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自閉スペクトラム症

執筆者:

Stephen Brian Sulkes

, MD, Golisano Children’s Hospital at Strong, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2016年 2月
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自閉スペクトラム症とは,社会的交流およびコミュニケーションの障害,反復常同的な行動様式,ならびにしばしば知的能力障害を伴う不均一な知的発達を特徴とする,神経発達障害の1つである。症状は小児期早期に始まる。患児の大部分においてその原因は不明であるが,エビデンスから遺伝的要素の存在が支持されており,また一部の患者では,何らかの内科的病態によって自閉症が引き起こされることもある。診断は発達歴および観察に基づく。治療は行動管理であり,ときに薬物療法も行われる。

自閉症スペクトラム症は,神経発達の正常標準との相違のうち,神経発達の病的異常と考えられる境界不明瞭な一定の範疇を指す。神経発達障害とは,小児期早期,典型的には就学前に現れる神経学的病態で,対人関係機能,社会的機能,学業能力,および/または職業的機能の発達が障害を受ける。一般的に,特定の技能または情報の獲得,保持,応用に困難を伴う。神経発達障害は,注意,記憶,知覚,言語,問題解決,社会的交流などの機能障害を伴うことがある。その他のよくみられる神経発達障害として,注意欠如・多動症学習障害(例,読字障害),および知的能力障害などがある。

自閉スペクトラム症の最新の推定有病率は米国で1/68の範囲であり,他の国々でも同程度の範囲である。自閉症は男児において約4倍の頻度で発生する。近年,自閉スペクトラム症の診断は急速に進歩を遂げたが,これは特に診断基準の変更によるところが大きい。

病因

自閉スペクトラム症症例の大半における具体的な原因はいまだ解明されていない。しかしながら,先天性風疹症候群巨細胞封入体症フェニルケトン尿症,または脆弱X症候群を合併する症例も存在する。

遺伝的要素の存在は強固なエビデンスによって裏付けられている。自閉スペクトラム症の子どもをもつ親では,以降の児が自閉スペクトラム症を有するリスクが50~100倍高い。また自閉症は,一卵性双生児における一致率が高い。複数の家系を対象とした研究から標的遺伝子領域の候補がいくつか示唆されており,それらには神経伝達物質受容体(セロトニンおよびγ-アミノ酪酸[GABA])や中枢神経系の構造制御(HOX遺伝子)と関係する領域が含まれている。 環境的な原因が疑われているが,証明されてはいない。予防接種は自閉症を引き起こさないという強固なエビデンスがあり,この関連性を示唆した主要研究は著者がデータを不正に操作したため撤回された(MMRワクチンと自閉症も参照のこと)。

自閉スペクトラム症の病因の大部分の基礎には,脳の構造および機能の違いがあると考えられている。自閉スペクトラム症の小児の中には,脳室拡大のあるもの,小脳虫部の低形成のあるもの,脳幹核に異常のあるものも存在する。

症状と徴候

自閉スペクトラム症は,生後1年以内に発症する可能性があるが,症状の程度によって,学齢期まで診断が明らかでないことがある。

自閉スペクトラム症を特徴づける2つの主な特徴

  • 社会的コミュニケーションおよび交流における持続的障害

  • 限定された様式の行動,興味,および/または活動の繰り返し

この両方の特徴が若年で認められ(その時点では認識されないこともあるが),家庭,学校,その他の状況で小児の機能を著しく妨げるほど重度であることが必要である。症状は,患児の発達水準および個々の文化における基準に照らして予測されるよりも甚だしいものでなければならない。

社会的コミュニケーションおよび交流における障害の例として以下のようなものがある:

  • 社会的および/または情緒的相互関係の障害(例,社会的交流または会話を開始できない,またはそれに反応できない,共感できない)

  • 非言語性社会的コミュニケーションの障害(例, 他者のボディランゲージ,ジェスチャー,および表現を理解するのが困難で,表情ならびにジェスチャーおよび/またはアイコンタクトが乏しい)

  • 対人関係の発達および維持(例,友人をつくる,様々な状況に適応した行動をとる)の障害

親が気付く最初の症状は,言語発達遅延および親または一般的な遊戯に対する関心の欠如である。

限定的な行動,関心,および/または活動パターンの繰り返しの例として以下のようなものがある:

  • 常同的または反復的な動作または話し方(例,繰り返し手をたたくまたは指をはじく,奇異な語句を繰り返すまたは聞いた言葉をすぐに反復する[反響言語],おもちゃを並べる)

  • 日常動作および/または儀式的行動への融通の効かない執着(例,食事または衣服の小さな変化に過度のストレスを感じる,常同的な挨拶の儀式)

  • 極めて限定的で,固定された関心が異常に強力である(例,掃除機に固執する,児童では飛行機の運航スケジュールを書き出す)

  • 感覚入力に対する過度の敏感性または鈍感性(例,特定の匂い,味,または触感への過度の嫌悪;痛みまたは温度に関心がない様子)

