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妊娠悪阻

執筆者:

Antonette T. Dulay

, MD, Main Line Health System

最終査読/改訂年月 2014年 1月
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妊娠悪阻は,妊娠中における制御不能の嘔吐であり,脱水,体重減少,およびケトーシスを招く。診断は尿中ケトン体,血清電解質,および腎機能の測定により臨床的に行われる。治療は一時的な経口摂取の中止および輸液,必要であれば制吐薬,およびビタミンと電解質の補充による。

妊娠は頻繁に悪心および嘔吐を引き起こす;原因は, エストロゲンまたはヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット(β-hCG)値の急激な上昇であると考えられる。嘔吐は通常妊娠5週頃に発生し,9週頃にピークを迎え,16~18週に消失する。通常は朝に起こるが(早朝嘔吐[つわり]と呼ばれるように),1日のうちいつでも起こりうる。つわりを有する女性では体重は増え続け,脱水状態となることはない。妊娠悪阻はおそらく妊娠中の正常な悪心および嘔吐の極端な型である。妊娠悪阻は以下をもたらすため鑑別できる:

  • 体重減少(体重の > 5%)

  • 脱水

  • ケトーシス

  • 電解質異常(多くの女性において)

妊娠悪阻は軽度の一過性甲状腺機能亢進症を引き起こすことがある。妊娠16~18週を過ぎても持続する妊娠悪阻はまれであるが,肝臓に著しい障害を与え,重度の小葉中心部の壊死,または広範な脂肪変性,およびウェルニッケ脳症または食道破裂を引き起こすことがある。

診断

  • 臨床的評価(ときに連続的な体重測定を含む)

  • 尿中ケトン体

  • 血清電解質および腎機能検査

  • 他の原因の除外(例,急性腹症)

妊娠悪阻が疑われる場合,尿中ケトン体,甲状腺刺激ホルモン,血清電解質,BUN,クレアチニン,AST,ALT,Mg,P,およびときに体重を測定する。産科的超音波検査を行い,胞状奇胎および多胎妊娠の可能性を除外すべきである。

嘔吐の原因となる他の疾患を除外する必要があり,具体的には胃腸炎,肝炎,虫垂炎,胆嚢炎,他の胆道疾患,消化性潰瘍,腸閉塞,妊娠悪阻によるものでない甲状腺機能亢進症(例,バセドウ病によるもの),妊娠性絨毛性疾患,腎結石症,腎盂腎炎,糖尿病性ケトアシドーシスまたは胃不全麻痺,良性頭蓋内圧亢進症,片頭痛などが挙げられる。悪心および嘔吐に加え著明な症状がみられる場合は,しばしば他の原因が示唆される。他の診断に対する検査を,臨床検査所見,臨床所見,または超音波検査所見に基づき行う。

治療

  • 経口摂取の一時的な中止,その後徐々に再開

  • 必要に応じて輸液,チアミン,マルチビタミン,および電解質

  • 必要であれば制吐薬

最初は,患者には経口的に何も与えない。初期治療は急速輸液で,2Lの乳酸リンゲル液を3時間かけて尿量 > 100mL/時を保つように投与する。ブドウ糖を投与する場合,ウェルニッケ脳症を防ぐために,チアミン100mgを最初に静脈内投与すべきである。この用量のチアミンを3日間にわたり連日投与すべきである。

続く輸液の必要性は患者の反応により異なるが,3日間まで4時間毎に1L程度必要になることがある。電解質の欠乏を治療する;K,Mg,およびPを必要に応じて補充する。急速な補正により浸透圧性脱髄症候群を起こすことがあるため,低い血漿Na濃度をあまりにも急速に補正しないよう注意が必要である。

初回輸液および電解質補正後も嘔吐が持続する場合は必要に応じて制吐薬で治療する;制吐薬としては以下のものがある:

  • ビタミンB6,10~25mg,経口,8時間毎または6時間毎

  • doxylamine 12.5mg,経口,8時間毎または6時間毎( ビタミンB6に追加して投与可能)

  • プロメタジン12.5~25mg,経口,筋注,または直腸内投与,4時間~8時間毎

  • メトクロプラミド5~10mg,静注または経口,8時間毎

  • オンダンセトロン8mg,経口または筋注,12時間毎

  • プロクロルペラジン5~10mg,経口または筋注,3~4時間毎

脱水および急性嘔吐が治まった後,少量の経口補液を投与する。経静脈的補液や制吐薬を投与しても経口補液に耐えられない患者は,入院するか在宅での静注療法を受け,長期間(ときとして数日またはそれ以上)経口摂取しない必要があることがある。患者が一旦経口液を受けつけるようになれば,少量で薄味の食事の摂取も可能で,摂取できる程度に合わせて食事の幅を拡げていく。ビタミン静注療法は,初期から,ビタミンが経口摂取できるようになるまで必要である。

治療が無効な場合は中心静脈栄養(TPN)が必要なことがあり,議論は分かれるがコルチコステロイドを試すこともできる;例,メチルプレドニゾロン16mg,8時間毎,経口または静注を3日間投与し,その後2週間かけて最小有効量まで減量する。コルチコステロイドは6週間未満のみ,極めて慎重に用いるべきである。胎児器官形成期(受精後20~56日の間)には使うべきではない;第1トリメスター中のこれら薬剤の使用には顔面裂との弱い関連性がみられる。悪心へのコルチコステロイドの効果の機序は不明である。

治療を行っても進行性の体重減少,黄疸,または持続性の頻脈がみられる場合は,人工妊娠中絶を勧めることができる。

要点

  • 妊娠悪阻はつわりと異なり,体重減少,ケトーシス,脱水およびときに電解質異常を来しうる。

  • 症状に基づき嘔吐を起こす他の疾患を除外する。

  • 血清電解質,尿中ケトン体,BUN,クレアチニン,および体重を測定し重症度を判断する。

  • 初めに経口摂取を中止し,輸液および栄養素を静注し,徐々に経口摂取を再開させ,必要に応じて制吐薬を投与する。

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