Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

女性の生殖内分泌学

執筆者:

Jennifer Knudtson

, MD,

  • Assistant Professor, Reproductive Endocrinology and Infertility Fellow Obstetrics and Gynecology
  • University of Texas Health Science Center at San Antonio
;


Jessica E. McLaughlin

, MD,

  • University of Texas Health and Science Center at San Antonio

最終査読/改訂年月 2016年 8月
本ページのリソース

女性の生殖系は,視床下部,下垂体前葉,卵巣間でのホルモンの相互作用により調節されている。

視床下部は,黄体形成ホルモン放出ホルモンとしても知られるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)という小ペプチドを分泌する。

GnRHは下垂体前葉の特殊な細胞(ゴナドトロピン産生細胞)からのゴナドトロピン(黄体形成ホルモン[LH]および卵胞刺激ホルモン[FSH])の分泌を調節している ( 中枢神経系-視床下部-下垂体-性腺標的器官軸)。このようなホルモンは短いバースト(律動的)で1~4時間毎に放出される。LHおよびFSHは排卵を促進し,卵巣からの性ホルモン, エストラジオール エストロゲンの一種)と プロゲステロンの分泌を刺激する。

エストロゲン プロゲステロンは,そのほぼ全てが血漿タンパクに結合した状態で血流中を循環する。結合していない エストロゲン プロゲステロンだけが生理活性をもつとみられている。いずれも標的器官である生殖系(例,乳房,子宮,腟)を刺激する。これらは通常はゴナドトロピンの分泌を抑制するが,特定の状況(例,排卵前後)では促進することがある。

中枢神経系-視床下部-下垂体-性腺標的器官軸

卵巣ホルモンは,他の組織(例,骨,皮膚,筋肉)に直接的および間接的な作用を及ぼす。

FSH = 卵胞刺激ホルモン,GnRH = ゴナドトロピン放出ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。

中枢神経系-視床下部-下垂体-性腺標的器官軸

思春期

思春期は,小児が成人の身体的特徴と生殖能力を獲得する一連の事象である。LHとFSHの循環血中値は出生時に上昇しているが,数カ月以内に低値となり,思春期前まで低値にとどまる。思春期まで,生殖系の標的器官に質的変化はほとんど起こらない。

思春期の発来年齢

思春期の発来年齢および各段階での発達の速度は様々な因子の影響を受ける。主に健康状態および栄養状態が改善されたため,ここ150年にわたって思春期発来の年齢が低下してきたが,この傾向に歯止めがかかってきている。

思春期は,中等度の肥満女児では平均より早く始まり,重度の低体重や低栄養の女児では遅れることが多い(1)。このような観察結果から,体重または体脂肪量が思春期に必要な要素と考えられる。

他の多くの因子が思春期発来の時期および発達の速度に影響を与えうる。例えば,子宮内胎児発育不全は,特に出生後に栄養過剰であった場合に,より早期の思春期発来およびより速い発達に寄与するとのエビデンスがある。

思春期は,母親が性的に早熟であった女児,原因不明だが都市部に住む女児や盲目の女児では早く始まる。

思春期の発来年齢は民族によっても異なる(例,アジア人や非ヒスパニック系白人より黒人およびヒスパニック系で早い傾向がある [2])。

思春期の身体的変化

思春期の身体的変化は青年期に連続的に起こる( 思春期―女性の性徴がみられる時期)。

通常は乳房発育の開始( ヒトの乳房成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図 [3])と成長スパートの開始が最初にみられる変化である。

その後,陰毛と腋毛が現れ( 女児の陰毛発達に関するタナー段階(I~V)の模式図),成長スパートはピークに達する。

初経(初めての月経)は,乳房発育の開始からおよそ2~3年後に起こる。月経周期は通常初経時には不規則的であり,規則的になるまでに最長で5年かかることがある。成長スパートは,初経後には限られたものとなる。体型が変化し,骨盤および股関節が広くなる。体脂肪が増加し,骨盤部および大腿に蓄積する。

