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子宮内膜症

執筆者:

James H. Liu

, MD, UH Cleveland Medical Center, Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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子宮内膜症では,骨盤内の子宮腔以外の部位に機能をもった子宮内膜組織が生着する。症状は生着の部位によって異なり,月経困難症,性交痛,不妊,排尿困難,排便時の痛みなどがみられる。症状の重症度は病期と無関係である。診断は直接観察のほか,ときに生検(通常は腹腔鏡下)による。治療法としては,抗炎症薬,卵巣機能と子宮内膜組織の増殖を抑制する薬剤,子宮内膜症組織の外科的な除去および切除のほか,妊娠の計画がない重症例に対する子宮摘出術単独または子宮摘出術 + 両側卵管卵巣摘出術などがある。

子宮内膜症は通常,腹膜または骨盤内臓器の漿膜面に限局し,一般的には卵巣,子宮広間膜,ダグラス窩,仙骨子宮靱帯に生じる。比較的まれではあるが,卵管,小腸や大腸の漿膜表面,尿管,膀胱,腟,子宮頸部,手術創のほか,さらにまれに肺,胸膜,心膜でも発生する。

腹腔内での子宮内膜症組織からの出血によって無菌性の炎症反応が惹起され,それに続いてフィブリン沈着と癒着形成が生じ,最終的には瘢痕化が起きて臓器の腹膜面が変形することで,疼痛と骨盤内構造の歪みが生じると考えられている。

報告されている有病率は様々であるが,大まかな範囲は以下の通りと考えられる:

  • 全女性の6~10%

  • 不妊女性の25~50%

  • 慢性骨盤痛を有する女性の75~80%

診断時の平均年齢は27歳であるが,子宮内膜症は青年期の女性でも起こる。

病因と病態生理

子宮内膜症の病態生理に関する仮説のうち最も広く受け入れられているのは,月経時に子宮内膜細胞が子宮腔から運ばれ,他の部位に異所性に生着するというものである。月経により剥離した組織が卵管内を逆流する現象はよくみられ,それにより腹腔内に子宮内膜細胞が運ばれる可能性は考えられ,リンパ系や循環系によって遠隔部位(例,胸腔)に子宮内膜細胞が運ばれる可能性もありうる。

他にも体腔上皮化生と呼ばれる仮説もあり,体腔上皮が子宮内膜様の腺に変化するというものである。

顕微鏡的には,子宮内膜症組織は子宮内の子宮内膜と同じ腺と間質で構成される。これらの組織は, エストロゲンおよび プロゲステロン受容体が発現しているため,通常は月経周期に伴うホルモン濃度の変化に反応して増殖,分化,出血を起こし,また エストロゲンとプロスタグランジンを産生することができる。子宮内膜症組織は自立して存在している場合もあれば,妊娠中にみられるように退縮する場合(おそらく プロゲステロン値が高いことによる)もある。最終的には,子宮内膜症組織が炎症を惹起し,活性化マクロファージの数と炎症性サイトカインの産生量を増加させる。

子宮内膜症患者の第1度近親者で発生率が高いことから,遺伝が関与していることが示唆される。

重症子宮内膜症で骨盤内構造に歪みが生じている患者では,おそらくは歪んだ構造と炎症によって卵子の取込み,受精,および卵管内輸送の機構が阻害されるために,不妊症の発生率が高くなっている。

骨盤内の解剖が正常な微症子宮内膜症の患者でも不妊になる場合があり,この妊孕性低下の理由は明らかにされていないが,以下のものが考えられる:

  • 黄体化未破裂卵胞症候群の発生率の上昇(卵子が放出されない)

  • 腹膜でのプロスタグランジン産生の増加または腹腔マクロファージの活動性の亢進による精子および卵子の機能に対する影響

  • 子宮内膜の受容性低下(黄体機能不全または他の異常による)

子宮内膜症の潜在的な危険因子としては,以下のものがある:

  • 第1度近親者の子宮内膜症の家族歴

  • 高齢での出産または未経産

  • 早い初経

  • 遅い閉経

  • 月経周期が短く(27日未満),月経が重くて長い(8日超)

  • ミュラー管欠損

  • ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露

以下の因子が防御因子とみられている:

  • 複数回の出産

  • 長期間の授乳

  • 遅い初経

  • 低用量の経口避妊薬の使用(連続的または周期的)

  • 定期的な運動(特に15歳未満で開始した場合,週4時間以上行う場合,これら両方に該当する場合)

症状と徴候

周期的な骨盤正中部の痛み(具体的には月経前または月経中[月経困難症]や性交中[性交痛]に生じる)が典型的で,進行性かつ慢性(6カ月以上続く)であることがある。付属器腫瘤と不妊も典型的である。恥骨上部痛または骨盤痛,頻尿,および切迫性尿失禁を伴う間質性膀胱炎がよくみられる。月経と月経の間に出血する可能性がある。

広範囲に子宮内膜症がある女性でも無症状のことがある一方,微症でも耐え難い痛みが生じることもある。月経困難症は,特に比較的痛みのない月経が数年続いた後に始まる場合,診断の重要な手がかりとなる。症状はしばしば妊娠中に軽減または解消する。

症状は子宮内膜症組織の部位により様々である。

  • 大腸:排便時の痛み,腹部膨満,下痢または便秘,月経中の下血

  • 膀胱:排尿困難,血尿,恥骨上部痛または骨盤痛(特に排尿時),頻尿,切迫性尿失禁,またはこれらの組合せ

  • 卵巣:子宮内膜症性嚢胞の形成(2~10cmで卵巣に限局する嚢胞性腫瘤),ときに破裂または漏出し,急性腹痛および腹膜刺激徴候を起こす

  • 付属器:付属器癒着の形成,骨盤腫瘤または痛みの原因となる

  • 骨盤外の構造:腹部の鈍い痛み(ときに)

内診所見は正常,または後傾して固定された子宮,卵巣の腫大または圧痛,固定された卵巣腫瘤,肥厚した直腸腟中隔,ダグラス窩の硬結,仙骨子宮靱帯の結節,および/または付属器腫瘤がみられる場合がある。まれに,外陰や子宮頸部,腟,臍,手術瘢痕に病変がみられる。

診断

  • 直接観察,通常は骨盤の腹腔鏡検査中

  • ときに生検

典型的な症状に基づき子宮内膜症を疑うが,直接観察のほか,ときに生検(通常は骨盤の腹腔鏡検査によるが,ときに開腹,内診,S状結腸鏡検査,または膀胱鏡検査による)を行って診断を確定しなければならない。生検は必須ではないが,その結果が診断の一助となる可能性がある。子宮内膜症組織の肉眼的外観(例,透明,赤,茶,黒)や大きさは,月経周期の中で変動する。しかしながら,典型的には,骨盤腹膜の子宮内膜症部位に5mmを超える赤色,青色,または紫褐色の点状斑点がみられ,しばしばpowder burn病変(ブルーベリースポット)と呼ばれる。顕微鏡的には,通常は子宮内膜の腺および間質が認められる。腺成分がなく間質成分が認められる場合は,子宮内膜症のまれな病型である間質性子宮内膜症が示唆される。

画像検査(例,超音波検査)は,特異度が高くなく,診断に十分ではない。しかしながら,それらの検査はときに子宮内膜症の範囲が明らかになるため,一旦診断された後に病勢をモニタリングするために使用できる。血清CA 125値が上昇することがあるが,通常この値を得ることは診断や管理に有用でも特異的でもない。他の不妊症に対する検査が適応となる場合がある。

本疾患の病期分類は,医師が治療計画を作成し,治療に対する反応を評価するのに役立つ。American Society for Reproductive Medicineによると,子宮内膜症は以下に基づいて,I期(微症),II期(軽症),III期(中等症),IV期(重症)に分類される。

  • 子宮内膜症組織の数,部位,深さ

  • 子宮内膜症性嚢胞および膜状または強固な癒着の存在( 子宮内膜症の病期

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子宮内膜症の病期

病期

分類

説明

I

軽微

表層部に少数の子宮内膜症組織を認める

II

軽症

やや深い層に多くの子宮内膜症組織を認める

III

中等度

深層に多くの子宮内膜症組織を認め,一側または両側の卵巣に小さな子宮内膜症性嚢胞を認め,膜状の癒着を認める

IV

重症

深層に多くの子宮内膜症組織を認め,一側または両側の卵巣に大きな子宮内膜症性嚢胞を認め,多くの強固な癒着を認め,ときに子宮背面への直腸の癒着を認める

子宮内膜症に関連する不妊症の病期を分類するためにendometriosis fertility index(EFI)が開発され,このシステムは様々な治療後の妊娠率を予測するのに役立つ可能性がある。EFIの算出に用いる因子としては以下のものがある。

