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乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

執筆者:

Geoffrey A. Weinberg

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2013年 11月
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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,レトロウイルスの一種であるHIV-1により(また頻度は低くなるが近縁のレトロウイルスであるHIV-2によっても)引き起こされる。感染すると進行性の免疫機能低下が引き起こされ,日和見感染症や悪性腫瘍が発生するようになる。末期には後天性免疫不全症候群(AIDS)となる。診断は,生後18カ月以上の小児ではウイルス抗体,生後18カ月未満の小児ではウイルス核酸増幅検査(PCR法など)による。治療は抗レトロウイルス薬の多剤併用による。

小児HIV感染症の全般的な自然経過と病態生理は成人のそれと同様であるが,感染形式,臨床像,および治療法は異なることが多い。HIV感染児には,社会的統合という特有の問題も存在する( HIV感染児の社会的統合)。

HIV感染児の社会的統合

小児のHIV感染症はその家族全体に影響を及ぼす。同胞および両親の血清学的検査が推奨される。医師は教育と継続的なカウンセリングを提供しなければならない。

他者へのリスクを低減するため,感染児には適切な衛生対策および行動に関する教育を行うべきである。この疾患について,いつ,どの程度まで教えるかは,年齢および成熟度に依存する。児童および青年には,自身の診断を認識させるべきであり,また性行為を介した伝播の可能性について適切なカウンセリングを行うべきである。家族は,社会的孤立がもたらされる可能性があるため,診断を肉親以外の人に話すのを望まないことがある。罪悪感がよくみられる。小児を含めた家族が臨床的に抑うつ状態となり,カウンセリングが必要となることもある。

HIV感染症は小児間でみられる典型的な接触(例,唾液や涙液)で伝播するものではないため,

HIV感染児は制限なく登校を許可すべきである。同様に,HIV感染児の里親制度,養子紹介,および保育を制限する特別な理由も存在しない。他者へのリスクが増大しうる状況(例,激しく噛みつく,被覆できない滲出性の濡れた皮膚病変)では,特別な注意が必要となる場合がある。

患児の状態を知る学校職員は,適切なケアを確保するのに最小限必要な数にとどめるべきである。家族には学校に通知する権利があるが,感染児のケアや教育に携わる者は,患児のプライバシー権を尊重しなければならない。情報の開示は,親または法的保護者のインフォームド・コンセントと小児からの年齢相応の同意が得られた場合のみに制限されるべきである。

疫学

米国において,HIVは小児でもおそらく成人とほぼ同時期に出現していたと考えられるが,数年間にわたり臨床的に認識されるには至らなかった。これまでに,小児期および青年期早期の症例は約10,000例報告されているが,これは全症例の1%を占めるにすぎない。2011年,13歳未満の小児で診断される新規症例は192例と推定される。

米国のHIV感染児では,その90%以上が出生前または周産期の母から児への感染(垂直感染)である。残りの大部分(血友病またはその他の凝固障害の小児など)は,汚染血液または汚染血液製剤を投与された症例である。少数ではあるが性的虐待が原因の症例もある。米国での垂直感染率は1991年の約25%(年1500例以上)から2009年の1%(年約150例のみ)へ有意に低下した。包括的な血清スクリーニングの導入と妊娠中および分娩時の両方における感染妊婦の治療によって,垂直感染は減少した。

しかしながら,周産期HIV感染の減少が見事に達成されたにもかかわらず,米国における青年HIV感染者の総数は増加し続けている。この逆説的な増加については,周産期感染児の生存数が増加したことと,他の青年(特に男性と性交する若年男性)で性行為感染による新規HIV感染例が増加したことの両方が原因である。男性間性交を行う若年男性でのHIV感染を減少させることが,垂直感染予防の継続と同様に,引き続き国内のHIV感染制御における重要な焦点である。

世界では,約300万人の小児がHIVに感染している(世界の全症例の10%)。毎年,約33万人の小児が新たに感染し(全新規感染例の13%),約23万人の小児が死亡している。これらの数字は,気力を失わせるような患者数を反映したものであるが,妊婦および小児に抗レトロウイルス療法(ART)を施行するために策定された新規プログラムによって,過去数年間で新規小児感染および小児期死亡の年間総数は10~15%減少している。しかしながら,感染児は成人ほどの頻度ではARTを受けておらず,治療適応のある小児では約28%しかARTを受けていないのに対し,成人では57%がARTを受けている。垂直感染の阻止とHIV感染児の治療は,依然として世界の小児HIV医療における最も重要な2つの目標とされている。

伝播

妊娠中にARTを受けなかったHIV陽性の母親から生まれた乳児の感染リスクは,25%(範囲,13~39%)と推定されている。垂直感染の危険因子としては以下のものがある:

  • 妊娠中または授乳中の抗体陽転(主要リスク)

  • 血漿ウイルスRNA濃度の高値(主要リスク)

  • 進行例

  • 末梢血CD4陽性T細胞数の低値

  • 長時間の破水

双胎児の経腟分娩では,最初に娩出された児は次に娩出された児よりリスクが高くなるが,この関係は発展途上国では当てはまらないことがある。

有効陣痛発来前の帝王切開は母子感染のリスクを低下させる。しかしながら,母子感染のリスクを最も大きく低減できる方法が母親および新生児に対する多剤併用ART(通常,ジドブジン[ZDV]を含む)であることは明らかである( 乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 予防)。ZDVの単剤療法により母子感染率は25%から約8%へ低下するが,現在の多剤併用ARTでは1%まで低下する。

ヒトの母乳中では,細胞を含む画分と細胞を含まない画分の両方でHIVが検出されている。授乳による感染は,年間で母乳栄養児100人当たり約6人に発生する。全体で見た授乳を介した感染リスクの推定値は12~14%であり,これは授乳期間の違いを反映している。授乳を介した感染は,血漿ウイルスRNA濃度が高値の母親(例,妊娠中または授乳中に感染した女性)で最も多い。

分類

HIV感染が引き起こす疾患は幅広いスペクトラムを形成するが,そのうち最も重症のものがAIDSである。Centers for Disease Control and Prevention(CDC:米国疾病予防管理センター)が策定した分類体系は,臨床的および免疫学的状態の悪化の進行度を定義したものである。

13歳未満の小児における臨床カテゴリー13歳未満のHIV感染児における臨床カテゴリー)は,頻度の高い特定の日和見感染症または悪性腫瘍の有無によって定義される。臨床カテゴリー

  • N = 無症状

  • A = 軽度症候性

  • B = 中等度症候性

  • C = 重度症候性

13歳未満の小児における免疫カテゴリー13歳未満のHIV感染児における年齢に応じたCD4陽性T細胞の絶対数および総リンパ球数に対する割合に基づく免疫カテゴリー)は,CD4陽性T細胞数(絶対数と総リンパ球数に対する割合)に基づく免疫抑制の程度を反映している:

  • 1 = 免疫抑制の徴候を認めない

  • 2 = 中等度の抑制

  • 3 = 重度の抑制

したがって,ステージB3と診断された小児は,中等度に進行した臨床症状を有し,かつ重度の易感染状態にあることになる。臨床および免疫カテゴリーは一方向性の階層で構成されており,一旦特定のレベルと判定したら,臨床的または免疫学的状態の改善に関係なく,より軽症のレベルに再判定することはできなくなる。

これらの臨床および免疫カテゴリーについては,多剤併用ARTが処方されれば,ほぼ必ず症状の軽減とCD4陽性T細胞数の増加が得られることから,この治療法が主流となった現在では重要性が低下しつつある。これらのカテゴリーは,臨床研究と診断時の重症度の記載に最も有用である。13歳以上の青年および成人での分類体系は改定されており,現在ではAIDS指標疾患(例,日和見感染症)が存在する場合を除いて,単純にCD4陽性T細胞数が病期の主要要素とされている( 13歳未満のHIV感染児における臨床カテゴリー)。

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13歳未満のHIV感染児における臨床カテゴリー

カテゴリーN:無症候

HIV感染に起因すると考えられる症候がない,またはカテゴリーAに挙げられた病態のうち1つのみが認められる小児

カテゴリーA:軽度症候性

以下の病態のうち2つ以上が認められるが,カテゴリーBまたはCに挙げられた病態は1つも認められない小児:

皮膚炎

肝腫大

リンパ節腫脹(2つ以上の部位で0.5cm以上;両側性は1つの部位とみなす)

耳下腺炎

反復性または持続性の上気道感染症,副鼻腔炎,または中耳炎

脾腫

カテゴリーB:中等度症候性

カテゴリーAに挙げられた病態以外でHIV感染に起因する症状が認められるが,カテゴリーCに挙げられた症状は認められない小児;カテゴリーBの病態としては以下のものが挙げられる:

30日以上持続する貧血(Hb < 8g/dL),好中球減少(< 1000/μL),または血小板減少(< 100,000/μL)

細菌性の髄膜炎,肺炎,または敗血症(1回のみ)

カンジダ症,口腔咽頭(鵞口瘡),生後6カ月以上の小児における持続性(2カ月以上)のもの

心筋症

サイトメガロウイルス感染症,生後1カ月以前に発症したもの

下痢,反復性または慢性のもの

肝炎

帯状疱疹,複数回の別個のエピソードまたは複数の皮膚分節を含むもの

HSV口内炎,反復性(1年間に2回以上)のもの

HSV気管支炎,肺炎,または食道炎,生後1カ月未満で発症したもの

平滑筋肉腫

リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成

腎症

ノカルジア症

持続性の発熱(1カ月以上持続)

トキソプラズマ症,生後1カ月未満で発症したもの

水痘,播種性のもの(合併症を伴う水痘)

カテゴリーC:重度症候性

以下の病態が1つ以上認められる小児:

重篤な細菌感染症,次に挙げるものが多発または反復するもの(すなわち,いずれか2つ以上の感染が2年間で培養により確定診断された場合):敗血症,肺炎,髄膜炎,骨または関節感染症,内臓または体腔の膿瘍(中耳炎,表皮または粘膜の膿瘍,留置カテーテル関連の感染症は除く)

