早老症(progeria)

(Hutchinson-Gilford症候群)

執筆者:Christopher P. Raab, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2019年 5月
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    早老症は老化が促進されるまれな症候群であり,小児期早期に発現し若年死を招く。

    早老症は,細胞核の分子構造的足場となるタンパク質(ラミンA)をコードするLMNA遺伝子における散発的な突然変異により引き起こされる。このタンパク質に異常があると,細胞分裂によって核が不安定になり,あらゆる体細胞の早期死が引き起こされる。

    早老症の症状および徴候は生後2年以内に発現し,具体的には以下のものが挙げられる:

    • 発育不全(例,低身長,歯の萌出遅延)

    • 頭蓋顔面異常(例,頭蓋顔面部の不均衡,小顎症,かぎ鼻,大頭症,泉門開大)

    • 老化による身体的変化(例,皮膚のしわ,禿頭,関節可動域減少,強皮症に似た固い皮膚)

    早老症の診断は通常外見から明らかであるが,部分的な早老症(例,肢端早老症,変形性早老症)やその他の発育不全の原因との鑑別が必要である。死亡時年齢の中央値は12歳であり,原因は冠動脈および脳血管の疾患である。インスリン抵抗性および動脈硬化が起こる可能性がある。注目されるのは,正常な老化に関連するその他の諸問題(例,がんリスクの増大,変形性関節症)が存在しないことである。

    既知の早老症治療法はない。支援団体を利用できる。

    他の早老症様症候群

    早期老化は他のまれな早老症様症候群の特徴である。

    ウェルナー症候群は思春期後の早期老化であり,毛髪の減少および高齢疾患(例,白内障,糖尿病,骨粗鬆症,動脈硬化)の発生を伴う。ロスムンド-トムソン症候群は,発がんリスクの増大を伴う早期老化である。どちらもRecQ型のDNAヘリカーゼ(正常ではDNAの修復を行う)の異常につながる遺伝子変異に起因する。

    コケイン症候群は常染色体劣性疾患で,ERCC8遺伝子(DNAの除去修復に重要)の突然変異に起因する。臨床的特徴としては,重度の発育不全,悪液質の様相,網膜症,高血圧,腎不全,皮膚の光線過敏性,知的障害などがある。

    新生児早老症様症候群(Wiedemann-Rautenstrauch症候群)は,劣性遺伝する老化の症候群であり,2歳までに死亡する。

    その他の症候群(例,ダウン症候群エーラス-ダンロス症候群)も,ときに早老性の特徴を有する。

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