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妊娠中の合併症の危険因子

執筆者:

Raul Artal-Mittelmark

, MD,

  • Professor and Chairman Emeritus, Department of Obstetrics, Gynecology and Women's Health
  • Saint Louis University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 3月
本ページのリソース

妊娠中の合併症の危険因子としては以下のものがある:

高血圧

妊婦は以下の場合,慢性高血圧(CHTN)であると考えられる:

  • 妊婦が妊娠前に高血圧であった場合

  • 妊娠20週以前に高血圧が発生した場合

CHTNは妊娠20週以降に発生する妊娠高血圧とは区別される。どちらの場合でも,高血圧とは24時間以上の間隔を空けた2回の収縮期血圧が140mmHg超,または拡張期血圧が90mmHg超と定義される。

高血圧は以下のリスクを上昇させる:

  • 胎児発育不全(子宮胎盤血流が減少することによる)

  • 胎児および母体の不良転帰

高血圧の女性は,妊娠を試みる前に妊娠のリスクについてのカウンセリングを受けるべきである。妊娠した場合はできるだけ早期に出生前ケアを開始し,ベースライン腎機能の測定(例,血清クレアチニン,BUN),眼底検査,および狙いを定めた心血管評価(聴診,およびときに心電図,心エコー検査,または両方による)を行う。各トリメスターで,24時間尿タンパク,血清尿酸,血清クレアチニン,およびヘマトクリットを測定する。胎児の発育をモニタリングするための超音波検査を妊娠28週目に行い,その後は4週間毎に実施する。発育遅滞は,母体・胎児医療の専門医が複数血管でドプラ検査を行って評価する(妊娠中の高血圧管理については, 妊娠中の高血圧 : 治療)。

糖尿病

顕性糖尿病は妊娠の6%以上で起こり,妊娠糖尿病は妊娠の約8.5%で起こる。発生頻度は肥満の発生率が増加するにつれて上昇している。

既存の インスリン依存性糖尿病は以下のリスクを上昇させる:

インスリン必要量は妊娠中は通常増加する。

妊娠糖尿病は以下のリスクを上昇させる:

  • 高血圧疾患

  • 巨大児

  • 帝王切開の必要性

妊娠糖尿病は,妊娠24~28週でルーチンにスクリーニングされるが,妊婦に危険因子がある場合には第1トリメスターで行われる。危険因子としては以下のものがある:

  • 妊娠糖尿病の既往

  • 以前の妊娠における巨大児

  • インスリン非依存性糖尿病の家族歴

  • 原因不明の胎児死亡

  • BMI(body mass index) > 30kg/m2

  • 糖尿病の有病率が高い特定の民族(例,メキシコ系アメリカ人,アメリカンインディアン,アジア人,太平洋諸島系の人)

妊娠糖尿病の可能性があるかどうか調べるために,まず随時血漿血糖値検査を行う医療従事者もいる。ただし,妊娠糖尿病のスクリーニングおよび診断の確定は,経口ブドウ糖負荷試験(OGTT- 100g経口ブドウ糖負荷試験を用いた妊娠糖尿病診断*のための血漿血糖値の閾値)の結果に基づいて行うのが最良である。2013年のNational Institutes of Health(NIH)のコンセンサス会議の推奨に基づくと,スクリーニングは50gブドウ糖負荷試験(GLT)1時間値の測定から開始する;結果が陽性(血漿血糖値 > 130~140mg/dL)であれば,100gOGTTの3時間値を測定する。

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100g経口ブドウ糖負荷試験を用いた妊娠糖尿病診断*のための血漿血糖値の閾値

100-g OGTT検査 測定のタイミング

血漿血糖値(mg/dL)(NDDG)

血漿血糖値(mg/dL)(Carpenter and Coustan)

空腹時

105

95

1時間

190

180

2時間

165

155

3時間

145

140

*妊娠糖尿病は少なくとも2つの閾値を満たす,またはそれを超える場合に診断される。

Vandorsten JP, Dodson WC, Espeland MA, et al. National Institutes of Health (NIH) Consensus Development Conference Statement: Diagnosing gestational diabetes mellitus. NIH Consensus State-of-the-Science Statements 29:1–31, 2013.

