骨硬化症

執筆者:Frank Pessler, MD, PhD, Helmholtz Centre for Infection Research
レビュー/改訂 2020年 10月
意見 同じトピックページ はこちら

    骨硬化症は,骨格形成障害をほとんど伴わずに骨の異常な硬化および骨密度の増加を来す大理石骨病の一種である;一部の病型では,髄腔への骨の侵入が血球減少を引き起こす。

    遅発性の大理石骨病(Albers-Schönberg病)

    大理石骨病のこの病型は常染色体優性であり,小児期,青年期,または若年成人期に顕在化する。早発性の大理石骨病より軽度である。欠損するCLCN7遺伝子は,破骨細胞の機能で明らかに重要な塩素イオンチャネルをコードする。この病型は比較的よくみられ,地理的,民族的分布が広い。患者は無症状のことがあり,通常,全体的健康状態は損なわれていない。しかし,脳神経の絞扼のため,顔面神経麻痺および難聴が起こることがある。骨の過成長により髄腔が狭小化し,血球減少(貧血から汎血球減少まで幅がある)を引き起こすことがある。髄外造血が起こって肝脾腫を来すことがあり,その結果起こる脾機能亢進により貧血が悪化することがある。

    骨格は通常,出生時はX線上正常である。しかし,骨硬化は小児の年齢が進むにつれてますます明白になり,関係のない理由で行ったX線に基づいて診断されるのが通例である。骨病変は広範囲であるが,斑状である。頭蓋冠は濃く,洞が消えていることがある。椎体終板の硬化により,特徴的なラグビーシャツの様相(水平な帯状模様)を呈する。

    一部の患者には,貧血を治療するために輸血または脾臓摘出が必要である。

    早発性の大理石骨病

    この型の大理石骨病は,常染色体劣性,悪性,かつ先天性であり,乳児期に出現する。一般的ではなく,しばしば致死性で,破骨細胞関連遺伝子TCIRG1の変異が原因であることが多い。骨の過成長により進行性に髄腔が閉塞し,重度の汎血球減少が生じる。早発性の大理石骨病の初期の症状としては,発育不良,自然にできる皮下出血,異常出血,貧血などがある。第2,第3,第7脳神経の麻痺および肝脾腫がその後起こる。骨髄不全(貧血,重症の感染症,または出血)により,通常生後1年以内に死亡する。

    貧血,異常な出血,および発育不良がある状況で骨の過成長があれば早発性の大理石骨病の診断を疑う。典型的には,血算および凝固検査とともに単純X線を行う。全身の骨密度の上昇がX線上の主な特徴である。長管骨を透過するX線は,骨幹端部を横行する帯および骨幹を縦走する線条を示す。疾患が進行するにつれ,長管骨の端部(特に上腕骨近位端および大腿骨遠位端)がフラスコ型となる。脊椎,骨盤,および管状骨に,特徴的な内部骨(endobone[骨内部の骨])が形成される。頭蓋骨が肥厚し,脊椎はラグビーシャツの様相を呈する。

    ヒト白血球抗原(HLA)が合致する同胞からの骨髄移植が良好な治療結果を残している。しかし,HLA不適合の移植片では予後は不良である。一部の症例ではプレドニゾン,カルシトリオール,およびインターフェロンγが効果的である。

    尿細管性アシドーシスを伴う大理石骨病

    この型の大理石骨病は常染色体劣性である。この遺伝子の異常には炭酸脱水酵素II型をコードする遺伝子の変異が含まれる。筋力低下,低身長,および発育不良を引き起こす。

    X線上で骨が濃く見え,脳内石灰化がみられる;尿細管性アシドーシスがみられ,赤血球の炭酸脱水酵素活性が低下する。

    骨髄移植により大理石骨病は治癒するが,尿細管性アシドーシスに対する効果はない。維持療法は,腎性の喪失を是正するための重炭酸塩および電解質の補給から成る。

    濃化異骨症

    この常染色体劣性遺伝疾患は,カテプシンK(細胞外の骨基質の分解に重要な破骨細胞由来プロテアーゼ)をコードする遺伝子の機能喪失変異によって起こる。幼児期に低身長が明白になり,成人身長は150cm以下である。その他の症状としては,頭蓋の拡大,短く幅の広い手足,短く硬化した末端の指節骨,爪の萎縮,乳歯残存などがある。青色強膜(結合組織の欠損に起因し,下にある血管が透見される)が通常乳児期に認められる。患者は互いによく似ている;小さな顔,下顎の後退がみられ,齲歯があり,歯並びが悪い。頭蓋が隆起し,大泉門は開存したままである。病的骨折が濃化異骨症の合併症である。

    濃化異骨症における臨床像
    濃化異骨症(下顎の後退)
    濃化異骨症(下顎の後退)
    この写真には,濃化異骨症の男児における下顎の後退が写っている。

    © Springer Science+Business Media

    濃化異骨症(手)
    濃化異骨症(手)
    この写真には,濃化異骨症の男性における短く幅の広い手と末節骨の形成不全(特に母指)が写っている。

    © Springer Science+Business Media

    骨形成不全症(青色強膜)
    骨形成不全症(青色強膜)
    この写真は,青色強膜(通常は白色)を認める眼の拡大像である。

    JAMES STEVENSON/SCIENCE PHOTO LIBRARY

    濃化異骨症の診断は,青色強膜,低身長,および特徴的な骨格がみられることにより疑う。典型的には,単純X線を施行する。小児期にX線上で骨硬化がみられるが,骨の線条および内部骨(endobone)(骨内の骨)はどちらもみられない。顔面骨および副鼻腔が低形成で,下顎角は鈍角である。鎖骨が細いことがあり,その外側部は発育が不良な可能性がある;末節骨が未発達である。

    顔面および顎の重度の変形を矯正するために形成手術が行われている。

    quizzes_lightbulb_red
    Test your KnowledgeTake a Quiz!
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS