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角膜移植

(角膜移植;全層角膜移植;角膜内皮移植)

執筆者:

Melvin I. Roat

, MD, FACS, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 12月
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適応

角膜移植は以下のいくつかの理由で行われる:

  • 角膜を再建する(例,穿孔した角膜の置換)

  • 難治性の痛みを緩和する(例,水疱性角膜症において繰り返す水疱の破裂による重度の異物感)

  • 内科的管理に反応しない疾患の治療(例,コントロールできない重度の真菌性角膜潰瘍)

  • 角膜の透明性を改善して視力を改善する(例,角膜潰瘍後に瘢痕化した角膜,フックスジストロフィーもしくは白内障手術後の浮腫により混濁した角膜,遺伝性角膜実質ジストロフィーなどでみられる非透過性の異常な角膜実質タンパクの沈着により混濁した角膜,または円錐角膜で生じるような不正乱視がある角膜の置換)

最も頻度が高い適応は以下のものである:

  • 水疱性角膜症(偽水晶体性または無水晶体性,フックス内皮ジストロフィー)

  • 再移植

  • 角膜炎または角膜炎後(ウイルス,細菌,真菌,もしくはアカントアメーバ[Acanthamoeba]感染症または穿孔による)

  • 角膜実質ジストロフィー

手技

組織適合性検査はルーチンには行われない。死体ドナーの組織は,ドナーに伝染病が疑われる場合を除き,使用できる。

角膜移植は,全身麻酔,または鎮静薬の静注を併用した局所麻酔で行える。

抗菌薬の局所投与を術後数週間,コルチコステロイドの局所投与を数カ月間行う。移植後,不注意による外傷から眼を保護するために,患者は保護具,眼鏡,またはサングラスを装用する。移植片が角膜全層に及ぶ場合(角膜全層移植,すなわちPKPなど)は,最大視力を完全に獲得するのに最大18カ月かかるが,これは創傷治癒に伴って,また縫合糸除去後に屈折力が変化することによる。角膜実質に異常がなく,曲率が正常で実質表面が平滑であり,角膜内皮のみが十分機能しない疾患(例,フックスジストロフィー,白内障手術後の水疱性角膜症)では,角膜内皮のみを移植する必要がある。角膜内皮移植(例,デスメ膜剥離角膜内皮移植[DSEK],または最新の技術であるDescemet Membrane Endothelial Keratoplasty [DMEK])では,通常それぞれ6カ月または3カ月以内に最大視力が獲得される。多くの患者では角膜移植片上にハードコンタクトレンズを装用することにより,より早期により良好な視力が得られる。

合併症

合併症としては以下のものがある:

  • 移植片拒絶反応

  • 感染症(眼内および角膜)

  • 術創からの漏れ

  • 緑内障

  • 生着不全

  • 高度の屈折異常(特に乱視,近視,またはその両方)

  • 疾患の再発(単純ヘルペスまたは遺伝性角膜実質ジストロフィーが合併)

移植片拒絶反応の割合は通常10%未満(例,初期の水疱性角膜症患者)であるが,高リスク患者(例,化学外傷の患者)では最大68%に達する可能性がある。拒絶反応の症状としては,視力低下,光線過敏症,眼痛,眼の充血などがある。移植片拒絶反応は,コルチコステロイドの局所投与(例,1%プレドニゾロン1時間毎),またときに補助手段として眼周囲への注射(例,トリアムシノロンアセトニド40mg)により治療する。移植片拒絶反応が重度の場合,または移植片の機能が不十分な場合は,コルチコステロイドの経口投与(例,プレドニゾン1mg/kg,1日1回)および,ときに静注(例,メチルプレドニゾロン3~5mg/kg,1回)を追加する。典型的に,拒絶反応は可逆的であり移植片の機能は完全に回復する。拒絶反応が異常に重度であるか長期間持続する場合,または移植片拒絶反応が反復する場合は,移植が失敗した可能性がある。再移植は可能であるが,長期予後は初回移植時よりも不良である。移植が繰り返し失敗する場合は,人工角膜(角膜プロテーゼ)の留置が可能である。

予後

長期的な移植成功率は以下の通りである:

  • 円錐角膜,外傷性角膜瘢痕,初期の水疱性角膜症,または遺伝性角膜実質ジストロフィーでは,> 90%

  • より進行した水疱性角膜症または不活性ウイルス性角膜炎では,80~90%

  • 活動性角膜感染症では,50%

  • 化学外傷または放射線障害では,0~50%

角膜移植の全般的に高い成功率には,角膜に血管がないこと,および前房に静脈系流出路はあるがリンパ流出路がないことなど,多くの因子が関与している。これらの条件により,低量域免疫寛容(低量の抗原に恒常的に曝露される結果生じる免疫学的寛容),および前房関連免疫偏位と呼ばれるプロセスが促進され,眼内リンパ球の抑制および移植された眼内抗原に対する遅延型過敏反応の抑制が活性化する。もう1つの重要な要因は移植片拒絶反応の治療にコルチコステロイドを点眼で,局所的に,および全身的に投与する有効性である。

角膜輪部幹細胞移植

角膜輪部幹細胞移植では,角膜輪部(結膜が角膜に結合する部位)で不可欠な幹細胞を外科的に置換する。正常であれば,この領域に幹細胞が存在する。幹細胞があまりにも重度に損傷しているため,疾患または外傷から回復できない場合に移植を行う。

重度の化学熱傷,スティーブンス-ジョンソン症候群,コンタクトレンズの慢性的な長時間装用による重度の損傷といった病態では,遷延性角膜上皮欠損を生じることがある。これらの欠損は,角膜上皮幹細胞が十分な上皮細胞を産生しないために角膜が再生されないことに起因する。無治療の場合は,遷延性角膜上皮欠損により感染しやすくなり,瘢痕化,穿孔,またはその両方に至る可能性がある。このような状況下では,角膜中央部のみを置換し輪部を置換しない角膜移植は不十分である。角膜を再生させる新たな細胞を産生させて,眼表面の再生能を回復させるには,幹細胞が必要である。

角膜輪部幹細胞は,患者自身の健眼または死体ドナーの眼から移植できる。角膜輪部(すなわち,角膜輪部の上皮および実質表層の全て)の部分層切除により患者の損傷した角膜上皮幹細胞を除去する。同様の切除により準備したドナーの角膜輪部組織を前処置した角膜ベッドに縫合する。死体角膜輪部移植後は,免疫抑制薬の全身投与が必要である。

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