COVID-19(coronavirus disease 2019)は,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。
COVID-19に関する情報と暫定的な診療ガイドラインが現在急速に整備されてきている。現時点のデータによると,妊婦におけるCOVID-19の疫学,ウイルス学的性質,伝播,および症状・徴候は非妊時と同様である。
妊娠がCOVID-19の重症化リスクを変化させるかどうかは不明である。初期の研究では,非妊時と比べてリスクの増大は示されていない(1, 2)。産科合併症(例,切迫早産,早産,妊娠高血圧腎症,帝王切開)のリスクは,少なくとも中等度および重度の感染者(通常は肺炎を含む)では高まる可能性があるが,このリスクが実際に増大するかどうかはまだ確認されていない。また,そのようなリスクが他の呼吸器系ウイルス感染症によるリスクと異なるかどうかも不明である。
総論の参考文献
-
1.Liu D, Li L, Wu X, et al: Pregnancy and perinatal outcomes of women with coronavirus disease (COVID-19) pneumonia: A preliminary analysis.Am J Roentgenol Mar 18, 1–6: 2020.doi.org/10.2214/AJR.20.23072.Epub ahead of print.
-
2.Breslin N, Baptiste C, Gyamfi-Bannerman C, et al: COVID-19 infection among asymptomatic and symptomatic pregnant women: Two weeks of confirmed presentations to an affiliated pair of New York City hospitals.Am J Obstet Gynecol MFM 2020.https://doi.org/10.1016/j.ajogmf.2020.100111.Epub ahead of print.
-
3.Schwartz DA: An analysis of 38 pregnant women with COVID-19, their newborn infants, and maternal-fetal transmission of SARS-CoV-2: Maternal coronavirus infections and pregnancy outcomes.Arch Pathol Lab Med Mar 17 2020.doi: 10.5858/arpa.2020-0901-SA.Epub ahead of print.
-
4.Wang W, Xu Y, Gao R, et al: Detection of SARS-CoV-2 in different types of clinical specimens.JAMA Mar 11, 2020.doi: 10.1001/jama.2020.3786.Epub ahead of print.
診断
COVID-19の診断は妊娠時と非妊時で同様である。
胎児に対する放射線量は低いため,ほかに適応があれば,胸部X線および/またはCTを施行すべきである。
American College of Gynecologyは,COVID-19の可能性がある妊婦のトリアージおよび評価のための診療アルゴリズムを提唱している(1)。このアルゴリズムの推奨は,非妊娠患者の評価に関する推奨と同様である。
診断に関する参考文献
-
American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): COVID-19.
治療
一般にCOVID-19の治療は主に支持療法であり,妊娠時と非妊時で同様である。発熱および軽度から中等度の疼痛の治療には,アセトアミノフェンが推奨される。
おそらくは酸素飽和度95%超もしくはPaO2 70mmHg超を維持すべきである。
予防
全ての妊婦に対し,Centers for Disease Control andPrevention(CDC:米国疾病予防管理センター)のCOVID-19予防ガイドラインに従うとともに,可能な限りの自宅待機,定期的な手洗い,ソーシャルディスタンシングなど,曝露を最小限に抑えるための予防策を講じるよう忠告すべきである。これらの予防策は非妊時と同様である。
全ての医療従事者が適切な個人防護具(PPE)を着用すべきである。
妊婦の感染曝露を減らすため,医療従事者は妊娠中の患者に妊婦健診と超音波検査の予約をまとめることについて連絡すべきであるが,そのような予約スケジュールをどのように決定すべきかについては,まだコンセンサスが得られていない。 血圧,血糖値,および胎児モニタリングの検査記録はときに電子的に転送することができ,一部の予約は電話またはビデオ会議で行うことができる。分娩後の母子分離をケースバイケースで考慮すべきである。分離の終了時期については,乳児の感染リスクを徹底的に評価するまで待つ必要があるかもしれない。評価には通常,臨床検査を含めるべきである。
母乳中にウイルスが移行するリスクは,あるとしても低い。母子分離がされているにもかかわらず母親が継続的な母乳栄養を選択する場合には,母親のCOVID-19が除外されていない限り,母親が搾乳して,それを感染していない養育者が運んで乳児に与えるようにすべきである。搾乳時には,良好な手指衛生を実践するように女性を指導すべきである(例,搾乳器やボトルのパーツに触れる前と搾乳を始める前に手を洗う)。可能であれば,専用の搾乳器を使用すべきであり,使用後には,搾乳器自体と乳房または母乳に接触する全てのパーツを徹底的に洗浄および消毒すべきである。搾乳を行う場所の表面(例,ダイアル,電源スイッチ,作業台)は,消毒シートで消毒すべきである。母親が直接授乳を選択する場合は,マスクを着用するとともに,授乳前に毎回手を洗うべきである。