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流涙

(流涙症)

執筆者:

Christopher J. Brady

, MD, Wilmer Eye Institute, Retina Division, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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過度の流涙では,眼が濡れた感覚を引き起こす場合や涙液が頬に流れ落ちるに至る場合がある(流涙症)。

病態生理

涙液は涙腺で産生され,上下の涙点を通って涙小管に排出され,そこから涙嚢および鼻涙管へと排出される( 涙器の解剖)。涙液の排出が閉塞されると,うっ滞および感染が生じうる。涙嚢の繰り返す感染症(涙嚢炎)は,ときに周囲に広がり,眼窩蜂窩織炎に至る可能性がある。

涙器の解剖

涙器の解剖

病因

全体で,流涙で最も頻度が高い原因は以下のものである:

  • 上気道感染症

  • アレルギー性鼻炎

流涙は,涙液の産生増加または鼻涙管からの排出低下によって引き起こされうる。

涙液産生増加

最も一般的な原因は以下のものである:

結膜または角膜への刺激を引き起こす疾患はいかなるものでも,涙液産生を増加させる可能性がある( 流涙の原因を参照)。しかしながら,涙液過剰を引き起こす角膜疾患(例,角膜上皮剥離,角膜潰瘍,角膜異物,角膜炎)または原発閉塞隅角緑内障もしくは前部ぶどう膜炎の患者のほとんどは,流涙以外の眼症状(例,眼痛,充血)を呈する。泣いたために涙を流した患者のほとんどは,流涙の評価を求めて来院することはない。

鼻涙管排泄の減少

最も一般的な原因は以下のものである:

鼻涙管涙液排出路の閉塞は,狭窄,腫瘍,または異物(例,石,しばしば不顕性の放線菌(Actinomyces)感染症に関連する)による可能性がある。閉塞が先天奇形であることもある。多くの疾患および薬物が涙液排出路の狭窄および閉塞を引き起こしうる。

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流涙の原因

原因

示唆する所見

涙液産生過剰を引き起こす疾患

反射性流涙を伴うドライアイ

寒い日もしくは風の強い日,またはタバコの煙もしくは乾燥した熱気への曝露により悪化

間欠的な異物感

ドライアイを引き起こすとされている疾患(例,眼瞼炎)のある患者

眼球表面への刺激(例,アレルギー性結膜炎,角膜上皮剥離またはびらんまたは潰瘍,異物,麦粒腫,感染性結膜炎,刺激性化学物質,角膜炎,睫毛乱生,顔面神経麻痺などでみられる閉眼筋の麻痺による点状病変を伴う刺激)

砂が入ったような感覚

充血

角膜病変,痛み,持続する異物感,および羞明のある患者

アレルギー性結膜炎

そう痒

場合により眼瞼結膜の濾胞

鼻の刺激および炎症(例,アレルギー性鼻炎,上気道感染症)

鼻漏,くしゃみ,鼻閉

鼻涙管涙液排出路の閉塞を引き起こす疾患

先天性鼻涙管閉塞

生後2週を過ぎてすぐ始まる症状

加齢に伴う特発性の鼻涙管狭窄

通常,閉塞所見以外の検査結果は正常

涙嚢炎

鼻痛

しばしば涙嚢の腫脹,充血,および熱感,ならびに触診に伴う圧痛および膿の産生

腫瘍

鼻涙管内の硬い腫瘤,特に高齢者に多い

鼻涙管涙液排出路の狭窄または閉塞を引き起こすその他の原因(本文を参照)

しばしば危険因子

しばしば閉塞以外に特徴的な検査所見を欠く

閉塞を伴わない排出低下を引き起こす疾患

涙液膜から涙点までの配列異常(例,眼瞼外反,眼瞼内反)

通常診察時にわかる

鼻涙管涙液排出路の狭窄または閉塞を引き起こすその他の原因としては以下のものがある:

  • 熱傷

  • 化学療法薬

  • 点眼薬(特にヨウ化エコチオフェート,アドレナリン,およびピロカルピン)

  • 涙小管炎を含む感染症(例,黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus],Actinomyces属,レンサ球菌[Streptococcus]属,Pseudomonas属,帯状疱疹ウイルス,単純ヘルペス結膜炎,伝染性単核球症,ヒトパピローマウイルス,回虫属[Ascaris],ハンセン病,結核による)

  • 炎症性疾患(サルコイドーシス,多発血管炎性肉芽腫症[旧称ウェゲナー肉芽腫症])

  • 物理的損傷(例,鼻篩骨骨折;鼻手術,眼窩手術,または内視鏡的副鼻腔手術)

  • 涙液排出路の異常を伴わない鼻排出の閉塞(例,上気道感染症,アレルギー性鼻炎,副鼻腔炎)

  • 放射線療法

  • スティーブンス-ジョンソン症候群

  • 腫瘍(例,原発性涙嚢腫瘍,良性パピローマ,扁平上皮癌および基底細胞癌,移行上皮癌,線維性組織球腫,正中肉芽腫,リンパ腫)

評価

病歴

現病歴の聴取では,涙液が頬に流れ落ちる(真の流涙症)かどうかを含め,症状の持続,発症,および重症度を尋ねる。天候,周囲の湿度,およびタバコの煙の影響について確認する。