カンジダ症,食道または肺(気管支,気管,肺)のもの

コクシジオイデス症,播種性のもの(肺内または頸部もしくは肺門リンパ節を除いた他の部位に発生する場合,またはこれらの部位に加えて他の部位にも発生する場合)

クリプトコッカス症,肺外

クリプトスポリジウム症またはイソスポーラ症,1カ月以上持続する下痢を伴うもの

サイトメガロウイルス感染症,生後1カ月以降に発症したもの(肝臓,脾臓,リンパ節以外の部位)

脳症(以下に示す進行性の所見を説明できるHIV感染症以外の併発疾患が認められず,それらの所見のうち少なくとも1つが2カ月以上認められる):

  • 発達マイルストーンの不達成もしくは消失または知的能力の喪失で,標準的な発達尺度または神経心理学的検査によって検証されたもの

  • 頭囲測定の結果またはCT/MRI(2歳未満の小児では一連の撮影が必要)での脳萎縮の存在によって示された脳発育障害または後天性小頭症

  • 次に示す所見のうち2つ以上により示された後天性かつ対称性の運動障害:不全麻痺,病的反射,運動失調,または歩行障害

ヒストプラズマ症,播種性のもの(肺内または頸部もしくは肺門リンパ節を除いた他の部位に発生する場合,またはこれらの部位に加えて他の部位にも発生する場合)

HSV感染症,1カ月以上持続する粘膜皮膚潰瘍を引き起こすもの,または生後1カ月以上の小児に(持続期間を問わず)HSV気管支炎,肺炎,または食道炎を引き起こしているもの

カポジ肉腫

リンパ腫,原発性,脳内発生のもの

リンパ腫:核の切れ込みがない小細胞型のリンパ腫(バーキット型),または腫免疫学的表現型がB細胞もしくは不明の免疫芽球性もしくは大細胞型リンパ腫

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染症,播種性または肺外性のもの

抗酸菌(Mycobacterium)感染症,結核菌の菌種または菌種不明で,播種性のもの(肺内,皮膚,または頸部もしくは肺門リンパ節を除いた他の部位に発生する場合,またはこれらの部位に加えて他の部位にも発生する場合)

Pneumocystis jirovecii肺炎

進行性多巣性白質脳症

サルモネラ(Salmonella)(非チフス性)敗血症,反復性のもの

脳トキソプラズマ症,生後1カ月以降に発症したもの

以下に示す3つの所見のいずれかの原因となりうる(HIV感染症以外の)併存症を伴わない消耗症候群:

  • ベースラインから10%以上の持続的な体重減少

  • 1歳以上の小児における,体重成長曲線上の特定のパーセンタイル線(例,95,75,50,25,5パーセンタイル)を2つ以上を越えて下降する体重減少

  • 30日間以上の間隔を空けて2回連続で測定した値が身長別体重曲線の5パーセンタイル未満

かつ以下のうち1つが認められるもの:

  • 慢性下痢(すなわち,30日以上にわたる1日2回以上の軟便)

  • 確認された発熱(30日以上,間欠的または持続的)

HSV = 単純ヘルペスウイルス。

Adapted from Centers for Disease Control and Prevention: Revised surveillance case definitions for HIV infection among adults, adolescents, and children aged <18 months and for HIV infection and AIDS among children aged 18 months to < 13 years of age—United States, 2008. Morbidity and Mortality Weekly Report 57(RR-10):1–13, 2008.

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13歳未満のHIV感染児における年齢に応じたCD4陽性T細胞の絶対数および総リンパ球数に対する割合に基づく免疫カテゴリー

免疫カテゴリー

生後12カ月未満

1~5歳

6~12歳

cells/µL

cells/µL

cells/µL

1:免疫抑制の徴候を認めない

1500

25

1000

25

500

25

2:中等度の免疫抑制の徴候を認める

750~1499

15~24

500~999

15~24

200~499

15~24

3:重度の免疫抑制を認める

< 750

< 15

< 500

< 15

< 200

< 15

Adapted from Centers for Disease Control and Prevention: Revised surveillance case definitions for HIV infection among adults, adolescents, and children aged <18 months and for HIV infection and AIDS among children aged 18 months to < 13 years of age—United States, 2008. Morbidity and Mortality Weekly Report 57(RR-10):1–13, 2008.

症状と徴候

無治療の小児における自然経過

周産期に感染した乳児は,多剤併用ARTが施行されない場合でも,通常は生後数カ月間にわたり無症状で経過する。発症年齢の中央値は約3歳であるが,適切なARTにより,5年間以上無症状の状態を維持し,成人期までの生存を期待できる場合もある。ART導入前の時代は,約10~15%の患児が急速に進行し,生後1年以内に発症して生後18~36カ月までに死亡していたが,それらの患児は子宮内で早期にHIVに感染したものと考えられていた。一方,大部分の患児はおそらく分娩時またはその前後に感染したもので,進行はより緩徐である(ARTがルーチンに施行される以前でも5年以上生存していた)。

ARTを受けない小児におけるHIV感染症の臨床像で特に頻度が高いものとしては,全身性リンパ節腫脹,肝腫大,脾腫,発育不良,口腔カンジダ症,中枢神経系疾患(進行性のこともある発達遅滞を含む),リンパ性間質性肺炎,反復性菌血症,日和見感染症,反復性の下痢,耳下腺炎,心筋症,肝炎,腎症,悪性腫瘍などがある。

合併症

合併症が発生する場合,典型的には日和見感染症(およびまれに悪性腫瘍)がみられる。そのような感染は多剤併用ARTによって現在ではまれとなっており,主に未診断でART施行歴のない小児やARTのアドヒアランスが不良な小児に生じている。

日和見感染症が発生する場合,Pneumocystis jirovecii肺炎が最も頻度が高く,最も重篤で,死亡率が高い。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎は生後4~6週という早い時期から発生することもあるが,多くは出生前または出生時に感染した生後3~6カ月の乳児に発生する。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎を起こした乳児および児童では,安静時の呼吸困難,頻呼吸,酸素飽和度低下,乾性咳嗽,および発熱を伴う亜急性のびまん性肺炎を来すのが特徴的である(発症がより急性で劇症となる,HIV感染のない易感染状態の小児および成人とは対照的である)。

免疫抑制を来した患児でみられる他の日和見感染症としては,カンジダ(Candida)食道炎,播種性サイトメガロウイルス感染,慢性または播種性の単純ヘルペスおよび水痘帯状疱疹ウイルス感染症などがあり,より頻度の低いものとしては,結核菌(Mycobacterium tuberculosis)およびM. avium complexによる感染症,Cryptosporidiumまたはその他の病原体による慢性腸炎,播種性または中枢神経系のクリプトコッカス症またはToxoplasma gondii感染症などがある。

易感染状態となったHIV感染児における悪性腫瘍の発生は比較的まれであるが,平滑筋肉腫と中枢神経系リンパ腫やB細胞性の非ホジキンリンパ腫(バーキット型)などの特定のリンパ腫は,免疫能が正常な小児と比べてはるかに高い頻度で発生する。カポジ肉腫は小児のHIV感染者では非常にまれである。

抗レトロウイルス併用療法を受ける小児

多剤併用ARTの登場により,小児におけるHIV感染症の臨床像は大きく変化した。細菌性肺炎とその他の細菌感染症(例,菌血症,反復性中耳炎)は,HIV感染児では依然としてよくみられるが,日和見感染症と発育不全については,ART導入前の時代よりはるかに減少している。血清脂質値の変動,高血糖,脂肪分布異常(リポジストロフィーおよび脂肪萎縮症),腎症,骨壊死など新たな問題が報告されているが,それらの発生率は成人のHIV感染者と比べて小児では低くなっている。

多剤併用ARTは神経発達面の予後を明らかに改善するが,治療を受けたHIV感染児において行動面,発達面,認知面の問題の発生率が上昇しているようである。それらの問題がHIV感染児におけるHIV感染自体,治療薬,その他の生物心理社会的因子によるものか否かは不明である。現時点では周産期感染の小児の最初の1群がちょうど成人に達する時期であるため,成長および発達に重要な期間中のHIV感染またはARTによる別の影響が後に現れるかどうかは不明である。そのような有害な影響を検出するため,HIV感染児にはモニタリングを継続する必要がある。

診断

  • 血清抗体検査

  • ウイルス核酸検査(NAT;HIV DNA PCRまたはHIV RNA測定を含む)

HIV特異的検査

生後18カ月以上の小児では,診断は成人と同様に血清抗体検査(例,酵素免疫測定法[EIA]と確認試験としてのウェスタンブロット法)を用いて行われる。最近,第4世代のHIV-1/2抗原抗体同時検査に続いて第2世代のHIV-1/2抗体鑑別検査と必要に応じてHIV-1 RNA定量検査を行う新しい診断アルゴリズムが成人で用いられており,今後は小児でも採用される可能性が高い。非常にまれにであるが,有意な低ガンマグロブリン血症のため,HIV感染児ではHIV抗体が検出されないこともある。

生後18カ月未満の小児は,母親からの移行抗体を保持しているため,EIAでは偽陽性となることから,RNA定量検査(例,RNAのtranscription-mediated amplification法)やDNA PCR検査(NATと総称される)などのHIVのウイルス学的検査によって診断され,それにより出生時では約30%の症例が,生後4~6カ月までに100%の症例が診断可能である。HIVのウイルス培養は,感度および特異度ともに許容範囲内であるが,技術的により難しい上に危険であり,ほとんどの検査室はNATに切り替えている。

