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閉経

執筆者:

Margery Gass

, MD, International Menopause Society

最終査読/改訂年月 2016年 1月

閉経は,卵巣機能の低下による生理的または医原性の月経停止(無月経)である。症状としては,ホットフラッシュや外陰・腟の萎縮などがある。診断は1年間の無月経を基準として臨床的に行う。症状に対して治療を行う場合がある(例,生活習慣の改善,補完代替医療,および/またはホルモン療法)。

米国における生理的閉経の平均年齢は52歳である。喫煙,高地での生活,低栄養などの因子によって閉経年齢が低下する場合もある。

閉経期(perimenopause)とは,最終月経前の数年間(大きなばらつきがある)と最終月経後の1年間のことを指す。典型的には最も症状が現れる期間である。

閉経移行期(menopausal transition)(閉経期のうち最終月経までの数年間)は,閉経パターンの変化を特徴とする。

生理

卵巣が老化するにつれ,下垂体ゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)への反応が低下するが,最初に卵胞期が短くなり(月経周期が短く不規則になる),排卵が少なくなり, プロゲステロン産生量が減少する( 正常な月経周期に生じる,下垂体ゴナドトロピン,エストラジオール(E 2 ),プロゲステロン(P)および子宮内膜の理想的な周期的変化)。二重排卵やluteal out-of-phase(LOOP)現象(黄体期にFSHサージが起こり,卵胞が早期に形成されること)が起こり,ときに エストラジオール値が正常範囲を上回る。生存卵胞数は減少し,最終的には残存している少数の卵胞も反応しなくなり,卵巣は エストラジオールをほとんど産生しなくなる。 エストロゲンは末梢組織(例,脂肪,皮膚)においてもアンドロゲン(例,アンドロステンジオン, テストステロン)から産生される。しかしながら,総 エストロゲン値ははるかに低くなり,エストロンがエストラジオールに代わり最も代表的な エストロゲンとなる。

アンドロステンジオン値は閉経前後に半減する。

テストステロンの減少は若年成人期に始まるが,閉経後卵巣の間質および副腎により相当量の分泌が持続するため,閉経期に急速に進むことはない。

卵巣から分泌されるインヒビンおよび エストロゲン(これらは下垂体からのLHおよびFSH分泌を抑制する)の値が低下すると,循環血中のLHおよびFSH値が実質的に増加する。

急速な骨量減少は, エストロゲンが減少し始めてから最初の2年間に起きる。急速な骨量減少が起こるこの期間以降は,女性の加齢による骨量減少の速度は男性とほぼ同様である。

早発卵巣不全(原発性卵巣不全)は,医原性以外の卵巣不全によって40歳未満で月経が停止した状態である。原因は主に遺伝的なものと考えられている。

症状と徴候

月経周期の変化は通常40代で始まり,周期の長さが変動する。連続する月経周期の長さに7日間以上の差がみられる状況が長期間持続する場合には,early menopausal transitionとされる。2回以上月経周期がみられない場合は,late menopausal transitionとされる。

上記以外で閉経期にみられる以下のような症状や徴候には, エストロゲン濃度の著明な変動が関与している可能性がある:

  • 乳房の圧痛

  • 経血量の変化

  • 気分の変動

  • 月経時片頭痛の増悪

症状は,6カ月~10年を超えて続くこともあり,全くない場合から重度の場合まで様々である。

血管運動症状

血管運動障害(vasomotor instability)に起因するホットフラッシュ(盗汗)は,75~85%の女性にみられ,通常は月経停止前から始まる。ホットフラッシュの持続期間は以下の通りである:

  • 大半の女性で1年以上

  • 50%の女性で4年以上

  • 10%の女性で12年以上

ホットフラッシュが起きた女性は,暖かいまたは暑いと感じ,発汗が(ときに大量に)みられる場合もあり,深部体温が上昇する。皮膚(特に顔面および頭頸部)は紅潮し,温度が上昇する。ホットフラッシュのエピソードが30秒~5分ほど続いた後,悪寒が生じることがある。ホットフラッシュは,盗汗とともに夜間に起きることもある。

ホットフラッシュの機序は不明であるが,視床下部に位置する体温調節中枢の変化によって起こると考えられている。女性が快適に感じる深部体温域が低下し,結果として深部体温の非常にわずかな上昇が熱発生の誘因となりホットフラッシュが起こる。

腟症状

症状としては,乾燥や性交痛のほか,ときに刺激感やそう痒などがある。 エストロゲン産生が減少するにつれて,外陰および腟の粘膜が菲薄化,乾燥,脆弱化し,弾性が失われ,腟粘膜のヒダが失われていく。

閉経の泌尿生殖器症状としては,腟症状のほか,尿意切迫,排尿困難,頻回の尿路感染症など,尿道および膀胱に関連する症状がみられる。

神経精神症状

神経精神的変化(例,集中力低下,記憶障害,抑うつ症状,不安)が一過性に閉経に伴うことがある。

反復性の盗汗により睡眠が妨げられ,不眠症,疲労,いらだち,集中力低下の一因となりうる。

その他の症状

閉経期は女性の生涯における正常で健康な時期であるが,それぞれの女性が独特の経験をする。

症状が重度である場合や,関節の疼きや痛みなど,閉経の症状として比較的まれな症状が現れると,生活の質が低下する可能性がある。一部の女性(例,子宮内膜症,月経困難症,過多月経,月経前症候群,月経時片頭痛の既往がある女性)では,閉経後に生活の質は改善する。

診断

  • 臨床的評価

  • まれにFSH値

診断は臨床的に行う。相当の年齢層の女性に閉経の症状や徴候が認められる場合は,閉経期である可能性が高い。しかしながら,妊娠の可能性は考慮すべきである。閉経は,12カ月間月経がない場合に確定診断される。

内診を行い,外陰や腟の萎縮があれば,診断が裏付けられる。あらゆる異常所見を評価する( 骨盤内腫瘤 : 評価)。

FSH値を測定してもよいが,おそらく子宮摘出術を受けた女性や通常の閉経年齢よりも若い女性を除いて,測定が必要であることはまれである。FSH値の上昇が続く場合は閉経の診断が確定する。

骨折のリスクが高い閉経後女性(例,Fracture Risk Assessment Tool[FRAX]に基づく)と65歳以上の全女性には,骨粗鬆症のスクリーニングを行うべきである。

治療

  • 生活習慣の改善

  • 補完代替医療

  • ホルモン療法

  • 他の神経作用薬

治療は対症療法である(例,ホットフラッシュや外陰・腟の萎縮による症状を緩和するため)。

ホルモン療法 エストロゲン,プロゲスチン,またはその両方)は更年期症状に対する最も効果的な治療である。

閉経の生理的原因および発現しうる症状と徴候について患者と話し合うことは,起こる変化をコントロールするのに役立つ。

生活習慣の改善

ホットフラッシュに対しては,以下の対策が助けになる:

  • 誘因(例,明るい照明,掛け布団,予測可能な感情的反応)を回避する

  • 環境を冷却する(例,設定温度を下げる,扇風機を使用する)

  • 必要に応じて脱げるように重ね着をする

OTC薬の腟潤滑剤および保湿剤は,腟の乾燥を緩和するのに役立つ。定期的な性交などの腟への刺激が腟の機能を保持する助けになる。

補完代替医療

ブラックコホシュや他のハーブ薬,OTC薬は有用ではないようである。大豆タンパクについての研究結果は様々であるが,S-equolという大豆製品がホットフラッシュを緩和するという報告がある。

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は,腟乾燥を始めとする腟萎縮による症状を軽減できる可能性があり,これらの症状に対する治療法として研究されている。

定期的な運動,調節呼吸(緩徐で深い呼吸)やリラクゼーション法がホットフラッシュを軽減するかどうかについては様々な結果があるが,運動やリラクゼーション法は睡眠を改善することがある。鍼治療についても様々な結果がある。ある研究では催眠がホットフラッシュを緩和するように見受けられ,希望する女性に推奨することもある。

