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月経前症候群(PMS)

(月経前緊張症)

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

最終査読/改訂年月 2015年 11月

月経前症候群(PMS)は,易刺激性,不安,情緒不安定,抑うつ,浮腫,乳房痛,および頭痛を特徴とし,月経の7~10日前から生じ,通常は月経開始後数時間で治まる。診断は臨床的に行い,しばしば患者の日々の症状の記録に基づく。治療は対症療法であり,具体的には食事,薬剤,カウンセリングが含まれる。

妊娠可能年齢の女性の約20~50%にPMSがみられ,約5%には月経前不快気分障害と呼ばれる重症型のPMSがみられる。

病因

原因は不明である。

可能性のある原因や寄与因子として,以下のものがある:

  • 複数の内分泌性要因(例,低血糖,糖代謝における他の変化,高プロラクチン血症, エストロゲンおよびプロゲステロン血中値の変動, エストロゲンおよびプロゲステロンへの異常反応,アルドステロンやADHの過剰)

  • 遺伝的素因

  • セロトニン欠乏

  • 場合によりマグネシウムおよびカルシウムの欠乏

エストロゲンおよびプロゲステロンは,過剰なアルドステロンやADHが引き起こしうるように,一過性の体液貯留を起こすことがある。

PMSに最も影響を受ける女性がより低いセロトニン値を示し,SSRI(セロトニンを増加させる)がときにPMS症状を緩和することから,セロトニン欠乏が一因であると考えられている。

マグネシウムおよびカルシウムの欠乏が一因となることがある。

症状と徴候

症状の種類と程度の強さは女性により,さらに周期により異なる。症状は数時間~10日以上持続し,通常月経が始まると治まる。症状はストレス時や閉経期ではより重度になることがある。閉経期の女性では,症状が月経後まで持続する場合がある。

最もよくみられる症状として,易刺激性,不安,興奮,怒り,不眠症,集中困難,嗜眠,抑うつ,重度の疲労感がある。体液貯留により浮腫,一時的な体重増加,乳房の張りと疼痛が生じる。骨盤部の重感や圧迫感,背部痛が起こることがある。一部の女性,特に若年女性では,月経が始まる際に月経困難症の症状が現れる。

その他の非特異的な症状として,頭痛,回転性めまい,四肢の錯感覚,失神,動悸,便秘,悪心,嘔吐,食欲の変化などがある。ざ瘡および神経皮膚炎が生じることもある。既存の皮膚疾患が悪化する場合があり,呼吸器の障害(例,アレルギー,感染)および眼の障害(例,視覚障害,結膜炎)も同様である。

月経前不快気分障害(PMDD)

一部の女性では規則的かつ月経周期の後半のみに起こる重度のPMS症状を認める;症状は月経とともにまたは直後に治まる。気分は際立って抑うつ的であり,不安,易刺激性,情緒不安定が顕著である。自殺念慮がみられることがある。日常活動への関心は大幅に低下する。

PMSと対照的にPMDDではルーチンの日常活動や機能全般を妨げるほど重度の症状を起こす。PMDDは激しい苦痛,身体障害を来し,しばしば過小診断される。

パール&ピットフォール

  • 月経直前に非特異的ではあるが重度の症状がみられる場合は,月経前不快気分障害を考慮する。

診断

  • PMSは,患者による症状の訴えによる

  • PMDDは,臨床基準による

PMSは身体症状(例,腹部膨満,体重増加,乳房圧痛,手足の腫脹)に基づいて診断する。女性に症状を毎日記録するように指示することがある。身体診察および臨床検査は有用ではない。

PMDDが疑われる場合は,重度の症状が規則的に起こるかどうか判定するために,患者に2サイクル以上日々の症状を評価するよう指示する。

PMDDと診断するためには,以下の症状のうち5つ以上を月経の前週の大部分に認め,症状は月経の次の週には軽微になるか,みられなくなる必要がある。以下の症状が少なくとも1つ含まれていなければならない:

  • 著明な気分変動(例,突然悲しくなる)

  • 著明な易怒性もしくは怒り,または対人関係の摩擦の増加

  • 著明な抑うつ気分,絶望感,または自虐的思考

  • 著明な不安,緊張感,または感情の高ぶり

さらに,以下の症状が1つ以上認められなければならない:

  • 普段の活動への関心の低下,場合により引きこもりが生じる

  • 集中困難

  • 気力減退または疲労感

  • 著明な食欲の変化,過食,または特定の食物への渇望

  • 不眠症または過眠症

  • 打ちのめされる,または抑制がきかないような感情

  • PMSに関連する身体症状(例,乳房の圧痛,浮腫)

また,症状のパターンが直近の過去12カ月間のほとんどで起こり,症状は日常活動および機能を妨げるほど重度でなければならない。

抑うつ症状のある患者はうつ質問票を用いて評価するか,正式な評価のために精神医療の専門家に紹介する。

治療

  • 一般的な治療法

  • ときにSSRIまたはホルモン療法

PMSの治療は困難なことがある。全ての女性を対象として効力が証明された単独の治療法はなく,いずれか単独の治療を用いて完治する女性はほとんどいない。このため治療には忍耐だけでなく試行錯誤も必要である。

一般的な対策

治療は対症療法であり,十分な休息と睡眠,定期的な運動,リラックスできる活動から始める。定期的な運動は易刺激性,不安,不眠症だけでなく,腹部膨満の緩和に役立つことがある。ヨガが役に立つことがある。

食事の変更(タンパク質を増やす,糖分を減らす,複合炭水化物を摂取する,食事の量を少な目にし回数を増やす)が有用な可能性があるが,カウンセリング,ストレスの多い活動の回避,リラクゼーション訓練,光線療法,睡眠の調整,および認知行動療法も同様に有用な場合がある。他に可能な戦略としては,特定の食物および飲料(例,コーラ,コーヒー,ホットドッグ,ポテトチップ,缶詰製品)を避け,他の食物(例,果物,野菜,牛乳,食物繊維を多く含む食品,低脂肪の肉,カルシウムおよびビタミンDを多く含む食物)をより多く摂取するなどがある。栄養補助食品の有益な効果は実証されていない。

薬物

NSAIDは疼痛,痛みおよび月経困難症の軽減に役立つ。

特にストレスを避けられない場合,SSRI(例,フルオキセチン20mg,経口,1日1回)が不安,易刺激性,および他の感情症状を軽減するための第1選択薬となる。SSRIはPMSおよびPMDDの症状を効果的に軽減する。継続的な投与のほうが,間欠的な投与よりも効果的である。SSRIの中でいずれの薬剤が他の薬剤より効果的だということはないようである。

クロミプラミンは全周期または半周期で投与され,感情症状を効果的に軽減するが,セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるネファゾドンも同様である。

抗不安薬が有用なこともあるが,依存や嗜癖の可能性があるためあまり望ましくない。ブスピロンは,周期を通して,または黄体期後半に投与されることがあり,PMSおよびPMDDの症状の軽減に役立つ。有害作用には,悪心,頭痛,不安,めまいなどがある。

一部の女性にはホルモン療法が効果的である。選択肢としては以下のものがある:

  • 経口避妊薬

  • プロゲステロン腟坐薬(200~400mg,1日1回)

  • 経口プロゲストゲン(例,微粒子化プロゲステロン100mg,就寝時),月経開始前10~12日間

  • 長時間作用型プロゲスチン(例,メドロキシプロゲステロン200mg,筋注,2~3カ月毎)

避妊法として経口避妊薬の使用を選択する女性には,ドロスピレノン + エチニルエストラジオールを投与できる。しかし,静脈血栓塞栓症のリスクが上昇する可能性がある。

まれに,極めて重度または難治性の症状に,ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(例,リュープロレリン3.75mgの筋注,ゴセレリン3.6mgを1カ月毎に皮下投与)と低用量エストロゲン-プロゲスチン(例,経口エストラジオール0.5mg,1日1回 + 微粒子化プロゲステロン100mg,就寝時)を,周期的変動を最小限にするために投与する。

体液貯留は,ナトリウム摂取量を減らし,症状が出現すると思われる直前に利尿薬(例,スピロノラクトン100mg,経口,1日1回)を服用することによって軽減する場合がある。しかしながら,体液貯留を最小限に抑えて利尿薬を服用しても全ての症状が軽減されるわけではなく,効果がないこともある。

ブロモクリプチンおよびモノアミン酸化酵素阻害薬は有用でない。

手術

重度の症状の女性では,両側卵巣摘出により月経周期がなくなるため,症状が改善することがある;その後51歳頃(閉経が通常起こる時期)までホルモン補充療法が適応となる。

要点

  • PMSの症状は非特異的なことがあり,女性毎に異なる。

  • PMSは症状のみに基づいて診断される。

  • 症状が重度で生活に支障を来す場合は,PMDD(しばしば過小診断される)を考慮し,2サイクル以上症状を記録するよう指示する;PMDDの診断は臨床基準を満たす必要がある。

  • 治療では通常,個々の患者にとって何が助けとなるかを確認するため,様々な戦略を試すことになる。

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