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骨盤痛

執筆者:

David H. Barad

, MD, MS, Center for Human Reproduction

最終査読/改訂年月 2016年 11月
本ページのリソース

骨盤痛は体幹下部の不快感で,女性に一般的な愁訴である。外性器および会陰部皮膚近傍に生じる会陰部痛とは区別して考える。

病因

骨盤痛は生殖器(子宮頸部,子宮,子宮付属器)または他の臓器に起因することがある。ときに原因不明である。

婦人科疾患

婦人科疾患の中には( 骨盤痛の原因としての婦人科疾患),周期的な疼痛(すなわち,月経周期の同じ時期に繰り返し生じる痛み)を起こすものがある。他の場合は,痛みは月経周期に関連しない独立した事象である。痛みが突然始まるか徐々に始まるかは,この2つを区別するのに役立つ。

全体として,骨盤痛を引き起こす最も頻度の高い婦人科的要因は以下の通りである:

子宮筋腫は,変性したり,子宮内に位置して過度の出血または痙攣を生じたりすると,骨盤痛を引き起こす可能性がある。大半の子宮筋腫は疼痛を引き起こさない。

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骨盤痛の原因としての婦人科疾患

原因

示唆する所見

診断アプローチ*

月経周期に関連するもの

月経開始数日前または開始時の鋭い,または痙攣性の痛み,しばしば頭痛,悪心,便秘,下痢,または頻尿を伴う。

症状は通常24時間でピークを迎えるが月経開始後2~3日持続することもある。

臨床的評価

月経前や月経前半の鋭い,または痙攣性の痛み,しばしば月経困難症,性交痛,または排便時の痛みを伴う。

最終的には月経周期に関連せず痛みを引き起こすことがある。

進行した段階では子宮後傾,圧痛,可動性低下が起こることがある。

固定した骨盤腫瘤(子宮内膜症性嚢胞の可能性)または圧痛のある結節が腟双合診および直腸腟双合診で見つかることがある。

臨床的評価

腹腔鏡検査

中間痛

突然発症する重度で鋭い痛み,発症時に最も強く1~2日で軽減する。

しばしば少量かつ斑状の性器出血を伴う。

月経周期の中間(排卵の間)に起こり,卵胞破裂による軽度で短期間の腹膜刺激による。

臨床的評価

除外診断

月経周期に無関係なもの

徐々に発症する骨盤痛,粘液膿性の頸管分泌物

ときに発熱,排尿困難,性交痛

典型的には,著明な頸部移動痛および付属器の圧痛

まれに,付属器腫瘤(例,膿瘍)

臨床的評価

頸管培養

ときに骨盤内超音波検査(膿瘍が疑われる場合)

卵巣嚢胞破裂

突然発症する痛み,発症時に最も重度で数時間以内に急速に軽減することが多い

ときにわずかな性器出血,悪心,嘔吐,および腹膜刺激徴候を伴う

臨床的評価

ときに骨盤内超音波検査

異所性妊娠の破裂

突然発症する限局性,持続性(痙攣性でない)の痛み,しばしば性器出血,ときに失神または出血性ショックを伴う

子宮口閉鎖

ときに急性の腹部膨隆または圧痛のある付属器腫瘤

定量的β-hCG測定

骨盤内超音波検査

ときに腹腔鏡検査または開腹

子宮筋腫の急性変性

突然発症する痛み,性器出血

最も一般的には妊娠初めの12週間,分娩後または妊娠中絶後

骨盤内超音波検査

突然発症する重度で,片側性の痛み,ときに仙痛(間欠的な捻転による)

しばしば悪心,嘔吐,腹膜刺激徴候,および頸部移動痛

危険因子の存在(例,妊娠,排卵誘発,4cm超の卵巣腫大)

カラードプラ法を用いた骨盤内超音波検査

ときに腹腔鏡検査または開腹

徐々に発症する痛み,帯下(出血に先行する),異常性器出血(例,閉経後の出血,閉経前の再発する不正子宮出血)

まれに,触知可能な骨盤内腫瘤

骨盤内超音波検査

生検

ときに,子宮内膜の異常を同定するための子宮鏡検査やソノヒステログラフィー(生理食塩水注入法による超音波検査)などの追加検査

癒着

腹部手術やときに骨盤内感染症の既往のある患者で徐々に発症する骨盤痛(しばしば慢性的になる)または性交痛

性器出血や帯下はない

ときに悪心および嘔吐(腸閉塞を示唆する)

