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羊膜内感染

(絨毛膜羊膜炎)

執筆者:

Antonette T. Dulay

, MD, Main Line Health System

レビュー/改訂 2020年 10月
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羊膜内感染とは,絨毛膜,羊膜,羊水,胎盤,またはこれら複数の感染である。感染は産科合併症,および胎児と新生児の障害のリスクを上昇させる。症状としては,発熱,子宮圧痛,悪臭のある羊水,膿性の頸管分泌物,母体または胎児の頻脈などがある。診断は特定の臨床基準により,または不顕性感染では羊水の分析により行う。治療として,広域抗菌薬,解熱薬,および分娩がある。

羊膜内感染は典型的には,感染が性器を上行することにより生じる。

危険因子

羊膜内感染の危険因子としては以下のものがある:

合併症

羊膜内感染は早期前期破水(preterm PROM)または早産の結果として起こるとともに,それらの原因にもなる。この感染は妊娠30週前の分娩の50%を占める。感染は,破水が起こらず切迫早産を呈する女性の33%,前期破水が起こり入院時に子宮収縮を認める女性の40%,前期破水で入院後に陣痛が起こる女性の75%にみられる。

胎児合併症には以下のリスク上昇がある:

母体合併症には以下のリスク上昇がある:

症状と徴候

羊膜内感染では典型的に発熱がみられる。その他の所見には,母体頻脈,胎児頻脈,子宮圧痛,悪臭のある羊水および/または膿性の頸管分泌物がある。しかしながら,感染による典型的な症状がみられない場合もある(すなわち,不顕性感染)。

診断

  • 臨床基準

  • 不顕性感染を疑う場合は羊水穿刺

American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Obstetric Practice: Committee Opinion No. 712: Intrapartum management of intraamniotic infectionも参照のこと。)

  • 孤発性の母体発熱:1回の測定で口腔温39℃以上,または口腔温38~39℃かつ30分後の測定でも38~39℃(孤発性の母体発熱だけで感染の診断を下すことはできない)

  • 母体発熱および臨床基準(母体白血球数高値,胎児頻脈,膿性の頸管分泌物)に基づく羊膜内感染の疑い

  • 羊膜内感染の確定:羊膜内感染が疑われる症例において,羊水検査(グラム染色,培養,グルコース濃度―以下を参照),または胎盤の感染もしくは炎症の組織学的所見により確定

単独の症状または徴候では他に原因がある可能性があり,信頼性が劣る。例えば,胎児の頻脈は母体の薬物使用または胎児の不整脈による可能性がある。しかしながら,羊膜内感染が存在しない場合,これらの状態が解消すると心拍数はベースラインに戻る。

羊膜内感染は通常,分娩後に確定される。

不顕性感染

難治性の切迫早産徴候(子宮収縮抑制にもかかわらず持続する)は不顕性感染を示唆することがある。満期前に前期破水が起こった場合,医師は陣痛誘発の適応があるかどうか決定するために不顕性感染も考慮すべきである。

羊水穿刺と羊水培養は不顕性感染の診断に役立ちうる。以下の羊水所見は感染を示唆する:

  • グラム染色で細菌または白血球の存在

  • 培養陽性

  • グルコース値 < 15 mg/dL

  • 白血球数 > 30/μL

不顕性感染についての他の診断検査は研究中である。

診断に関する参考文献

  • 1.Higgins RD, Saade G, Polin RA, et al: Evaluation and management of women and newborns with a maternal diagnosis of chorioamnionitis: Summary of a workshop.Obstet Gynecol 127 (3):426–436, 2016.doi: 10.1097/AOG.0000000000001246

治療

  • 広域抗菌薬と解熱薬に加えて分娩

American College of Obstetricians and Gynecologists’ Committee on Obstetric Practice: Committee Opinion No. 712: Intrapartum management of intraamniotic infectionも参照のこと。)

以下の場合には羊膜内感染の治療が推奨される:

  • 羊膜内感染が疑われるか確定した。

  • 分娩中の女性に39℃以上の孤発性の発熱がみられ,他に発熱の臨床的な危険因子がない。

女性に38~39℃の発熱を認め,発熱の危険因子がない場合,治療を考慮することができる。

適切な抗菌薬治療により母体および新生児の合併症が低減する。

羊膜内感染が診断され次第速やかに,広域抗菌薬の静注に加え分娩によって治療する。

分娩時の典型的な抗菌薬レジメンは以下の両方から成る:

  • アンピシリン2g,静注,6時間毎

  • ゲンタマイシン2mg/kg,静注(負荷量),その後1.5 mg/kg,静注,8時間毎またはゲンタマイシン5mg/kg,静注,24時間毎

さらに,分娩が帝王切開の場合,選択したレジメンの追加投与1回に加えてクリンダマイシン900mg,静注,1回またはメトロニダゾール500mg,静注,1回を臍帯クランプ後に投与することができる。

軽度のペニシリンアレルギーの女性には,以下を投与することが可能である:

  • セファゾリン + ゲンタマイシン

重度のペニシリンアレルギーの女性には,以下のいずれかを投与することが可能である:

  • クリンダマイシン + ゲンタマイシン

  • バンコマイシン + ゲンタマイシン

B群レンサ球菌(GBS)が定着した女性では,以下の場合にバンコマイシンを使用すべきである:

  • クリンダマイシン誘導耐性の検査で陰性と判定された場合を除き,GBSがクリンダマイシンまたはエリスロマイシンに耐性を示している。

  • 抗菌薬に対する感受性が不明である。

抗菌薬の投与期間は様々であり,個々の状況(例,熱がどのくらい高かったか,分娩に関連して弛張熱がみられたときにどれくらいの高熱を呈したか)により異なる。

分娩後は自動的に抗菌薬を継続すべきではない;分娩経路にかかわらず,使用は臨床所見(例,菌血症,長引く発熱)および産褥子宮内膜炎の危険因子に基づくべきである。経腟分娩の女性では子宮内膜炎が発生する可能性は低く,分娩後の抗菌薬は必要でないことがある。帝王切開後は,少なくとも1回の抗菌薬の追加投与が推奨される。

抗菌薬に加えて,解熱薬を投与すべきであり,分娩前のアセトアミノフェン投与が望ましい。

羊膜内感染のみで帝王切開の適応となることはまれである。羊膜内感染が疑われたか確定された時期と存在する危険因子について新生児ケアチームに情報を提供することが,新生児の評価および治療を最適化する上で不可欠である。

予防

要点

  • 羊膜内感染は不顕性で比較的無症状であることがある。

  • 胎児または母体の頻脈,難治性の切迫早産徴候が存在する場合,および女性がより古典的な感染症状(例,発熱,分泌物,疼痛,圧痛)を有する場合,本症を考慮する。

  • 難治性の切迫早産徴候または早期前期破水を有する場合には羊水の分析および培養を考慮する。

  • 羊膜内感染が疑われる,または確定した症例は,広域抗菌薬,解熱薬,および分娩により治療する。

  • 分娩中の女性に39℃以上の孤発性発熱(isolated temperature)を認め,他に発熱の臨床的な危険因子がない場合にも治療を行う。

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