別の種類のNATであるHIV RNA定量検査(すなわち,治療の効力をモニタリングするのに用いられるウイルス量検査)が,乳児の診断検査により広く用いられるようになっている。ARTを受けていない乳児において,RNA定量検査はDNA PCR検査と同程度の感度を示すが,それほど高価ではなく,他のNATよりも広く利用可能である。しかし,RNA濃度が非常に低い場合(5000コピー/mL未満)の検査特異度は不明で,かつ分娩時に治療により完全にウイルスが抑制されていた母親から出生した乳児での感度は不明であることから,RNA検査を用いる場合は注意しなければならない。

p24抗原測定の変法は,HIV DNAおよびRNAのどちらによる核酸検査と比べても感度が低いため,米国における乳児の診断検査には用いるべきではない。

ウイルス学的検査(NAT)を最初に生後2週間以内,続いて生後約1カ月時および4~6カ月時に行う。結果が陽性となったら,同一または別のウイルス学的検査法により直ちに確認検査を行う。連続したウイルス学的HIV検査が生後2週以上と生後4週以上の時点で陰性となった場合は,95%を超える精度で患児は未感染と判定される(AIDS指標疾患が存在しない場合)。ウイルス学的HIV検査が生後4週以上と生後4カ月以上の時点でも陰性となった場合は,約100%の精度で患児は未感染と判定される(AIDS指標疾患が存在しない場合)。ただし,多くの専門家は,HIV感染を確実に除外してseroreversion(受動的に獲得されたHIV抗体の消失)を確認するためのフォローアップ抗体検査(18カ月以降にEIAを1回または6~18カ月の期間にEIAを2回)の施行を引き続き推奨している。抗体検査陽性でウイルス学的検査陰性の生後18未満の乳児がAIDS指標疾患(カテゴリーC─ 13歳未満のHIV感染児における臨床カテゴリー)を発症した場合は,HIV感染症と診断される。

HIV抗体迅速検査は,EIAから派生した検査法で,数分から数時間で結果が判明する。口腔内分泌物,全血,または血清を用いたポイントオブケア検査として施行できる。米国では,おそらくこれらの検査は陣痛・分娩室においてHIV血清状態不明の女性を検査する際に最も有用となっており,これによりカウンセリング,母子感染予防のためのARTの開始,および児の検査を出産時の来院中に手配することが可能となる。同様の利点は,他の突発的な治療の場(例,救急診療部,思春期医療クリニック,性感染症クリニック)や発展途上国においても生じる。迅速検査には,2回目のEIA,HIV-1/2抗体鑑別検査,またはウェスタンブロットなどの確定検査が通常必要である。予想されるHIV有病率が低い地域では,特異的迅速検査でもほとんどの場合偽陽性が得られる(ベイズの定理による陽性適中率が低い— 医学的検査および検査結果の理解 : ベイズの定理)ことから,このような確定検査は特に重要である。しかしながら,予想されるHIVの可能性(または血清陽性率)が高い場合は,陽性適中率は高くなる。

患児のHIV検査に先立ち,母親または第1養育者(および年齢が十分であれば患児本人)に対して,起こりうる心理社会的リスクと検査がもたらす有益性についてカウンセリングを行うべきである。州,地方,および病院の法および規則に従い,書面または口頭による同意を得た上で,患者カルテに記録する。医学的に検査の適応がある場合は,カウンセリングおよび同意が必要であるという理由で検査が躊躇されるようなことがあってはならず,患者または保護者による同意の拒否は医師の職業的および法的責任を軽減するものではなく,ときには別の手段(例,裁判所命令)によって検査の権限を得なければならないこともある。検査結果について,家族,第1養育者,および年齢が十分であれば患児本人と話し合うべきである。HIV陽性の場合は,適切なカウンセリングとその後の継続治療を提供しなければならない。全例において,機密保持が極めて重要である。

HIV感染またはAIDS基準を満たす小児および青年については,適切な保健局へ報告しなければならない。

その他の検査

感染が診断されれば,他の検査を行う:

  • CD4陽性T細胞数

  • CD8陽性T細胞数

  • 血漿ウイルスRNA濃度

感染児には,疾患の程度,予後,および治療効果の確認に有用な,CD4陽性およびCD8陽性T細胞数と血漿ウイルスRNA濃度の測定が必要である。CD4陽性細胞数は,初期には正常値(例, 13歳未満のHIV感染児における年齢に応じたCD4陽性T細胞の絶対数および総リンパ球数に対する割合に基づく免疫カテゴリーに記載されたカテゴリー1の年齢別カットオフを超える値)を示すこともあるが,最終的には低下する。CD8陽性細胞数は,初期に増加し感染後期まで減少しないのが通常である。細胞集団におけるこれらの変化は,HIV感染症に特徴的な(ただし他の感染症でも生じることがある)CD4陽性/CD8陽性細胞比の低下をもたらす。生後12カ月未満の無治療患児の典型例では,血漿ウイルス濃度が非常に高くなる(平均して,約200,000RNAコピー/mL)。生後24カ月までには,この無治療患児におけるウイルス濃度は(平均約40,000RNAコピー/mLにまで)減少する。小児ではHIV-RNA濃度の個人差が大きいため,この数値による病状や死亡率の予測の精度は成人の場合よりも低くなるが,血漿ウイルス濃度測定とCD4陽性細胞数を組み合わせる方が,予後予測上,一方のみのマーカー測定よりも正確な情報が得られる。総リンパ球数や血清アルブミン濃度などのより低コストの代替マーカーからも小児のAIDS死亡率を予測することができ,それらは発展途上国で有用であろう。

ルーチンには測定されないが,血清免疫グロブリン濃度(特にIgGおよびIgA)がしばしば著明に上昇する(ただし,汎低ガンマグロブリン血症を偶然発症している場合もある)。皮膚テストの抗原に対するアネルギーが生じていることがある。

予後

ART導入前の時代は,先進国では10~15%,発展途上国では50~80%の感染児が4歳未満で死亡していたが,適切なレジメンの多剤併用ARTにより,現在では周産期感染の患児の大半が5歳以降も良好な状態で生存している。米国で過去数十年に出生した垂直感染児の大多数は若年成人期に生存しており,出産するまたは父親となるこのような若年成人数が増えている。

しかしながら,日和見感染症(特にニューモシスチス[Pneumocystis]肺炎),進行性の神経疾患,または重度の消耗が生じた場合には,多剤併用ARTによってウイルス学的および免疫学的コントロールが再度得られない限り,予後不良となる。ニューモシスチス (Pneumocystis)肺炎による死亡率は治療下では5~40%,無治療ではほぼ100%とである。早期(生後7日まで)にウイルスが検出される場合と生後1年以内に症状が出現する場合も,予後不良である。

複製可能なHIVが根絶された(すなわち5年間にわたり「治癒」している)ことが十分に確認されている成人例は1例しか存在しない。その患者は白血病のために造血幹細胞移植を必要とした。ドナー細胞はCCR5-Δ32変異のホモ接合体で,それにより移植リンパ球にCCR5指向性HIV感染に対する抵抗性が付与されたもので,それ以降HIVは検出不能の状態が維持されている。ART,骨髄破壊的処置,および移植片対宿主病がこの患者の治癒に寄与した可能性が高い。複製可能なHIVが見かけ上根絶されたことが十分に確認されている乳児例も1例報告されている。その乳児は,出生前ケアと出生前(および分娩時)ARTをいずれも受けていないHIV感染者の母親から出生した。生後2日目から,生後2週以内の使用について安全性と有効性が未知であった高用量の多剤併用ARTが開始された。ARTは約15カ月間継続されたが,それ以降は意図せず中止されてしまった。それでも,生後24カ月時にウイルスRNAの複製は検出不能(「機能的治癒」)であったが,プロウイルスDNAは検出可能であった。この乳児が今後も長期的にHIV複製を示さないか否かや,この経験を安全に再現することが可能か否かは不明である。しかしながら,HIV感染は効果的なARTが施行されれば長期生存も望める治療可能な感染症となったことが判明した。将来の研究は間違いなく,ARTの忍容性および効力を改善する道を明らかにして,治癒をもたらす治療法というゴールの達成に役立つであろう。

治療

  • 抗レトロウイルス薬:多剤併用ARTでは,核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI) 2剤に加えてプロテアーゼ阻害薬1剤または非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)1剤を併用することが最も一般的であるが,ときにインテグラーゼ阻害薬1剤とNRTI 2剤が併用されることもある。

  • 支持療法

多剤併用ARTによる治療が成功を収めていることから,現在は,医学的問題と社会的問題の両方に対処する,慢性疾患としてのHIV感染の管理が注目されている。重要な長期の医学的問題として,HIV関連および薬剤関連の代謝性合併症を管理し,薬物動態および薬力学の年齢に関連した変動を考慮する必要性が挙げられる。社会的問題としては,青年の非感染者からの圧力を対処すること,成績向上と適切なキャリア選択を確実なものとすること,感染リスクについて小児を教育することなどがある。青年では医療上の助言を求めることや助言に従うことに困難がある場合が多く,治療のアドヒアランスを維持するために特別な支援が必要になる。小児および青年患者の管理は,小児HIV感染症の管理について経験のある専門医と協力して進めるべきである。

抗レトロウイルス薬(ARV)

米国で入手可能なARVは,合剤を含めて20数種以上あり( 小児に対する抗レトロウイルス薬の用量・用法*),それぞれに有害作用のほか,他のARVや一般に使用される抗菌薬,抗てんかん薬,鎮静薬との薬物相互作用が起こる可能性がある。新規のARV,免疫調節薬,およびワクチンが現在評価されている。用法・用量,有害作用,および薬物相互作用に関する現在の情報については,guidelines for the use of antiretroviral agents in pediatric HIV infectionおよびwww.aidsinfo.nih.govで入手可能な成人および青年に対するガイドラインを参照のこと。治療に関する有用な情報がwww.hivguidelines.orgおよび www.unaids.org/en/でも入手可能である。また,ART(特にHIVに対する曝露後予防およびHIV母子感染の問題)に関するコンサルテーションがUniversity of California San FranciscoのNational HIV/AIDS Clinicians' Consultation Center(www.nccc.ucsf.edu.)で利用可能である。

標準治療は,ウイルス抑制効果を最大限に高め,薬剤耐性株の選択を最小限に抑える多剤併用ARTによる。最も一般的なARTでは,NRTI 2剤(ジドブジン + ラミブジンまたはエムトリシタビン,アバカビル + ラミブジンまたはエムトリシタビン,思春期以降の青年にはフマル酸テノホビルジソプロキシル + エムトリシタビンまたはラミブジン)をバックボーンとして,リトナビルブーストありのプロテアーゼ阻害薬(ロピナビル/リトナビルまたはリトナビルブーストアタザナビル)またはNNRTI(エファビレンツまたは状況によってはネビラピン)のいずれかを併用する。ときに他の併用(NRTI 2剤とラルテグラビルなど)も用いられるが,第1選択のレジメンとして使用することを支持したデータはほとんどない。治療戦略に関する専門家の意見は急速に変化するため,専門医へのコンサルテーションが強く勧められる。レジメンを単純化してアドヒアランスを改善するため,児童および青年には3剤以上の固定用量配合錠が現在広く使用されているが,幼児については,このような併用法は米国では利用できないか,使用が困難である。

