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読字障害

執筆者:

Stephen Brian Sulkes

, MD, Golisano Children’s Hospital at Strong, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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読字障害(dyslexia)とは,一次性の読みの障害を総称する用語である。診断は知能的,教育的,言語的,内科的,心理学的評価に基づく。治療は主として教育的管理であり,単語の認識およびコンポーネント技能の指導で構成される。

読字障害は学習障害の具体的な病型である。学習障害は,読み,計算,綴り,書字表現または文字の手書き,言語性および非言語性コミュニケーションなどの問題にまつわるものである( 限局性学習障害で頻度の高いもの)。

読字障害には普遍的な定義が存在せず,したがって発生率は不明である。公立学校に通う小児の約15%が読みの問題のために特別指導を受けていると推定され,さらにその2分の1が読みの持続的能力障害をもつとされている。読字障害は女児よりも男児で多く同定されるが,性別が読字障害発症の危険因子であると証明されているわけではない。

印字された言語の派生的ルールを学習できないことも,しばしば読字障害の一部とみなされる。この障害をもつ小児では,語根または語幹を見分けることや単語中のどの文字が他の文字に続くのかを決定することが困難となる。

読字障害以外の読みの問題は通常,言語理解の困難または認知能力の低さが原因である。視知覚の問題や眼球運動の異常は読字障害には含まれない。しかしながら,これらの問題が単語の学習をさらに困難にすることがある。

病因

現在では,視覚よりむしろ聴覚の問題が読字障害の主要な原因と考えられている。音韻処理の問題により,音の弁別,混合,記憶,および分析に障害が生じる。読字障害では書き言葉の産出と理解の両方が障害されうるが,これらの機能は聴覚記憶,話し言葉の産出,呼称または喚語などの問題によって,さらに制限されることが多い。しばしば基礎に口頭言語の弱さが存在することがある。

病態生理

読字障害は家系内で受け継がれる傾向がある。読みまたは学習困難の家族歴がある小児ではリスクが高くなる。読字障害の人々の脳に変化が同定されてきたという経緯から,専門家の間では,読字障害は主に先天性の神経発達異常に起因する皮質の機能障害の結果として生じると考えられている。特定の脳機能の統合または相互作用を障害する病変が疑われている。また,読字障害は左脳との関係が深く,言語連合を司る脳領域(ウェルニッケ運動言語野),音声産出を司る領域(ブローカ運動言語野),および弓状束を介したこれらの領域間の相互連絡における機能障害に関連するという見解があり,大半の研究者からの支持を受けている。角回,正中後頭領域,および右脳に機能障害または欠損があると,単語の再認に問題が生じる。研究では,脳系統には訓練に反応するいくらかの柔軟性のあることが示唆されている。

脳の領域

脳の領域

症状と徴候

読字障害は以下のような形で現れる:

  • 言語産出の遅れ

  • 構音の困難

  • 文字,数字,および色の名前の記憶困難

音韻処理に問題をもつ小児は,しばしば音の混合,押韻,単語内での音の位置の同定,発音可能な要素への単語の分解に困難を有する。そのような小児では,単語内で音の順序を反転させることがある。単語選択,単語の置換,または文字および絵の呼称における遅れまたは躊躇は,その早期徴候であることが多い。短期聴覚記憶および聴覚連続処理における困難も多くみられる。

読字障害児の20%弱に,読みにおける視覚的要求の困難がみられる。しかしながら,形態の類似した文字および単語の混同や,単語内での文字パターンおよび文字群(音と記号の連合)の視覚的選択または同定の困難がみられる小児もいる。反転または視覚的混同は,ほとんどの場合,保持または再生の困難が原因であり,構造が類似した文字および単語の名前を忘れたり混同したりすることにつながる;これによりdbに,mwに,hnに,wassawに,onnoになる。ただし,このような反転は8歳未満の小児では正常な現象である。

