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反ワクチン運動

執筆者:

Michael J. Smith

, MD, MSCE, Duke University

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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米国では,厳格なワクチン安全性システムが整備されているにもかかわらず,依然として多くの親が小児ワクチンの安全性や予防接種スケジュールについて懸念を抱いている。そのような懸念から,推奨される予防接種の一部しか子どもに受けさせない親や,予防接種を全く受けさせない親もいる。米国では,2006年に1%であった予防接種免除率が2011年には2%まで上昇し,6%の小児が免除を受けたと報告した州もあった。親が医学とは関係のない理由で少なくとも1つのワクチンを拒否した小児では,ワクチンで予防可能な疾患の発生率が高くなる。具体的には,そのような小児では,百日咳に123倍,水痘に28.6倍,肺炎球菌感染症に36.5倍罹患しやすくなる。米国の小児では,依然としてワクチンで予防可能な疾患による死亡例がみられる。42008には,ミネソタ州で侵襲性インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)b型感染症が5例発生し(1例は死亡),1992年以来最多の数字となった。感染した小児のうち3名(死亡例1名を含む)は,親が予防接種を延期または拒否したため,ワクチンの接種を受けていなかった。

ワクチンの延期や拒否は公衆衛生にも影響する。集団全体に対してある疾患の免疫をもった個人の割合(集団免疫)が低下すると,その疾患の有病率が上昇する結果,リスクのある人々においてその疾患が発生する可能性が高まる。リスクは以下の理由で高まることがある:

  • 過去に予防接種を受けたものの,ワクチンによって免疫が誘導されなかった(例,麻疹ワクチンの1回目の接種には接種者の2~5%が反応しない)。

  • 時間の経過とともに免疫が減弱することがある(例,高齢者)。

  • 易感染性患者の一部は生ウイルスワクチン(例,麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン,水痘ワクチン)の接種を受けられないため,その対象疾患の予防は集団免疫に依存している。

多くの理由から,親は子どもに予防接種を受けさせることを躊躇する。過去10年間で親たちが顕著に示した懸念は次の2つである:

  • ワクチンが原因で自閉症が生じるかもしれない。

  • 子どもが接種を受けるワクチンがあまりにも多すぎる。

  • 1Glanz JM, et al: Parental refusal of pertussis vaccination is associated with an increased risk of pertussis infection in children. Pediatrics 123(6):1446-1451, 2009.

  • 2Glanz JM, et al: Parental refusal of varicella vaccination and the associated risk of varicella infection in children. Arch Pediatr Adolesc Med 164(1):66-70, 2010.

  • 3Glanz JM, et al: Parental decline of pneumococcal vaccination and risk of pneumococcal related disease in children. Vaccine 29(5):994-999, 2011.

  • 4Invasive Haemophilus influenzae type B disease in five young children--Minnesota, 2008. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 58(3):58-60, 2009.

MMRワクチンと自閉症

1998年にAndrew WakefieldらがLancet誌で短報を発表した。その報告は発達障害と消化管症状がみられた小児12例に関するもので,うち9例には自閉症も認められた。報告によると,12例中8例では,症状出現前1カ月以内に麻疹・ムンプス・風疹混合(MMR)ワクチンの接種を受けたと,それぞれの親が主張していた。Wakefieldは,MMRワクチンに含まれる麻疹ウイルスが腸管に移行し,そこで炎症を引き起こした結果,タンパクが消化管から血流中へ移行し,さらに脳へ運ばれて自閉症を引き起こすという仮説を提唱した。この研究は世界中のメディアから大きな注目を集め,多くの親がMMRワクチンの安全性を疑うようになった。Wakefieldは別の研究で,自閉症の小児90名中75名の腸生検標本で麻疹ウイルスを認めたのに対し,対照患者70名では5名のみであったと主張し,この結果をもとに,MMRワクチンに含まれる生きた麻疹ウイルスが自閉症にいくらか関与したものと推測した。