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小児に対する抗レトロウイルス薬の用量・用法*

薬剤

製剤

推奨される用法・用量(経口)

一部の有害作用および備考

核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)

アバカビル(ABC)

シロップ:20mg/mL

錠剤:300mg

3カ月~15歳:8mg/kg,12時間毎(最高300mg,12時間毎)

16歳以上:300mg,12時間毎または600mg,24時間毎

ABCは以下を引き起こすことがある:

  • 致死的となりうる過敏反応—症状としては発疹,悪心・嘔吐,咽頭痛,咳嗽,または息切れ

過敏反応の発生率は約5%である。過敏反応は使用開始後最初の6週間に起こることが最も多く,主に遺伝子型がHLA-B*5701の患者(ABCを投与すべきではない)でみられる。

過敏反応後に再投与すると,低血圧または死亡のリスクがある。

ABCを処方する場合は,事前にHLA-B*5701アレルの検査を行うべきである。

ABCは食事と無関係に使用できる。

ジダノシン(ddI)

小児用の内用液用粉末剤:調製すると10mg/mL

腸溶性徐放カプセル,200mg,250mg,および400mg

生後14日~2カ月:50mg/m2,12時間毎

生後3カ月~8カ月:100mg/m2,12時間毎

生後8カ月を越えて6歳になるまで:120mg/m2,12時間毎

6歳以上,体重に基づく用量,全て徐放カプセル:

20~24kg:200mg,24時間毎

25~59kg:250mg,24時間毎

60kg以上:400mg,24時間毎

ddlは以下を引き起こすことがある:

  • 下痢,悪心,嘔吐

  • 末梢神経障害

  • 乳酸アシドーシス,脂肪症を伴う肝腫大

  • 膵炎

  • 網膜炎

フマル酸テノホビルジソプロキシルとの併用は避けるべきである。

内用液は空腹時に服用すべきであるが,カプセルでは空腹時投与の必要はない。

エムトリシタビン(FTC)

内用液:10mg/mL

カプセル:200mg

生後0~2カ月:3mg/kg,24時間毎

生後3カ月~18歳:6mg/kg,24時間毎(内用液の最大量は240mg,24時間毎;カプセルの最大量は200mg,24時間毎)

FTCの忍容性は良好であるが,まれに以下を引き起こすことがある:

  • 好中球減少,色素沈着,乳酸アシドーシス

  • B型肝炎ウイルス感染症を合併している患者では,FTCを突然中止することに伴う肝炎の重度増悪

FTCは食事と無関係に使用できる。

ラミブジン(3TC)

内用液:10mg/mL

錠剤:100mg,150mg,300mg

生後0~1カ月:2mg/kg,12時間毎

生後1カ月以上16歳未満:4mg/kg,12時間毎(最高150mg,12時間毎)

16歳以上:150mg,12時間毎または300mg,24時間毎

3TCの忍容性は良好であるが,まれに以下を引き起こすことがある:

  • 好中球減少,色素沈着,乳酸アシドーシス

  • B型肝炎ウイルス感染症を合併している患者では,3TCを突然中止することに伴う肝炎の重度増悪

3TCは食事と無関係に使用できる。

スタブジン(d4T)

内用液用粉末剤:1mg/mL

カプセル:15mg,20mg,30mg,40mg

生後0~13日:0.5mg/kg,12時間毎

生後2週以上:1mg/kg,12時間毎

30kg以上:30mg,12時間毎

d4Tは以下を引き起こすことがある:

  • ミトコンドリア毒性

  • 末梢神経障害

  • 脂肪萎縮症,高脂血症,高血糖

  • 膵炎

  • 乳酸アシドーシス,脂肪肝を伴う肝腫大(ddlと併用するとリスクが増大する)

d4Tは食事と無関係に使用できる。

フマル酸テノホビルジソプロキシル(TDF)

経口粉末剤:40mg/すりきり1杯

錠剤:150mg,200mg,250mg,300mg

2歳未満:推奨されない

2~12歳:8mg/kg,24時間毎~300mg,24時間毎,以下参照:

10~11kg:粉末2杯(80mg),24時間毎

12~13kg:粉末2.5杯(100mg),24時間毎

14~16kg:粉末3杯(120mg),24時間毎

17~18kg:粉末3.5杯(140mg)または150mg錠1錠,24時間毎

19~21kg:粉末4杯(160mg)または150mg錠1錠,24時間毎

22~23kg:粉末4.5杯(180mg)または200mg錠1錠,24時間毎

24~26kg:粉末5杯(200mg)または200mg錠1錠,24時間毎

27~28kg:粉末5.5杯(220mg)または250mg錠1錠,24時間毎

29~31kg:粉末6杯(240mg)または250mg錠1錠,24時間毎

32~33kg:粉末6.5杯(260mg)または250mg錠1錠,24時間毎

34kg:粉末7杯(280mg)または250mg錠1錠,24時間毎

35kg以上:粉末7.5杯(300mg)または300mg錠1錠,24時間毎

12歳以上かつ35kg以上:300mg錠1錠,24時間毎

TDFの忍容性は通常良好であるが,以下を引き起こすことがある:

  • ときに無力症,頭痛,下痢,悪心,嘔吐

  • 腎機能不全(ファンコニ症候群などの近位尿細管機能障害)

  • 骨密度低下

  • B型肝炎ウイルス感染症を合併している患者では,TDFを突然中止することに伴う肝炎の重度増悪

粉末製剤は苦味があり難溶性のため,液体ではなくアップルソースやヨーグルトなどの軟らかい食品に混ぜて投与すべきである。

TDFは食事と無関係に使用できる。

TDF粉末剤は付属の1gスプーンで計量すべきである。

ジドブジン(ZDV)

経口シロップ:10mg/mL

静注溶液:10mg/mL

カプセル:100mg

錠剤:300mg

生後0~6週:4mg/kg,12時間毎

生後6週~17歳:240mg/m2,12時間毎または体重に基づく用量:

4~8kg:12mg/kg,12時間毎

9~29kg:9mg/kg,12時間毎

30kg以上:300mg,12時間毎

18歳以上:300mg,12時間毎

ZDVは以下を引き起こすことがある:

  • 大球性貧血,顆粒球減少

  • 頭痛,倦怠感,食欲不振,悪心,嘔吐

  • 爪の色素沈着

  • 高脂血症,高血糖

  • 乳酸アシドーシス,脂肪肝を伴う肝腫大

  • ミオパチー

ZDVは食事と無関係に使用できる。

核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)

エファビレンツ(EFV)

カプセル:50mgおよび200mg

錠剤:600mg

3~17歳,体重に基づく用量:

10~14kg:200mg,24時間毎

15~19kg:250mg,24時間毎

20~24kg:300mg,24時間毎

25~32kg:350mg,24時間毎

33~39kg:400mg,24時間毎

40kg以上:600mg,24時間毎

18歳以上:600mg,24時間毎

EFVは以下を引き起こすことがある:

  • 発疹

  • 中枢神経系障害(例,傾眠,不眠症,異常な夢,錯乱);主に成人でみられ,しばしば時間とともに軽快する

  • 肝トランスアミナーゼ値の上昇

  • 催奇形性の可能性あり(妊娠可能な青年期および成人女性には慎重に使用すべきである)

EFVは空腹時(望ましくは就寝時)に投与すべきである。

エトラビリン(ETR)

錠剤:25mg,100mg,200mg

6歳未満:承認されていない

6歳以上18歳未満,体重に基づく用量:

16~19kg:100mg,12時間毎

20~24kg:125mg,12時間毎

25~29kg:150mg,12時間毎

30kg以上:200mg,12時間毎

ETRは以下を引き起こすことがある:

  • 悪心

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • 過敏反応(発疹,全身所見,肝不全など)

  • 多剤併用による薬物相互作用

ETRは多剤併用による薬物相互作用(特に他のARVとの相互作用)と関連があり,RTVブーストありのATV,TPV,またはFPVとの併用,およびブーストなしのプロテアーゼ阻害薬または他のNNRTIとの併用は避けるべきである。

ETRは食事とともに投与しなければならない。

ネビラピン(NVP)

懸濁剤:10mg/mL

錠剤:200mg

徐放錠:100mgおよび400mg

治療開始:年齢相応の用量を1日1回で14日間投与し,患者が耐えられれば1日2回に増量(有害反応の発生を減少させるため)

生後2週以上8歳未満:200mg/m2,12時間毎

8歳以上:120~150mg/m2,12時間毎(200mg,12時間毎まで,または徐放錠では400mg,24時間毎)

年長の小児または青年が有害作用なくNVP錠を1日2回服用している場合は,徐放錠を以下のように用いて1日1回投与に変更する:

0.58~0.83m2:1日1回200mg(100mg錠2錠)

0.84~1.16m2:1日1回300mg(100mg錠3錠)

1.17m2以上:1日1回400mg(400mg錠1錠)

NVPは以下を引き起こすことがある:

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • 症候性の肝炎(致死的な肝壊死を含む)

  • 多臓器病変およびショックの可能性を伴う重度の全身過敏反応症候群

発疹は投与開始後最初の6週間に最もよくみられるが,14日間のレジメン中に発疹が発生した場合は,発疹が消失するまで増量しない。

肝毒性は投与開始後最初の12週間に最もよくみられ,この期間は臨床モニタリングと臨床検査によるモニタリングを頻回に行い,その後も定期的に行うべきである;臨床的な肝炎が疑われる場合,肝トランスアミナーゼ値を検査する。

肝炎または過敏反応がみられた場合は,再投与しない。

NVPの投与が7日間以上中断された場合は,14日間のレジメンで再開すべきである。

NVPは食事と無関係に使用できる。

リルピビリン(RPV)