神経作用薬

よくデザインされた複数のランダム化比較試験において,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),およびガバペンチンがホットフラッシュの軽減にいくらか効果的であることが示されている。低用量のパロキセチンは,ホットフラッシュの特異的治療として使用できる。ただし,これらの薬剤はどれもホルモン療法ほど効果的ではない。

ホルモン療法

ホルモン療法( エストロゲン,プロゲスチン,またはその両方)は更年期症状に対する最も効果的な治療である。中等度から重度のホットフラッシュを緩和するために用いられ, エストロゲンが含まれている場合には外陰や腟部の萎縮による症状を和らげるために用いられる。

ホルモン療法は症状を緩和することで多くの女性の生活の質を改善するが,無症状の女性の生活の質を改善することはないため,閉経後女性にルーチンに投与されるわけではない。更年期症状をコントロールするためにホルモン療法が必要な場合には,最低量で必要最小限の期間のみ用いるべきである。また,ホルモン療法は慢性疾患の予防と治療には推奨されない(例,冠動脈疾患,認知症,骨粗鬆症)。

ホルモン療法の選択

子宮摘出術を受けた女性には,エストロゲンが単独投与される。経口剤,経皮剤(パッチ,ローション,スプレー,またはゲル),または経腟剤が用いられる。治療は最低量で始めるべきで,必要に応じて2~4週間毎に増量する。用量は製剤により異なる。低用量としては以下のものがある:

  • 0.3mg,経口,1日1回(結合型ウマまたは合成 エストロゲン)

  • 0.5mg,経口,1日1回(経口エストラジオール)

  • 0.025mg,1日1回(エストラジオールパッチ)

子宮がある女性には エストロゲンに加えてプロゲスチンを投与すべきであるが,これは, エストロゲンを単独で投与すると子宮内膜癌のリスクが高まるためである。プロゲスチンは エストロゲンと併用し,持続的(すなわち連日投与)または周期的(4週毎に12~14日間連続)に投与する。用量は以下の通りである。

  • 酢酸メドロキシプロゲステロン:連日投与の場合は2.5mg,周期的投与の場合は5mg

  • 微粒子化プロゲステロン(合成ではない天然プロゲステロン):連日投与の場合は100mg,周期的投与の場合は200mg

プロゲスチンの休止による出血は持続的投与法の方が起こる可能性が低い。 エストロゲンとプロゲスチンの配合剤には,錠剤(例,結合型ウマ エストロゲン0.3mg + 酢酸メドロキシプロゲステロン1.5mg,1日1回),または貼付剤(例,エストラジオール0.045mg + レボノルゲストレル0.015mg,1日1回)がある。

腟症状のみの場合,低用量での エストロゲンの腟内投与が望ましい。腟症状には,局所エストロゲン(例,クリーム,腟錠,腟リング)の方が経口薬より効果的な場合がある。体循環に移行する エストロゲンの量は,低用量エストラジオール含有の腟錠および腟リング(例,腟錠10μg,腟リング7.5μg)の方が少ない。経腟投与の エストロゲンは最低推奨用量で使用すべきであるが,これは,高用量では経口や経皮投与と同程度の エストロゲンが吸収される可能性があるためであり,子宮のある女性ではプロゲスチンの追加が必要となる。

プロゲスチン(例,酢酸メドロキシプロゲステロン10mg,1日1回経口投与,またはそのデポ剤150mg,1カ月1回筋注,酢酸メゲストロール10~20mg,1日1回経口投与)は エストロゲンの禁忌がある場合にホットフラッシュを緩和するために単独で用いられることがあるが,ホットフラッシュに対しては エストロゲン程の効果はなく,腟の乾燥も軽減しない。微粒子化プロゲステロンは100mg~200mgの用量で就寝時に服用できる。眠気が起こることがある。微粒子化プロゲステロンは,ピーナッツにアレルギーのある女性には禁忌である。