臨床的評価

除外診断

ときに腹部閉塞の検査(臥位および立位腹部X線)

妊娠初期に痙攣性の下腹部痛もしくは背部痛を伴い,乳房の圧痛,悪心,月経の遅れなど他の妊娠初期症状に付随して起こる性器出血

臨床的評価

妊娠検査

妊娠の継続性を評価するための骨盤内超音波検査

*内診,尿検査,尿または血清妊娠検査を行うべきである。急性または著明に再発する症状を認めるほとんどの患者では骨盤内超音波検査が必要である。

β-hCG = ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニット。

非婦人科疾患

骨盤痛を引き起こす可能性がある非婦人科疾患としては以下のものがある

  • 消化管(例,腫瘍,便秘,高位の直腸周囲膿瘍)

  • 尿路(例,膀胱炎,間質性膀胱炎,結石)

  • 筋骨格(例,以前の経腟分娩による恥骨結合の離開,腹筋挫傷)

  • 心因性(例,身体化;以前に経験した身体的,心理的,性的虐待の影響)

最も頻度の高いものを特定するのは難しい。

評価

骨盤痛の原因には緊急治療を要するもの(例,異所性妊娠付属器の捻転)があるため,骨盤痛の評価は迅速に行わなければならない。

妊娠可能年齢の女性では得られた病歴にかかわらず,妊娠を除外すべきである。

病歴

現病歴には婦人科歴(妊娠回数,経産回数,月経歴,性感染症歴)および痛みの発症,期間,部位,および性質を含めるべきである。疼痛の質,急性急度,重症度,および部位,ならびに疼痛と月経周期の関係に注意すると,最も可能性の高い原因が示唆される可能性がある。関連症状として重要なものには,性器出血または帯下および血行動態不安定による症状(例,めまい,ふらつき,失神,失神前状態)がある。

系統的症状把握(review of systems)では,以下のような可能性のある原因を示唆する症状がないか検討すべきである:

  • つわり,乳房の腫脹もしくは圧痛,または無月経:妊娠

  • 発熱および悪寒:感染

  • 腹痛,悪心,嘔吐,または便通の変化:消化管疾患

  • 頻尿,尿意切迫,または排尿困難:泌尿器疾患

既往歴の聴取では,不妊,異所性妊娠,骨盤内炎症性疾患,尿路結石症,憩室炎および消化管または泌尿生殖器癌の既往に注意すべきである。腹部および骨盤内手術の既往歴に注意すべきである。

身体診察

身体診察は不安定な徴候(例,発熱,低血圧)を見つけるためバイタルサインの評価から始め,腹部の診察および内診に焦点を置く。

腹部を触診して,圧痛,腫瘤および腹膜刺激徴候がないか確認する。直腸診を行い,圧痛,腫瘤および便潜血を調べる。痛みの部位および関連所見が原因への手がかりとなる可能性がある( 骨盤痛の診断へのいくつかの手がかり)。

内診には外性器の視診,腟鏡診,および双合診を含める。子宮頸部を視診して,分泌物,子宮脱,頸管の狭窄または病変がないか確認する。双合診では頸部移動痛,付属器腫瘤または圧痛,および子宮の拡大または圧痛を評価する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 失神または出血性ショック(例,頻脈,低血圧)

  • 腹膜刺激徴候(反跳痛,筋硬直,筋性防御)

  • 閉経後の性器出血

  • 発熱または悪寒

  • 悪心,嘔吐,発汗,または興奮を伴う突然の重度の痛み

所見の解釈

骨盤痛の急性度および重症度,ならびに月経周期との関係から,最も可能性の高い原因が示唆される可能性がある( 骨盤痛の原因としての婦人科疾患)。疼痛の性質と位置,および関連所見もまた手がかりとなる( 骨盤痛の診断へのいくつかの手がかり)。しかしながら所見は非特異的である場合がある。例えば,子宮内膜症は様々な所見につながりうる。

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骨盤痛の診断へのいくつかの手がかり

所見

可能性のある診断

失神または出血性ショック

異所性妊娠の破裂

おそらく卵巣嚢胞破裂

帯下,発熱,両側性の疼痛および圧痛

重度で間欠的な仙痛(ときに悪心を伴う),発生して数秒または数分以内に強さがピークに達することがある。

腎仙痛

異所性妊娠

悪心に続く食欲不振,発熱および右側の痛み

便秘,下痢,排便時に改善または悪化する痛み

消化管疾患

40歳以上の女性での左下腹部痛

腹部全体の圧痛または腹膜刺激徴候

腹膜炎(例,虫垂炎,憩室炎,他の消化管疾患,骨盤内炎症性疾患,付属器捻転,卵巣嚢胞または異所性妊娠の破裂による)

