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糖尿病網膜症

執筆者:

Sonia Mehta

, MD, Vitreoretinal Diseases and Surgery Service, Wills Eye Hospital, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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糖尿病網膜症の臨床像には,毛細血管瘤,網膜内出血,滲出,黄斑浮腫,黄斑虚血,新生血管,硝子体出血,および牽引性網膜剥離がある。症状は疾患の後期まで出現しないことがある。診断は眼底検査による;カラー眼底写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影,および光干渉断層撮影により,さらに詳細を明らかにする。治療法には血糖および血圧のコントロールなどがある。眼の治療法としては,網膜レーザー光凝固,血管内皮増殖因子阻害薬(例,アフリベルセプト,ラニビズマブ,ベバシズマブ)の硝子体内注射,コルチコステロイド眼内投与,硝子体切除術,これらの併用などがある。

病態生理

糖尿病網膜症は,特に労働年齢の成人における失明の主要な原因である。網膜症の程度は,以下と強い相関がみられる:

  • 糖尿病の罹病期間

  • 血糖値

  • 血圧

妊娠により血糖コントロールが損なわれるため,網膜症の悪化を招くことがある。

非増殖性網膜症

最初に非増殖性網膜症(単純網膜症とも呼ばれる)が起こり,毛細血管の透過性亢進,毛細血管瘤,出血,滲出,黄斑虚血,および黄斑浮腫(毛細血管からの液体漏出により生じる網膜の肥厚化)を引き起こす。

増殖性網膜症

増殖性網膜症は非増殖性網膜症の後に起こり,より重症である;硝子体出血および牽引性網膜剥離に至ることがある。増殖性網膜症は,異常な新血管の形成(新生血管)を特徴とし,網膜の内側(硝子体)表面に発生した新生血管は,硝子体内に伸展して硝子体出血を生じることがある。新生血管は網膜前線維組織を伴うことが多く,これが硝子体とともに収縮して牽引性網膜剥離に至ることがある。新生血管は前眼部の虹彩上に発生することもある;前房隅角の虹彩周辺境界部で新生血管膜の増殖が起こることがあり,これが新生血管緑内障を引き起こす。増殖性網膜症による視力障害は重症化する可能性がある。

非増殖性網膜症または増殖性網膜症では臨床的に重大な黄斑浮腫が生じることがあり,この黄斑浮腫は,糖尿病網膜症による視力障害の最も一般的な原因である。

症状と徴候

非増殖性網膜症

黄斑浮腫または黄斑虚血により視覚症状が起こる。しかしながら,網膜症が進行した患者でも視力障害を認めないことがある。非増殖性網膜症の最初の徴候は以下のものである:

  • 毛細血管瘤

  • 点状および斑状の網膜出血

  • 硬性白斑

  • 綿花様白斑(軟性白斑)

硬性白斑は,網膜内に離散した黄色い粒子である。硬性白斑の存在は,慢性浮腫を示唆する。綿花様白斑は,網膜神経線維層の微小梗塞の領域で,網膜の混濁を生じる;境界不鮮明,白色で,その下の血管を覆い隠す。

後期における徴候は以下のものである:

  • 黄斑浮腫(細隙灯顕微鏡検査で網膜層の隆起および不鮮明化を認める)

  • 静脈拡張および網膜内細小血管異常

増殖性網膜症

症状として,霧視,視野中の飛蚊症(黒点)または光視症,および突然の重度,無痛性の視力障害などがみられる場合がある。これらの症状は,典型的に硝子体出血または牽引性網膜剥離により生じる。

増殖性網膜症は,非増殖性網膜症とは異なり,視神経または網膜表面上に見える細い網膜前新生血管形成を引き起こす。黄斑浮腫または網膜出血が眼底検査で観察されることがある。

診断

  • 眼底検査

  • カラー眼底写真撮影

  • フルオレセイン蛍光眼底造影

  • 光干渉断層撮影

診断は眼底検査による。カラー眼底写真撮影は,網膜症のグレード分類に役立つ。フルオレセイン蛍光眼底造影を行い,網膜症の程度の判定,治療計画の策定,および治療結果のモニタリングを行う。光干渉断層撮影も,黄斑浮腫の重症度および治療に対する反応の評価に有用である。

スクリーニング

初期の発見が重要であるため,糖尿病患者は全員,眼科での散瞳検査を毎年受けるべきである。妊娠中の糖尿病患者はトリメスター毎に検査すべきである。視覚症状(例,霧視)があれば,眼科への紹介が必要である。

治療

  • 血糖および血圧のコントロール

  • 黄斑浮腫に対しては,血管内皮増殖因子阻害薬(VEGF阻害薬)の眼内注射,コルチコステロイドの眼内インプラント,局所レーザー,および/または硝子体切除術

  • 高リスクまたは合併症のある増殖性網膜症に対しては,汎網膜レーザー光凝固,ときに硝子体切除術

血糖および血圧のコントロールが不可欠である;血糖値を徹底的にコントロールして網膜症の進行を遅らせる。臨床的に意味のある糖尿病黄斑浮腫は,VEGF阻害薬(例,ラニビズマブ,ベバシズマブ,アフリベルセプト)の眼内注射および/または局所レーザー光凝固により治療を行う(1)。デキサメタゾンの眼内インプラントおよびトリアムシノロンの硝子体内注射により,難治性の黄斑浮腫が治療できる。一部の国では,慢性の糖尿病黄斑浮腫の患者に対してフルオシノロンの眼内インプラントを使用できる。難治性の糖尿病黄斑浮腫では硝子体切除術が有用な場合がある。重度の非増殖性網膜症の選択症例では,汎網膜レーザー光凝固を使用することがある;しかしながら,通常は汎網膜レーザー光凝固を増殖性網膜症が発生するまで遅らせることができる。

硝子体出血の発症,広範な網膜前新生血管,または前眼部新生血管/新生血管緑内障の高リスク所見を認める増殖性糖尿病網膜症患者には,汎網膜レーザー光凝固による治療を行うべきである。最近の複数の研究でも,増殖性糖尿病網膜症の治療における硝子体内へのVEGF阻害薬の使用が支持されている(2)。この治療により,重度の視力障害のリスクが大幅に低下する。

硝子体切除術は,以下のいずれかを認める患者における視力の維持およびしばしば視力障害の回復に役立つことがある:

  • 持続的な硝子体出血

  • 広範な網膜前膜形成

  • 牽引性網膜剥離

  • 難治性の糖尿病黄斑浮腫

治療に関する参考文献

予防

血糖および血圧のコントロールが不可欠である;血糖値を徹底的にコントロールして網膜症の発症を遅らせる。

要点

  • 糖尿病網膜症の特徴には,毛細血管瘤,網膜内出血,滲出,綿花様白斑,黄斑浮腫,黄斑虚血,新生血管,硝子体出血,および牽引性網膜剥離がある。

  • 症状は,障害が進行するまで出現しないことがある。

  • 糖尿病網膜症の患者はカラー眼底写真撮影,フルオレセイン蛍光眼底造影,および光干渉断層撮影により検査する。

  • 糖尿病患者全員に対して,眼科での散瞳検査を毎年実施する。

  • 黄斑浮腫の患者は,VEGF阻害薬(例,ラニビズマブ,アフリベルセプト,ベバシズマブ)の眼内投与,コルチコステロイドの眼内インプラント,局所レーザー光凝固,および/または硝子体切除術により治療する。

  • 高リスクまたは合併症のある増殖性網膜症の患者は,汎網膜レーザー光凝固およびときに硝子体切除術により治療する。

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