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妊娠中の薬物

執筆者:

Ravindu Gunatilake

, MD, Valley Perinatal Services;


Avinash S. Patil

, MD, University of Arizona

最終査読/改訂年月 2016年 5月
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全妊娠の半分以上で薬物が使用されており,使用率は高まっている。特に頻用されている薬剤としては,制吐薬,制酸薬,抗ヒスタミン薬,鎮痛薬,抗菌薬,利尿薬,睡眠薬,精神安定薬,社会的薬物および違法薬物などがある。この傾向にもかかわらず,妊娠中の薬物使用に関する確固たるエビデンスに基づいたガイドラインはいまだ不足している。

妊娠中の薬物安全性に関する規制情報

最近まで,Food and Drug Administration(FDA:米国食品医薬品局)は,妊娠中の使用に関してOTC薬および処方薬の安全性を5つのカテゴリーに分類していた(A, B, C, D, X)。しかしながら,良好に統制された治療薬の研究で妊婦を対象に実施されたものはほとんどない。妊娠中の薬物安全性に関する情報の大半は,動物試験,非対照研究,および市販後調査から得られたものである。そのため,FDAの分類システムは混乱を招くもので,利用可能な情報を臨床意思決定に適用することは困難であった。2014年12月,FDAは対応として,妊娠に関するカテゴリーA,B,C,D,およびXを全ての薬剤の表示から削除することを義務付けることとした。

現在FDAは,カテゴリーに代わり,製品表示により統一された書式で薬剤に関する情報を提供することを義務付けている(the final ruleと呼ばれる;さらなる情報については,the FDA's announcementを参照)。

FDAは以下の3つの項目に関する情報の記載を義務付けている:

  • 妊娠:妊婦における薬剤の使用に関する情報(例,用量,胎児リスク)および妊婦への影響についてデータを収集,管理しているレジストリの有無に関する情報

  • 授乳:授乳中の薬剤の使用に関する情報(例,母乳中の薬物の量,母乳栄養の乳児に及ぼしうる影響)

  • 生殖の可能性のある女性および男性:薬剤に関連した妊娠検査,避妊,および不妊に関する情報

妊娠と授乳の項目にはそれぞれ3つの小見出し(risk summary,clinical considerations,data)があり,詳細情報が提供される。

妊娠中の薬物使用の影響

妊娠中,薬物はしばしば特定の疾患を治療するために必要となる。一般的に,潜在的な有益性が既知のリスクを上回る場合に,妊娠中の疾患の治療にその薬物を考慮することがある。

母体の薬物全てが,胎盤を通過し胎児に到達するわけではない。胎盤を通過する薬物は直接的な毒性や催奇形性をもつ可能性がある。胎盤を通過しない薬物も以下によって胎児に有害な作用を及ぼすことがある:

  • 胎盤血管を収縮させ,ガスおよび栄養の交換を障害する

  • 重度の子宮の緊張亢進を起こし,胎児に無酸素による傷害をもたらす

  • 母体の生理を変化させる(例,低血圧を起こす)

妊娠中に有害作用のみられる薬物のリストについては 妊娠中に有害作用を伴う薬物

薬物が胎盤を通過して拡散する様式は,それらが他の上皮細胞から成る関門を通過する様式と類似している( 薬物の吸収)。薬物が胎盤を通過するかどうか,また薬物の通過の早さは,薬物の分子量,別の物質(例,キャリアタンパク)への結合の程度,胎盤絨毛を介した交換に利用できる面積,および胎盤によって代謝される薬物の量に依存する。分子量が500ダルトン未満の薬物の多くは,容易に胎盤を通過して胎児循環に入る。高分子量の物質(例,タンパクに結合する薬物)は通常,胎盤を通過しない。例外は免疫グロブリンGで,これはときとして胎児の同種免疫性血小板減少症などの疾患の治療に使用される。一般に,母体血液と胎児組織間の平衡には少なくとも30~60分を要する。

胎児への薬物の影響は,主に曝露時の胎児の在胎週数,薬物の力価,投与量によって決まる。胎児の在胎週数は薬物の作用に影響を与える:

  • 受精後20日目より前:薬物がこの時期に投与されると,典型的に作用は全か無で,胎芽を殺すか,あるいは全く影響しない。この段階で奇形発生は起こりにくい。

  • 器官形成期(受精後20~56日):この段階では奇形発生の可能性が最も高い。この段階で胎芽に到達する薬物は,自然流産,亜致死的な著しい解剖学的欠陥(真の催奇形作用),または潜在的な胎児障害(出生してから明らかになることがある,永続的でわずかな代謝的または機能的な欠陥)を引き起こすことがあり,もしくはこうした薬物がほとんど影響しないこともある。

  • 器官形成期後(第2および第3トリメスター):奇形発生は起こりにくいが,薬物は正常に形成された胎児の器官や組織の成長および機能を変化させることがある。胎盤代謝が増加するにつれ,胎児毒性の発生にはより高用量が必要になる。

薬物の安全性に対して関心が広がっているが,治療薬への曝露は,全ての胎児先天奇形のうち2~3%を占めるにすぎない;多くの奇形は,遺伝的,環境的,または未知の原因により生じる。

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妊娠中に有害作用を伴う薬物

有害作用

備考

抗菌薬

アミノグリコシド系薬剤

聴器毒性(例,胎児の迷路に障害),難聴をもたらす

クロラムフェニコール

gray baby症候群

G6PD欠損症の妊婦や胎児で溶血

フルオロキノロン系

関節痛の可能性;理論的には筋骨格異常(例,骨の成長障害),しかしこの作用の証拠はない

ニトロフラントイン

G6PD欠損症の妊婦や胎児で溶血

第1トリメスター中,満期(38~42週),陣痛および分娩中,陣痛発来の直前は禁忌

プリマキン

G6PD欠損症の妊婦や胎児で溶血

ストレプトマイシン

聴器毒性

スルホンアミド系(サラゾスルファピリジンは胎児へのリスクが最小限であるため除く)

妊娠34週頃以降に投与されると新生児黄疸,無治療では核黄疸を生じる

G6PD欠損症の妊婦や胎児で溶血

テトラサイクリン

骨成長の遅れ,エナメル質形成不全,歯牙の永続的な黄染,児が虫歯に罹患しやすくなる

ときに,妊婦の肝不全

トリメトプリム

葉酸拮抗作用により神経管閉鎖不全のリスク上昇

抗凝固薬

低分子ヘパリン

血小板減少症および母体出血

妊娠中に使用可能

未分画ヘパリン

血小板減少症および母体出血

ワルファリン

第1トリメスター中に投与されると,胎児ワルファリン症候群(例,鼻形成不全,骨斑点,両側性視神経萎縮,様々な程度の知的障害)

第2または第3トリメスター中に投与されると,視神経萎縮,白内障,知的障害,小頭症,小眼球症,胎児および母体の出血

妊娠第1トリメスター中は絶対的禁忌

抗てんかん薬

カルバマゼピン

新生児の出血性疾患

神経管閉鎖不全を含む先天奇形の多少のリスク

ラモトリギン

用量600mg/日までは大きなリスクの上昇なし

妊娠中に使用可能

レベチラセタム

動物試験では軽微な骨格奇形,しかしヒトでは大きなリスクの上昇なし

妊娠中に使用可能

フェノバルビタール

新生児の出血性疾患

多少の先天奇形のリスク

フェニトイン

先天奇形(例,口唇裂,尿道下裂などの泌尿生殖器欠損,心血管系の異常)

新生児の出血性疾患

葉酸補充を行っても先天奇形のリスクが残る

トリメタジオン

先天奇形の高いリスク(例,口蓋裂,心奇形,頭蓋顔面の奇形,手および腹部の欠損)および自然流産のリスク

妊娠中はほとんどの場合,禁忌

バルプロ酸

重大な先天奇形(例,脊髄髄膜瘤などの神経管閉鎖不全;心奇形,頭蓋顔面の奇形,四肢欠損)