Wakefieldの方法論は,因果関係というより時間的関連性のみを示すものであったため,多くの研究者がMMRワクチンと自閉症の関連の可能性について研究を行った。GerberとOffit1は,13以上の大規模疫学研究をレビューしたが,MMRワクチンと自閉症との関連を裏付けるものは1つもなかった。それらの研究の多くでは,MMRワクチンの接種に関する全国的な傾向と自閉症の診断に関する全国的な傾向との間に直接的な関連は認められないことが示されていた。例えば,英国では1988~1999年の期間中,MMRワクチンの接種率は変化しなかったが,自閉症の発生率は上昇していた。

他の研究では,MMRワクチンの接種を受けた小児と受けなかった小児を対象として,個人レベルで自閉症のリスクが比較された。それらのうち,最も規模が大きく最も注目を集めたMadsenら2による研究では,1991~1998年に出生したオランダ人の小児537,303名が対象となり,そのうち82%がMMRワクチンの接種を受けていた。考えられる交絡因子で調整した場合にも,接種者と非接種者の間で自閉症またはその他の自閉スペクトラム症の相対リスクに差は認められなかった。自閉症と自閉スペクトラム症を併せた発生率は,接種群で440,655例中608例(0.138%),非接種群で96,648例中130例(0.135%)であった。全世界から報告されたその他の集団ベース研究でも,同様の結論に達した。

自閉症児の腸生検標本で麻疹ウイルスの検出率が高かったとするWakefieldの報告を受けて,Hornigら3は消化管症状があって大腸内視鏡検査を受けた小児38名の生検標本で麻疹ウイルスの有無を検討した;25名は自閉症児で,13例は自閉症児ではなかった。麻疹ウイルスの検出頻度は,自閉症のない小児より自閉症児の方が高いということはなかった。

  • 1Gerber JS, Offit PA: Vaccines and autism: A tale of shifting hypotheses, Clin Infect Dis 48(4):456-61, 2009.

  • 2Madsen KM, et al: A population-based study of measles, mumps, and rubella vaccination and autism. N Engl J Med 347(19):1477-82, 2002.

  • 3Hornig M, et al: Lack of association between measles virus vaccine and autism with enteropathy: A case-control study. PLoS ONE, 3(9):e3140, 2008.

チメロサールと自閉症

チメロサールは,かつて複数回使用バイアルで供給される多くのワクチン製剤に防腐剤として使用されていた水銀化合物であるが,防腐剤は単回使用バイアルでは不要であり,また生ウイルスワクチンには使用できない。チメロサールはエチル水銀に代謝され,エチル水銀は速やかに排泄される。環境中のメチル水銀(体内に入ると速やかに排泄されない別の化合物)はヒトに対して毒性を示すことから,ワクチンに使用されるごく少量のチメロサールが小児の神経学的な問題,特に自閉症を引き起こすかもしれないという懸念があった。このような理論上の懸念のため,有害性のエビデンスを示した研究は一切なかったにもかかわらず,チメロサールは2001年までに米国,欧州,その他の数カ国でルーチンの小児ワクチンから排除された。ただし,これらの国々でも,特定のインフルエンザワクチンと他のいくつかの成人用ワクチンには,チメロサールが引き続き使用されている(Thimerosal Content in Some US Licensed Vaccinesを参照のこと)。また,チメロサールは発展途上国で製造される多数のワクチンにも使用されているが,ルーチンの使用に起因した毒性に関する臨床的なエビデンスはないことから,World Health Organization(WHO:世界保健機関)はチメロサールの排除を勧告していない。

チメロサールが排除されてからも自閉症の発生率は上昇を続けていることから,ワクチン中のチメロサールは自閉症を引き起こさないことが強く示唆される。また,Vaccine Safety Datalink(VSD)による2つの独立した研究では,チメロサールと自閉症の間に関連はないと結論されている。3つのマネージドケア組織(MCO)の小児124,170名を対象としたVerstraetenら1によるコホート研究では,チメロサールと自閉症またはその他の発達上の障害との間に関連は認められなかったが,チメロサールと特定の言語障害との間に一貫性のない関連が認められた(1つのMCOでは認められたが,別のMCOでは認められなかった)。小児1,000名(自閉スペクトラム症の症例256例と自閉症のない対応対照752例)を対象としたPriceら2による症例対照研究では,回帰分析の結果,チメロサールへの曝露と自閉症との間に関連は認められなかった。