錠剤:25mg

18歳未満:承認されていない

18歳以上:25mg,24時間毎

RPVは以下を引き起こすことがある:

  • 抑うつ,気分変化,不眠症

  • 頭痛

  • 発疹

  • 多剤併用による薬物相互作用

RPVは食事(正常または高カロリーの食事)とともに投与しなければならない。

プロテアーゼ阻害薬

アタザナビル(ATV)

カプセル:100mg,150mg,200mg,300mg

薬物動態学的ブースターとしての低用量リトナビル(RTV)と併用する

6歳未満:承認されていない

6~17歳,体重に基づく用量:

15~19kg:ATV 150mg + RTV 100mg,24時間毎

20~39kg:ATV 200mg + RTV 100mg,24時間毎

40kg以上:ATV 300mg + RTV 100mg,24時間毎

18歳以上:ATV 300mg + RTV 100mg,24時間毎

ATVは以下を引き起こすことがある:

  • 無症候性の高間接ビリルビン血症(発生率30%),黄疸(発生率10%)

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

  • 心電図上のPR間隔延長( 正常心拍リズム

  • 腎結石症(まれ)

吸収を高めるため,ATVは食事とともに投与すべきである。

ダルナビル(DRV)

経口用懸濁剤:100mg/mL

錠剤:75mg,150mg,400mg,600mg

薬物動態学的ブースターとしての低用量RTVと併用する

3歳未満:使用しないこと

3~17歳および10kg以上,体重に基づく用量:

10kg:DRV 200mg + RTV 32mg,12時間毎(両剤とも液体として)

11kg:DRV 220mg + RTV 32mg,12時間毎(両剤とも液体として)

12kg:DRV 240mg + RTV 40mg,12時間毎(両剤とも液体として)

13kg:DRV 260mg + RTV 40mg,12時間毎(両剤とも液体として)

14kg:DRV 280mg + RTV 48mg,12時間毎(両剤とも液体として)

15~29kg:DRV 375mg + RTV 48mg,12時間毎(液体または錠剤として)

30~39kg:DRV 450mg + RTV 100mg,12時間毎(液体または錠剤として)

40kg以上:DRV 600mg + RTV 100mg,12時間毎(錠剤が望ましい)

18歳以上:DRV 600mg + RTV 100mg,12時間毎

DRVは以下を引き起こすことがある:

  • 下痢,悪心,嘔吐

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

肝臓および血液脳関門が未熟な幼若ラットで痙攣および死亡が認められていることから,DRVは3歳未満の小児に投与しないこと。

DRVはスルホンアミド系薬剤の成分を含むが,サルファ剤との交差反応の程度は不明である。

体重15~40kgの小児には,錠剤力価および液量の異なる複雑なレジメンが必要である(追加の患者教育を行うべきである)。

嗜好性を高めるため,20~40kgの小児では(RTVの用量が高くなるとしても)RTV 100mg錠でRTV内用液の代用としてもよい。

吸収を高めるため,DRVは食事とともに投与しなければならない。

ホスアンプレナビル(FPV)

経口用懸濁剤:50mg/mL

錠剤:700mg

薬物動態学的ブースターとしての低用量RTVと併用する

生後6カ月以上17歳以下:FPV 700mg + RTV 100mg,12時間毎までの体重に基づく用量:

11kg未満:FPV 45mg/kg + RTV 7mg/kg,12時間毎

11~14kg:FPV 30mg/kg + RTV 3mg/kg,12時間毎

15~19kg:FPV 23mg/kg + RTV 3mg/kg,12時間毎

20kg以上:FPV 18mg/kg + RTV 3mg/kg,12時間毎

18歳以上:FPV 700mg + RTV 100mg,12時間毎

FPVは以下を生じる可能性がある:

  • 下痢,悪心,嘔吐

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

  • 腎結石症(まれ)

  • 多剤併用による薬物相互作用

FPVはスルホンアミド系の成分を含むが,サルファ剤との交差反応の程度は不明である。

FPVは生後6カ月未満の小児での使用が承認されているが,薬物動態は不定である;多くの専門家は生後6カ月未満の小児では使用しないよう推奨している。

吸収を高めるため,FPVは食事とともに投与しなければならない。

インジナビル(IDV)

カプセル:100mg,200mg,400mg

薬物動態学的ブースターとしての低用量RTVと併用する

13歳未満:承認されていない

13歳以上:IDV 800mg + RTV 200mg,12時間毎

IDVは以下を引き起こすことがある:

  • 下痢,悪心,嘔吐

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

  • 結晶尿および症候性腎結石症がよくみられる(特に十分な水分補給がなされていない場合[発生率は小児で29%,成人で12%])

ブーストとしてのRTVの増量が必要である。

IDVは食事と無関係に使用できるが,腎結石症を最小限に抑えるために十分な水分補給が必要である。

ロピナビル/リトナビル(LPV/r)

内用液:80/20mg/mL(アルコール43%,プロピレングリコール15%含有)

フィルムコーティング錠:100/25mgおよび200/50mg

生後2週未満:使用しないこと

生後2週~12カ月:300mg(LPV成分)/m2(体表面積),12時間毎

1~17歳:230~300mg(LPV成分として;多くの専門家は高用量を推奨)/m2(体表面積),12時間毎(最高LPV 400mg,12時間毎)

18歳以上:LPV 400mg,12時間毎

LPV/rは以下を引き起こすことがある:

  • 消化管の不耐性(下痢,悪心,嘔吐)

  • 高血糖,高脂血症(特にトリグリセリド),脂肪分布異常

  • ときにPRおよびQT間隔の延長

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

生命を脅かす心毒性リスクがあるため,未熟児または日齢の低い新生児(すなわち,在胎42週未満または生後14日未満)には投与しないこと。

クリアランスが高いため,小児または青年に1日1回投与は推奨されない。

NVP,EFV,FPV,またはNFVを併用している場合は,増量が必要である。

LPV/rは食事と無関係に使用できるが,吸収を高め,味(味が非常に悪い)を隠すため,内用液は食事とともに投与すべきである。

ネルフィナビル(NFV)

錠剤:250mgおよび625mg

2歳未満:推奨されない

2~12歳:45~55mg/kg,12時間毎

13歳以上:1250mg,12時間毎

NFVは以下を引き起こすことがある:

  • 下痢

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

投与を容易にするために錠剤を少量の水に溶かしてもよい。

NFVは,食事または軽食とともに投与すべきである。

リトナビル(RTV)

内用液:80mg/mL(43%容量のアルコールを含有)

カプセル:100mg

錠剤:100mg

薬物動態学的ブースターとして,100mg,12時間毎(IDVまたはTPV併用時は200mg,12時間毎)

RTVは以下を引き起こすことがある:

  • 消化管の不耐性(下痢,悪心,嘔吐)

  • 高血糖,高脂血症(特にトリグリセリド),脂肪分布異常

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

高用量での消化管の不耐性のため,RTVは第1選択のARVとしてはまれにしか使用されない。

RTVは食事とともに投与された場合,最もよく吸収される。錠剤はカプセルより味が良いが,いずれも味の悪い液剤より味が良い。内用液は味を隠すために特定の食品(例,チョコレートミルク,アイスクリーム,ピーナツバター)とともに投与してもよい。

サキナビル(SQV)

硬カプセル:200mg

フィルムコーティング錠:500mg

薬物動態学的ブースターとしての低用量RTVと併用する

16歳未満:不明

16歳以上:SQV 1000mg + RTV 100mg,12時間毎

SQVは以下を引き起こすことがある:

  • 消化管の不耐性(下痢,悪心,嘔吐)

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

  • ときにPRおよびQT間隔の延長

吸収を最大限に高めるため,SQVは食事とともに投与しなければならない。

tipranavir(TPV)

内用液:100mg/mL(1mL当たりビタミンE 116IUを含有)

カプセル:250mg

薬物動態学的ブースターとしてのRTVと併用する

2歳未満:承認されていない

2~17歳:TPV 14mg/kg + RTV 6mg/kg,12時間毎(最高TPV 500mg + RTV 200mg,12時間毎)

18歳以上:TPV 500mg + RTV 200mg,12時間毎

TPVは以下を引き起こすことがある:

  • 消化管の不耐性,下痢,悪心,嘔吐

  • 発疹

  • 高血糖,高脂血症,脂肪分布異常

  • ときに出血増加(致死的となりうるまれな頭蓋内出血も含む)

  • 多剤併用による薬物相互作用

TPVはスルホンアミド系の成分を含むが,サルファ剤との交差反応の程度は不明である。

TPVはARV投与歴のない患者には推奨されない。

内用液中のビタミンE濃度はビタミンEの1日栄養所要量よりも高いため,追加のビタミンE補給は避けるべきである。

RTVブーストの増量が必要である。

TPVは食事とともに投与すべきである。

侵入阻害薬(CCR5阻害薬)

マラビロク(MVC)

錠剤:150mgおよび300mg

16歳未満:不明

16歳以上:150mg,300mg,または600mg,12時間毎,CYP3A誘導薬または阻害薬に応じて(添付文書を参照すべきである)

MVCは以下を引き起こすことがある:

  • 咳嗽,発熱,発疹,腹痛

  • 肝毒性(重度の発疹や有意なアレルギー反応が先行することがある)

  • 起立性低血圧(特に重度腎機能不全のある患者)

  • 多剤併用による薬物相互作用

MVCはCCR5指向性HIVにのみ効果的であるため,HIV指向性検査が使用前に必要である。

MVCは食事とともに投与すべきである。

膜融合阻害薬

enfuvirtide(ENF,T20)

注射用凍結乾燥粉末:90mg/mLで投与

6~15歳:2mg/kg,皮下,12時間毎(最高90mg,皮下,12時間毎)

16歳以上:90mg,皮下,12時間毎

ENFは以下を引き起こすことがある:

  • 88~98%の患者で局所注射部位反応(例,疼痛,不快感,硬結,紅斑,結節,斑状出血)(注射後に氷冷または加温するか,軽くもむことにより,不快感および反応を軽減できる)

