルガンシクロビル

治療に関する参考文献

予防

免疫をもたない妊婦は,ウイルス曝露の機会を減らすよう努めるべきである。例えば,CMV感染症は託児所に通う小児でよくみられるため,妊婦は託児所に通っている児の尿や口腔または気道分泌物に触れた際には,必ず徹底的に手を洗うべきである。

輸血関連の周産期CMV感染症は,早期産児への輸血にはCMV抗体陰性ドナーからの血液製剤か白血球除去製剤を使用することで予防可能である。

予防に関する参考文献

要点

  • サイトメガロウイルス(CMV)感染症は,最も頻度の高い先天性ウイルス感染症であり,無症候性の場合と症候性の場合がある。

  • 複数の臓器が侵されることがあり,また早産のリスクが高まる。

  • 症候性の先天性CMV感染症は,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査またはウイルス培養を用いて他の先天性感染症(例,トキソプラズマ症,風疹,リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス感染症,梅毒)と鑑別する。

  • ガンシクロビルの静注またはバルガンシクロビルの経口投与が症候性の感染症を起こした乳児において難聴および発達遅滞を予防するのに役立つことがある。

ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
家庭版を見る
quiz link

Test your knowledge

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP