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正常な分娩の管理

執筆者:

Haywood L. Brown

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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多くの産科施設が現在,陣痛,分娩,回復,分娩後用の設備を一体化させた部屋(LDRP)を設置し,妊婦,付き添い者,新生児が入院中同室に滞在できるようにしている。一部の施設では,従来の陣痛室および別の分娩室(分娩が迫ると妊婦をここに移す)を使用している。パートナーまたは他の付き添い者が妊婦に付き添う機会を与えるべきである。分娩室では,会陰が洗浄されて布で覆われ,そして新生児が生まれる。分娩後,産婦はその場にとどまるか,分娩後施設に移される。

分娩中の合併症の管理には追加の手段が必要である(陣痛誘発など)。

麻酔

選択肢としては,区域麻酔,局所麻酔,および全身麻酔がある。局所麻酔薬およびオピオイドが一般的に使用される。これらの薬物は胎盤を通過する;したがって,分娩前1時間は,新生児に対する毒性(例,中枢神経系の抑制,徐脈)を回避するためこのような薬物は少量投与すべきである。

オピオイドは単独使用では十分な鎮痛が得られないため,麻酔薬と併用されることがほとんどである。

区域麻酔

いくつかの方法が利用できる。

局所麻酔薬を用いた腰部硬膜外麻酔は最もよく用いられる方法である。硬膜外麻酔は,帝王切開を含め分娩に用いられることが増えてきており,実質的に陰部神経ブロックおよび傍頸管ブロックに取って代わりつつある。硬膜外麻酔を用いる場合,陣痛の経過を見ながら必要に応じて薬剤の量を調節することができる。硬膜外麻酔にしばしば用いられる局所麻酔薬(例,ブピバカイン)は,陰部神経ブロックに用いられる局所麻酔薬(例,リドカイン)より作用持続時間が長く,効果が徐々に発現する。

脊髄くも膜下麻酔(脊髄周囲のくも膜下腔に麻酔薬を注入する麻酔法)を帝王切開に用いることがあるが,短時間持続性(そのため陣痛中の使用に向かない)であり,さらに後に脊髄性の頭痛が生じるリスクが多少あるため,経腟分娩ではあまり用いない。脊髄くも膜下麻酔を用いるときは,妊婦に常に付き添い,5分毎にバイタルサインをチェックして,起こりうる低血圧を検出して治療しなければならない。

局所麻酔

方法には,陰部神経ブロック,会陰浸潤麻酔,および傍頸管ブロックがある。

陰部神経ブロックは,硬膜外麻酔が代わりに用いられるためほとんど使用されないが,腟壁を通じて局所麻酔薬を注射することにより,麻酔薬が坐骨棘を横切る際に陰部神経に浸潤するというものである。このブロックにより腟下部,会陰および外陰後部が麻酔される;外陰前部は,腰椎の皮膚分節により神経支配を受けているため麻酔されない。妊婦がいきんで娩出するのを希望したり,陣痛が進行して硬膜外麻酔の時間がない場合には,陰部神経ブロックが合併症のない自然経腟分娩において安全で簡単な方法である。陰部神経ブロックの合併症としては,麻酔薬の血管内注入,血腫,および感染症などがある。

麻酔薬による会陰浸潤麻酔が一般的に用いられているが,この方法は十分に管理された陰部神経ブロックほど効果的ではない。

傍頸管ブロックは,胎児の徐脈の発生率が10%を超えるため,分娩時の施行が適切となることはまれである(1)。主に第1トリメスターまたは第2トリメスター早期での中絶に使用される。手技として,3時および9時位置への1%リドカインまたはchloroprocaine(この薬剤はより半減期が短い)の 5~10mLの注入を行う;鎮痛効果の持続は短時間である。

全身麻酔

強力で揮発性の吸入薬(例,イソフルラン)は,胎児に著しい呼吸抑制を生じさせる恐れがあるため,全身麻酔はルーチンの分娩には勧められない。

まれではあるが,妊婦との呼び掛け応答が維持される限り,酸素を混合した40%亜酸化窒素を経腟分娩中の鎮痛に使用する。

催眠鎮静薬のチオペンタールは,帝王切開分娩中の全身麻酔の導入薬として,他の薬物(例,スキサメトニウム,亜酸化窒素と酸素の混合)と併用して一般に静注される;チオペンタールの単独使用では,十分な鎮痛が得られない。チオペンタールと併用すると,導入は急速,回復は速やかである。胎児肝臓中で濃縮されるため,中枢神経系で高濃度となることが避けられる;中枢神経系で高濃度になると新生児の呼吸抑制が生じうる。

硬膜外鎮痛(迅速に硬膜外麻酔に切り替えることが可能)により,帝王切開以外での全身麻酔の需要が低下している。

麻酔に関する参考文献

  • 1.LeFevre ML: Fetal heart rate pattern and postparacervical fetal bradycardia. Obstet Gynecol 64 (3):343–6, 1984.

胎児の娩出

内診を行い,児頭の向きおよびstationを確認する;頭部が通常先進部位である( 頭位分娩の一連の流れ)。展退が完全となり子宮口が十分に開大したら,児頭が骨盤中を移動して腟口を進行的に拡張させ,児頭が次第に現れるよう,妊婦に収縮のたびにいきんで力をふりしぼるように告げる。初産婦では収縮中に頭が約3~4cm見えるようになったとき(経産婦ではやや早い),以下の手技で娩出を促進し,会陰裂傷のリスクを低下させることができる:

  • 医師は,右利きであれば,収縮中に左手掌を児頭の上に置いて進行を制御し,必要であれば少し遅らせるようにする。

  • 同時に,医師は右手の指を曲げて拡張していく会陰に当て,そこを通して児の額や顎に触れる。

  • 頭を前進させるには,医師は片手をタオルで包み(指は曲げ),額や顎の下側から圧をかける(modified Ritgen maneuver)。

これにより医師は児頭の進行を制御して,緩徐で安全な分娩を達成させる。

頭位分娩の一連の流れ

頭位分娩の一連の流れ

経腟分娩において鉗子または吸引器が以下の場合にしばしば用いられる:

  • 分娩第2期が遷延する可能性が高いとき(例,母親が疲労により十分にいきめない,または硬膜外麻酔によって強いいきみが妨げられるとき)

  • 母体に心疾患などの疾患があり,分娩第2期にいきみを避けなければならないとき

局所麻酔(陰部神経ブロックまたは会陰浸潤麻酔)の場合,鉗子または吸引器の使用は合併症が発生しない限り通常必要ではない(局所麻酔では,いきみを妨げないため)。

鉗子および吸引器分娩の適応は,基本的に同じである。

両手技ともリスクを伴う。第3度および第4度会陰裂傷 (1)および肛門括約筋の損傷(2)が,吸引器分娩後よりも鉗子分娩後でより多くみられる傾向にある。鉗子分娩における胎児側へのリスクとしては,顔面裂傷および顔面神経麻痺,角膜上皮剥離,眼外傷,頭蓋骨骨折,および頭蓋内出血などがある(34)。

吸引器分娩における胎児側へのリスクとしては,頭皮裂傷,頭血腫の形成,および帽状腱膜下または頭蓋内出血などがある;高ビリルビン血症の頻度上昇および網膜出血が報告されている。

会陰切開は多くの正常分娩ではルーチンには行われない;会陰が十分に伸展せず分娩の妨げになっている場合にのみ行われる。硬膜外麻酔が不十分であれば,局所麻酔薬を浸潤させてもよい。会陰切開は,会陰組織の過度の伸展と,その結果起こりうる不整な裂傷(前部裂傷など)を防ぐ。肛門括約筋の断裂がなく皮膚と会陰のみに広がる会陰切開の創(第2度会陰裂傷に相当)は会陰裂傷よりも通常縫合しやすい。

最も一般的な会陰切開は,陰唇小帯中央から一直線に直腸へと後方に切開する正中切開である。正中会陰切開では直腸括約筋や直腸にまで延長するリスクがあるが,即時に認識されれば,この傷はうまく修復でき,良好に治癒する。直腸への裂傷または切開創の延長は,後頭隆起が恥骨結合部を越えるまで児の頭を十分に屈曲させておくことで,通常は予防できる。

別の会陰切開術の方法は,陰唇小帯中央から,45°の角度で側方へ,どちらか一方に切開する正中側切開である。この方法は通常,括約筋や直腸に延長しないが(5),正中会陰切開術よりも強い術後疼痛を引き起こし,修復がより困難であり,失血量が増え,治癒にかかる時間が長くなる (6)。このため,会陰切開には正中切開がしばしば好まれる。

しかしながら,括約筋や直腸への切開創延長または裂傷の懸念により,会陰切開の使用は減少している。会陰直腸切開術(意図的に直腸まで切開する)は,直腸腟瘻のリスクのため勧められない。