  • 過敏反応(1%未満の発生率で,発熱,倦怠感,悪心,嘔吐,悪寒・振戦,ときに肝トランスアミナーゼ上昇)

    過敏反応がみられた場合は,再投与しない。

ENFは食事と無関係に使用できる。

インテグラーゼ阻害薬

ドルテグラビル(DTG)

錠剤:50mg

12歳未満:推奨されない

12歳以上:50mg,12時間毎または24時間毎,併用されるUGT1AまたはCYP3A誘導薬または阻害薬に応じて(添付文書を参照すべきである)

DTGは以下を引き起こすことがある:

  • 不眠症

  • 頭痛

DTGは食事と無関係に使用できるが,2価陽イオンを含有する経口制酸薬,緩下薬,スクラルファート,鉄補給剤,カルシウム補充剤,または緩衝剤を使用している場合は,それらの2時間前または6時間後に投与すべきである。

エルビテグラビル(EVG)

錠剤:150mg(FTC,TDF,およびコビシスタット[COBI]との固定用量配合錠としてのみ利用可能)

18歳未満:推奨されない

18歳以上:配合錠1錠,24時間毎

EVGは以下を引き起こすことがある:

  • 下痢,悪心

  • 腎機能不全,骨密度低下(TDFを参照)

  • B型肝炎ウイルス感染症を合併している患者では,FTCまたはTDFを含有する配合剤を突然中止することに伴う肝炎の重度増悪

EVGは薬物動態学的ブースターのコビシスタット(COBI)と配合される。

EVGは食事とともに投与すべきである。

ラルテグラビル(RAL)

チュアブル錠:25mgおよび100mg

フィルムコーティング錠:400mg

2歳未満:推奨されない

2~11歳:体重に基づく用量(錠剤数および錠剤種)

10~13kg:75mg,12時間毎(25mgチュアブル錠3錠)

14~19kg:100mg,12時間毎(100mgチュアブル錠1錠)

20~27kg:150mg,12時間毎(100mgチュアブル錠1.5錠)

28~39kg:200mg,12時間毎(100mgチュアブル錠2錠)

40kg以上:300mg,12時間毎(100mgチュアブル錠3錠)

12歳以上:400mg,12時間毎(400mgフィルムコーティング錠1錠)

RALは以下を引き起こすことがある:

  • 悪心,頭痛,下痢,疲労

  • 発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群を含む)

  • クレアチンホスホキナーゼ上昇;まれに横紋筋融解症

チュアブル錠は全体を咀嚼または嚥下するが,フィルムコーティング錠との互換性はない。

RALは食事と無関係に使用できる。

固定用量配合剤

ZDV/3TC(Combivir®

配合錠:ZDV 300mg + 3TC 150mg

30kg以上:1錠,12時間毎

個々の薬剤を参照

ZDV/3TC/ABC(Trizivir®

配合錠:ZDV 300mg + 3TC 150mg + ABC 300mg

40kg以上:1錠,12時間毎

個々の薬剤を参照

3TC/ABC(Epzicom®,Kivexa®

配合錠:3TC 300mg + ABC 600mg

16歳以上かつ50kg以上:1錠,24時間毎

個々の薬剤を参照

FTC/TDF(Truvada®

配合錠:FTC 200mg + TDF 300mg

12歳以上かつ35kg以上:1錠,24時間毎

個々の薬剤を参照

FTC/TDF/EFV(Atripla®

配合錠:FTC 200mg + TDF 300mg + 600mg EFV

12歳以上かつ40kg以上:1錠,24時間毎

個々の薬剤を参照

FTC/TDF/RPV(Complera®

配合錠:FTC 200mg + TDF 300mg + RPV 25mg

18歳以上:1錠,24時間毎

個々の薬剤を参照

FTC/TDF/EVG/COBI(Stribild®

配合錠:FTC 200mg + TDF 300mg + EVG 150mg + COBI 150mg

18歳以上:1錠,24時間毎

個々の薬剤を参照

*有害作用,他の用量(特に固定用量配合剤の情報),および薬物相互作用に関する情報については,継続的に更新されているWorking Group of the Office of AIDS Research CouncilによるDepartment of Health and Human Services Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of HIV-Infected Childrenを参照のこと。Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection(2012年11月5日付)を参照のこと。www.aidsinfo.nih.govで入手可能である。

フマル酸テノホビルジソプロキシルは機能的にはNRTIに分類されるが,その化学構造から,実際には核酸系逆転写酵素阻害薬である。

ジドブジンは在胎35週未満の未熟児では減量すべきである;Working Group of the Office of AIDS Research CouncilによるDepartment of Health and Human Services Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of HIV-Infected Childrenを参照のこと。Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection(2012年11月1日付)を参照のこと。www.aidsinfo.nih.govで入手可能である。

ARV = 抗レトロウイルス薬,RTV = リトナビル。

適応

小児に対するARTの開始条件は成人のそれと同様であるが,全く同じというわけではなく,小児での治療開始は主に,年齢と一部の状況では血漿中のHIVウイルス量を加味した免疫学的および臨床的基準に従って決定される。治療の目標は成人の場合と同様に,最小限の薬物毒性でHIVの複製を抑制する(血漿中HIV-RNAを検出するPCR法によるウイルス量で判定する)ことと,年齢相応のCD4陽性細胞の絶対数および割合を維持または達成することである。治療開始を決定するに先立ち,医療従事者は養育者と患児にARVによる治療を遵守する準備ができているかを十分に評価し,治療に伴う有益性とリスクについて話し合うべきである。治療戦略に関する専門家の意見は急速に変化するため,専門医へのコンサルテーションが強く勧められる。

治療開始基準は,年齢および臨床基準によって異なる( HIVに感染した小児および青年における抗レトロウイルス療法の開始適応)。また治療の基準は,各地域の処方集および世界各国で利用可能な臨床検査モニタリングの資源によっても異なってくる。この考察の中で提示している推奨は,米国の小児および青年を対象としたものであり,WHOは5歳未満の小児に対して様々な優先順位でARTを推奨している。

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HIVに感染した小児および青年における抗レトロウイルス療法の開始適応

年齢

基準

推奨*

生後12カ月未満

臨床症状,免疫状態,またはウイルス量に関係なく

治療する

1歳以上3歳未満

AIDSまたは有意なHIV関連症状を認める(CDC臨床カテゴリーBおよびC;ただし重篤な細菌感染症が1回のみのカテゴリーBは除く— 13歳未満のHIV感染児における臨床カテゴリー

治療する

CD4陽性細胞数が1000/μL未満またはCD4陽性細胞の割合が25%未満である

治療する

無症状であるか軽度の症状を認め(CDC臨床カテゴリーA,カテゴリーN,または重篤な細菌感染症1回のみのカテゴリーB),かつ CD4陽性細胞数が1000/μL以上またはCD4陽性細胞の割合が25%以上である

治療を考慮する(特に血漿中HIVウイルス量が100,000コピー/mLを超える場合)

3歳以上5歳未満

AIDSまたは有意なHIV関連症状を認める(CDC臨床カテゴリーBおよびC;ただし重篤な細菌感染症が1回のみのカテゴリーBは除く)

治療する

CD4陽性細胞数が750/μL未満またはCD4陽性細胞の割合が25%未満である

治療する

無症状であるか軽度の症状を認め(CDC臨床カテゴリーA,カテゴリーN,または重篤な細菌感染症1回のみのカテゴリーB),かつCD4陽性細胞数が750/μL以上またはCD4陽性細胞の割合が25%以上である

治療を考慮する(特に血漿中HIVウイルス量が100,000コピー/mLを超える場合)

5歳以上13歳未満

AIDSまたは有意なHIV関連症状を認める(CDC臨床カテゴリーBおよびC;ただし重篤な細菌感染症が1回のみのカテゴリーBは除く)

治療する

CD4陽性細胞数が繰り返し500/µL以下となる

治療する(特にCD4陽性細胞数が350/µL未満の場合;350~500/µLの場合についてはエビデンスがやや弱い)

無症状であるか軽度の症状を認め(CDC臨床カテゴリーA,カテゴリーN,または重篤な細菌感染症1回のみのカテゴリーB),かつCD4陽性細胞数が500/μLを超えている

治療を考慮する(特に血漿中HIVウイルス量が100,000コピー/mLを超えるか年齢が13歳以上の場合)

13歳以上

臨床症状,免疫状態,またはウイルス量に関係なく

治療する(特にCD4陽性細胞数350/µL未満または性的に活動的な青年の場合[成人に対する推奨と同様])

*治療開始の決定に先立ち,医療従事者は養育者(および十分な年齢であれば患児)と以下の問題について話し合うべきである:ARVの投与に対する一貫したアドヒアランスを維持するための計画,治療に伴う潜在的な有益性とリスク,多剤併用ARTを開始するための準備。治療開始を一時的に延期する患児には,綿密な臨床的フォローアップが必要である。開始を推奨するべき因子としては,生後12カ月未満,HIV RNA量の増加(例,100,000コピー/mLに近づく),年齢に応じた治療閾値付近までのCD4陽性細胞の減少または割合低下,臨床症状の出現などが挙げられる。

ARV = 抗レトロウイルス薬;ART = 抗レトロウイルス療法;CDC = Centers for Disease Control and Prevention(米国疾病予防管理センター)。

有害作用,他の用量(特に固定用量配合剤に関する情報),および薬物相互作用に関する情報については,継続的に更新されているWorking Group of the Office of AIDS Research CouncilによるDepartment of Health and Human Services Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of HIV-Infected Childrenを参照のこと。Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection, November 5, 2012. Available at www.aidsinfo.nih.gov/guidelines.