思春期発来の機序

思春期発来の機序は不明である。

GnRHの分泌を調節する中枢性の因子として,神経伝達物質とペプチドがある(例,γアミノ酪酸[GABA],キスペプチン)。このような因子により,小児期にはGnRHの分泌が阻害されているが,その後青年期の初期に分泌が始まって思春期を誘発すると考えられる。思春期の初期には,視床下部からのGnRHの分泌は, エストロゲン および プロゲステロンによる抑制に対して感受性が低くなる。結果としてGnRHの分泌が増加し,性ホルモン(主に エストロゲン)の産生を刺激するLHおよびFSHの分泌が促進される。 エストロゲンは第二次性徴の発達を刺激する。

陰毛および腋毛の成長は,副腎アンドロゲンのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびDHEAサルフェート(DHEA-S)によって刺激を受けると思われる;このようなアンドロゲン産生は,思春期前の数年間,adrenarcheと呼ばれる過程で増加する。

思春期―女性の性徴がみられる時期

バーは正常範囲を示す。

思春期―女性の性徴がみられる時期

ヒトの乳房成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図

From Marshall WA, Tanner JM: Variations in patterns of pubertal changes in girls. Archives of Disease in Childhood 44:291–303, 1969; used with permission.

ヒトの乳房成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図

女児の陰毛発達に関するタナー段階(I~V)の模式図

From Marshall WA, Tanner JM: Variations in patterns of pubertal changes in girls. Archives of Disease in Childhood 44:291–303, 1969; used with permission.

女児の陰毛発達に関するタナー段階(I~V)の模式図

思春期に関する参考文献

  • 1.Rosenfield RL, Lipton RB, Drum ML: Thelarche, pubarche, and menarche attainment in children with normal and elevated body mass index. Pediatrics 123(1):84-8, 2009. doi: 10.1542/peds.2008-0146.

  • 2.Herman-Giddens ME, Slora EJ, Wasserman RC, et al: Secondary sexual characteristics and menses in young girls seen in office practice: A study from the Pediatric Research in Office Settings network. Pediatrics 99:505–512, 1997.

  • 3.From Marshall WA, Tanner JM: Variations in patterns of pubertal changes in girls. Arch Dis Child 44:291–303, 1969.

卵胞の発達

女性がもつ卵子の前駆細胞(生殖細胞)の数は,生来決まっている。生殖細胞は,在胎4カ月までの間に原始卵原細胞として有糸分裂により著明に増殖し始める。在胎3カ月目の間には,一部の卵原細胞が減数分裂(染色体数が半分に減少する)を始める。

7カ月までに,発育可能な全生殖細胞が周囲に一層の顆粒膜細胞を発達させ,原始卵胞を形成し,減数分裂前期で停止する;これらの細胞が一次卵母細胞である。在胎4カ月が過ぎてから,卵原細胞(およびその後の卵母細胞)は閉鎖と呼ばれる過程で自然消失し,最終的には99.9%が消失する。高齢の母親では,残存する卵母細胞が減数分裂前期でとどまっている期間が長いことが,遺伝的異常が生じる妊娠の高い発生率の原因である可能性がある。

FSHは卵巣における卵胞発育を誘発する。各月経周期の間に,3~30個の一群の卵胞が急速に成長する。通常は各周期で,1個の卵胞のみが排卵に至る。この主席卵胞は排卵時に卵母細胞を放出し,他に成長していた卵胞の閉鎖を促進する。

月経周期

月経とは,血液および脱落した子宮内膜(月経血または経血と総称される)が子宮から腟を通って周期的に排出されることである。非妊娠時の各周期において卵巣での プロゲステロンおよび エストロゲン産生が急激に低下することで起こる。女性の生殖期間を通して妊娠していない場合に起きる。

