Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

人工妊娠中絶

(中絶)

執筆者:

Laura Sech

, MD, University of Southern California Keck School of Medicine;


Penina Segall-Gutierrez

, MD, MSc, Keck School of Medicine, University of Southern California;


Emily Silverstein

, MD, University of Southern California Keck School of Medicine;


Daniel R. Mishell, Jr.

, MD, MSc, Keck School of Medicine, University of Southern California

最終査読/改訂年月 2013年 6月

米国では,州ごとの制限(例,義務的待機期間,在胎期間による制限)が最近導入されているが,生存胎児の中絶は合法である。米国では約半数の妊娠が意図しないものである。意図しない妊娠の約40%が人工中絶により終了する;処置の90%が妊娠第1トリメスターに行われる。

中絶が合法である国では,中絶は通常安全で合併症はまれである。世界的にみると,母体死亡の13%が人工中絶に続発して発生しており,これらの死亡の大部分が中絶が非合法である国で起こっている。

人工中絶の一般的な方法は以下の通りである:

  • 器具による経腟的な子宮内容除去術

  • 薬物による誘導(子宮収縮の促進)

子宮手術(子宮切開術や子宮摘出術)は最後の手段であり,死亡率が高いため通常は避ける。また,子宮切開術により子宮瘢痕が生じ,これが後の妊娠において破裂する可能性がある。

中絶を行う前に妊娠を確定すべきである。しばしば在胎期間は超音波検査により決定されるが,ときに病歴と身体診察により第1トリメスター中の在胎期間を正確に確定できる。女性が第2トリメスターで前置胎盤,または前壁胎盤に加え子宮瘢痕の病歴を認める場合は,ドプラ超音波検査を考慮すべきである。

中絶は手技中に用いられる超音波検査によって子宮内容物の除去を直接観察することで確認できる。手技中に超音波検査を行わない場合は,手技前後に血清β- ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)を定量測定することで確認できる;1週間後に50%超の減少があれば中絶が確定する。

生殖器の微生物(クラミジアを含む)に対して効果的な抗菌薬を中絶当日に投与すべきである。従来では,ドキシサイクリンを用いる;手技前に100mg,および手技後に200mgを投与する。Rh陰性の女性には,手技後にRh0(D)免疫グロブリンを投与する。

妊娠第1トリメスターの中絶では,しばしば局所麻酔のみでよいが,習熟した医師は鎮静を追加することもある。それ以降の中絶には通常,より深い鎮静が必要である。

28週未満で行われた中絶の直後に,避妊法(全ての様式) を開始できる。

器具による子宮内容除去術

典型的には14週未満では,通常径の大きい吸引カニューレを子宮腔に挿入し,頸管拡張・内膜掻爬(D&C)が行われる。

9週未満では,手動真空吸引法(manual vacuum aspiration:MVA)を用いることができる。この方法では子宮内容を除去するために十分な圧力を発生させる。MVA装置は持ち運び可能で,電源を必要とせず,電動式の真空吸引装置よりも静かである。MVAは妊娠初期の間の自然流産の管理にも用いられることがある。9週以降は,EVAが用いられる;電動式吸引装置にカニューレを接続する。

14~24週では,通常は頸管拡張・内容除去(D&E)を用いる。鉗子を用いて胎児を切断および除去し,吸引カニューレを用いて羊水,胎盤および胎児の残骸を吸引する。D&Eには,器具による他の内容除去法よりも高い技術およびより多くの研修が必要である。

しばしば,手技の前に頸管を拡張するために徐々に径が大きくなる先細の拡張器を使用する。しかしながら,在胎期間と出産回数によっては,先細の拡張器が頸管に与える損傷を最小限にするため,先細の拡張器の代わりに,またはそれに追加して,他のタイプの拡張器の使用が必要になる場合がある。選択肢としては,プロスタグランジンE1アナログ(ミソプロストール)や,ラミナリア桿(乾燥した海藻の茎)のような浸透性拡張器などがある。浸透性拡張器は頸管に挿入し4時間以上(妊娠18週を超えていればしばしば一晩)放置しておくことが可能である。ミソプロストールはプロスタグランジン放出を促進することで頸管を拡張させる;浸透性拡張器は膨張することにより頸管を拡張させる。浸透性拡張器は通常16週以降で使用する。ミソプロストールは通常手技の2~4時間前に舌下投与する。

患者が妊娠およびさらなる中絶を避けることを望む場合は,子宮内避妊器具(IUD)を中絶直後に挿入することができる。このアプローチにより中絶を繰り返す可能性が低くなる。

