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ムンプス

(流行性耳下腺炎)

執筆者:

Mary T. Caserta

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2014年 11月
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ムンプスは,通常は唾液腺(最も多くは耳下腺)の有痛性腫脹を引き起こす,感染性の強い全身性の急性ウイルス性疾患である。合併症として,精巣炎,髄膜脳炎,膵炎などが起こりうる。診断は通常臨床的に行い,症例は全て速やかに公衆衛生当局に報告する。治療は支持療法による。ワクチン接種が予防に効果的である。

原因病原体であるパラミクソウイルスは,飛沫または唾液により伝播する。このウイルスは,おそらく鼻腔または口腔から侵入する。唾液腺腫脹が出現する最長7日前には唾液腺内部に存在し,耳下腺炎発生の直前に最も伝染性が高くなる。血中および尿中と中枢神経系の感染があれば髄液中にも存在する。通常は1回の感染で終生免疫が成立する。

ムンプスは麻疹よりは感染力が弱い。主に予防接種を受けていない集団で発生するが,予防接種率の高い集団でもアウトブレイクが発生している。それらのアウトブレイクには,一次ワクチン不全(ワクチン接種後に免疫が獲得されない)と免疫減弱が複合的に関与している可能性がある。2006年には,米国で6584例に及ぶムンプスの再流行が発生し,主にワクチン接種歴のある若年成人で発生した。2009年から2010年にも小規模なアウトブレイクが2件発生し,その1つではニューヨーク市の宗教コミュニティにおいて高校生の年代を中心に3000例が発症した。2014年前半には,871例が発生しており,その多くは米国の4つの大学でみられたアウトブレイクの症例であった。

麻疹と同様に,ムンプスも輸入感染を起こして集団に定着することがあり,特に集団生活環境(例,大学キャンパス)や閉鎖社会(例,伝統を重んじるユダヤ人コミュニティ)でその傾向が強くみられる。ムンプスの発生ピークは晩冬および早春にみられる。あらゆる年齢で発症しうるが,2歳未満,特に1歳未満の小児ではまれである。約25~30%の症例は臨床的に不顕性感染となる。

症状と徴候

12~24日間の潜伏期の後,大半の患者では頭痛,食欲不振,倦怠感,および微熱から中等度の発熱がみられる。唾液腺は12~24時間後に侵され,39.5~40℃に及ぶ発熱を伴う。発熱は24~72時間持続する。唾液腺腫脹のピークはおおよそ2日目で5~7日間持続する。侵された腺には,発熱期間中極めて強い圧痛がみられる。

耳下腺炎は通常両側性であるが,片側性のこともある(特に発症時)。咀嚼時または嚥下時の疼痛,特に酢や柑橘類の果汁など酸味のある液体を飲み込む際の痛みが,最も早期の症状である。その後は腫脹が耳下腺を越えて耳前部および耳下部まで拡大する。ときに顎下腺および舌下腺も腫脹し,さらにまれには,これらの腺のみが侵される場合もある。顎下腺が侵されると,顎下部で頸部の腫脹が生じるほか,おそらくは腫大した唾液腺によるリンパ管閉塞が原因となって胸骨上部に浮腫が生じることもある。舌下腺が侵されると,舌が腫脹することがある。侵された腺の口腔内の開口部には,浮腫と軽度の炎症がみられる。腺を覆う皮膚は緊満して光沢を呈する。

合併症

ムンプスでは唾液腺以外の臓器が侵されることもあり,特に思春期以降の患者でよくみられる。そのような合併症としては以下のものがある:

  • 精巣炎または卵巣炎

  • 髄膜炎または脳炎

  • 膵炎

思春期以降の男性患者の約20%は精巣炎(精巣の炎症)を発症し,通常は片側性で,陰嚢の疼痛,圧痛,浮腫,発赤,および熱感を伴う。精巣萎縮が起こりうるが, テストステロン産生と妊孕性は通常維持される。女性では,卵巣炎(性腺の感染)が生じても認識されるのは比較的まれで,疼痛はより弱く,妊孕性は損なわれない。

髄膜炎は典型的には頭痛,嘔吐,項部硬直,および髄液細胞増多を伴い,耳下腺炎患者の1~10%に発生する( 髄膜炎の概要)。脳炎は眠気,痙攣,または昏睡を伴い,1000~5000例に1例の頻度で発生する( 脳炎)。中枢神経系へのムンプスウイルス感染の約50%は,耳下腺炎を伴わずに発生する。

膵炎は典型的には突然の重度の悪心,嘔吐,および心窩部痛を伴い,第1週の終わりまでに発生する( 膵炎の概要)。これらの症状は約1週間で消失し,完全な回復に至る。

前立腺炎,腎炎,心筋炎,肝炎,乳腺炎,多関節炎,難聴,および涙腺感染が極めてまれに生じる。甲状腺および胸腺の炎症によって胸骨上に浮腫および腫脹が引き起こされることがあるが,胸骨部の腫脹は,リンパ流出路の閉塞を伴う顎下線感染から生じる場合の方が多い。

