腸重積症

執筆者:William J. Cochran, MD, Geisinger Clinic
レビュー/改訂 2020年 3月
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腸重積症とは,腸管の一部(内筒)が隣接部位(外筒)に嵌入した状態のことで,腸閉塞やときに腸管虚血を引き起こす。診断は超音波検査による。治療は空気注腸のほか,ときに手術による。

腸重積症は一般に,生後6カ月から3歳までに発生し,そのうち65%が1歳未満,80~90%は2歳未満で発生する。本症は,この年齢層における腸閉塞の原因として最も頻度の高い病態であり,4歳未満の小児にほぼ男女差なく発生する。4歳以上の小児では,腸重積症は男性ではるかに多くみられる(8:1)。

嵌入部によって腸管が閉塞され,最終的には重積部( see figure 腸重積症)への血流障害から虚血,壊疽,および穿孔を来す。

腸重積症

病因

ほとんどの症例は特発性である。しかしながら,男児にやや多く,季節変動もみられ,発生数のピークがウイルス性腸炎の流行期に一致する。かつてのロタウイルスワクチンは腸重積症の著明なリスク増大との関連が認められていたが,それらのワクチンは米国の市場から排除された。最近のロタウイルスワクチンについては,推奨される順序および時期に接種された場合,臨床的に有意なリスク増大との関連は認められない。

腸重積症の小児の約25%,典型的には非常に年少の小児とより年長の小児では,先進部(腫瘤やその他の腸管異常)が重積のきっかけとなる。その例としては,ポリープリンパ腫メッケル憩室,紫斑が腸壁に及んだIgA血管炎(かつてのヘノッホ-シェーンライン紫斑病)などがある。嚢胞性線維症も危険因子である。

症状と徴候

腸重積症の初期症状は,15~20分間隔で繰り返す著明な仙痛性の腹痛として突然発症し,しばしば嘔吐を伴う。エピソード間では患児は比較的良好にみえる。その後,腸管虚血を来して持続痛になると,患児は嗜眠傾向となり,粘膜出血により直腸診で血性便を認めるようになり,ときにイチゴゼリー状の便が自然に排泄される。ただし,後者の症状は遅れて生じるため,腸重積症を疑ってこの症状の発生を待つべきではない。ソーセージ状と記載される腹部腫瘤がときに触知される。穿孔は腹膜炎徴候を引き起こし,有意な圧痛,筋性防御,および硬直も伴う。皮膚蒼白,頻脈,および発汗はショックを示唆する。

約5~10%の患児では仙痛様疼痛の時期がみられない。代わりに,薬物で麻痺したかのようにぐったりした様相を呈する(非典型的な臨床像ないし無関心な様相)。そのようなケースでは,イチゴゼリー状の便がみられるか,腹部腫瘤が触知されるまで,腸重積症が見逃されることが多い。

診断

  • 超音波検査

診断するには本症を強く疑わなければならず(特に非典型的な臨床像を呈する患児の場合),生存率および非観血的整復の可能性は時間経過とともに有意に低下するため,検査および介入を早急に行う必要がある。アプローチは臨床所見に依存する。腹膜炎徴候を認める患児には,輸液蘇生(fluid resuscitation),広域抗菌薬(例,アンピシリンとゲンタマイシンおよびクリンダマイシン;メトロニダゾールとセフォタキシムまたはピペラシリン-タゾバクタムのいずれか),経鼻胃管吸引,および手術が必要である。臨床的に安定している患児には,確定診断および治療のために画像検査が必要である。

バリウムによる注腸造影は,重責部周囲の古典的所見であるcoiled-spring appearanceを検出できることから,かつては最初の検査としてよく用いられていた。診断のみならず,通常は治療にもなる処置でもあり,バリウムの圧力によってしばしば嵌入部が整復された。しかしながら,ときに臨床的に予想されない穿孔を通してバリウムが腹膜に漏出し,重大な腹膜炎を引き起こすことがある。現在では,超音波検査が望ましい診断法となっており,施行が容易で,比較的安価で,かつ安全であり,特徴的所見はtarget signと呼ばれている。

パール&ピットフォール

  • 腸重積症を疑わせるイチゴゼリー状の便は遅れてみられるため,これを待っていてはならない。

治療

  • 空気注腸

  • 注腸により整復されない場合または穿孔がある場合は手術

腸重積症が確定した場合は,穿孔の可能性および影響を軽減できる空気注腸による整復を行う。重積部の整復は75~95%の患児で成功する。空気注腸により整復できた場合,一晩観察して潜在的な穿孔を除外する。整復できなかった場合または腸管が穿孔している場合は,直ちに手術を行う必要がある。

手術なしで整復できた場合,再発率は5~10%である。

要点

  • 腸重積症とは,腸管の一部が隣接部に嵌入した状態で,通常は3歳未満の小児にみられる。

  • 典型的には腹部仙痛および嘔吐がみられ,続いてイチゴゼリー状の便がみられる。

  • 診断は超音波検査により行う。

  • 治療は空気注腸による整復およびときに手術である。

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