小児の便失禁

(遺糞症)

執筆者:Matthew D. Di Guglielmo, MD, PhD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
Reviewed ByAlicia R. Pekarsky, MD, State University of New York Upstate Medical University, Upstate Golisano Children's Hospital
レビュー/改訂 修正済み 2024年 11月
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便失禁とは,4歳(または発達水準で4歳相当)以上の小児において,不適切な場所で随意的または不随意的な排便がみられることである。診断は臨床的に行う。治療は教育,宿便の軽減,適切な排便の維持,ならびに行動面および食事面の継続的介入による。

遺糞症は小児期によくみられる問題であり,4歳児の2~5%にみられ,年齢とともに減少していく。

遺糞症は注意と介入を必要とする状態であり,心配はないと伝えて経過を観察するだけでは不十分である。この状態は患児と家族の双方に有害となる可能性があり,また医療財政的にも有害となりうる(1)。

総論の参考文献

  1. 1.Stephens JR, Steiner MJ, DeJong N, et al.Healthcare Utilization and Spending for Constipation in Children With Versus Without Complex Chronic Conditions. J Pediatr Gastroenterol Nutr.2017;64(1):31-36.doi:10.1097/MPG.0000000000001210

小児における便失禁の病因

遺糞症は,行動的素因や身体的素因のある小児において排便を我慢することによる便秘が原因で発生する場合が最も多い。便の貯留または便秘がない場合はまれにしか起こらないが,遺糞症がある場合は,他の器質的原因(例,ヒルシュスプルング病セリアック病)または心理的問題を考慮すべきである。

小児における便失禁の病態生理

便の貯留と便秘により直腸およびS状結腸が拡張することで,腸壁(特に直腸)の筋の反応性と神経の感受性が変化する。それらの変化により腸管の排泄機能が低下し,さらなる便貯留につながる。

便が腸管内にとどまるにつれ,結腸で水分が吸収されて硬くなることで,排便がさらに困難になり,痛みを伴うようになる。硬化した便塊の周囲から軟便が漏れて,溢流が起こることもある。直腸感受性に対する影響のため,患児自身が溢流をコントロールすることは通常できない。

こうした漏出と腸管のコントロール不良の両方が便失禁につながっている。

小児における便失禁の診断

  • 臨床的評価

便秘の器質的原因(1)はいずれも遺糞症につながる可能性がある。

遺糞症の大半の症例は,徹底的な病歴聴取と身体診察で診断することができる。一方,明確な診断が得られない場合には,追加検査(例,腹部X線,まれに直腸壁生検,さらにまれに腸管蠕動の検査)を考慮してよい(1)。

患児が協力的なら,直腸指診が他疾患の除外に有用となりうる。

期間が長い症例や合併症のある症例では,直腸肛門内圧検査が正確な診断の助けになる可能性がある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Tabbers MM, DiLorenzo C, Berger MY, et al.Evaluation and treatment of functional constipation in infants and children: evidence-based recommendations from ESPGHAN and NASPGHAN. J Pediatr Gastroenterol Nutr.2014;58(2):258-274.doi:10.1097/MPG.0000000000000266

小児における便失禁の治療

  • 教育および啓発(養育者と小児が対象)

  • 宿便の軽減

  • 維持(例,行動および食事介入,緩下薬)

  • 行動面および食事面の介入を継続しつつ,緩下薬を徐々に中止する

基礎疾患があれば治療する。基礎に特異的な病理がなければ症状に対処する。

最初の治療としては,養育者と小児に対する遺糞症の生理に関する教育,小児が抱いている自責感の解消,および当事者の感情的な反応の沈静化を図る。遺糞症の治療とその解消には長期的な努力が必要になる場合があり,具体的には,継続的に注意を払い,継続的な介入と小児科医または専門医によるフォローアップが必要になるということを,養育者に明確に伝えておくべきである(1)。

宿便が軽快した後の治療においては,家族の教育,水分および食物繊維の摂取強化,腸管の状態維持,ならびに行動面の継続的な対策および支援が中心となる(2)。

宿便

宿便の解除には,経口治療のみ,経口治療とその後の経直腸治療,または経直腸治療とその後の経口治療が必要になる。緩下薬の投与だけで済み,浣腸や坐薬は必要にならない場合もある。

宿便は様々なレジメンや薬剤(の表を参照)で軽減することができるが,その選択は小児の年齢とその他の要因に依存する。ポリエチレングリコール(PEG)電解質液をときに刺激性下剤(例,ビサコジル,センナ)と併用する治療法,または食塩水の浣腸に続いて経口薬(例,ビサコジル錠)と坐薬を2週間投与するレジメンがしばしば用いられる。一部の施設では小児に生理食塩水の浣腸が用いられている。

宿便が解除されたら,フォローアップ受診を行って,治療レジメンが奏効したかどうかを判定し,便失禁がなくなったことを確認するとともに,維持計画を立てるべきである。この計画には,規則的な排便の維持(通常は浸透圧性/潤滑性下剤の継続による)を奨励することと,便の排出を促すための行動面の介入が含まれる。緩下薬による維持療法には多くの選択肢があるが(の表を参照),電解質を含有しないPEG製剤が最も頻用されており,一定の効果(例,やや軟らかい便が1日1~2回)が得られる水準まで用量を調整する。ときに,刺激性下剤を週末に継続し,さらに便の排出を促してもよい。