葉酸補充を行っても先天奇形のリスクが残る

抗うつ薬

ブプロピオン

第1トリメスターの曝露による先天奇形のリスクに関して矛盾するデータがある

用量は肝または腎障害に影響を受ける

シタロプラム

第1トリメスター中にシタロプラムが投与されると,先天奇形(特に心奇形)のリスク上昇

第3トリメスター中にこの薬剤が投与されると,離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

エスシタロプラム

第3トリメスター中にエスシタロプラムが投与されると,離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

フルオキセチン

第3トリメスター中にフルオキセチンが投与されると,離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

長い半減期;この薬剤を中止して何週間もの後に薬物間相互作用が起こる場合がある

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

パロキセチン

第1トリメスター中にパロキセチンが投与されると,先天奇形(特に心奇形)のリスク上昇

第3トリメスター中にこの薬剤が投与されると,離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

一部の専門家は妊娠中の使用を推奨せず*

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

セルトラリン

第3トリメスター中にセルトラリンが投与されると,離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

ベンラファキシン

第3トリメスター中にベンラファキシンが投与されると,離脱症候群

用量は肝または腎障害に大きく影響を受ける

精神医療従事者へのコンサルテーションを行った上で第3トリメスター中に用量漸減を考慮

制吐薬

doxylaminおよびピリドキシン(ビタミンB6

先天奇形のリスク上昇に関するエビデンスなし

オンダンセトロン

動物試験において催奇形性の有意なリスクなし

第1トリメスター中にオンダンセトロンが投与されると,先天性心疾患のリスクの可能性(エビデンスは弱い)

妊娠中の使用は,他の治療が無効の場合の妊娠悪阻に対してのみ

プロメタジン

動物試験において催奇形性の有意なリスクなし

概して先天奇形のリスク上昇なし

おそらく新生児の血小板凝集能低下

抗真菌薬

アムホテリシンB

動物試験において催奇形性の有意なリスクなし

母体の全身毒性(電解質平衡異常,腎機能障害)についてモニタリングが推奨される

フルコナゾール

動物試験において高用量で催奇形性

150mg/日の単回投与後の明らかな先天奇形のリスク上昇なし

より高用量( > 400mg/日)を第1トリメスターの大部分または全期間で投与した場合,様々な奇形のリスク上昇

ミコナゾール

動物試験で経口使用において有害作用

皮膚に塗布する場合,先天奇形の有意なリスクなし

第1トリメスター中は母体の健康に不可欠でない限り経腟投与しない

terconazole

動物試験で有害作用

先天奇形の有意なリスクなし

第1トリメスター中は母体への有益性が胎児へのリスクを上回らない限り経腟投与しない

抗ヒスタミン薬/抗コリン薬

メクリジン

齧歯類で催奇形性が認められるが,ヒトではこの作用の証拠はない

降圧薬

第2または第3トリメスター中に投与されると,胎児の頭蓋形成不全および低灌流を生じ(これにより腎欠損を来しうる),腎不全,および羊水過少による症候群(羊水過少,頭蓋顔面変形,四肢拘縮,および胎児肺発育不全)を引き起こす

β遮断薬

胎児徐脈,低血糖,ならびにおそらく胎児発育不全および早産

カルシウム拮抗薬

第1トリメスター中に投与されると,指節骨の変形が生じうる

第2または第3トリメスター中に投与されると,胎児発育不全

サイアザイド系利尿薬

正常な母体の体液量増加を阻害,胎盤灌流を減少させ胎児発育不全の原因となる

新生児の低ナトリウム血症,低カリウム血症,および血小板減少症

抗腫瘍薬

アクチノマイシン

動物で催奇形性が認められるが,ヒトではこの作用の証拠はない

ブスルファン

先天奇形(例,胎児発育不全,下顎発育不全,口蓋裂,頭蓋骨形成不全,椎骨欠損,耳欠損,内反足)

クロラムブシル

ブスルファンと同じ

コルヒチン

おそらく先天奇形および精子の異常

シクロホスファミド

ブスルファンと同じ

ドキソルビシン

動物およびヒトで催奇形性

用量依存性の心機能障害の可能性

妊娠中の使用は推奨されない

妊娠中および男性または女性パートナーの治療後6カ月間,効果的な避妊法を推奨

メルカプトプリン

ブスルファンと同じ

メトトレキサート

ブスルファンと同じ

妊娠中は禁忌

最後の投与から8週間,効果的な避妊法を推奨

ビンブラスチン

動物で催奇形性が認められるが,ヒトではこの作用の証拠はない

ビンクリスチン

動物で催奇形性が認められるが,ヒトではこの作用の証拠はない

抗精神病薬および気分安定薬

ハロペリドール

動物試験で有害作用

第1トリメスター中にハロペリドールが投与されると,四肢奇形が生じうる

第3トリメスター中にハロペリドールが投与されると,新生児の錐体外路症状や離脱症状のリスク上昇

ルラシドン

動物試験で有害作用のエビデンスなし

第3トリメスター中にルラシドンが投与されると,新生児の錐体外路症状や離脱症状のリスク上昇

リチウム

動物試験で有害作用

第1トリメスター中にリチウムが投与されると,催奇形性(心奇形)

リチウムが妊娠期間の後半に投与されると,新生児の嗜眠,筋緊張低下,哺乳不良,甲状腺機能低下症,甲状腺腫,および腎性尿崩症

オランザピン

動物試験で有害作用

第3トリメスター中にオランザピンが投与されると,新生児の錐体外路症状や離脱症状のリスク上昇

リスペリドン

動物試験で有害作用

限られたデータに基づくと,催奇形性のリスク上昇なし

第3トリメスター中にリスペリドンが投与されると,新生児の錐体外路症状や離脱症状のリスク上昇

抗不安薬

ベンゾジアゼピン系薬剤

ベンゾジアゼピン系薬剤が妊娠後期に投与されると,呼吸抑制,または易刺激性,振戦,および反射亢進を引き起こしうる新生児薬物離脱症候群

血糖降下薬(経口)

クロルプロパミド

新生児の低血糖

グリブリド

新生児の低血糖

メトホルミン

新生児の低血糖

トルブタミド

新生児の低血糖

NSAID

アスピリンおよび他のサリチル酸

胎児の核黄疸

高用量で,おそらく第1トリメスターでの自然流産,陣痛開始の遅れ,胎児動脈管の早期閉鎖,黄疸,ときに母体(分娩時および分娩後)および/または新生児の出血,壊死性腸炎,および羊水過少

アスピリン低用量(81mg)では,催奇形性の有意なリスクはない

サリチル酸系以外のNSAID

サリチル酸系のNSAIDと同様

第3トリメスターでは禁忌

オピオイドおよび部分作動薬

ブプレノルフィン

動物試験において有害作用が認められているが,催奇形性はなし

新生児のオピオイド離脱症候群のリスク(新生児薬物離脱症候群)

妊婦が違法薬物を使用する場合と比較して胎児の転帰が改善

コデイン

ヒドロコドン

ヒドロモルフォン

ペチジン

モルヒネ

オピオイド中毒妊婦から生まれた新生児において,生後6時間~8日に離脱症状が起こる可能性

分娩前1時間以内の高用量投与で,新生児の中枢神経系の抑制および徐脈の可能性

メサドン

動物試験で有害作用

妊婦におけるメサドンの特異的作用は,同時に使用している薬物(例,違法薬物)の作用との鑑別がおそらく難しい

新生児のオピオイド離脱症候群のリスク

妊婦が違法薬物を使用する場合と比較して胎児の転帰が改善

陣痛および分娩中に維持量の補助として短時間作用型の急性鎮痛薬が必要となる可能性

レチノイド

イソトレチノイン

催奇形性の高いリスク(例,多発性先天奇形),自然流産,および知的障害

妊娠中および妊娠する可能性のある女性では禁忌

性ホルモン

ダナゾール

妊娠初期の14週間に投与されると,女子胎児の性器の男性化(例,仮性半陰陽)

妊娠中は禁忌

合成プロゲスチン(経口避妊薬で用いられている低用量のものを除く)

ダナゾールと同じ

妊娠中は禁忌

甲状腺薬

チアマゾール

胎児の甲状腺腫および新生児の頭皮欠損(皮膚無形成)

妊娠第1トリメスター中は避ける

プロピルチオウラシル

胎児の甲状腺腫,母体肝毒性および無顆粒球症

放射性ヨード(131I)

胎児の甲状腺破壊または,薬物が第1トリメスターの終わり近くに投与されると,胎児に重度の甲状腺機能亢進症

妊娠中は禁忌

ヨウ化カリウム飽和溶液

胎児に大きな甲状腺腫が生じ,新生児に呼吸閉塞の可能性

トリヨードサイロニン

胎児の甲状腺腫

ワクチン

麻疹,ムンプス,風疹,ポリオ,水痘,および黄熱などの生ウイルスワクチン

風疹および水痘ワクチンでは,胎盤および発育中の胎児への感染の可能性

他のワクチンでは,リスクの可能性はあるが不明

妊婦や妊娠している可能性のある女性には投与しない。

その他

コルチコステロイド

これらの薬物が第1トリメスター中に使用される場合,口唇口蓋裂の可能性

ヒドロキシクロロキン

通常の用量ではリスクの上昇なし

ロラタジン

おそらく尿道下裂

プソイドエフェドリン

胎盤血管収縮および腹壁破裂のリスクの可能性

ビタミンK

G6PD欠損症の妊婦や胎児で溶血

*American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)は妊娠中にパロキセチン使用を避けることを推奨している。

European Society for Medical Oncology (ESMO)は妊娠中の癌の診断,治療,およびフォローアップに関するガイドラインを公開している。一般に,化学療法が適応となる場合,第1トリメスター中に行うべきではないが,第2トリメスターに開始することがある;化学療法薬の最後の投与は出産予定日の3週間以上前に行うべきであり,妊娠33週以降に投与すべきでない。

G6PD = グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ。

妊娠中のワクチン

予防接種は,妊娠していない女性と同様に妊婦においても効果的である。

インフルエンザのシーズンには,第2または第3トリメスターの全妊婦に対してインフルエンザワクチンが勧められる。

その他のワクチンは,妊婦または胎児が危険な感染へ曝露するリスクが著しく高く,ワクチンによる有害作用のリスクが低いという状況下でのみ,使用すべきである。コレラ,A型およびB型肝炎,麻疹,ムンプス,ペスト,ポリオ,狂犬病,破傷風・ジフテリア,チフス,および黄熱に対するワクチン接種は,感染のリスクが非常に高い場合,妊娠中に行ってもよい。

生ウイルスワクチンは,妊婦や妊娠している可能性のある女性には投与しない。風疹ワクチンは弱毒生ウイルスワクチンで,無症候性の胎盤および胎児感染を起こしうる。しかしながら,風疹ワクチンによるものとされる新生児異常は報告されておらず,妊娠初期に不注意にワクチン接種を受けた妊婦に対し,ワクチンによる理論上のリスクのみに基づいて中絶するよう指導する必要はない。水痘ワクチンも,胎児に感染しうる弱毒生ウイルスワクチンである;リスクは妊娠13週~22週に最も高い。このワクチンは妊娠中には禁忌である。

妊娠中のビタミンA

ビタミンAは,妊婦用ビタミン剤に典型的に含まれている量(5000IU/日)において,催奇形性のリスクと関連づけられていない。しかしながら,妊娠初期における10,000IU/日を超える投与は,先天奇形のリスクを増大させる可能性がある。

妊娠中の抗うつ薬

7~23%の妊婦が周産期うつ病を発症すると推定されていることから,妊娠中には抗うつ薬(特にSSRI)が広く使用されている。妊娠中の生理的変化および心理社会的変化がうつ病に影響する可能性があり(悪化させることがある),おそらく抗うつ薬への反応を低下させる。理想的には,産科医と精神科医を含む集学的医療チームが妊娠中のうつ病を管理すべきである。

抗うつ薬を使用している妊婦には妊婦健診毎に抑うつ症状について尋ねるべきであり,また適切な胎児検査を行うべきである。検査には以下のものが含まれる:

  • 第2トリメスター中の胎児の解剖学的構造に関する詳細な評価

  • 妊婦がパロキセチンを服用している場合,パロキセチンは先天性心奇形のリスクを上昇させると考えられるため,心エコー検査により胎児の心臓を評価するため

新生児の離脱症状のリスクを軽減するために,医師は第3トリメスターに全ての抗うつ薬の用量漸減を考慮すべきである。しかしながら,漸減による有益性と,症状の再発および産後うつ病のリスクとのバランスを慎重に考慮しなければならない。産後うつ病はよくみられ,認識されないことも多く,見つかれば直ちに治療すべきである。精神科医および/またはソーシャルワーカーによる定期的な診察や訪問が役立つことがある。

妊娠中の社会的薬物と違法薬物

喫煙は,妊婦において最も多い依存症である。また,喫煙をする女性の割合,中でもヘビースモーカーの割合は増加していると思われる。妊娠中に禁煙するのは喫煙者のうちわずか20%である。タバコ中の一酸化炭素および ニコチンは,低酸素症ならびに血管収縮を引き起こし,以下のリスクを増大させる:

喫煙する母親から生まれた新生児にはまた,無脳症,先天性心疾患,口唇口蓋裂,乳児突然死症候群,身体発育障害および知的発達障害,および行動障害がもたらされる可能性が高い。禁煙または喫煙制限によってリスクは減少する。

アルコールは最もよく使用されている催奇形因子である。妊娠中の飲酒は自然流産のリスクを増大させる。リスクはおそらくアルコール摂取量と関連するが,リスクなしとされる量は分かっていない。日常的な飲酒により出生体重は約1~1.3kg減少する。特に大量飲酒は,おそらく1日に純粋アルコール45mL(約3杯に相当)程度であっても,胎児性アルコール症候群を引き起こしうる。この症候群は出生1000人当たり2.2例の頻度で発生し,胎児発育不全,顔面および心血管系の異常,ならびに神経機能障害などが含まれる。また知的障害の主な原因であり,発育不良による新生児死亡を引き起こしうる。

コカインの使用は間接的な胎児リスク(例,妊娠中の母体の脳卒中または死亡)となる。使用によりおそらく胎児の血管収縮および低酸素症も引き起こす。反復使用によって以下のリスクが増大する:

  • 自然流産

  • 胎児発育不全

  • 常位胎盤早期剥離

  • 早産

  • 死産

  • 先天奇形(例,中枢神経系,泌尿生殖器,および骨格奇形;孤立性の消化管閉鎖)

マリファナの主要代謝物は胎盤を通過できるが,マリファナの娯楽的使用によって,先天奇形,胎児発育不全,または出生後の神経行動学的異常のリスクが必ず増大するとは限らないようである。

バスソルトは様々なアンフェタミン類似物質から作られる一群の合成麻薬を指す;これらの薬物が妊娠中に使用されることが増えている。作用はあまり解明されていないが,胎児が血管収縮および低酸素症を来す可能性が高く,死産,常位胎盤早期剥離,およびおそらく先天奇形のリスクがある。

幻覚剤は,薬剤の種類により以下のリスクを増大させる可能性がある:

幻覚剤にはメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA,通称エクスタシー),ロヒプノール,ケタミン,メタンフェタミン,LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)などがある。

大量のカフェイン摂取が周産期リスクを増加させるかは不明である。少量のカフェイン摂取(例,1日1杯のコーヒー)では,胎児へのリスクがほとんどまたは全くないようであるが,いくつかのデータ(喫煙や飲酒摂取については説明なし)により,多量の摂取(1日7杯を超えるコーヒー)が死産,早産,低出生体重児,自然流産のリスクを増大させることが示唆されている。カフェインを除去した飲料は,理論的に胎児へのリスクをほとんどもたらさない。

アスパルテーム(ダイエット用砂糖代用品)の妊娠中の使用は,しばしば問題視されている。アスパルテームの最も一般的な代謝物であるフェニルアラニンは,胎盤の能動輸送によって胎児内で濃縮される;毒性濃度になれば知的障害を引き起こす可能性がある。しかしながら,摂取量が通常の範囲内であれば,胎児のフェニルアラニン濃度は毒性濃度よりはずっと低くなる。したがって,妊娠中のアスパルテーム摂取量が適当であれば(例,1日にダイエットソーダ1リットル以下),胎児毒性のリスクはほとんどないようである。しかしながら,フェニルケトン尿症の妊婦においては,フェニルアラニンの摂取,つまりアスパルテームの摂取も禁じられる。

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