約35%の女性で,会陰切開後の性交痛がみられる(7)。

児頭が娩出されたら,医師は臍帯が頸部に巻きついていないか確認する。巻きついている場合,医師は臍帯を外すことを試みるべきである;臍帯がこの方法で速やかに除去できない場合は,臍帯をクランプして切断することがある。

児頭の娩出後,児の体幹が回旋して両肩が前後位置になる;頭に愛護的に圧をかけると,恥骨結合下で前在肩甲が娩出する。頭部を愛護的に持ち上げると,後在肩甲が会陰からすべり出て,続いて全身が容易に出てくる。鼻,口,咽頭をバルブシリンジで吸引し,粘液や液体を除去して呼吸の開始を助ける。十分な牽引と母体のいきみによっても前在肩甲が娩出しなければ,医師は次にしなければならないことを女性に説明し,肩甲難産発症時の分娩を開始する。

臍帯の2カ所をクランプし,そのクランプ間を切断し,プラスチックのクリップを児の臍帯挿入部から約2~3cm遠位につける。胎児または新生児の状態悪化が疑われる場合,臍帯の一部分を二重にクランプすることで,動脈血ガス分析を行える。動脈血pHは > 7.15~7.20が正常とみなされる。

児をよく乾かし,母親の腹部に,または蘇生が必要な場合には加温した新生児用蘇生ベッドに置く。

胎児の娩出

胎盤の娩出

分娩第3期に積極的な管理を行うことで,母体の合併症発生および死亡の主たる原因である分娩後出血のリスクが減少する。積極的な管理としては,オキシトシンなどの子宮収縮薬を児の娩出後直ちに投与することなどがある。子宮収縮薬の投与により子宮がしっかりと収縮するのを助け,分娩後出血の最も頻度の高い原因である子宮弛緩による出血を減少させる。オキシトシンは筋注で10単位,または20単位を1000mLの食塩水で希釈したものを125 mL/時で静注する。不整脈が起こることがあるため,オキシトシンを急速静注してはならない。

児の娩出およびオキシトシンの投与後,医師は愛護的に臍帯を引っ張り,片手を愛護的に腹部の子宮底上に置いて収縮を確かめる;胎盤剥離は通常1回目か2回目の収縮中に起こり,しばしば剥離する胎盤の裏から大量の出血を来す。母親は通常いきむことで,胎盤の娩出を促進できる。それが不可能で,相当量の出血が起こった場合には,片手を腹部に置き子宮に強い下方へ(尾側へ)の圧迫をかけることによって,通常,胎盤が排出(圧出)される;弛緩した子宮への圧迫は,内反を引き起こすことがあるため,この処置は子宮が硬く感じられる場合にのみ行う。もしこの処置で効果がなければ,臍帯をピンと張ると同時に片手を腹部に置いて硬い子宮部分を上方へ(頭側に)押し上げながら,胎盤から引き離す;臍帯の牽引は,子宮を内反させることがあるので避ける。

胎盤が分娩の45~60分以内に娩出されなければ,用手剥離術が必要となることがある;適切な鎮痛または麻酔が必要である。用手剥離術では医師が片手全てを子宮腔へ挿入し,胎盤をその付着部分から分離させて引き出す。こうした場合,胎盤の異常な付着(癒着胎盤)を疑うべきである。

子宮内に残った胎盤の断片が後に出血や感染を起こす可能性があるため,胎盤が完全であるかどうか調べるべきである。胎盤が不完全であれば,子宮腔を用手的に診察する。産科医の中には,全ての分娩例でルーチンに子宮を診察する者もいる。しかしながら,診察は不快なものであるため,ルーチンには推奨されない。

分娩直後のケア

子宮頸部および腟を視診して,裂傷がないか確認し,もしあれば,会陰切開(行われていれば)と同様に修復する。その後,母親および児が正常に回復していれば,密接な触れ合いを開始してよい。多くの母親が分娩直後に授乳の開始を希望するが,これは積極的に奨励されるべきである。両親と児の絆を強めるため,母親,児,父親またはパートナーを温かいプライベートな場所で1時間以上一緒に過ごさせるべきである。その後,母親の希望に応じて児を新生児室に連れて行くか,母親のもとに残す。

分娩後1時間,子宮が収縮(腹部診察の触診により認められる)しているか確認し,出血,血圧異常,全身状態をチェックし,母親を注意深く観察すべきである。

胎盤の娩出から分娩後4時間までの間は,分娩第4期と呼ばれている;大半の合併症,特に出血がこの時期に起こるため,頻回の観察が必須となる。

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