エストロゲン療法は骨密度に有益な効果をもたらし,閉経後女性(骨粗鬆症患者に限らない)の骨折の発生率を低下させる。それにもかかわらず, エストロゲン療法は(プロゲスチン併用の有無にかかわらず),骨粗鬆症の第1選択の治療や予防の方法としては推奨されない。骨粗鬆症のみが問題である場合,骨粗鬆症の重大なリスクを有するが,骨粗鬆症の第1選択の治療薬を使えない女性に限り,医師はホルモン療法を考慮すべきである( 骨粗鬆症 : 治療)。

リスクと有害作用

エストロゲン療法または エストロゲン-プロゲスチン併用療法の リスクとしては,以下のものがある:

  • 子宮内膜癌(主に子宮のある女性がプロゲスチンの併用なしで エストロゲンを服用する場合)

  • 深部静脈血栓症

  • 肺塞栓症

  • 脳卒中

  • 乳癌

  • 胆嚢疾患

  • 腹圧性尿失禁

乳癌のリスクは併用療法開始の3~5年後から上昇し始める。 エストロゲンを単独で使用する場合,使用期間が10~15年になるまで乳癌リスクは上昇しない可能性がある。胆嚢疾患と尿失禁の発生率が上昇することがある。これら全ての疾患のリスクは,健康な女性が,閉経期の間やその後の短期間一時的にホルモン療法を受けた場合には低い。閉経後の高齢女性(閉経後10年超)では,これらの疾患のほとんどにおいてリスクがより高く,併用療法が行われた場合には冠動脈疾患のリスクが高まる可能性がある。経皮的 エストロゲン製剤が使用された場合には,静脈血栓塞栓症のリスクは低下しうる。

エストロゲン療法は,乳癌,脳卒中,冠動脈疾患,または血栓症の既往がある女性とこれらのリスクが高い女性には禁忌となる場合がある。

プロゲスチンは有害作用(例,腹部膨満,乳房圧痛,乳腺密度の上昇,頭痛,低比重リポタンパクの増加,高比重リポタンパクの減少)がみられる場合がある;微粒子化プロゲステロンは有害作用がより少ないようである。プロゲスチンは血栓症のリスクを上昇させることがある。プロゲスチンに関する長期安全性データはない。

ホルモン療法を処方する前に,医師はそのリスクと有益性について患者と話し合うべきである。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)

SERMであるタモキシフェンとラロキシフェンはこれまで,主に抗エストロゲン作用を期待して使用され,更年期症状を緩和する目的では使用されてこなかった。しかしながら, エストロゲンや腟剤が使えない女性(例,重度の関節炎がある場合)や エストロゲン以外の経口薬を希望する女性に対して,SERMであるospemifeneを腟萎縮による性交痛の治療に使用することが可能である(用量は60mg,経口,1日1回)。

バゼドキシフェンは結合型 エストロゲンと併用することで,ホットフラッシュと腟萎縮を軽減できる。静脈血栓塞栓症のリスクは エストロゲンの場合に類似しているが,この薬物は子宮内膜,および可能性としては乳房を保護するようである。米国では,バゼドキシフェンはまだ単剤では使用できない。

要点

  • 米国では,閉経は平均52歳で起こる。

  • 閉経の症状は,閉経前の数年間と閉経後の1年間(閉経期の間)に最も強く現れる傾向があるが,経時的に悪化していくことのある症候性の外陰・腟萎縮は例外である。

  • 相当年齢の妊娠していない女性で12カ月間にわたり無月経が続いている場合,閉経の確定を考慮する。

  • 腟の乾燥に対しては,腟の刺激およびOTC薬の腟潤滑剤や保湿剤が推奨され,それらが無効な場合,低用量の エストロゲンを含有する腟クリーム,腟錠,腟リングを処方する。

  • ホルモン療法を処方する前に,リスク(例,深部静脈血栓症,肺塞栓,脳卒中,乳癌,リスクが低いものとして胆嚢疾患と腹圧性尿失禁)について患者に説明する。

  • ホットフラッシュを緩和するためにホルモン療法を選択する場合は, エストロゲンに加え,子宮がある女性にはプロゲスチンを処方する。

  • ホットフラッシュの緩和にはそれほど効果的でないが,ホルモン療法の代替として,SSRI,SNRI,およびガバペンチンを考慮する。

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