  • 女性の年齢

  • 不妊の年数

  • 妊娠歴

  • 両側の卵管,卵管采,および卵巣のleast-function score

  • American Society for Reproductive Medicineの子宮内膜症スコア(lesionおよびtotal)

治療

  • 不快感に対するNSAID

  • 卵巣機能を抑制する薬剤

  • 子宮内膜症組織の保存的な外科的切除または除去,単独または薬剤との併用

  • 重症の患者で以降出産の希望がない場合は,腹式子宮全摘出術単独または腹式子宮全摘出術と両側卵管卵巣摘出術

鎮痛薬(通常はNSAID)およびホルモン避妊薬で対症療法を開始する。より根治的な治療法は,患者の年齢,症状,妊孕性温存の希望の有無,および疾患の進展範囲に基づき個別に決定しなければならない。

子宮内膜症に対する保存的な外科的治療は,腹腔鏡下での子宮内膜症組織の切除または除去と骨盤内癒着の切除である。

薬物治療と保存的手術は主に症状のコントロールのために用いられる。卵巣機能が永久的かつ完全に廃絶されない限り,大半の患者で薬剤の中止後6カ月から1年以内に子宮内膜症が再発する。保存的手術の後にも子宮内膜症が再発する可能性がある。

腹式子宮全摘出術単独または腹式子宮全摘出術と両側卵管卵巣摘出術は,子宮内膜症の根治的な治療法と考えられている。症状の緩和のほか,合併症の予防と疾患経過の修飾にも役立つが,再発する場合もある。

薬物療法

卵巣機能を抑制する薬剤は,子宮内膜症組織の増殖および活動性を阻害する。以下がよく用いられる:

  • 混合型経口避妊薬の連続投与

以下の薬剤は通常,混合型経口避妊薬の投与が不可能な場合か,混合型経口避妊薬による治療が無効な場合にのみ使用される:

  • プロゲスチン

  • ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト

  • ダナゾール

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子宮内膜症の治療に使用される薬剤

薬剤

用法・用量

有害作用

エストロゲン-プロゲスチン混合型経口避妊薬

エチニルエストラジオール20μg + プロゲスチン

エチニルエストラジオール10μg + プロゲスチン

連続的かつ長期の使用(1錠,1日1回,3~4周期,その後4日間休薬)または周期的使用(避妊のために用いられるように通常1カ月に数日から1週間の休薬)

腹部の腫脹,乳房圧痛,食欲亢進,浮腫,悪心,破綻出血,深部静脈血栓症,心筋梗塞,脳卒中,末梢血管疾患,気分変化

プロゲスチン

レボノルゲストレル放出子宮内避妊器具(IUD)

約20μg/日,5年間にわたり次第に10μgまで減少する(IUDによる)

不正子宮出血,ときに無月経(長期間をかけて発生)

酢酸メドロキシプロゲステロン

20~30mg,経口,1日1回,6カ月間,次に100mg,筋注,2週間毎,2カ月間,その後200mg,筋注,1回/月,4カ月間

破綻出血,情緒不安定,抑うつ,萎縮性腟炎,体重増加

酢酸ノルエチステロン

2.5~5mg,経口,就寝時

不正子宮出血,情緒不安定,抑うつ,体重増加

アンドロゲン

ダナゾール

100~400mg,経口,1日2回,3~6カ月

体重増加,ざ瘡,声の低音化,多毛症,ホットフラッシュ,萎縮性腟炎,浮腫,筋痙攣,破綻出血,乳房サイズ縮小,情緒不安定,肝機能障害,手根管症候群,脂質値への有害作用

GnRHアゴニスト*

リュープロレリン

1mg,皮下注,1日1回

ホットフラッシュ,萎縮性腟炎,骨の脱灰,情緒不安定,関節のこわばり,頭痛,筋力低下,筋肉痛,性欲減退

リュープロレリンデポ剤

3.75mg,筋注,28日毎

または

11.25 mg,筋注,3カ月毎

皮下注と同様

ナファレリン

200~400μg,鼻腔内,1日2回

ホットフラッシュ,萎縮性腟炎,骨の脱灰,情緒不安定,頭痛,ざ瘡,性欲減退,関節のこわばり,腟の乾燥

*治療は6カ月以下に限定される。

治療中の骨量減少の予防およびホットフラッシュの緩和のために,リュープロレリンとともに酢酸ノルエチステロン(2.5~5mg,経口,1日1回)などのプロゲスチンがしばしば投与される。

