急性子宮頸管炎は通常,感染が原因である;慢性子宮頸管炎は通常,感染が原因ではない。子宮頸管炎が上行し,子宮内膜炎および骨盤内炎症性疾患(PID)の原因となることがある。
子宮頸管炎で最も頻度の高い感染性の原因はChlamydia trachomatisであり,次に淋菌(Neisseria gonorrhea)である。その他の原因には,単純ヘルペスウイルス(HSV),腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis),性器マイコプラズマ(Mycoplasma genitalium)などがある。しばしば病原体を特定できないことがある。腟炎の一部として頸管が炎症を起こすこともある(例,細菌性腟症,トリコモナス症)。
子宮頸管炎の非感染性の原因には婦人科的手技,異物(例,ペッサリー,バリア式避妊具),化学物質(例,腟洗浄,避妊クリーム),およびアレルゲン(例,ラテックス)などがある。
症状と徴候
診断
子宮頸管炎は頸管からの滲出液(粘液性または粘液膿性)または頸管の脆弱性を認める場合に診断される。
特定の原因または他の疾患を示唆する所見としては以下のものがある:
骨盤内炎症性疾患( 骨盤内炎症性疾患 (PID) : 診断)の臨床的評価を行い,クラミジア感染症( クラミジア,マイコプラズマ,およびウレアプラズマによる粘膜感染症 : 診断)および淋菌感染症(例,PCRまたは培養による— 淋菌感染症 : 診断),細菌性腟症 ( 細菌性腟症(BV) : 診断),およびトリコモナス症( トリコモナス症 : 診断)の検査を行うべきである。
治療
初診時に急性子宮頸管炎を認める大部分の女性に対し,特に性感染症の危険因子(例,年齢25歳未満,新しいまたは複数のセックスパートナー,無防備な性行為)を有する場合や,フォローアップが確実にできない場合には,クラミジア感染症に対する経験的治療を行うべきである。また,性感染症の危険因子を有する場合,淋菌感染症の地域有病率が高い(例,5%を超える)場合,またはフォローアップを確実に行えない場合は,淋菌感染症に対する経験的治療も行うべきである。
治療は以下で構成される:
微生物学的検査で原因が同定されれば,その後はそれに応じて適切な治療を行う。
この治療にもかかわらず,子宮頸管炎が持続する場合は,クラミジアおよび淋菌(N. gonorrhoeae)の再感染を除外すべきであり,可能性のある性器マイコプラズマ(M. genitalium)感染をカバーするためにモキシフロキサシン400mg,経口,1日1回,7~10日間(例,10日間)の経験的治療を開始すべきである。
原因が細菌性の性感染症である場合,セックスパートナーの検査を行い,同時に治療すべきである。患者自身およびセックスパートナーの感染がなくなるまで,性交を控えるべきである。
再感染が一般的であるため,クラミジアまたは淋菌感染症が確定した全ての患者は治療後3~6カ月の間に検査を受けるべきである。