読字障害は生涯にわたる問題であるが,多くの患児が機能的水準の読みの技能を発達させている。しかしながら,十分な識字水準までの到達が不可能である場合もある。

診断

  • 読みの評価

  • 発語,言語,および聴覚の評価

  • 心理学的評価

読字障害の大部分は,幼稚園または小学校1年時の,記号を用いる学習に直面する時期になって初めて同定される。言語獲得または使用の遅れの経歴がある小児で,小学校1年時の終わりまで単語学習の加速がみられない場合,またはどの学年であっても口頭言語能力または知的能力から予測される水準での読みができない場合は,評価を行うべきである。小学校1年時において古典的または典型的な読みのアプローチに小児が反応できないことが,しばしば最良の診断指標となるが,この水準における読解技能には大きな変動がみられることがある。音韻処理の問題の証明は診断に不可欠である。

読字障害が疑われる小児では,読み,発話・言語,聴覚,認知,および心理面の評価を実施して,機能的な長所および短所と学習様式の好みを特定するべきである。主要な米国特別教育法の1つであるIndividuals with Disabilities Education Act(IDEA)に基づき,教師または家族は,これらの評価を学校職員に要請できることになっている。その後は,この評価所見により最も効果的な指導的アプローチが選択される。

総合的な読みの評価では,単語の認識および分析,流暢性,読みまたは聴きの理解,ならびに語彙の理解度および読みの過程が検査される。

言語および聴覚の評価では,発話の評価と,話し言葉での音素(音の要素)の処理における障害の評価が行われる。受容性および表出性言語機能も評価される。認知能力(例,注意,記憶,推理)に関する試験も行われる。

心理学的評価では,読字障害を増悪させかねない感情面の問題点に的を絞る。精神障害および情緒面の問題の完全な家族歴を聴取する。

小児の視覚および聴覚が正常であることを確かめるべきであるが,その際には診察室でスクリーニング検査を実施してもよいし,正式な聴覚または視覚検査に紹介してもよい。神経学的評価は,二次的に生じる特徴(例,神経発達の未熟または微小な神経学的異常)の検出および他の障害(例,痙攣発作)の除外に役立つ。

治療

  • 教育的介入

治療は教育的介入で構成され,単語の認識およびコンポーネント技能の直接的および間接的指導などが行われる。

直接的指導では,他の読みの指導とは独立して,特定の音声技能の教育を行う。間接的指導には,読みの指導計画への音声技能の導入が含まれる。指導では,単語全体または言語全体からのアプローチか,または音の構成要素から単語,文へと至る技能の階層を追いながらの方法で,読みを教えていく。その後は,単語全体の学習ならびに,音,単語,文の視覚的,聴覚的,触覚的な教示方法の統合を含む,多重感覚アプローチが推奨される。

コンポーネント技能の指導では,音を混合して単語を作ること,単語を部分に分けること,そして単語中の音の位置を確認することを教示する。読解のためのコンポーネント技能には,主題の同定,質問への回答,事実と細部の区別,推論しながらの読みなどが含まれる。テキストサンプル内の単語の区別の支援や,手書き書類の文書化などにコンピュータを使用することが,多くの患児にとって有益である。

オーディオブックの使用やデジタルレコーダーによるメモ取りなど補完的戦略は,小学校高学年の小児が読字技能を構築し続けつつ内容を習得するのに役立つ可能性がある。

その他の治療法(例,視機能訓練,知覚訓練,聴覚統合訓練)および薬物療法は実証されておらず推奨されない。

要点

  • 読字障害では,読みの困難に加えて書き言葉の産出および理解が障害され,さらに聴覚記憶,話し言葉の産出,呼称または喚語などにも問題がみられることがある。

  • 読字障害はおそらく,脳左半球のうち言語連合,音声産出,これらの相互連絡を担う領域が単独または複合的に障害される先天性の神経発達異常によって発生する。

  • 患児には言語産出の遅れがみられるが,ときに小学校低学年での一般的な読みの指導で効果がみられないことが最初の徴候となる。

  • 認知障害,精神障害,聴覚障害,および視覚障害を除外する。

  • 様々な教育的介入が用いられる。

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