薬物による誘導

9週未満または15週を超える妊娠には薬物による誘導が可能である。患者が重度の貧血を有する場合,輸血が容易に行えるよう,薬物による中絶は病院でのみ行うべきである。

米国では9週未満の中絶の25%が薬物による誘導である。9週未満の妊娠には2つのレジメンが効果的であり,いずれも以下のようにプロゲステロン受容体拮抗薬であるミフェプリストン(RU 486)およびプロスタグランジンE1アナログのミソプロストールを含む:

  • エビデンスに基づくレジメン:ミフェプリストン200mg,経口,その6~72時間後にミソプロストール800μgを腟内自己投与または24~48時間に舌下投与(2回の通院のみ必要)

  • FDA承認のレジメン:ミフェプリストン600mgを経口投与,その約48時間後に医師によりミソプロストール400μgを経口投与(3回通院が必要)

エビデンスに基づくレジメンは9週までの妊娠中絶で98%効果的である;FDA承認のレジメンでは7週未満で95%効果的である。

どちらのレジメンでもその後,中絶を確認し,必要に応じて避妊法を提供するためのフォローアップ外来が必要である。

15週以降は,誘導の24~48時間前にミフェプリストン200mgにより前治療を行うことで誘導時間が短縮する。プロスタグランジンを流産の誘発に用いる。選択肢としては,プロスタグランジンE2(ジノプロストン)腟坐薬,ミソプロストール腟錠または舌下錠,プロスタグランジンF(ジノプロストトロメタミン)の筋注などがある。典型的なミソプロストールの用量としては600~800μg腟内投与後,400μgを3時間毎,最大5回までの舌下投与である。または2錠の200μgのミソプロストール腟錠を6時間毎に使用できる;流産はほぼ100%の症例で48時間以内に起こる。

プロスタグランジンの有害作用には,悪心,嘔吐,下痢,高体温,顔面紅潮,血管迷走神経症状,気管支攣縮および発作閾値の低下などがある。

合併症

中絶による合併症発生率(重篤な合併症は1%未満;死亡率は100,000件当たり1件未満)は,避妊による合併症発生率よりも高い;しかしながら発生率は満期産児の分娩後の14分の1であり,過去数十年で減少している。合併症発生率は在胎期間が長いほど上昇する。

重篤な早期合併症には,器具による子宮穿孔(0.1%),また頻度は低いが腸管や他の臓器の穿孔がある。大出血(0.06%)が外傷や子宮弛緩により生じることがある。頸管裂傷(0.1~1%)には,支持鉤による浅層の裂傷から,まれに瘻孔を伴う頸部および腟の裂傷まで幅がある。全身麻酔または局所麻酔による,重篤な合併症はまれである。

最もよくみられる遅発性合併症には,出血と重大な感染(0.1~2%)があり,通常胎盤断片が残留することにより起こる。出血が生じたり感染が疑われる場合は,骨盤内超音波検査を行う;超音波スキャンで胎盤断片の残留がみられることがある。軽度の炎症が予測されるが,感染が中等度または重度である場合には,腹膜炎や敗血症が起こりうる。感染による子宮内膜腔の癒着や卵管線維症から不妊が生じる場合もある。さらに進んだ妊娠においては,頸管の強引な拡張が子宮頸管不全症の一因になることがある。しかしながら,人工中絶により,その後の妊娠時に胎児および妊婦に対するリスクが増大することはおそらくない。

心理的合併症は典型的には起こらないが以下の女性ではみられることがある:

  • 妊娠前に精神症状がみられていた場合

  • 妊娠に著明な情緒的愛着があった(例,母体または胎児の医学的適応による,望まれた妊娠の中絶)場合

  • 中絶に対し保守的な政治的見解をもつ場合

  • 社会的サポートが限られている場合

要点

  • 意図しない妊娠の約40%が人工中絶により終了する。

  • 人工妊娠中絶の一般的な方法は,器具による経腟的な子宮内容除去術または薬物による誘導(子宮収縮の誘発)である。

  • 人工中絶を行う前に,女性が妊娠していることを確かめ,妊娠していれば病歴および身体診察および/または超音波検査により在胎期間を決定する。

  • 器具による内容除去では,14週未満では通常D&C,14~24週ではD&Eを用い,ときにミソプロストールまたは浸透性拡張器(例,ラミナリア桿)を用いてあらかじめ頸管拡張を行う。

  • 薬物による誘導では9週未満ではミフェプリストンを投与し,その後ミソプロストールを投与する;15週以降では,ミフェプリストンで前治療を行った後,プロスタグランジン(例,ジノプロストン腟錠,ミソプロストール腟錠および舌下錠,プロスタグランジンF筋注)またはミソプロストール腟錠を投与する。

  • 重篤な合併症(例,子宮穿孔,大出血,重篤な感染)は中絶の1%未満で起こる。

  • 人工中絶により,その後の妊娠時にリスクが増大することはおそらくない。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP