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妊娠後期における下肢浮腫

執筆者:

R. Phillip Heine

, MD, Duke University Medical Center;


Geeta K. Swamy

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2009年 8月
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本ページのリソース

妊娠後期には浮腫がよくみられる。典型的には下肢に生じるが,ときに顔面や手の腫脹または膨れとして現れる。

病因

妊娠中にみられる浮腫の最も一般的な原因は以下のものである:

  • 生理的浮腫

生理的浮腫はホルモンによるナトリウム貯留が原因である。浮腫は,増大した子宮が横臥位時に下大静脈を断続的に圧迫し,両大腿静脈からの流出を阻害することにより生じる可能性もある。

病的原因による浮腫は頻度は低いがしばしば危険な場合がある。その中には深部静脈血栓症(DVT)および妊娠高血圧腎症が含まれる( 妊娠後期における浮腫の原因)。妊娠中は凝固亢進状態にあり,また妊婦があまり動かないことがあるため,DVTは妊娠中により多くみられる。妊娠高血圧腎症は妊娠高血圧が原因である;しかし妊娠高血圧腎症の女性全てに浮腫がみられるわけではない。通常は限局性の紅斑を起こす蜂窩織炎が広範囲にわたる場合,全身浮腫に類似することがある。

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妊娠後期における浮腫の原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

生理的浮腫

対称性,両側性で臥位にて軽減する下肢の浮腫

除外診断

深部静脈血栓症(DVT)

圧痛のある片側性の下肢またはふくらはぎの腫脹,紅斑,および熱感

ときにDVTの危険因子の存在

duplex法による下肢超音波検査

妊娠高血圧腎症

高血圧およびタンパク尿,就下性ではない著明な浮腫(例,顔面または手)を伴うことも伴わないこともあり,浮腫が存在する場合は赤み,熱感や圧痛はない

ときに妊娠高血圧腎症の危険因子の存在

妊娠高血圧腎症が重度の場合,おそらく他にも頭痛,右上腹部や心窩部または両方の痛み,視覚障害の症状が現れる

場合により乳頭浮腫,視野欠損,および肺の断続性ラ音(浮腫に加えて)が身体診察時にみつかる

血圧測定

尿タンパク測定

血算,電解質,尿素窒素,グルコース,クレアチニン,肝機能検査

蜂窩織炎

下肢またはふくらはぎに圧痛のある片側性の腫脹,紅斑(非対称性),熱感,ときに発熱

症状はしばしばDVTの場合よりもより限局性である

腫脹が明らかに限局している場合を除き,超音波検査でDVTを除外する

感染源を調べるための検査

DVT = 深部静脈血栓症。

評価

評価は,DVTおよび妊娠高血圧腎症を除外することを目的とする。生理的浮腫は除外診断である。

病歴

現病歴には,症状の発症および持続,増悪および緩和因子(生理的浮腫は左側臥位で横になることで軽減する),DVTおよび妊娠高血圧腎症の危険因子を含めるべきである。DVTの危険因子としては以下のものがある:

  • 静脈不全

  • 外傷

  • 凝固亢進性疾患

  • 血栓性疾患

  • 喫煙

  • 安静

  • がん

妊娠高血圧腎症の危険因子としては以下のものがある:

  • 慢性高血圧

  • 妊娠高血圧腎症の既往歴または家族歴

  • 年齢17歳未満または35歳以上

  • 初回妊娠

  • 多胎妊娠

  • 糖尿病

  • 血管疾患

  • 胞状奇胎

  • 母体血清スクリーニング検査結果異常

症状把握(review of symptoms)では,可能性のある原因の症状がないか検討すべきであり,具体的には,悪心および嘔吐,腹痛,黄疸(妊娠高血圧腎症);四肢の疼痛,発赤,熱感(DVTまたは蜂窩織炎);呼吸困難(肺水腫または妊娠高血圧腎症);突然の体重増加または手および顔面の浮腫(妊娠高血圧腎症);頭痛,錯乱,精神状態の変化,霧視,痙攣(妊娠高血圧腎症)などがある。

既往歴には,DVT,肺塞栓症,妊娠高血圧腎症,および高血圧の既往を含めるべきである。

身体診察

診察はバイタルサイン,特に血圧の評価から始める。

浮腫の部位について,分布(すなわち両側性で対照性,または片側性),発赤,熱感,圧痛を評価する。

全身状態の観察では妊娠高血圧腎症の所見を示す可能性のある系統に焦点を置く。眼科診察では,欠損がないか視野検査を行い,眼底検査では乳頭浮腫を確認すべきである。

心血管系の診察では心音および肺音を聴取し,体液過剰の所見(例,聴診可能なIII音 およびIV音 ,頻呼吸,ラ音,断続性ラ音)を調べ,頸部を視診して頸静脈怒張がないか確認する。腹部を触診して,特に心窩部または右上腹部の圧痛がないか確認する。神経学的診察では,錯乱がないか精神状態を評価し,局所神経脱落症状がないか検討する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 血圧 140/90mmHg

  • 片側性の下肢またはふくらはぎの熱感,発赤,または圧痛,熱は伴うことも伴わないこともある

  • 高血圧およびあらゆる全身症状または徴候,特に精神状態の変化

所見の解釈

妊娠中の浮腫は一般的であるが,最も危険な原因(妊娠高血圧腎症およびDVT)を考慮し,除外することが重要である:

  • 血圧が > 140/90mmHgの場合,妊娠高血圧腎症を考慮すべきである。

  • 浮腫が一方の下肢のみに生じ,特に発赤,熱感,および圧痛を認める場合,DVTおよび蜂窩織炎を考慮すべきである。

  • 両側下肢の浮腫は原因として生理的過程または妊娠高血圧腎症を示唆する。

臨床所見が原因の推定に役立つ( 妊娠後期における浮腫の原因)。妊娠高血圧腎症を示唆する可能性のある他の所見としては以下がある( 妊娠高血圧腎症を示唆する所見)。

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妊娠高血圧腎症を示唆する所見

系統または体の部位

症状

臨床所見

霧視

視野欠損,乳頭浮腫

心血管

呼吸困難

III音 増加またはIV音 聴診可能

頻呼吸,ラ音,断続性ラ音

消化管

悪心,嘔吐,黄疸

心窩部または右上腹部の圧痛

泌尿生殖器

尿量減少

乏尿

神経学的

錯乱,頭痛

異常な精神状態

四肢

突然で劇的な体重増加

下肢,顔面,手の浮腫

皮膚

発疹

点状出血,紫斑

検査

妊娠高血圧腎症が疑われる場合,尿タンパクを測定する;高血圧にタンパク尿を伴う場合妊娠高血圧腎症を示す。尿試験紙検査がルーチンに使用されるが,診断が不明確な場合,24時間蓄尿し尿タンパクを測定することがある。多くの検査室では尿タンパク/クレアチニン比を測定し計算することでより迅速に尿タンパクを評価することができる。

DVTが疑われる場合には,duplex法による下肢超音波検査を行う。

治療

特定の原因疾患を治療する。

生理的浮腫は,断続的に左側を下にして横になること(これにより子宮が下大静脈から離れる),間欠的に下肢を挙上すること,および弾性ストッキングを履くことで軽減できる。

要点

  • 妊娠後期において浮腫は一般的で通常良性(生理的)である。

  • 生理的浮腫は,左側臥位で横になる,下肢を挙上する,および弾性ストッキングを使うことで軽減する。

  • 高血圧とタンパク尿を認める場合は,妊娠高血圧腎症を示す。

  • 片側性の下肢の浮腫,発赤,熱感,および圧痛を認める場合はDVTの評価が必要である。

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