子宮頸管無力症

執筆者:Antonette T. Dulay, MD, Main Line Health System
レビュー/改訂 2020年 10月
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子宮頸管無力症(かつての子宮頸管不全症)は,痛みを伴わずに子宮頸管の開大が起き,結果として第2トリメスターで生存児の娩出に至る病態である。第2トリメスターでの経腟超音波による頸管の観察がリスク評価に有用な可能性がある。治療として縫合材による子宮口の補強(頸管縫縮)がある。

子宮頸管無力症とは,頸管組織の脆弱性が推定されている状態で,その脆弱性が他の異常では説明できない早産に寄与するか,早産の原因となっているものを指す。推定頻度には大きな幅がある(1/100~1/2000)。

病因

子宮頸管無力症の原因はよくわかっていないが,構造的異常および生化学的要因(例,炎症,感染)が複合的に関与しているようである;これらの要因は後天性または遺伝性の場合がある。

危険因子

子宮頸管無力症を有する大部分の女性では特定の危険因子はみられない;しかしながら以下の危険因子が同定されている:

  • コラーゲン合成の先天性疾患(例,エーラス-ダンロス症候群

  • 円錐切除生検の既往(特に頸部を1.7~2.0cm以上除去されている場合)

  • 深い頸管裂傷の既往(通常,経腟分娩または帝王切開に続発する)

  • 器具による過度または急速な頸管拡張の既往(現在ではまれ)

  • ミュラー管欠損(例,双角子宮または中隔子宮)

  • 第2トリメスターでの2回以上の胎児死亡

再発

子宮頸管無力症による胎児死亡の全体的な再発リスクはおそらく30%以下であり,固定した構造的異常がどの程度原因になっているかという疑問につながる。リスクは,過去に第2トリメスターで2回以上の胎児死亡があった妊婦において最も高い。

症状と徴候

子宮頸管無力症は早産が起こるまで症状を伴わないことが多い。一部の女性では腟の圧迫感,性器出血または少量の性器出血,非特異的な腹痛または腰痛,帯下などの初期症状を呈する。

子宮頸部は柔らかく,展退,または開大していることがある。

診断

  • 症状または危険因子を有する女性では,15~16週以降に経腟超音波検査

通常,子宮頸管無力症は初めて早産が起こるまで同定されない。

危険因子または特徴的な症状や徴候を有する女性で子宮頸管無力症を疑う。その場合,経腟超音波検査を行う。結果は妊娠16週以降で最も正確である。診断を示唆する超音波検査所見には以下のものがある:

  • 2.5cm未満に短縮した頸部

  • 子宮頸管の開大

  • 頸管への卵膜の突出

治療

  • 頸管縫縮術

頸管縫縮術(非吸収性縫合材料による子宮口の補強)は病歴のみ(病歴による縫縮の適応),または超音波検査所見および病歴(超音波検査による縫縮の適応[1])に基づき適応となることがある。縫縮術により,第2トリメスターで2回以上の胎児死亡があった患者における早産が防げるようである。そのような患者および子宮頸管無力症のリスクが高いその他の患者では,第1トリメスターに頸管縫縮術を施行する。患者の妊娠・分娩歴は不明であるものの問題が疑われ,子宮頸管長が短い場合は,24週前に縫縮術を行うことがある。

それ以外の場合は,おそらく以下の全てを満たす場合にのみこの手技を行うべきである:

  • 子宮頸管無力症を強く示唆する病歴がある。

  • 妊娠22~24週前に頸部の短縮が超音波検査によって検出される。

  • 患者に早産の既往がある。

縫縮術の対象をこのような患者に限定しても,早産のリスクは増大しないようであり,現在の縫縮術の施行数は3分の2ほど減少している。特発性の早産の既往があり,頸管長が2.0cm未満の女性では縫縮術が早産の予防に役立つ可能性のあることがエビデンスから示唆されている。

22~23週以降に切迫早産が疑われる場合は,コルチコステロイド投与(胎児の肺成熟を促進するため)および安静(modified activityまたはmodified rest)の適応となることがある(2)。

治療に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists: ACOG Practice Bulletin No.142: Cerclage for the management of cervical insufficiency.Obstet Gynecol 123 (2 Pt 1):372–379, 2014.doi: 10.1097/01.AOG.0000443276.68274.cc

  2. 2.Raju TN, Mercer BM, Burchfield DJ, Joseph GF Jr: Periviable birth: Executive summary of a joint workshop by the Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development, Society for Maternal-Fetal Medicine, American Academy of Pediatrics, and American College of Obstetricians and Gynecologists.Obstet Gynecol 123 (5):1083-1096, 2014.doi: 10.1097/AOG.0000000000000243

要点

  • 通常,子宮頸管無力症のリスクは早産が初めて起こるまで予測できない。

  • 危険因子または症状を有する場合,15~16週以降に経腟超音波検査を施行する。

  • リスクのある女性に対しては,頸管縫縮術による治療を行う。

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