患者が未診断の糖尿病を有すると医師が疑う場合は,不必要なブドウ糖負荷を避けるために絶食が必要となる。

NDDG = National Diabetes Data Group;OGTT = 経口ブドウ糖負荷試験。

至適な妊娠糖尿病の治療(食習慣の改善,運動,および血糖値の綿密なモニタリングと必要時の インスリン)は母体,胎児,および新生児の不良転帰のリスクを軽減する。

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妊娠中の顕性糖尿病診断のための閾値

検査*

閾値

空腹時血漿血糖

126mg/dL

HbA1C

6.5%

随時血漿血糖

200mg/dL,> 1回

*医師が糖尿病を疑う場合(例,肥満,糖尿病の強い家族歴,または以前の妊娠での妊娠糖尿病の既往などの危険因子を有する患者)は,空腹時血漿血糖およびHbA1Cを測定する。

HbA1c = 糖化ヘモグロビン。

妊娠糖尿病の女性は,妊娠前に未診断の糖尿病であった可能性がある。そのため妊娠糖尿病の女性には,分娩の6~12週間後に,妊娠していない患者に用いるものと同じ検査と基準を用いて糖尿病のスクリーニングを行うべきである。

性感染症(STD)

性感染症および妊娠中の感染症も参照のこと。)

子宮内における胎児の梅毒は,胎児死亡,先天奇形,および重度の障害を引き起こしうる。

無治療の場合,妊産婦から児へのHIV感染のリスクは,分娩前で約30%,分娩時で約25%である。分娩時感染のリスクを最小限にするため,新生児には出生から6時間以内に抗レトロウイルス療法を行う。

妊娠中の細菌性腟症,淋菌感染症,および性器クラミジア感染症は,切迫早産および前期破水のリスクを増大させる。

初回の妊婦健診で行うルーチンの出生前ケアとして,これら感染症のスクリーニング検査が含まれている。梅毒検査は,妊娠中(リスクが継続してあれば),および分娩時に全ての妊婦に対し反復して行われる。これらの感染症のいずれかに罹患している妊婦は,抗菌薬で治療する。

細菌性腟症,淋菌感染症,またはクラミジア感染症の治療は,破水から分娩までの間隔を延長し,胎児炎症を抑制することにより胎児の転帰を改善しうる。

ジドブジンまたはネビラピンをHIVに感染している妊婦に投与すると,伝播のリスクが3分の2低下する;2~3種類の抗ウイルス薬の併用によっておそらくリスクはさらに低くなる(2%未満)( 乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 : 予防)。胎児および妊婦に毒性作用を及ぼす可能性はあるが,これらの薬物は推奨されている。

腎盂腎炎

妊娠中の尿路感染症も参照のこと。)

腎盂腎炎は以下のリスクを上昇させる:

腎盂腎炎は,妊娠中における非産科的な入院原因として最も多い。

腎盂腎炎の妊婦は評価および治療のため入院させ,主に尿培養と感受性試験,抗菌薬の静注(例,第3世代セファロスポリン系薬剤を単独で,またはアミノグリコシド系薬剤と併用),解熱薬投与,および水分補給などを行う。解熱して24~48時間後から原因微生物に特異的な経口抗菌薬投与を開始し,抗菌薬療法の全過程を完了(通常7~10日間)するまで継続する。

残る妊娠期間中,定期的に尿培養を行いながら予防的抗菌薬(例,ニトロフラントイン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール)投与を継続する。

緊急手術に関する問題

妊娠中に外科手術を要する疾患も参照のこと。)

大手術(特に腹腔内)により以下のリスクが増大する:

しかしながら,適切な支持療法および麻酔(血圧と酸素飽和度を正常レベルに維持しながら)が行われれば,妊婦および胎児は通常十分手術に耐えられるため,医師は手術に対し消極的になるべきではない;腹部の緊急事態の治療の遅れの方がはるかに危険である。

手術後,抗菌薬および子宮収縮抑制薬を12~24時間投与する。

妊娠中に非緊急手術を行う必要がある場合は,第2トリメスターが最も安全である。

性器の異常

子宮および頸部の構造的異常(例,中隔子宮,双角子宮)により,以下の可能性が高くなる:

  • 胎位異常

  • 分娩遷延

  • 帝王切開の必要性

子宮筋腫はまれではあるが胎盤異常(例,前置胎盤),切迫早産,および繰り返す自然流産の原因となりうる。子宮筋腫は妊娠中に急速に成長または変性しうる;変性はしばしば重度の疼痛および腹膜刺激徴候を引き起こす。

子宮頸管無力症(不全症)により早産の可能性が高くなる。子宮頸管無力症は外科的介入(頸管縫縮術),腟内プロゲステロン,またはときに腟内ペッサリーにより治療可能である。