行動面の対策

行動面の介入戦略としては,秩序立ててトイレに座る時間を定める方法(例,胃結腸反射を利用するために毎食後5~10分間トイレに座らせる)がある。日中の特定の時間に便失禁がある場合は,その時間の直前にトイレに座らせるべきである。

小さな報酬がしばしば有用な動機づけとなる。例えば,トイレに座る毎に(排便がなかった場合でも)シールを与えて表に貼らせることにより,計画に従うようになる。しばしば段階的なプログラムが用いられ,そこではトイレに座れば小さなトークン(シールなどご褒美になるもの)を与え,継続して続けられれば大きな報酬(例,公園へのお出かけ)を与える。治療計画に対する小児の関心を維持するため,報酬を経時的に変更することが必要になる場合がある。

養育者主導の方法が不成功に終わる場合は,遺糞症の小児の治療経験を豊富にもつ行動療法士または児童心理士への紹介が必要になることがある。これらの専門家は,尿失禁や便失禁に苛立っている養育者に対して,小児に罰を与えたり,改善の欠如や改善後の退行に失望を示したりしないようにすることを強く推奨する。行動療法士や児童心理士はまた,過度に肯定的な賞賛を与えないようにも養育者を指導し,小児の達成度に応じた相応の賞賛と中立的なフィードバックを与えることの重要性を強調する。

維持期

維持期には,便意を覚える前に排便を促すために規則的にトイレに座らせることがなお必要である。この戦略により便の貯留が起こる可能性が減って,直腸の大きさが正常に戻り,結果として筋の反応性と神経の感受性が改善される。維持期の間は,トイレに座ることがどのように治療レジメンの成功につながるかについて,医師が養育者と小児を教育すべきである。

指導および支援を継続させるには定期的なフォローアップ受診が必要である。排便の再訓練は数カ月から数年を要する長期のプロセスであり,症状が一旦消失したなら緩下薬を徐々に中止することや,トイレに座らせることの継続的な奨励などが含まれる。維持レジメンの中止過程でしばしば再燃がみられるため,維持期の間も継続的に支援と指導を提供していくことが重要である。

ストレスまたは変化がある状況では遺糞症が再発する可能性があるため,家族は再発の可能性に対して備えておかなければならない。成功率は身体的および心理社会的因子の影響を受けるが(3),1年治癒率は最大50%,5年治癒率は約50%,10年治癒率は約80%である(4)。医師も家族も同様に,排便我慢のない遺糞症の遅発型再発に注意すべきであり,さらなる評価を考慮すべきである(5)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Loening-Baucke V, Swidsinski A: Treatment of functional constipation and fecal incontinence.In Pediatric Incontinence, Evaluation and Clinical Management, edited by Franco I, Austin P, Bauer S, von Gontard A, Homsy I.Chichester, John Wiley & Sons Ltd., 2015, pp.163–170.

  2. 2.Freeman KA, Riley A, Duke DC, Fu R.Systematic review and meta-analysis of behavioral interventions for fecal incontinence with constipation. J Pediatr Psychol.2014;39(8):887-902.doi:10.1093/jpepsy/jsu039

  3. 3.Call NA, Mevers JL, McElhanon BO, Scheithauer MC.A multidisciplinary treatment for encopresis in children with developmental disabilities. J Appl Behav Anal.2017;50(2):332-344.doi:10.1002/jaba.379

  4. 4.Tabbers MM, DiLorenzo C, Berger MY, et al.Evaluation and treatment of functional constipation in infants and children: Evidence-based recommendations from ESPGHAN and NASPGHAN. J Pediatr Gastroenterol Nutr.2014;58(2):258–274.doi:10.1097/MPG.0000000000000266

  5. 5.Koppen IJ, von Gontard A, Chase J, et al.Management of functional nonretentive fecal incontinence in children: Recommendations from the International Children's Continence Society. J Pediatr Urol.2016;12(1):56-64.doi:10.1016/j.jpurol.2015.09.008

要点

  • 遺糞症は,しばしば行動的素因と身体的素因が重複した小児において排便を我慢することによる便秘が原因で発生する場合が最も多い。

  • 遺糞症の大半の症例は,徹底的な病歴聴取と身体診察で診断することができる。

  • 便秘の器質的原因はいずれも遺糞症につながる可能性がある。

  • 治療は,徹底した教育,宿便の軽減,適切な排便の維持のほか,行動面および食事面の介入を継続しつつ,緩下薬を徐々に中止することによる。

  • 宿便は様々なレジメンや薬剤で軽減することができる。

  • 行動面の介入戦略として,時間を決めてトイレに座らせる習慣付けがあり,直接的な行動療法が多くの小児にとって有益である。

  • ストレスまたは変化がある状況では遺糞症が再発する可能性があるため,家族は再発の可能性に対して備えておかなければならない。

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