自傷行為を行う患児もある。約25%の患児は,それまでに獲得した技能の喪失(記録されているものに限る)を経験する。

自閉スペクトラム症の全ての患児において交流,行動,およびコミュニケーションに少なくともある程度の困難がみられるが,問題の重症度は大幅に異なる。

現在の仮説では,自閉スペクトラム症における基本的な問題は「精神的盲目(mind blindness)」,すなわち他者の考えを想像することができない状態であるとされている。この問題により交流関係の異常が生じ,さらに言語発達の異常に至ると考えられる。最も早期に確認でき,最も感度の高い自閉症の指標の1つに,コミュニケーションのための遠くの物体の指差しが1歳時にできないというものがある。それらの小児は指し示されている物を他者が理解するということを想像できないと考えられており,その代わりに,欲しい物に実際に触れるか大人の手を道具として使用することによって,欲しい物を明示しようとする。

併存症がよくみられ,特に知的能力障害および学習障害が多い。非局所的な神経学的所見として,協調不良の歩行や常同運動などがみられる。これらの小児の20~40%で痙攣発作が発生する(特にIQ 50未満の患児)。

診断

  • 臨床的評価

診断はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition (DSM-5)の基準に基づいて臨床的に行われ,通常は社会的交流およびコミュニケーションの障害を示す所見に加え,2つ以上の限定的な常同行動または興味の存在が必要とされる。自閉スペクトラム症の症候は,その範囲および重症度に大きな幅があるが,アスペルガー症候群,小児期崩壊性障害,および広汎性発達障害などの以前の分類は自閉スペクトラム症に包含され,もはや鑑別されない。

スクリーニング検査には,Social Communication QuestionnaireやModified Checklist for Autism in Toddlers(M-CHAT-R)などがある。M-CHATはインターネット上で利用可能である(online)。American Academy of NeurologyのおよびAmerican Academy of PediatricsのIdentification and Evaluation of Children with Autism Spectrum Disordersも参照のこと。 通常はDSM-5の基準に基づくAutism Diagnostic Observation Schedule-2(ADOS-2)などの正式な標準的診断検査が,心理士または発達行動面の問題を専門とする小児科医によって行われる。自閉スペクトラム症の小児の検査は困難であるが,IQ検査では言語性項目よりも動作性項目の成績が良好となることが多く,ほとんどの領域で認知機能障害があるにもかかわらず年齢相応の成績を示すことがある。とはいえ,自閉スペクトラム症の信頼性の高い診断がより年少の段階で可能となってきている。熟練の検者が施行したIQ検査からは,しばしば転帰を予測するのに有用な情報を得ることができる。

治療

  • 行動療法

  • 言語療法

  • ときに理学療法および作業療法

  • 薬物療法

集学的治療が行われるのが通常であり,最近の研究からも,交流および意味のあるコミュニケーションを促進する,行動に基づいた集中的アプローチにある程度の効果があることがわかっている。心理士および教育者は,典型例ではまず行動分析に重点を置き,続いて家庭および学校でみられる具体的な行動上の問題に応じて,行動管理の戦略を決定していく。American Academy of Pediatricsの Management of Children with Autism Spectrum Disordersも参照。

言語療法は早期に開始すべきであり,サイン,絵カード交換,コミュニケーション補助機器(小児がタブレット端末またはその他の携帯型デバイス上で選択した記号に基づいて会話を生成するものなど),および話し言葉などの様々な媒体を使用する。理学療法士と作業療法士は,運動機能,運動計画能力,および感覚処理における個々の障害を患者が代償する助けとなる戦略を立て,実行する。

薬物療法が症状の軽減に有用となることがある。非定型抗精神病薬(例,リスペリドン,アリピプラゾール)が儀式的行動,自傷行為,攻撃的行動などの行動問題の緩和に役立つというエビデンスがある。他の薬剤もときに特異的症状の管理に使用され,儀式的行動にはSSRI,自傷および爆発的行動には気分安定薬(例,バルプロ酸),不注意,衝動性,および多動性には精神刺激薬および他の注意欠如・多動症(ADHD)薬などが使用される。

ビタミン補充やグルテン除去食,カゼイン除去食などの食事介入は,推奨するほどに有用ではないが,多くの家庭がその使用を選択することため,栄養不足や過多に対するモニタリングが必要である。治療に対する他の補完的および研究的アプローチ(例,コミュニケーションの促進,キレート療法,聴覚統合訓練,および高圧酸素療法)の効果は示されていない。

要点

  • 自閉症児では,社会的交流およびコミュニケーションの障害,常同的な行動様式,ならびに知的能力障害を伴うことの多いむらのある知的発達が様々な組合せで認められる。

  • 原因は通常不明であるが,遺伝的要素の存在が想定されている;ワクチン接種は原因とならない。

  • スクリーニング検査には,Social Communication QuestionnaireやModified Checklist for Autism in Toddlers(M-CHAT-R)などがある。

  • 正式な診断検査は通常,心理士または発達行動面の問題を専門とする小児科医によって行われる。

  • 集学的治療が行われるのが通常であり,相互交渉およびコミュニケーションを促進する行動療法に基づく集中的なアプローチが用いられる。

  • 重度の行動異常(例,自傷,攻撃性)には薬剤(例,非定型抗精神病薬)が役立つ可能性がある。

さらなる参考文献

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