妊娠前に子宮筋腫核出術を受けて子宮腔が開放されていた場合は,移行の経腟分娩では子宮破裂のリスクがあるため,帝王切開が必要となる。

不良な産科転帰につながる子宮の異常では,しばしば外科的修正が必要となるが,それは分娩後に行われる。

母体の年齢

全妊娠の13%を占めるティーンエイジャーでは,妊娠高血圧腎症,切迫早産,および貧血の発生率が高くなり,しばしば胎児発育不全につながる。ティーンエイジャーが出生前ケアを怠り,頻繁に喫煙し,性感染症を有する率が高い傾向にあることが少なくとも一因にある。

35歳以上の妊婦では,妊娠高血圧腎症の発生率が増大するが,妊娠糖尿病,分娩遷延,常位胎盤早期剥離,死産,および前置胎盤も同様である。こうした妊婦はまた,既存疾患(例,慢性高血圧,糖尿病)をもっている可能性も高い。胎児の染色体異常のリスクは母体年齢の上昇にしたがって増加するため,遺伝子検査を勧めるべきである。

母体の体重

妊娠前のBMIが19.8kg/m2未満であった妊婦は低体重とみなされ,新生児の低出生体重(2.5kg未満)の素因となる。こうした妊婦には,妊娠中に最低12.5kg体重を増やすよう推奨する。

妊娠前のBMIが25~29.9kg/m2(過体重)または30以上(肥満)であった妊婦は,母体の高血圧および糖尿病,過期妊娠,流産,巨大児,先天奇形,子宮内胎児発育不全,妊娠高血圧腎症,および帝王切開のリスクがある。理想的には減量は妊娠前に始めるべきであり,まず生活習慣の改善を試みること(例,身体活動を増やす,食習慣の変更)から始める。過体重または肥満の妊婦には妊娠中の体重増加を制限するよう推奨し,これは生活習慣の改善によるのが理想的である。Institute of Medicine(IOM)は以下のガイドラインを用いている:

  • 過体重:体重増加を6.8~11.3kg(15~25lb)未満に制限

  • 肥満:体重増加を5~9.1kg(11~20lb)未満に制限

しかし,全ての専門家がIOMの推奨に同意しているわけではない。多くの専門家が,体重増加のさらなる制限と生活習慣の改善(例,身体活動を増やす,食習慣の変更)を含む個別化したアプローチを推奨しており,これは特に肥満女性において当てはまる(1)。

過体重および肥満の妊婦では,妊娠中の生活習慣の改善により,妊娠糖尿病および妊娠高血圧腎症のリスクが減少する。

適正な体重増加,食事,および運動について初回の来院時および妊娠中を通じて定期的に話し合うことが重要である。

参考文献

  • 1.Artal R, Lockwood CJ, Brown HL: Weight gain recommendations in pregnancy and the obesity epidemic. Obstet Gynecol115 (1):152-155, 2010. doi: 10.1097/AOG.0b013e3181c51908.

母体の身長

低身長(約 < 152cm)の女性は骨盤が小さい可能性が高く,胎児骨盤不均衡または肩甲難産を伴う難産につながりうる。低身長の女性ではまた,切迫早産および子宮内胎児発育不全も起こる可能性が高い。

催奇形因子への曝露

一般的な催奇形因子(胎児の奇形を引き起こす因子)として,感染症,薬物,および物理的因子がある。器官形成期である受胎後2~8週の間(最終月経後4~10週目)に曝露があると,最も奇形が生じる可能性が高い。また他の不良な妊娠転帰も生じる可能性がより高い。催奇形因子に曝露した妊婦には,リスクの増大についてカウンセリングを受けさせ,奇形を発見するための詳細な超音波検査に紹介する。

催奇形因子となりうる一般的な感染症には,単純ヘルペス,ウイルス性肝炎,風疹,水痘,梅毒,トキソプラズマ症,サイトメガロウイルス感染症,コクサッキーウイルス感染症,およびジカウイルス感染症などがある。

一般的に使用される薬物で,催奇形因子となりうるものには,アルコール,タバコ,コカイン( 妊娠中の社会的薬物と違法薬物)および一部の処方薬( 妊娠中に有害作用を伴う薬物)がある。

第1トリメスター中の高体温または39℃を超える温度への曝露(例,サウナ)は二分脊椎と関連付けられている。

水銀への曝露

魚介類に含まれる水銀は胎児に有毒である可能性がある。Food and Drug Administration(FDA:米国食品医薬品局)(Fish: What Pregnant Women and Parents Should Knowを参照)は以下を推奨している:

  • メキシコ湾産のタイルフィッシュ(アマダイの仲間)のほか,サメ,メカジキ,メバチマグロ,マカジキ,オレンジラフィー,キングマカレル(サワラの一種)を避ける

  • ビンナガマグロの摂取量は4オンス(113.4g)(1回の食事の平均的な量)/週に制限する

  • 地域の湖,河川,沿岸部で獲れた魚を食べる前にその地域の担当行政機関(米国)に魚の安全性について確認し,水銀量が低いかどうか不明な場合は摂取量を4オンス(113.4g)/週に制限し,その週は他の魚介類を避ける

専門家は,妊娠中または授乳中の女性は,水銀含有量の低い様々な種類の魚介類を週に8~12オンス(226.8~340.2g)(2~3回の食事の平均的な量)摂取することを推奨している。このような魚介類には,カレイ科の一部の魚,エビ,ライトツナ缶詰,サケ科の魚,ポロック,ティラピア,タラ,ナマズなどがある。魚には胎児の成長と発達に重要な栄養素が含まれている。

死産の既往

死産とは,在胎20週を超える死亡胎児の娩出である。妊娠後期の胎児死亡は,母体,胎盤,または胎児に解剖学的または遺伝学的な原因がある可能性がある( 死産の一般的な原因)。死産または妊娠後期の流産(すなわち,16~20週)の既往があると,その後の妊娠における胎児死亡のリスクは増大する。リスクの程度は以前の死産の原因により異なる。分娩前検査(例,ノンストレステスト,バイオフィジカルプロファイル)を用いた胎児のサーベイランスが推奨される。

母体疾患(例,慢性高血圧,糖尿病,感染症)の治療により,現在の妊娠における死産のリスクが低下する可能性がある。

早産の既往

早産とは37週未満の分娩である。早期の陣痛開始による早産の既往により,将来早産となるリスクが上昇する;以前の早産で新生児の体重が1.5kg未満であった場合,次の妊娠における早産のリスクは50%である。

切迫早産による早産の既往がある女性は20週以降,2週間の間隔で注意深くモニタリングすべきである。モニタリングには以下を含める:

  • 16~18週での頸管長および形の測定を含む超音波検査による評価

  • 子宮収縮モニタリング

  • 細菌性腟症の検査

  • 胎児性フィブロネクチン測定

切迫早産または頸管の短縮(< 25mm)や楔状開大による早産の既往のある女性は17α-ヒドロキシプロゲステロン250mg,筋注を週1回投与すべきである。

遺伝性疾患または先天性疾患を有する児の出産歴

胎児に染色体異常が伴うリスクは,(認識されたまたは見逃された)染色体異常の胎児や新生児をもった経験のある多くのカップルで高くなる( 出生前遺伝カウンセリング : 危険因子)。多くの遺伝性疾患において,疾患が繰り返されるリスクは不明である。ほとんどの先天奇形が多因子性である;以降の妊娠で胎児に先天奇形を伴うリスクは1%以下である。

カップルに遺伝性疾患や染色体異常の新生児をもった経験がある場合,遺伝子スクリーニングが推奨される。カップルに先天奇形の新生児をもった経験がある場合,遺伝子スクリーニング,高分解能超音波検査,および母体・胎児専門医による評価が推奨される。

羊水過多および羊水過少

羊水過多(羊水の過剰)により母体の重度の息切れおよび切迫早産が起こりうる。危険因子として以下のものがある:

  • コントロール不良の母体糖尿病

  • 多胎妊娠

  • 同種免疫

  • 胎児の奇形(例,食道閉鎖,無脳症,二分脊椎)

羊水過少(羊水の不足)には,しばしば胎児尿路の先天奇形および重度の胎児発育不全(3パーセンタイル未満)が伴う。さらに,肺低形成や胎児の表面圧迫による異常を伴うPotter症候群が通常は第2トリメスターに発生し,胎児死亡を引き起こしうる。

羊水過多や羊水過少は,子宮の大きさが妊娠期間に比して大きいあるいは小さい場合に疑われるが,診察時の超音波検査によって偶然発見されることもあり,これにより診断がつく。

多胎妊娠

多胎妊娠により,以下のリスクが増大する:

多胎妊娠は妊娠16~20週におけるルーチンの超音波検査中に発見される。

分娩損傷の既往

大部分の脳性麻痺および神経発達障害は,分娩損傷とは関連のない要因により起こる。腕神経叢損傷などの損傷は鉗子や吸引器による分娩などの手技により生じる場合もあるが,分娩中の子宮内の圧力または妊娠の最後の数週間の胎位異常により生じることが多い。

肩甲難産の既往は将来の難産の危険因子であり,損傷の素因となったかもしれない修正可能な危険因子(例,巨大児,吸引・鉗子分娩)がないか,以前の分娩記録をレビューすべきである。

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