GnRH = ゴナドトロピン放出ホルモン。

GnRHアゴニストは,卵巣での エストロゲン産生を一時的に抑制するが,長期使用すると骨量減少を来すことがあるため,治療期間は6カ月間までに制限される。治療が4~6カ月を超えて続く場合は,骨量減少を最小限に抑えるため,プロゲスチンまたはビスホスホネート系薬剤を同時に使用してもよい(add-back療法)。子宮内膜症が再発すれば,再び治療が必要になることがある。

ダナゾールは,抗ゴナドトロピン作用をもつ合成アンドロゲンであり,排卵を阻害する。しかしながら,アンドロゲン作用による有害作用により使用は制限される。

ダナゾールやGnRHアゴニストの後に混合型経口避妊薬を周期的または連続的に投与すると,疾患の進行を遅らせる可能性があり,妊娠を遅らせたい女性に適応となる。

微症または軽症子宮内膜症の女性では,薬物治療を行っても妊娠率は変化しない。

手術

中等症から重症の子宮内膜症患者の大半では,骨盤内構造を正常化させながら妊孕性を温存しつつ,可能な限り子宮内膜症組織を除去または切除することが最も効果的な治療となる。表在性の子宮内膜症組織は除去が可能である。深在性の広範な子宮内膜症組織は切除すべきである。

腹腔鏡手術および子宮摘出術の具体的な適応としては以下のものがある:

  • 薬物療法に反応しない中等度または重度の骨盤痛

  • 子宮内膜症性嚢胞の存在

  • 著明な骨盤内癒着

  • 卵管閉塞

  • 妊孕性温存の希望

  • 性交痛

通常は病変を腹腔鏡下で切除する;腹膜または卵巣病変に対しては,ときに電気焼灼または切除,まれにレーザー蒸散が可能である。子宮内膜症性嚢胞は,ドレナージよりも切除の方が再発予防により効果的であるため,切除すべきである。この治療後,妊娠率は子宮内膜症の重症度に逆比例する。切除が不完全である場合には,ときにGnRHアゴニストが周術期に使用されるが,この種の薬剤が妊娠率を上昇させるかどうかは不明である。電気焼灼やレーザーによる仙骨子宮靱帯の腹腔鏡下切除術が,骨盤正中部の痛みを軽減する場合がある。

最も重症度の高い病型である直腸腟中隔子宮内膜症は,子宮内膜症に対する通常の治療法で治療できるが,結腸の閉塞を予防するために,大腸内視鏡下での切除または外科手術が必要になる場合がある。

子宮摘出術は,卵巣を温存するか否かにかかわらず,通常は中等度から重度性の骨盤痛がある患者,挙児希望がない患者,および根治的な治療を希望する患者にのみ施行すべきである。子宮摘出術は,癒着組織や子宮またはダグラス窩に癒着した子宮内膜症組織を切除するために行う。50歳未満の女性に子宮摘出術と両側卵管卵巣摘出術が必要な場合は,エストロゲンの補充を考慮すべきである(例,更年期症状を予防するため)。しかしながら,エストロゲンを単独で投与すると残存組織が増殖して再発の可能性があるため,継続的なプロゲスチンの併用(例,酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mg,経口,1日1回)がしばしば推奨される。50歳以上の女性で卵管卵巣摘出術後に症状が持続する場合は,プロゲスチン持続的単独療法(例,酢酸ノルエチステロン2.5mg~5mg,酢酸メドロキシプロゲステロン5mg,経口,1日1回,微粒子化プロゲステロン100~200mg,経口,就寝時)を試すことができる。

要点

  • 子宮内膜症は,周期的および慢性骨盤痛,月経困難症,性交痛,ならびに不妊の一般的な原因である。

  • 子宮内膜症の病期は症状の重症度と相関しない。

  • 通常は腹腔鏡下生検により診断を確定する;生検は必須ではないが,診断の一助となる。

  • 疼痛に対する治療を行い(例,NSAIDを用いる),妊孕性に関する患者の希望に応じて,通常は子宮内膜症組織の増殖と活動性を阻害するために卵巣機能を抑制する薬剤を使用する。

  • 中等症から重症の子宮内膜症には,骨盤内構造を正常に戻しつつ,可能な限り子宮内膜症組織を除去または切除する治療を考慮する。

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