閉経とは,月経が永続的に停止することである。

平均的な月経期間は5(± 2)日である。毎周期当たりの失血量は平均30mL(正常範囲,13~80mL)で,通常は2日目が最も多い。生理用ナプキンやタンポンの吸収量は5~15mLである。通常月経血は凝固しないが(出血がそれほどひどくない限り),これはおそらくフィブリノリジンや他の因子が凝固を抑制するからである。

月経周期の中央値は28日である(通常範囲はおよそ25~36日)。一般に,排卵が不規則に起こりがちな初経直後や閉経直前の数年間では,月経周期の変動が最大となり間隔も最長となる。月経周期とは,月経初日(第1日)から次の月経初日までをいう。

月経周期は複数の段階に分けることができ,通常は卵巣の状態に基づいて分類する。卵巣は以下の段階を経て変化する:

子宮内膜も各段階を経ながら周期的に変化する。

卵胞期

卵胞期の長さは他の周期よりばらつきがある。

卵胞期初期(卵胞期の前半)には,主に以下の事象がみられる:

  • 一群の卵胞の成長

この時点では,下垂体前葉のゴナドトロピン産生細胞はLHおよびFSHをほとんど含有せず, エストロゲン および プロゲステロンの産生量は少ない。その結果,総体的なFSH分泌がわずかに増加し,一群の卵胞の成長を刺激する。さらに,循環血中のLH値が,FSH増加の1~2日後から徐々に増加する。一群の卵胞はやがてエストラジオールの産生を増加させ,エストラジオールはLHおよびFSHの合成を刺激するが,その分泌は抑制する。

卵胞期後期(卵胞期の後半)には,排卵のために選択された卵胞が成熟してホルモン分泌性の顆粒膜細胞を蓄積する;卵胞腔が卵胞液により増大し,排卵前には18~20mmに達する。FSH濃度が低下するが,LH濃度への影響は少ない。FSHとLHの濃度推移に差がみられる理由の1つは,エストラジオールがLHの分泌よりもFSHの分泌を強く抑制するためである。さらに,発育する卵胞がインヒビンを産生するが,このホルモンはFSH分泌を抑制するがLH分泌は抑制しない。他の要因として,半減期の違い(LHは20~30分;FSHは2~3時間),および未知の因子があると考えられる。 エストロゲン(特に エストラジオール)濃度は急激に上昇する。

排卵期

排卵(卵子の放出)が起こる。

通常は排卵期の開始時にエストラジオール濃度がピークに達する。 プロゲステロン濃度も上昇し始める。

貯蔵されていたLHが通常は36~48時間にわたり大量に放出され(LHサージ),FSH濃度もわずかに上昇する。LHサージがこのタイミングで起こるのは,高濃度のエストラジオールによってゴナドトロピン産生細胞によるLH分泌が誘発されるためである(ポジティブフィードバック)。LHサージはまた,GnRHおよび プロゲステロンによっても刺激される。LHサージの間,エストラジオール濃度は低下するが, プロゲステロン濃度は上昇し続ける。LHサージにより約16~32時間以内に,卵胞壁の崩壊と成熟した卵子の放出を生じさせる酵素が活性化される。さらにLHサージがきっかけとなり,卵母細胞の第一減数分裂が約36時間以内に完了する。

黄体期

卵子を放出した後,主席卵胞は黄体へと変化する。

黄体期の長さは最も変動が少なく平均で14日であり,その後,妊娠が起こらなければ黄体は退縮する。

黄体は主に プロゲステロンを漸増的に分泌し,その分泌量は排卵の6~8日後にピーク(約25mg/日)に達する。 プロゲステロンは,胚の着床に必要な分泌期子宮内膜の発達を促す。 プロゲステロンは体温上昇作用を有するため,黄体期では基礎体温が0.5℃上昇する。

黄体期のほぼ全体を通じてエストラジオール, プロゲステロンおよびインヒビンの血中値が高いため,LHおよびFSHの値は低下する。妊娠が起こらなければ,エストラジオールおよび プロゲステロンの値はこの期間の後半で減少し,黄体は 退縮し白体となる。