インフルエンザワクチンに含まれるチメロサールについて親が依然として懸念を抱いている場合は,単回使用バイアルの製剤か弱毒生インフルエンザワクチンを使用することで対処できる;これらはいずれもメロサールを含有しない。

  • 1Verstraeten T, et al: Safety of thimerosal-containing vaccines: A two-phased study of computerized health maintenance organization databases. Pediatrics 112:1039-1048, 2003.

  • 2Price CS, et al: Prenatal and infant exposure to thimerosal from vaccines and immunoglobulins and risk of autism. Pediatrics 126(4):656-664, 2010.

複数のワクチンの同時接種

1990年代後期に実施された全国調査により,全ての親の4分の1近くが,自身の子どもは必要以上に予防接種を受けていると考えていたことが示された。それ以降も予防接種スケジュールに新たなワクチンが追加されたことで,現在では6歳までに15種類の感染症に対するワクチンをそれぞれ複数回接種するように推奨されている( 0~6歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュール)。注射および来院の回数を最小限に抑えるため,多くのワクチンが混合製剤として接種されている(例,ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン,麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン)。しかしながら,小児(特に乳児)の免疫系では複数の抗原を同時に提示しても処理できない可能性を懸念する親が増えてきている。このような懸念から,特定のワクチンを延期したり,ときには完全に排除したりする別の予防接種スケジュールを希望する親もみられるようになっている。最近の全国調査によると,13%の親がそのようなスケジュールを採用している。

代替スケジュールの採用はリスクを伴い,また科学的根拠もない。正式なスケジュールは,小児の感受性が最も高まる時期に各疾患を予防できるように設計されている。予防接種を延期すれば,そのような疾患に罹患するリスクのある期間が延長することになる。さらに,親は予防接種の延期のみを予定しているかもしれないが,代替スケジュールに必要な来院回数の増加によって遵守が困難となり,一連のワクチン接種を完了できないリスクがさらに増大する。免疫学的問題に関して,ワクチンに含まれている抗原の量および数は日常生活で遭遇するものと比べて極めて少ないことを親に知らせるべきである。また乳児の免疫系は,出生時でさえ,産道を通過する際や(無菌でない)母親が触れる際に乳児が曝される何百もの抗原に反応する準備が整っている。典型的には,小児は日常生活を通して数十からおそらくは数百の抗原に遭遇し,問題なく免疫学的に反応する。1つの微生物による典型的な感染では,その微生物の複数の抗原に対する免疫応答が刺激される(典型的な上気道感染症[URI]でおそらく4~10の抗原)。さらに,現在のワクチンは全体として含有する抗原の種類が少ないことから(すなわち,主要な抗原が適切に同定され,精製されているため),小児が曝されるワクチン抗原は,20世紀の大半にわたり接種されていたワクチンのそれより少なくなっている。

以上のように,代替スケジュールはエビデンスに基づくものではなく,小児における感染症のリスクを増大させる。さらに重要なことに,何の利点もない。VSDのデータを用いた研究で,SmithおよびWoods1は,全てのワクチンを予定通りに受けた小児とそれ以外の小児を対象として,神経発達の転帰を比較した。接種に遅延があった小児では,42項目の転帰の全てが良好ではなかった。この結果は,子どもがあまりに多くのワクチンをあまりに早く受けているのではないかと心配する親を安心させるはずである。

  • 1Smith MJ, Woods CR: On-time vaccine receipt in the first year does not adversely affect neuropsychological outcomes. Pediatrics 125(6)1134 -1141, 2010.

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