症状把握(review of symptoms)では,可能性のある原因の症状を探すべきであり,例としてそう痒,鼻漏,またはくしゃみが,特に通年性か,または特定の潜在的なアレルゲンへの曝露後に生じる(アレルギー反応)かどうか;眼刺激感または眼痛(眼瞼炎,角膜上皮剥離,刺激化学物質);ならびに内眼角付近の痛み(涙嚢炎)などがある。その他に診断率は劣るが検索するべき症状としては,体位性頭痛,膿性鼻漏,夜間咳嗽,および発熱(副鼻腔炎,多発血管炎性肉芽腫症);発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群);咳嗽,呼吸困難,および胸痛(サルコイドーシス);ならびに鼻出血,喀血,多発性関節痛,および筋肉痛(多発血管炎性肉芽腫症)などがある。

既往歴の聴取では,流涙を引き起こしうる疾患の既往を訪ねるが,例として多発血管炎性肉芽腫症,サルコイドーシス,および化学療法薬により治療した癌;ドライアイを引き起こす疾患(例,関節リウマチ,サルコイドーシス,シェーグレン症候群);ならびにエコチオフェート,アドレナリン,およびピロカルピンなどの薬歴がある。感染症,外傷,手術手技,および放射線曝露を含め,眼および鼻の既往歴を確認する。

身体診察

診察では眼および周辺構造に焦点を置く。

顔面を視診する;非対称性は先天性または後天性涙液排出路の閉塞を示唆する。可能であれば,細隙灯顕微鏡を用いて眼を診察する。結膜および角膜を視診して,斑点,および充血などの病変がないか確認する。角膜をフルオレセインで染色して観察する。眼瞼を反転させ,異物が隠れていないか確認する。涙点を含む眼瞼を念入りに視診して,異物,眼瞼炎,麦粒腫,眼瞼外反,眼瞼内反,および睫毛乱生がないか確認する。涙嚢(内眼角付近)を触診して,熱感,圧痛,および腫脹がないか確認する。腫脹があれば触診して硬さを確かめ,膿が産生されていないか確認する。

鼻を診察して,鼻閉,膿,および出血がないか確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 繰り返す,原因不明の流涙エピソード

  • 鼻涙管涙液排出構造内またはその付近の硬い腫瘤

所見の解釈

鼻涙管涙液排出路の閉塞を示唆する所見としては以下のものがある:

  • 頬に流れ落ちる涙液(真の流涙症)

  • 特定の原因疾患の徴候を欠く

原因はしばしば臨床的評価から明らかである( 流涙の原因)。

検査

通常原因は診察から明らかになるため,検査はしばしば不要である。

シルマー試験で大量の涙液が測定された場合(例,> 25mm),流涙の病因として蒸発亢進型ドライアイが示唆される。シルマー試験で涙液の量が少ない場合(< 5.5mm),涙液減少型ドライアイが示唆される。通常,シルマー試験は適切な実施および解釈ができるよう,眼科医が行う。

涙液排出路にプローブを挿入し,生理食塩水を通水することで,鼻涙管涙液排出路の完全な閉塞による狭窄だけでなく,排出路の解剖学的閉塞が同定しやすくなる。通水は,フルオレセイン染色併用および非併用で行う。反対側の涙点または涙小管からの逆流は固定閉塞を示唆し,逆流および鼻への排出は狭窄を示す。この試験は付加的なものとみなされており,眼科医によって行われる。

画像検査および処置(涙嚢造影,CT,経鼻内視鏡検査)は,手術が考慮されている患者での解剖学的異常の描出や膿瘍の検出にときに有用となる。

治療

基礎疾患(例,アレルギー,異物,結膜炎)を治療する。

ドライアイまたは角膜上皮欠損が原因であれば,人工涙液の使用により流涙が低減する。

先天性鼻涙管閉塞はしばしば自然治癒する。生後1歳までは,1日4~5回指で涙嚢を圧迫することにより,遠位の閉塞を緩和できることがある。1歳以降は,全身麻酔と鼻涙管へのプローブの挿入が必要になる場合がある。閉塞が繰り返されるようであれば,一時的ドレナージチューブを挿入することもある。

後天性鼻涙管閉塞では,基礎疾患が治療に反応しない場合,鼻涙管の通水が治療となりうる。最終的手段としては,外科的に涙嚢と鼻腔との間に通路を形成する方法がある(涙嚢鼻腔吻合術)。

涙点または涙小管の狭窄例は,通常拡張により治癒する。涙小管狭窄が重度で不快感が強い場合は,涙小管から鼻腔へ繋がるガラス管を留置する外科的処置を考慮することがある。

老年医学的重要事項

加齢に伴う特発性の鼻涙管狭窄は,高齢患者における原因不明の流涙症で最も頻度の高い原因である;ただし,腫瘍も考慮すべきである。

要点

  • 涙液が頬に流れ落ちない場合,しばしばドライアイが原因である。

  • 涙液が頬に流れ落ちる場合,鼻涙管涙液排出路の閉塞の可能性が高い。

  • 検査はしばしば不要であるが,感染性涙嚢炎を繰り返す症例では,眼窩蜂窩織炎のようなより重篤な疾患に進行することがあるため,検査が必要である。

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