着床が起これば,黄体は退縮せずに妊娠初期まで機能が保たれ,発育する胚によって産生されるヒト絨毛性ゴナドトロピンによって維持される。

正常な月経周期に生じる,下垂体ゴナドトロピン,エストラジオール(E 2 ),プロゲステロン(P)および子宮内膜の理想的な周期的変化

月経出血のある日をMで示す。

FSH Z = 卵胞刺激ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。(Adapted from Rebar RW: Normal physiology of the reproductive system. In Endocrinology and Metabolism Continuing Education Program, American Association of Clinical Chemistry, November 1982. Copyright 1982 by the American Association for Clinical Chemistry; reprinted with permission.)

正常な月経周期に生じる,下垂体ゴナドトロピン,エストラジオール(E <sub>2</sub> ),プロゲステロン(P)および子宮内膜の理想的な周期的変化

その他の生殖器における周期的変化

子宮内膜

子宮内膜は腺と間質からなり,基底層,中間の海綿層および子宮腔の内面を覆う緻密な上皮細胞層をもつ。海綿層と上皮細胞層はともに月経中に脱落する一過性の機能層を構成する。

月経周期中,子宮内膜は以下の段階を経ながら周期的に変化する:

  • 月経期

  • 増殖期

  • 分泌期

月経後,子宮内膜は典型的には薄く,密な間質と,低円柱状上皮で内面を覆われた細くまっすぐな管状の腺を伴う。エストラジオールの値が上昇するに従って,残存する基底層は子宮内膜を再生し,卵胞期後期には内膜の厚さが最大になる(子宮内膜周期の増殖期)。粘膜は厚くなり,腺は長く伸びてらせん状となり蛇行する。

排卵は子宮内膜周期の分泌期の始まりに起こる。卵巣の黄体期には, プロゲステロン の刺激により子宮内膜の腺は拡張し,グリコーゲンが充満し分泌を起こすようになり,間質では血管分布が増加する。黄体期/分泌期後期には,エストラジオールおよび プロゲステロンの値が低下するため,間質は浮腫状となり,子宮内膜およびその血管が壊死を起こし,出血して月経に至る(子宮内膜周期の月経期)。子宮内膜の線溶作用により月経血中の凝血塊が減少する。

子宮内膜の組織学的変化は月経周期中の各期に特異的であるため,どの期であるかや性ホルモンに対する内膜組織の反応は,子宮内膜生検によって正確に決定できる。

子宮頸部

子宮頸部は子宮腔への通過を制限するバリアの役割を果たす。

卵胞期には,エストラジオール値の上昇により,頸部の血管分布,浮腫,頸管粘液量,弾性および塩分濃度(塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)が増加する。外子宮口はわずかに開き,排卵時には粘液で満たされる。

黄体期には, プロゲステロン値の上昇により,頸管粘液は濃くなり,伸びが悪くなり,精子が運ばれにくくなる。

月経周期が,スライドガラス上で頸管粘液を乾燥させて行う顕微鏡検査により明らかになることがある;シダ状結晶形成(粘液のシュロの葉状の分岐)は,頸管粘液中の塩分量の増加を示す。シダ状結晶形成は, エストロゲン 値が高い排卵直前に際立ち,黄体期にはごくわずかになるか全くみられなくなる。牽糸性,すなわち粘液の伸縮性(弾性)はエストロゲン値が上昇するにつれて(例,排卵直前)増加する;この変化は月経周期の排卵前の(妊娠可能な)時期を決定するために利用することができる。

卵胞期初期で,エストラジオールの値が低いときには,腟上皮は薄く蒼白である。卵胞期後期に,エストラジオール値が上昇するにつれて,扁平上皮細胞が成熟して角化し,腟上皮は厚くなる。

黄体期には,角化前の中間細胞の数が増加し,成熟した扁平上皮細胞が脱落するにつれて白血球の数や細胞片の量が増加する。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP