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新生児呼吸窮迫症候群

(肺硝子膜症)

執筆者:

Eric Gibson

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University;


Ursula Nawab

, MD, Children’s Hospital of Philadelphia

最終査読/改訂年月 2015年 1月

呼吸窮迫症候群(RDS)は,新生児の肺における肺サーファクタントの欠乏によって引き起こされ,在胎37週未満で出生した新生児で最もよくみられる。リスクは未熟性の程度に伴い上昇する。症状と徴候としては,呻吟呼吸,呼吸補助筋の使用,鼻翼呼吸などがあり,出産後すぐに出現する。診断は臨床的に行われ,胎児肺成熟度の検査により出生前のリスク評価が可能である。治療は,サーファクタント療法および支持療法による。

病因

サーファクタントは在胎期間の比較的後期(34~36週)になるまで十分な量が産生されないため,呼吸窮迫症候群(RDS)のリスクは未熟性が増すほど上昇する。その他の危険因子には,多胎妊娠,母体糖尿病,ならびに男児および白人などがある。

リスクは,胎児発育不全,妊娠高血圧腎症または子癇,母体高血圧,長時間の破水,および母親のコルチコステロイドの使用に伴って低下する。

まれに遺伝性の場合があり,サーファクタントタンパク(SP-BおよびSP-C)ならびにATP結合カセット輸送体A3ABCA3)の遺伝子変異によって引き起こされる。

病態生理

肺サーファクタントはII型肺胞上皮細胞から分泌されるリン脂質およびリポタンパクの混合物である( 周産期の生理 : 肺機能)。肺胞を覆う水膜の表面張力を弱め,肺胞の虚脱傾向および肺胞を膨らませるために必要となる仕事量を減らす。

サーファクタントが欠乏している場合,肺胞を開くためにより高い圧力が必要となる。十分な気道内圧がなければ,びまん性無気肺となり,炎症および肺水腫が引き起こされる( 肺水腫)。無気肺の部分を通過する血液は酸素化されない(肺内右左短絡が形成される)ので,患児は低酸素血症となる。肺コンプライアンスが低下して,これにより呼吸仕事量が増加する。重症例では,横隔膜および肋間筋が疲労し,CO2貯留および呼吸性アシドーシスが生じる。

合併症

RDSの合併症には,脳室内出血( 頭蓋内出血 : 脳室内出血および/または脳実質内出血),脳室周囲白質部の損傷,緊張性気胸( 気胸(緊張性)),気管支肺異形成症( 気管支肺異形成症 (BPD)),敗血症( 新生児敗血症),および新生児死亡などがある。頭蓋内合併症は,低酸素血症,高炭酸ガス血症,低血圧,動脈血圧の変動,および脳灌流の低下との関係が示されている( 頭蓋内出血)。

症状と徴候

症状および徴候には出生直後または数時間以内に発症する急速な努力性の呻吟呼吸があり,胸骨上部および下部の陥凹および鼻翼呼吸を伴う。無気肺および呼吸不全が進行するにつれ症状が悪化し,チアノーゼ,嗜眠,不規則呼吸,および無呼吸が現れる。

体重1000g未満の新生児では,分娩室において呼吸を開始または維持できないほど肺が硬化している場合がある。

診察では呼吸音の減弱を認める。四肢末梢の浮腫および尿量減少を伴い,末梢脈拍が減少していることがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 動脈血ガス分析(低酸素血症および高炭酸ガス血症)

  • 胸部X線

  • 血液,髄液,および気管吸引液の培養

診断は臨床像によって行い,危険因子の認識,低酸素血症および高炭酸ガス血症を示す動脈血ガス,胸部X線が含まれる。胸部X線ではびまん性無気肺(明らかな気管支含気像[air bronchogram]を伴うすりガラス陰影と従来から表現されている)がみられ,X線像は臨床的重症度に大まかに相関する。

鑑別診断にはB群レンサ球菌肺炎および敗血症,新生児一過性多呼吸( 新生児一過性多呼吸),遷延性肺高血圧症,誤嚥,肺水腫,先天性心肺異常などがある。新生児では通常,血液および髄液の培養が必要であり,おそらくは気管吸引液の培養も必要となる。臨床的に,B群レンサ球菌肺炎はRDSと鑑別することが極めて難しいため,培養結果が出るまでの間に抗菌薬投与を開始すべきである。

スクリーニング

RDSは,羊水穿刺または腟から採取(破水している場合)した羊水を用いて行う胎児肺熟成度検査により出生前から予測可能であり,またこの検査は最適な分娩時期を決定するのに有用である。このような検査は選択的分娩に対しては,胎児心音,ヒト絨毛性ゴナドトロピン値,および超音波測定値によって在胎期間を確定できない場合は39週目までが適応となり,選択的分娩ではない場合は34週から36週目の間が適応となる。

羊水検査の項目としては以下のものがある:

  • レシチン/スフィンゴミエリン比

  • 泡沫安定指数試験(羊水中のサーファクタントが多いほど,羊水をエタノールと混合し震盪することにより形成された泡沫の安定性が高い)

  • サーファクタント/アルブミン比

レシチン/スフィンゴミエリン比が > 2,ホスファチジルグリセロールが存在する,泡沫安定指数が47,またはサーファクタント/アルブミン比が > 55mg/gの場合は,RDSのリスクは低い。

治療

  • サーファクタント

  • 必要に応じて酸素投与

  • 必要に応じて機械的人工換気

治療した場合の予後は極めて良好であり,死亡率は10%未満である。十分な換気補助のみでも,サーファクタントの産生がやがて始まり,一旦産生が始まればRDSは4~5日で消失する。しかし,その間に重度の低酸素血症により多臓器不全および死亡に至ることもある。

特異的治療は気管内サーファクタント補充療法である。これは気管挿管を必要とするが,気管挿管は十分な換気および酸素化を達成するためにも必要となりうる。比較的未熟性の低い乳児(体重が1kg以上)および酸素所要量が少ない乳児(吸入酸素濃度[Fio2]が40~50%未満)は,酸素投与のみまたは経鼻的持続陽圧呼吸療法( 新生児および乳児における呼吸補助 : 持続陽圧呼吸療法(CPAP))によく反応する場合もある。早期(出生後20~30分以内)にサーファクタント療法を行う治療戦略は,機械的人工換気期間の有意な減少,エアリーク症候群( 肺エアリーク症候群)発生率の減少,および気管支肺異形成症発生率の減少に関連する。

サーファクタントは回復を促進し,気胸,間質性気腫,脳室内出血,気管支肺異形成症のリスクを低減し,入院中および1年後の新生児死亡率を低下させる。しかしながら,RDSが確認されサーファクタントの投与を受ける新生児は,未熟児無呼吸発作のリスクが高まる( 未熟児無呼吸発作)。サーファクタント補充の選択肢としては,以下のものがある:

  • beractant

  • poractant alfa

  • calfactant

  • lucinactant

beractantは,BタンパクおよびCタンパク,パルミチン酸コルホセリル,パルミチン酸,ならびにトリパルミチンを含有する脂質ウシ肺抽出物で,100mg/kgを必要に応じて6時間毎に最高4回まで投与する。

poractant alfaは,リン脂質,中性脂質,脂肪酸,ならびにサーファクタント関連BタンパクおよびCタンパクを含有する改変ブタ由来肺ミンチ抽出物で,200mg/kg投与後,100mg/kgを必要に応じて12時間毎に最高2回まで投与する。

calfactantは,リン脂質,中性脂質,脂肪酸,ならびにサーファクタント関連BタンパクおよびCタンパクを含有する子ウシ肺抽出物で,105mg/kgを必要に応じて12時間毎に最高3回まで投与する。

lucinactantは,肺サーファクタントBタンパクアナログ,シナプルチド(KL4)ペプチド,リン脂質,および脂肪酸による合成サーファクタントで,175mg/kgを6時間毎に最高4回まで投与する。

本療法後,肺コンプライアンスは速やかに改善しうる。肺エアリークのリスクを低減するため,呼吸器の最大吸気圧を速やかに低下させる必要がある。人工呼吸器のその他のパラメータ(例,Fio2,換気回数)も下げる必要がある場合がある。

予防

24~34週での分娩が必要である場合は,母親に対して少なくとも分娩の48時間前に,ベタメタゾン12mg筋注,24時間毎の2回投与,または,デキサメタゾン6mg,静注もしくは筋注,12時間毎の4回投与を行うことにより,胎児のサーファクタント産生が誘発され,RDSリスクが低下するか,もしくは重症度が低下する。( 切迫早産。)

RDS発症の高いリスクがある新生児(特に,母体に出生前コルチコステロイド投与のない在胎30週未満の出生児)への予防的なサーファクタント気管内投与は,新生児死亡および特定の種類の肺疾患(例,気胸)罹病のリスクを低下させることが示されている。

要点

  • 呼吸窮迫症候群(RDS)は肺サーファクタント欠乏が原因で発生し,典型的には在胎37週未満出生の新生児に起こるもので,未熟性が高いほど欠乏の程度も高い。

  • サーファクタントが欠乏すると,肺胞が閉鎖するかまたは開かず,肺はびまん性の無気肺状態となり,炎症および肺水腫が引き起こされる。

  • 呼吸機能不全を引き起こすほか,RDSは脳室内出血,緊張性気胸,気管支肺異形成症,敗血症,および死亡のリスクを増大させる。

  • 診断は胸部X線を用い臨床的に行い,肺炎および敗血症を適切な培養により除外する。

  • 未熟児出生が予測される場合,羊水のレシチン/スフィンゴミエリン比,泡沫安定性,またはサーファクタント/アルブミン比を検査し肺の成熟度を評価する。

  • サーファクタント気管内投与により治療し必要に応じて呼吸補助を行う。

  • 在胎24~34週での分娩が避けられない場合は,母親にコルチコステロイド(ベタメタゾン,デキサメタゾン)を非経腸にて数回投与する;コルチコステロイドは胎児のサーファクタント産生を誘発しRDSのリスクおよび/または重症度を低減する。

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