診断

  • 臨床的評価

  • 逆転写PCR(RT-PCR)法によるウイルス検出

  • 血清学的検査

唾液腺の炎症と典型的な全身症状が認められる患者では,特に耳下腺炎がみられるか,ムンプスのアウトブレイクが判明している場合,ムンプスが疑われる。臨床検査は診断上は必要ないが,公衆衛生上の目的から強く推奨される。他の疾患によっても類似する腺性障害が生じる可能性がある( 耳下腺炎および他の唾液腺腫大の原因)。ムンプスのアウトブレイク中に原因不明の無菌性髄膜炎または脳炎を発症した患者でも,ムンプスが疑われる。髄膜刺激徴候がみられる患者には腰椎穿刺が必要である。

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耳下腺炎および他の唾液腺腫大の原因

化膿性細菌性耳下腺炎

HIV耳下腺炎

その他のウイルス性耳下腺炎

代謝性疾患(例,尿毒症,糖尿病)

ミクリッツ症候群(通常は無痛性の慢性耳下腺炎と涙腺の腫脹を認め,その原因は不明で,結核,サルコイドーシス,全身性エリテマトーデス[SLE],白血病,およびリンパ肉腫とともに発生する)

悪性および良性の唾液腺腫瘍

薬剤性の耳下腺腫脹(例,ヨウ化物,フェニルブタゾン,またはプロピルチオウラシルによるもの)

以下の場合には臨床検査による診断が必要である:

  • 片側性

  • 再発

  • 予防接種歴のある患者での発生

  • 唾液腺以外の著明な組織障害

同定される原因なく2日以上持続する耳下腺炎の患者では,全例に検査が推奨される。RT-PCR法は最も望ましい診断法であるが,補体固定法または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)による急性期および回復期の血清学的検査と咽頭,髄液,およびときに尿のウイルス培養を行うことも可能である。予防接種歴のある集団では,IgM検査は偽陰性となる可能性があるため,疾患経過のできるだけ初期に唾液または咽頭洗浄検体でRT-PCR検査を施行すべきである。

その他の臨床検査は一般に不要である。鑑別不能な無菌性髄膜炎では,耳下腺炎のない場合でもムンプスの診断において血清アミラーゼ値上昇が役立つ手がかりとなりうる。白血球数は非特異的であり,正常なこともあるが,通常はわずかな白血球減少および好中球減少を示す。髄膜炎では,髄液糖値は通常は正常であるが,細菌性髄膜炎の場合のように,ときに20~40mg/dL(1.1~2.2mmol/L)となる。髄液中のタンパク値は軽度にしか上昇しない。

予後

通常,合併症のないムンプスは治癒するが,まれに約2週間後に再発する。髄膜炎患者の予後は通常は良好であるが,片側性(まれに両側性)の感音難聴や顔面神経麻痺など,永続的な後遺症を残すことがある。感染後脳炎,急性小脳性運動失調,横断性脊髄炎,および多発性神経炎がまれに発生する。

治療

  • 支持療法

ムンプスおよびその合併症の治療は支持療法による。唾液腺腫脹が沈静化するまで患者を隔離する。軟らかい食物は,咀嚼による疼痛を軽減する。酸っぱいもの(例,柑橘類の果汁)も不快感を起こすため,避けるべきである。

膵炎による反復性の嘔吐には,輸液による水分補給が必要となることがある。精巣炎については,床上安静,両側大腿部の間に粘着テープで橋をかけてその上に綿を置いて陰嚢を支えることにより緊張を緩和する処置,および冷罨法は,しばしば疼痛の軽減につながる。コルチコステロイドが精巣炎の回復を早めるという効果は証明されていない。

予防

ムンプス生ワクチンによる予防接種( 麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンおよび 0~6歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュール)は,効果的な予防を可能にし,局所または全身の重大な反応を起こさない。麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンとして2回の接種が小児には推奨される:

  • 12~15カ月時に初回接種

  • 4~6歳時に2回目の接種

1957年以降に出生した成人については,医療従事者によりムンプスと診断されたことがない場合,1回だけ接種すべきである。妊婦および免疫系の機能障害がある人は,そのような弱毒生ワクチンを接種すべきではない。

曝露後ワクチン接種では,その曝露によるムンプスウイルスの感染を阻止することはできない。ムンプス免疫グロブリンは現在入手できなくなっており,免疫血清グロブリンは助けにならない。Centers for Disease Control and Preventionは現在,耳下腺炎発症後5日間にわたる標準および飛沫感染予防策による感染患者の隔離を推奨している。感受性の高い接触者は予防接種を受けるべきであるが,この介入により進行中のアウトブレイクを止められる可能性は低い。予防接種歴のない無症状の医療提供者は,最初の曝露後11日目から最終の曝露後25日目まで休職すべきである。

要点

  • ムンプスは唾液腺(耳下腺が最も多い)の有痛性腫脹を引き起こす。

  • ワクチン接種者も一次ワクチン不全や免疫減弱のために発症することがある。

  • 感染した思春期以降の男性の約20%が精巣炎を発症し,通常は片側性である;精巣萎縮も生じることがある, テストステロン産生と妊孕性は維持されるのが通常である。

  • その他の合併症として髄膜脳炎や膵炎などがある。

  • 臨床検査は主に公衆衛生上の目的で行うほか,耳下腺炎の欠如,片側性または再発性の耳下腺炎,予防接種歴のある患者での耳下腺炎,唾液腺以外の著明な組織障害など,病状が非定型の場合にも行う。

  • 禁忌(例,妊娠または重度免疫抑制)がない限り,全例対象の予防接種が必須である。

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