腟前壁の圧痛

膀胱または尿道の痛みを引き起こす,下部尿路疾患(例,間質性膀胱炎

双合診で検出される子宮の固定

癒着

進行期癌

圧痛のある付属器腫瘤または子宮頸部移動痛

異所性妊娠

骨盤内炎症性疾患

卵巣嚢胞または腫瘍

付属器捻転

経産女性での恥骨の圧痛,特に歩行時に痛みが生じる場合

恥骨結合離開

急性の痛みを伴う排便に加えて,内側または外側からの直腸診で触知する限局した,圧痛のある,波動性の腫瘤;発熱を伴うことも伴わないこともある。

直腸周囲膿瘍

肉眼的または顕微鏡的な直腸潜血

消化管疾患

慢性的な痛みを伴う排便に加えて,内側または外側からの直腸診で触知する限局し,堅い木のような腫瘤;発熱を伴わない

重度の子宮内膜症

進行期子宮頸癌

検査

骨盤痛のある患者には全例で以下を行うべきである:

  • 尿検査

  • 尿妊娠検査

患者が妊娠している場合,超音波検査によって,または超音波検査では不明瞭なときは他の検査によって除外されるまでは,異所性妊娠と推定される( 妊娠初期の骨盤痛(下腹部痛))。疑われる妊娠が5週未満の可能性がある場合は,血清妊娠検査を行うべきである;尿妊娠検査は妊娠初期では妊娠を除外するのに感度が十分でないことがある。

他に実施する検査は,臨床的に疑われる疾患による。患者を適切に検査することができない場合(例,痛みや協力不可能な状態のため),または腫瘤が疑われる場合には,骨盤内超音波検査を施行する。重度または持続性の疼痛の原因を同定できない場合には,腹腔鏡検査を施行する。

経腟プローブを用いた骨盤内超音波検査は内診の補助として有用な場合がある;腫瘤などをより正確に示すことができ,妊娠5週以降(すなわち,月経予定日から1週間後)の妊娠の診断に役立つ。例えば,骨盤内に動く液体があり妊娠検査が陽性であるが,子宮内妊娠の所見がない場合は,異所性妊娠を確定するのに役立つ。

治療

可能であれば,基礎疾患を治療する。

骨盤痛はまず経口NSAIDで治療する。患者が特定のNSAIDに良好に反応しない場合でも,別のNSAIDには反応することがある。

NSAIDが効果的でない場合は,他の鎮痛薬または催眠法を試してもよい。

筋骨格痛には,安静,加温,理学療法,線維筋痛症には0.5%ブピバカインまたは1%リドカインの圧痛点への注射も必要となることがある。

難治性の疼痛がみられる場合は,子宮摘出術を施行してもよいが,効果ない場合もある。

老年医学的重要事項

高齢女性では骨盤痛の症状が曖昧なことがある。腸および膀胱機能に注意した慎重な系統的症状把握(review of systems)が必須である。

高齢女性では,骨盤痛を引き起こす一部の疾患が年齢とともにより多くみられるようになるため(特に閉経後),骨盤痛の一般的な原因は異なる可能性がある。そのような疾患としては以下のものがある:

性交歴を聴取すべきである;医師はしばしば多くの女性が生涯を通じて性的に活動的であり続けることに気づかない。性行為について尋ねる前に女性のパートナーが生存しているかどうか確認すべきである。高齢女性において,腟の過敏,かゆみ,泌尿器症状,または出血は性交後に二次的に起こることがある。これらの症状は数日間骨盤を安静にすることでしばしば緩和する。

急激な食欲低下,体重減少,消化不良,または排便習慣の突然の変化は卵巣癌または子宮体がんの徴候であることがあり,徹底した臨床的評価が必要である。

要点

  • 骨盤痛は一般的で,婦人科的または非婦人科的原因によることがある。

  • 妊娠可能年齢の女性では妊娠を除外すべきである。

  • 疼痛の質,急性度,重症度,および部位,ならびに疼痛と月経周期の関係から,最も可能性の高い原因が示唆される可能性がある。

  • 月経困難症は骨盤痛の一般的な原因であるが除外診断による。

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