アドヒアランス

治療の成功は,複雑となりうる投薬レジメンを家族および患児が遵守できる場合にのみ達成できる。アドヒアランス不良は,HIVのコントロール失敗につながるだけでなく,薬剤耐性をもつHIV株を選択することにより,将来の治療選択肢を制限することにもなる。アドヒアランスを阻む障壁には,治療開始前に対処しておくべきである。障壁としては,錠剤または懸濁剤の入手可能性および嗜好性,有害作用(現在の治療との薬物相互作用に起因するものなど),食事とともに摂取または空腹時摂取の必要性などの薬物動態学的な因子,服用における患児の他者への依存度(HIVに感染した親は自身の服薬を覚えておくことが困難な場合がある)などが挙げられる。より新しい1日1回または1日2回投与の併用レジメンと味が改良された小児用製剤がアドヒアランス向上に役立つ可能性がある。

青年では,周産期のHIV感染か性行為や注射薬物使用による後天的なHIV感染にかかわらず,アドヒアランスについて特に問題がみられる。青年には,自尊心の低さ,無秩序で混沌とした生活習慣,病気のために仲間外れになることへの恐れ,ときに家族の支えがないことなど,アドヒアランスを妨げる可能性のある複雑な生物心理社会的問題がみられる。さらに,青年は無症状の感染期間中にも投与が必要である理由を発達過程上理解できないこともあり,有害作用について強く心配することもある。医療体制との頻回な接触にもかかわらず,周産期感染者の青年は自身のHIV感染症を恐れたり否定したりし,医療チームが提供する情報を疑い,成人医療ケア体制への移行がうまく進まないこともある( 乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 成人医療への移行)。青年に対する治療レジメンは,これらの問題とバランスをとる必要がある。目標は青年患者に最大限強力なARVレジメンを遵守させることであるが,患者の成熟度と支援体制を現実的に評価することにより,日和見感染症の回避に焦点を置いた治療計画を開始でき,生殖医療サービス,住居,および良好な学校生活に関する情報を提供できる可能性がある。青年が適切な支援を受けているとケアチームが確信する場合は,どのARVが最良かを正確に決定することができる。

モニタリング

薬物毒性や治療失敗を確認するために,臨床所見および検査所見のモニタリングが重要となる。

  • 3~4カ月毎:身体診察,血算,電解質,肝および腎機能検査,アミラーゼやリパーゼ(ジダノシンなど膵毒性のある薬剤を服用している場合)などの血清生化学検査値,HIV RNA量,ならびにリンパ球サブセット

  • 6~12カ月毎:脂質プロファイル,総タンパク/アルブミン,カルシウム/リン,アミラーゼおよびリパーゼ(膵毒性のある薬剤を服用していない場合),尿検査

治療の状態が安定している場合,すなわち,12カ月以上にわたりHIV RNA検出不能で,年齢で調整したCD4陽性リンパ球の絶対数および割合が正常であり,毒性の臨床徴候がなく,家族支援の体制が安定している場合には,多くの医師は臨床検査評価の間隔を6カ月間まで延長している。しかしながら,アドヒアランスを検討し,成長および臨床症状をモニタリングして,必要であればARVの体重に基づく用量を更新する機会を得るため,3カ月毎の来院が有用である。

予防接種

いくつかの例外はあるものの,HIV感染児にもルーチンの小児期予防接種計画( 小児期の予防接種スケジュール)が推奨される。主な例外としては,ウイルスおよび細菌の生ワクチン(例,BCG)は避けるか,特定の状況でのみ使用すべきという点が挙げられる( HIV感染児における生ワクチンの接種に対する考慮事項)。さらに,一連のB型肝炎ワクチンの最終接種から1~2カ月後,HIV感染児には,B型肝炎表面抗原に対する抗体(HBs抗体)が防御値(10 mIU/mL以上)か測定検査を行うべきである。18歳未満の小児および青年のHIV感染者は,13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV-13)と肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV)の接種を受けるべきである。特定の曝露後投与に関する推奨にも相違点がある。

経口ポリオ生ワクチンと弱毒生インフルエンザワクチンは推奨されないが,不活化インフルエンザワクチンは毎年接種すべきである。

麻疹・ムンプス・風疹混合(MMR)生ワクチンと水痘生ワクチンは,重度の免疫抑制を示している小児には接種してはならない。しかしながら,MMRおよび水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ワクチン(別々に接種する;弱毒化水痘ウイルスが高力価のMMRVとしては併用しないこと。MMRVの安全性はこの集団では確認されていない)は,ルーチンの接種スケジュールに従っている無症状の患者,およびHIV症状があったが重度の易感染状態ではない患者(すなわち,CD4陽性T細胞の割合が15%以上など,カテゴリー3[ 13歳未満のHIV感染児における年齢に応じたCD4陽性T細胞の絶対数および総リンパ球数に対する割合に基づく免疫カテゴリー]ではない患者)には接種することができる。可能であれば,症状のある患者では免疫反応が得られる可能性を高めるため,すなわち免疫機能が低下する前に,生後12カ月時点でMMRおよびVZVワクチンを開始すべきである。できるだけ早く抗体陽転を誘導するため,それぞれの2回目の接種は4週以降に速やかに行う(一般的に13歳未満の非感染児での水痘ワクチンの接種間隔は3カ月が望ましいとされている)。アウトブレイク時など,麻疹曝露のリスクが高まっている場合は,生後6~9カ月など早い時期に麻疹ワクチンを接種しておくべきである。

ロタウイルスの経口生ワクチンは,HIV曝露またはHIV感染のある乳児にもルーチンの接種スケジュールに従って接種することができる。症候性の乳児患者における安全性および効力のデータは限られているものの,予防接種は全体的な便益につながる可能性が非常に高く,とりわけロタウイルス感染症による死亡率が有意に高い地域では特にその傾向が強い。

米国は結核有病率が低い地域であるため,BCGワクチンの接種は推奨されない。しかしながら,特に結核有病率の高い発展途上国など世界の別の地域では,BCGがルーチンに接種されており,それらの国の多くは妊娠可能な女性におけるHIV有病率も高くなっている。細菌生ワクチンとしてのBCGは,HIV感染児にとっていくらか有害であるが,非HIV感染児と一部のHIV感染児の結核感染を予防する可能性が高い。したがって,WHOは現在では,たとえ無症状でもHIV感染が判明している小児にはBCGを接種すべきでないと推奨している。しかしながら,特定の地域では,結核とHIV感染症の相対的な発生率に応じて,HIVに感染した母親から出生したHIV感染状態が不明の無症状の乳児にBCGが接種されることもある。BCGはまた,HIV感染状態が不明の女性から出生した無症状の乳児にも接種することがある。

世界の一部の地域では,黄熱ワクチンが小児にルーチン接種されているが,これは重度の免疫抑制がない小児に限定して接種すべきである。

症候性のHIV感染児は通常,ワクチンに対する免疫反応が乏しいため,ワクチンで予防可能な疾患(例,麻疹,破傷風,水痘)に曝露した際には,予防接種歴に関係なく感受性が高いと考えるべきである。そうした小児は免疫グロブリン静注による受動免疫を受けるべきである。免疫グロブリン静注療法は,麻疹に曝露した免疫のない家族全員にも行うべきである。

症候性のHIV感染者と生活する血清反応陰性の小児は,経口ポリオワクチンではなく不活化ポリオウイルスワクチンの接種を受けるべきである。インフルエンザ(不活化または生),MMR,水痘,およびロタウイルスワクチンについては,これらのワクチンウイルスは一般的にワクチンによって伝播することがないため,通常どおりに接種することができる。家庭内の成人接触者は,HIV感染者にインフルエンザを感染させるリスクを低減するため,毎年インフルエンザワクチン(不活化または生)の接種を受けるべきである。

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HIV感染児における生ワクチンの接種に対する考慮事項

生ワクチン

備考

BCG

米国では推奨されていない;国際的にはHIV感染状態が不明でHIVに曝露した新生児に接種されることがある( 予防接種

経口ポリオワクチン

米国では推奨されていない;ルーチンの接種スケジュールに従って,代わりに不活化ポリオワクチンを接種する*

弱毒生インフルエンザ(LAI)ワクチン

推奨されない;ルーチンの接種スケジュールに従って,代わりに不活化ワクチンを接種する*

麻疹・ムンプス・風疹混合(MMR)ワクチン

CD4陽性T細胞の割合が15%以上の小児には接種することができる

生後12カ月に接種し,その1~3カ月以内に2回目を接種することにより,HIVによる免疫機能の低下が生じる前に反応が得られる可能性が高まる

副反応を最小限に抑えるため,MMRVワクチンとしての接種よりも,MMRワクチンと水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ワクチンを別に接種するのが望ましい

麻疹曝露のリスクが高い(例,アウトブレイク中)場合は,より早い時期(例,生後6~9カ月)に接種するが,その接種はルーチンの接種スケジュールの一部とはみなされない(すなわち,生後12カ月に再度開始する)。

ロタウイルス,弱毒生ワクチン

現時点での限られたエビデンスからは,ワクチンの便益はリスクを上回る可能性が高いことが示唆されている。

水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)

CD4陽性T細胞の割合が15%以上の小児には接種することができる

生後12カ月に接種し,その1~3カ月以内に2回目を接種することにより,HIVによる免疫機能の低下が生じる前に反応が得られる可能性が高まる

副反応を最小限に抑えるため,MMRVワクチンとしての接種よりも,MMRワクチンと水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ワクチンを別に接種するのが望ましい

*通常の小児予防接種スケジュールに従って接種する( 0~6歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュールおよび 7~18歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュールを参照)。

AAP = American Academy of Pediatrics;ACIP = Advisory Committee on Immunization Practices;MMRV = 麻疹・ムンプス・風疹・水痘。

成人医療への移行

若年のHIV感染者が小児対象の医療モデルから成人対象の医療モデルへと移行するには,時間と事前計画が必要になる。この過程は積極的かつ継続的なものであり,単に成人を対象とする医療機関に1度紹介すれば済む問題ではない。小児対象の医療モデルは家族を中心とする傾向があり,ケアチームには医師,看護師,ソーシャルワーカー,および精神医療の専門職で構成される集学的チームが含まれ,周産期感染の若年者は出生以来そのようなチームによるケアを受けてきたことになる。対照的に,成人を対象とする典型的な医療モデルは,個人を中心とする傾向があり,関係する医療従事者は個々の医療機関におり,何回もの受診を必要とする。成人対象の医療機関の医療従事者は,しばしば多数の患者を管理しており,受診の遅れや受診忘れ(青年でよくみられる)への対応はより厳しいものとなる。最後に,青年または若年成人における保険適用範囲の変化も医療の移行を複雑にする要因となりうる。数カ月かけて計画的に移行を進め,かつ小児医療および成人医療の従事者と青年を話し合わせ,双方合同での診察に青年を受診させることにより,移行がスムーズとなり,成功の可能性を高めることができる。HIVに感染した若年者の成人医療への移行については,現在いくつかのリソースがAmerican Academy of Pediatrics(Policy Statement: Transitioning HIV-Infected Youth Into Adult Health Careを参照)およびNew York State Department of Health AIDS Institute (Transitioning HIV-Infected Adolescents Into Adult Careを参照)で利用可能となっている。

