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妊娠初期における悪心および嘔吐

執筆者:

R. Phillip Heine

, MD, Duke University Medical Center;


Geeta K. Swamy

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2009年 8月
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悪心および嘔吐は妊婦の80%にまで影響を及ぼす。症状は,第1トリメスターで最も頻度が高く,最も重度である。一般的には早朝嘔吐(つわり)と言われるが,悪心,嘔吐,またその両方は一般的に一日のうちどの時点でも起こる可能性がある。症状は軽度から重度(妊娠悪阻)まで様々である。

妊娠悪阻とは,しばしば電解質異常,ケトーシス,および体重減少を伴う激しい脱水を引き起こす持続的で重度の妊娠性の嘔吐である( 妊娠悪阻)。

病態生理

妊娠初期の悪心および嘔吐の病態生理は不明であるが,代謝,内分泌,消化管,および心理的要素がおそらく全て関わっている。妊娠悪阻の患者では エストロゲン 値が上昇しているため, エストロゲン が関与している可能性がある。

病因

妊娠初期の合併症のない悪心および嘔吐の原因( 妊娠初期の悪心および嘔吐の原因)として最も頻度が高いものは以下のものである:

  • つわり(最も多い)

  • 妊娠悪阻

  • 胃腸炎

ときに,妊婦用の鉄配合ビタミン剤が悪心の原因となる。まれに,重度の持続性嘔吐が胞状奇胎により生じることがある。

嘔吐は,多くの非産科的疾患によっても生じることがある。急性腹症の一般的な原因(例,虫垂炎,胆嚢炎)が妊娠中に起こることがあり,嘔吐を伴うこともあるが,主訴は典型的には嘔吐よりも痛みである。同様に,中枢神経系疾患のなかには(例,片頭痛,中枢神経出血,頭蓋内圧亢進)嘔吐を伴うものもあるが,典型的には頭痛や他の神経症状が主訴である。

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妊娠初期の悪心および嘔吐の原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

産科

つわり(合併症のない悪心および嘔吐)

軽度で間欠的な症状が第1トリメスターを主として一日を通して様々な時間に起こる

バイタルサインおよび身体診察は正常

除外診断

妊娠悪阻

頻繁で持続する悪心および嘔吐があり,適切な水分,食物または両方の経口摂取を続けることができない

通常,脱水の徴候(例,頻脈,口腔乾燥,喉の渇き),体重減少

尿中ケトン体,血清電解質,マグネシウム,尿素窒素,クレアチニン

状態が持続する際は,場合により肝機能検査,骨盤内超音波検査

胞状奇胎

予想されるより大きな子宮,胎児心音および胎動の欠如

ときに血圧上昇,性器出血,頸管からのブドウ状組織

血圧測定,定量的hCG,骨盤内超音波検査,生検

産科以外

胃腸炎

急性であり,慢性でない;通常下痢を伴う

正常(良性)な腹部(柔らかく,圧痛がなく,膨隆がない)

臨床的評価

腸閉塞

急性,通常腹部手術の既往のある患者

仙痛に便秘,腹部膨隆,鼓音を伴う

虫垂炎が原因となることや,虫垂炎患者に生じることがある

臥位および立位X線による腹部画像検査,超音波検査,場合によりCT(X線検査および超音波検査が確定的でない場合)

尿路感染症または腎盂腎炎

頻尿,尿意切迫,または排尿遅延,側腹部痛や発熱を伴うことも伴わないこともある

尿検査および培養

hCG = ヒト絨毛性ゴナドトロピン。

評価

評価は重篤または生命を脅かす悪心および嘔吐の原因を除外することを目的とする。つわり(合併症のない悪心および嘔吐)および妊娠悪阻は除外診断である。

病歴

現病歴の聴取では,特に以下に注意すべきである:

  • 嘔吐の発症および持続時間

  • 増悪および緩和因子

  • 吐物の性状(例,血性,水様性,胆汁性)および量

  • 頻度(間欠的または持続的)

重要な合併症状としては,下痢,便秘,腹痛などがある。痛みが存在する場合,位置,放散,重症度を尋ねるべきである。診察者は,症状が患者および家族にどのような社会的影響を与えたかについても尋ねるべきである(例,患者が働くことができるかや,子供の世話ができるか)。

系統的症状把握(review of systems)では,悪心および嘔吐の非産科的原因の症状がないか検討すべきであり,具体的には,発熱または悪寒(特に側腹部痛または排尿症状[尿路感染症または腎盂腎炎]を伴う場合)や,頭痛,筋力低下,局所神経脱落症状,錯乱(片頭痛または中枢神経系出血)といった神経症状などが挙げられる。

既往歴には,過去の妊娠時のつわりまたは妊娠悪阻についての質問を含める。手術歴には,機械的腸閉塞の素因となるあらゆる腹部手術の既往を含めるべきである。

患者の服用薬を検討し,寄与している可能性のある薬物(例,鉄含有化合物,ホルモン療法)および妊娠中の安全性を確認する。

身体診察

診察はバイタルサインの評価から始め,発熱,頻脈,異常血圧(低すぎるまたは高すぎる)を調べる。

全般的な評価を行い,毒性の徴候(例,嗜眠,錯乱,興奮)を調べる。内診を含めた完全な身体診察を行い,重篤または生命を脅かす可能性のある悪心や嘔吐の原因を示唆する所見がないか確認する( 嘔吐を認める妊婦における関連のある身体所見)。

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嘔吐を認める妊婦における関連のある身体所見

系統

所見

全身

嗜眠,興奮

HEENT

粘膜の乾燥,強膜の黄疸

頸部

受動的屈曲時のこわばり(髄膜症)

消化管

鼓音を伴う膨隆

腸音の消失,または音程の高い金属音の腸音

限局性の圧痛

腹膜刺激徴候(筋性防御,筋硬直,反跳痛)

泌尿生殖器

打診時の側腹部圧痛

期日に対して大きすぎる子宮

胎児心音欠如

頸管からのブドウ状組織

神経学的

錯乱,羞明,局所の筋力低下,眼振

HEENT = 頭,眼,耳,鼻,喉。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 腹痛

  • 脱水の徴候(例,起立性低血圧,頻脈)

  • 発熱

  • 血性または胆汁性の嘔吐

  • 胎動または胎児心音の欠如

  • 神経学的診察での異常

  • 持続または悪化する症状

所見の解釈

妊娠に関連する嘔吐と他の原因による嘔吐を区別することが重要である。臨床症状が役立つ( 妊娠初期の悪心および嘔吐の原因参照)。

嘔吐が第1トリメスター後に始まった場合や腹痛,下痢,または両方を伴う場合,妊娠による可能性が低い。腹部の圧痛は急性腹症を示唆することがある。髄膜症,神経学的異常,またはその両方の存在は神経学的な原因を示唆する。

嘔吐が第1トリメスター中に始まり,数日~数週間にわたり持続または再発する場合,腹痛がない場合,および他の器官系を含む症状や徴候がない場合,妊娠による可能性が高い。

嘔吐が妊娠に関連すると考えられ,重度である場合(すなわち,頻繁で長引き,脱水を伴う場合)は,妊娠悪阻および胞状奇胎を考慮すべきである。

検査

著明な嘔吐,脱水徴候,または両方を認める患者は通常検査が必要である。妊娠悪阻が疑われる場合,尿中ケトン体を測定する;症状が特に重度または持続性である場合には,血清電解質を測定する。胎児心音がはっきり聞こえない場合や胎児ドプラで検出できない場合は,胞状奇胎を除外するため骨盤内超音波検査を行うべきである。臨床的に疑われる非産科的疾患に基づいて,その他の検査を行う( 妊娠初期の悪心および嘔吐の原因を参照)。

治療

妊娠性嘔吐は,頻回に飲んだり食べたりする(1日に5回~6回の軽食を摂る)ことで軽減しうるが,薄味の食品(例,クラッカー,ソフトドリンク,BRAT食[bananas:バナナ,rice:米,applesauce:アップルソース,dry toast:何もつけないトースト])のみを摂取すべきである。起床前に食べるとよいことがある。脱水(例,妊娠悪阻による)が疑われる場合,1~2Lの生理食塩水または乳酸リンゲル液を静注し,同定された電解質異常を補正する。

胎児への有害作用のエビデンスがない特定の薬物( 妊娠初期の悪心および嘔吐に対し推奨される薬物)を第1トリメスターの悪心および嘔吐の軽減のため使うことができる。

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妊娠初期の悪心および嘔吐に対し推奨される薬物

薬剤

用量

ビタミンB6(ピリドキシン)

25mg,経口,1日3回

doxylamine

25mg,経口,就寝時

プロメタジン

12.5~25mg,経口,筋注,または必要に応じて6時間毎に直腸内投与

メトクロプラミド

5~10mg,8時間毎経口または筋注

オンダンセトロン

8mg,必要に応じて12時間毎経口または筋注

ビタミンB6は単剤療法として使用するが,症状が緩和しない場合は他の薬剤を追加する。

ショウガ(例,ショウガカプセル250mg,経口,1日3回または4回,ショウガキャンディ),鍼治療,乗り物酔いバンド,および催眠法は,妊婦用ビタミン剤の葉酸含有小児用チュアブルビタミンへの切り替えと同様,有用である可能性がある。

要点

  • 妊娠中の嘔吐は通常自然に軽快し,食習慣の改善に反応する。

  • 妊娠悪阻は比較的まれであるが重症で,脱水,ケトーシス,および体重減少をもたらす。

  • 非産科的原因を考慮すべきである。

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