(結膜炎の概要 結膜炎の概要 結膜の炎症は典型的には,感染,アレルギー,または刺激により起こる。症状は,結膜充血および眼脂,ならびに病因によっては不快感およびそう痒である。診断は臨床的に行う;ときに培養が適応となる。治療は病因に基づき,抗菌薬,抗ヒスタミン薬,肥満細胞安定化薬,およびコルチコステロイドの局所投与などがありうる。 感染性結膜炎は ウイルス性結膜炎または 細菌性結膜炎が最も多く,伝染性である。まれに,病原体が混合性または同定不能な場合がある。多数のアレル... さらに読む も参照のこと。)
アレルギー性結膜炎の病因
アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対する I型過敏反応 I型 アレルギー性(アトピー性を含む)およびその他の過敏性疾患は,外来抗原に対する不適切または過剰な免疫応答である。不適切な免疫応答には,内在性の身体成分に対する誤った反応も含まれ,これが 自己免疫疾患を招く。 過敏反応は,ゲル-クームス分類によって4種類の型に分けられる。過敏性疾患には複数の型が含まれることが多い。... さらに読む による。
季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は空中のカビの胞子,または樹木,イネ科の草,もしくは雑草の花粉によって生じる。原因となる植物の生活環に一致して,春,晩夏,または初秋にピークを迎え,冬に消失する傾向がある。
通年性アレルギー性結膜炎(アトピー性結膜炎,アトピー性角結膜炎)は,チリダニ,動物の鱗屑,およびその他の非季節性のアレルゲンによって生じる。これらのアレルゲン,特に室内のものは,通年の症状を引き起こす傾向がある。
春季カタルは,より重度の結膜炎であり,アレルギーが原因である可能性が非常に高い。 湿疹 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む , 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む ,または季節性アレルギーを併発する5~20歳の男性に最もよくみられる。春季カタルは,典型的には春になるたびに再発し,秋および冬に沈静化する。多くの小児では,成長とともに成人期早期までに治まる。
アレルギー性結膜炎の症状と徴候
全般
アレルギー性結膜炎の患者は以下を訴える:
両眼の軽度から強度のそう痒
結膜充血
光過敏(重症例では羞明)
眼瞼浮腫
水様性の,または糸を引く眼脂
一般的に鼻炎を併発する。患者の多くは 湿疹 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む , アレルギー性鼻炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性鼻炎は,季節性または通年性のそう痒,くしゃみ,鼻漏,鼻閉,およびときに 結膜炎で,花粉または他のアレルゲンへの曝露によって発生する。診断は病歴およびときに皮膚テストによる。第1選択の治療は,経鼻コルチコステロイドの投与(経口または経鼻抗ヒスタミン薬の併用は問わない)または経口抗ヒスタミン薬と経口鼻閉改善薬の併用による。 ( アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む ,または 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む など,他のアトピー性疾患を有する。
特徴的所見には,結膜の浮腫および充血,ならびに眼脂などがある。眼球結膜は半透明で青みがかり,肥厚したように見えることがある。結膜浮腫ならびに特徴的な皮膚眼瞼炎(まず上眼瞼内側,続いて下眼瞼内側に生じる充血,浮腫,および苔癬化を伴う)がよくみられる。慢性のそう痒により,患者が慢性的に眼瞼をこすり,眼周囲の色素沈着,および皮膚眼瞼炎を生じることがある。
季節性結膜炎と通年性結膜炎
季節性結膜炎と通年性結膜炎の患者では,上眼瞼結膜上の細かい乳頭がビロード状の外観を示す。より重度の形態では,より大きい眼瞼結膜の乳頭,結膜瘢痕化,角膜血管新生,および様々な視力障害を伴う角膜瘢痕化を生じることがある。
春季カタル
通常,上眼瞼の眼瞼結膜が侵されるが,ときに眼球結膜が侵される。眼瞼型では,上眼瞼結膜に,四角形の硬く扁平で密集した薄桃色から灰色の石垣状乳頭を認める。侵されていない眼球結膜は,乳白色である。眼球(輪部)型では,角膜周囲の結膜が肥厚し,灰白色を帯びる。眼脂は粘りの強い粘液状で,多くの好酸球を含む。
3~11%の患者で 角膜潰瘍 角膜潰瘍 角膜潰瘍は,炎症を基礎にもつ角膜上皮欠損であり,炎症は通常,細菌,真菌,ウイルス,またはアカントアメーバ(Acanthamoeba)の侵入によるものである。機械的外傷または栄養欠乏により起こることもあり,炎症が制御されないと角膜壊死に至ることがある。症状は進行性の結膜充血,異物感,疼痛,羞明,および流涙である。診断は細隙灯顕微鏡検査,フルオレセイン染色,および微生物学的検査による。治療は抗菌薬の局所投与,およびしばしば散瞳... さらに読む が発生し,疼痛および羞明の悪化をもたらす。その他の角膜変化(例,中心部の病変)および角膜輪部への好酸球の白い沈着(ホルナー・トランタス斑)がみられることもある。
アレルギー性結膜炎の診断
結膜炎の診断,ならびに 細菌性 急性細菌性結膜炎 急性結膜炎は多数の細菌が原因となりうる。症状は,充血,流涙,刺激症状,および眼脂である。診断は臨床的に行う。治療は抗菌薬の局所投与とし,より重篤例では抗菌薬の全身投与で補強する。 ほとんどの細菌性結膜炎は急性である;慢性の細菌性結膜炎はChlamydiaおよびまれにMoraxellaによることもある。クラミジア結膜炎には, トラコーマ および 成人封入体結膜炎または新生児封入体結膜炎などがある。... さらに読む , ウイルス性 ウイルス性結膜炎 ウイルス性結膜炎は感染力が強い急性の結膜感染症で,通常アデノウイルスにより起こる。症状としては,刺激感,羞明,水様性眼脂などがある。診断は臨床的に行う;ときにウイルス培養または免疫学的診断検査が適応となる。感染症は自然に軽快するが,重症例ではときにコルチコステロイドの局所投与が必要となる。 ( 結膜炎の概要も参照のこと。) 結膜炎は一般的な感冒およびその他の全身性ウイルス感染症(特に... さらに読む ,および 非感染性結膜炎 アレルギー性結膜炎 アレルギー性結膜炎は,急性,間欠性,または慢性の結膜の炎症であり,通常,空中アレルゲンによって生じる。症状としては,そう痒,流涙,眼脂,結膜充血などがある。診断は臨床的に行う。治療は抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定化薬の局所投与による。 ( 結膜炎の概要も参照のこと。) アレルギー性結膜炎は,特異抗原に対する I型過敏反応による。 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症結膜炎)は空中のカビの胞子,または樹木,イネ科の草,もしくは雑草の花粉によ... さらに読む の鑑別( Professional.see table 急性結膜炎の鑑別点 急性結膜炎の鑑別点 )は通常臨床的に行う。アレルギー性結膜炎では,下または上眼瞼結膜から採取できる結膜擦過検体中に好酸球が認められる;しかしながら,このような検査が適応となることはまれである。
アレルギー性結膜炎の治療
対症療法
抗ヒスタミン薬,非ステロイド系抗炎症薬,肥満細胞安定化薬の局所投与,またはこれらの組合せ
治療抵抗性例に,コルチコステロイドまたはシクロスポリンの局所投与
ときに,経口抗ヒスタミン薬
アレルギー性結膜炎の症状は,既知のアレルゲンの回避,ならびに冷罨法および代用涙液の使用により軽減できる;抗原脱感作がときに役立つ。軽症例では,OTC医薬品の抗ヒスタミン薬(例,ケトチフェン)の局所投与が有用である。もし,これらの薬物で十分でなければ,局所処方薬の抗ヒスタミン薬(例,オロパタジン,ベポタスチン,アゼラスチン),肥満細胞安定化薬(例,ネドクロミル,クロモグリク酸[cromolyn]),または非ステロイド系抗炎症薬(例,ケトロラク)を単独または併用で使用できる。治療抵抗性の症例,または症状の迅速な緩和が重要な状況では,コルチコステロイドの局所投与(例,ロテプレドノール,0.1%フルオロメトロン,0.12~1%酢酸プレドニゾロン点眼1日3回)が有用なことがある。コルチコステロイドの局所投与は,潜伏性の 単純ヘルペスウイルス眼感染症 単純ヘルペス角膜炎 単純ヘルペス角膜炎は単純ヘルペスウイルスによる角膜感染症である。虹彩を侵すこともある。症状と徴候には,異物感,流涙,羞明,および結膜充血などがある。再発頻度は高く,角膜知覚低下,潰瘍,永久的な瘢痕化,および視力低下を起こすことがある。診断は特徴的な樹枝状角膜潰瘍のほか,ときにウイルス培養に基づく。治療は,抗ウイルス薬の外用または全身投与による。 単純ヘルペス角膜炎は通常,角膜表層を侵すが,ときに角膜実質(角膜のより深層)または角膜の内側... さらに読む の再発につながり,場合により角膜潰瘍および角膜穿孔を引き起こし,また長期間使用すると緑内障,場合により白内障を引き起こす可能性があるため,コルチコステロイドの使用開始およびモニタリングは眼科医が行うべきである。シクロスポリンの点眼も役立つことがある。コルチコステロイドまたはタクロリムス軟膏の皮膚への塗布は,眼瞼の アトピー性皮膚炎 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む の治療に非常に効果的である。経口抗ヒスタミン薬(例,フェキソフェナジン,セチリジン,またはヒドロキシジン)が役立つ場合もあり,患者が他のアレルギー症状(例,鼻漏)を有する場合は特に役立つ。
季節性アレルギー性結膜炎では,多剤併用投与または間欠的なコルチコステロイドの局所投与を必要とする可能性は低い。
アレルギー性結膜炎の要点
アレルギー性結膜炎は通常,空中アレルゲンによって引き起こされ,季節性のこともあれば通年性のこともある。
症状としては,そう痒,眼瞼浮腫,糸を引くまたは水様性の眼脂や,ときに季節性再発の既往などがみられる傾向がある。
診断は通常臨床的に行う。
治療には,涙液補充および外用薬(通常抗ヒスタミン薬,血管収縮薬,非ステロイド系抗炎症薬,肥満細胞安定化薬,またはこれらの組合せ)などがある。