予防

曝露後予防については, ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 曝露後予防(PEP)を参照のこと。

周産期感染の予防

出生前の適切なARTは,母体を至適な健康状態とし,母子感染を予防し,子宮内での薬物毒性を最小限に抑えることを目指すものである。ARVおよびHIV検査が容易に利用できる米国やその他の国々では,ARVによる治療が全てのHIV感染妊婦に対する標準となっている( ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 治療)。陣痛が発来した妊婦の迅速HIV検査により,HIV血清状態の記録がなくても,こうした処置の即時開始が可能となる。

全てのHIV感染妊婦は,母子感染を予防し,かつ自身の健康のため,多剤併用ARTを妊娠14~34週に開始すべきである。妊娠はARV併用療法レジメンの禁忌ではないが,エファビレンツの使用は第1トリメスター中は一般に禁忌である。ほとんどの専門家は,すでに多剤併用ARTを受けているHIV感染妊婦は第1トリメスターでもその治療を継続すべきであると考えている。代替法は,第2トリメスター開始まで全ての治療を中止し第2トリメスター開始時に再開することである。

ARV経口併用療法は妊娠中を通して継続され,静注ZDVは陣痛中に最初の1時間は2mg/kg,その後は分娩まで1mg/kg/時で静脈内投与される。多剤併用ARTを受けて分娩間近の時期に血漿中HIV RNA量が400コピー/mL未満になった女性には静注ZDVは必要ないと考える専門家もいれば,ウイルス学的コントロールの程度とは関係なく,その使用を推奨する専門家もいる。分娩直後には,妊娠前に治療を受けていなかった母親への治療を継続するかを決定できる。

満期新生児には,生後6週間にわたりZDV 4mg/kgを12時間毎に投与する。このレジメンは乳児予防のバックボーンであり,HIV感染女性から出生した全ての乳児に対し,その女性のウイルス学的コントロールの程度とは無関係に用いられる。しかしながら,ウイルス学的コントロールが不良の場合は,追加の介入を考慮する。

陣痛発来前の待機的帝王切開は,母体ウイルス量が1000コピー/mLを超える場合に推奨される。陣痛がすでに始まっている場合,帝王切開が母子感染のさらなる減少に寄与するか否かはあまり明らかではない。

陣痛がみられる未治療のHIV感染妊婦には,ARTを直ちに開始する。女性とその乳児に対して前述と同様にZDVを投与する(すなわち,陣痛および分娩中の女性には静注で,乳児には経口で投与する)。多くの専門家はこのような場合に追加のARVを推奨するが,生後14日未満の乳児に対し安全かつ効果的と知られているARVは非常に少なく(特にジドブジン,ネビラピン,ラミブジン,およびエムトリシタビン),未熟児で利用可能な投与データがある薬剤はさらに少ない。最近の臨床試験データでは,6週間の経口ジドブジンと生後数日間のネビラピン数回投与併用によって,出産前治療を何も受けていなかった女性から出生した乳児での母子感染が有意に減少したと示唆されている。小児HIVまたは母体HIV感染の専門家に直ちに相談すべきである(www.aidsinfo.nih.govまたはwww.nccc.ucsf.eduの情報を参照)。

ARTを受けるか否かの最終決定は現在も妊婦の判断に任されているが,この治療法について証明された便益が胎児毒性という理論上のリスクをはるかに上回っていることは強調しておくべきである。

HIV感染女性の母乳栄養(または母乳バンクへの提供)は,安全で低価格な代替乳が容易に入手できる米国やその他の国々においては,禁忌である。しかしながら,感染症や低栄養が幼児期死亡の主要な原因となっていて,かつ安全な乳児用調製乳を低価格で入手できない国々においては,呼吸器および消化管感染による死亡リスクを低下させる母乳栄養による防御効果がHIV感染のリスクを相殺する場合がある。このような発展途上国では,HIVに感染した母親は生後6カ月間は母乳を与え,その後は速やかに離乳食へ移行するようにWHOは推奨している。

青年の感染予防

青年は特にHIV感染のリスクが高いため,教育を受けるとともに,HIV検査を受けて自身の血清状態を知っておくべきである。教育には,感染に関する情報,感染による影響,ならびにリスクの高い行動の自制や性的に活動的である青年であれば安全な性行為(例,コンドームの正しい一貫した使用[ バリア法 : コンドーム])などの予防戦略を含めるべきである。HIV感染リスクが高い青年(特に人口統計学上,最速で増加しつつある米国の若年新規HIV感染者である男性間性交を行う黒人およびヒスパニックの青年男性)を対象とした予防対策を講じるべきであり,全ての青年がリスクを低減するための教育を受けるべきである。

米国のほとんどの州では,検査やHIV血清状態に関する情報の開示にインフォームド・コンセントが必要とされている。患者の同意を得ることなくセックスパートナーにHIV感染状態を開示することに関する決定は,パートナーへの開示後の患者に対するドメスティックバイオレンスの可能性,パートナーのリスク状態の程度,リスクを疑って予防処置を講じる妥当な理由がパートナーにあるか,ならびに,そのような情報を保留または開示する法的要件の有無に基づいて判断すべきである。さらなる考察については,www.hivguidelines.orgまたはwww.aidsinfo.nih.gov.を参照のこと。

日和見感染症の予防

特定のHIV感染児には,ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎およびM. avium complex感染症の予防を目的とする,予防的薬物療法が推奨される。その他の微生物(サイトメガロウイルス,真菌,トキソプラズマなど)による日和見感染症の予防については,データが限られている。これらおよびその他の日和見感染症の予防に関するガイダンスは,www.aidsinfo.nih.govでも入手可能である。

ニューモシスチス( Pneumocystis)肺炎の予防は以下の場合に適応となる:

  • 6歳以上のHIV感染児でCD4陽性細胞数が200/mL未満またはCD4陽性細胞の割合が15%未満である場合

  • 1~5歳のHIV感染児でCD4陽性細胞数が500/mL未満またはCD4陽性細胞の割合が15%未満である場合

  • CD4陽性細胞の絶対数および割合を問わず,生後12カ月未満のHIV感染児(1歳時にCD4陽性細胞の絶対数および割合に基づき予防の必要性を再評価する)

  • HIV感染の女性から出生した乳児(生後4~6週に開始),HIV感染が暫定的に否定できる(生後2週以上で1回と生後4週以上で1回の計2回のウイルス学的検査陰性により確認) か,確定的に否定される(生後1カ月以上で1回と生後4カ月以上で1回の計2回のウイルス学的検査陰性により確認)まで(注 :HIV感染を否定するこれらの定義の妥当性が確認されるまでは,母乳を与えてはならない。

多剤併用ARTによる免疫再構築が起こった場合,6カ月以上にわたり多剤併用ARTを受け,かつ連続3カ月以上にわたりCD4陽性細胞の絶対数および割合が前述の治療閾値より高く維持されているHIV感染児には,ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎に対する予防の中止を考慮する。その後,3カ月に1回以上の頻度でCD4陽性細胞の絶対数および割合を再評価し,当初の基準に達した場合は予防を再開すべきである。

年齢を問わず,ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎の予防における第1選択の薬剤はトリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)TMP 75mg/SMX 375mg/m2,経口,1日2回,連続3日/週(例,月曜,火曜,水曜)で,代替スケジュールは同用量の1日2回連日投与,同用量の1日2回隔日投与,または2倍量(TMP 150mg/SMX 750mg/m2)の1日1回経口投与,連続3日/週である。体重に基づく用量(TMP 2.5~5mg/SMX 12.5~25mg/kg,1日2回経口投与)の方が使用が容易と感じる専門家もいる。

TMP/SMXに耐えられない患者には,ジアフェニルスルホン2mg/kg(100mgを超えないこと),経口,1日1回が代替となる(特に5歳未満の患者)。アトバコン経口剤の連日投与またはペンタミジンエアロゾル(5歳以上の小児には専用吸入器により300mg)の月1回投与が別の代替法である。ペンタミジンの静注剤も使用されているが,両剤とも効果が低く,より毒性が強い。

Mycobacterium avium complex感染症の予防は以下の場合に適応となる:

  • 6歳以上の小児でCD4陽性細胞数が50/mL未満の場合

  • 2~6歳の小児でCD4陽性細胞数が75/mL未満の場合

  • 1~2歳の小児でCD4陽性細胞数が500/mL未満の場合

  • 1歳未満の小児でCD4陽性細胞数が750/mL未満の場合

アジスロマイシン週1回またはクラリスロマイシン連日も第1選択の薬剤であり,リファブチン連日が代替薬である。

要点

  • 乳児および小児のHIV感染例は,その大半が出生前または出生時の母子感染か母乳栄養によって発生する。

  • 母親に対する抗レトロウイルス療法により,母子感染の発生率は約25%から1%未満まで低下する。

  • 生後18カ月未満の小児は,RNA定量検査(例,RNAのtranscription-mediated amplification法)またはDNA PCR検査により診断する。

  • 生後18カ月以上の小児は,第4世代のHIV-1/2抗原抗体同時検査に続いて第2世代のHIV-1/2抗体鑑別検査および必要に応じてHIV-1 RNA定量検査を行う手順により診断する。

  • 生後12カ月未満および13歳以上の全ての感染児のほか,これら以外の年齢で有意な症状がみられ,CD4陽性細胞数が低い(特にHIV RNA量が高い場合)小児を治療対象とする。

  • 多剤併用ARTでは,アドヒアランス向上のため,可能であれば固定用量配合剤を使用するのが望ましい。

  • 年齢とCD4陽性細胞数に基づいて日和見感染症の予防を行う。

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