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副鼻腔炎

執筆者:

Marvin P. Fried

, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 3月
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副鼻腔炎はウイルス,細菌,もしくは真菌性感染症またはアレルギー反応による副鼻腔の炎症である。症状としては,鼻閉,膿性鼻汁,顔面痛または顔面の圧迫感などのほか,ときに倦怠感,頭痛,発熱もみられる。細菌感染が疑われる場合の治療は,アモキシシリン/クラブラン酸またはドキシサイクリンなどの抗菌薬を,急性副鼻腔炎には5~7日間,慢性副鼻腔炎には最長6週間投与することによる。鼻閉改善薬,コルチコステロイドの鼻噴霧,ならびに加熱および加湿が,症状の軽減と副鼻腔の排膿の促進に役立つ可能性がある。繰り返す副鼻腔炎には,副鼻腔の排膿を促進するために手術が必要となりうる。

副鼻腔炎は,急性(30日未満で完治);亜急性(30~90日間で完治);再発性(年4回以上の別個の急性のエピソードがあり,それぞれが30日未満で完治するが周期的に再発し,症状の完全消退と新規エピソードの開始との間隔が少なくとも10日間ある);および慢性(90日を超えて持続)に分類しうる。

病因

免疫能が正常な市中の患者に生じる急性副鼻腔炎は,ほぼ常にウイルス性(例,ライノウイルス,インフルエンザ,パラインフルエンザ)である。少ない割合で,レンサ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),Moraxella catarrhalis,またはブドウ球菌による二次的な細菌感染が発生する。ときに,上顎歯の根尖周囲膿瘍がその上の副鼻腔に進展する。院内急性感染は細菌性である場合が多く,典型的には,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus),肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae),緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),Proteus mirabilis,およびEnterobacterが関与する。易感染性患者には,急性の浸潤性真菌性副鼻腔炎がみられる場合がある( 易感染性患者における侵襲性の副鼻腔炎)。

慢性副鼻腔炎には,組み合わさって慢性炎症を生じる多くの因子が関与する。慢性的なアレルギー,構造的異常(例,鼻茸),環境の刺激物(例,大気汚染,タバコの煙),粘膜線毛の機能不全,および他の因子が感染性微生物と相互作用し,慢性副鼻腔炎を引き起こす。微生物は一般的に(おそらくは粘膜表面上のバイオフィルムの一部としての)細菌であるが,真菌の場合もある。グラム陰性桿菌および中咽頭の嫌気性微生物を含む多くの細菌の関与が認められている;複数菌感染が一般的である。少数の症例で,慢性上顎洞炎が歯性感染症に続発する。真菌感染(AspergillusSporothrixPseudallescheria)は慢性の場合があり,高齢者および易感染性患者に生じる傾向がある。

アレルギー性真菌性副鼻腔炎は,びまん性の鼻閉,顕著な粘性の鼻分泌物,およびしばしばみられる鼻茸を特徴とする,慢性副鼻腔炎の一病型である。局在する真菌(しばしばAspergillus属)に対するアレルギー反応であり,侵襲性感染によって生じるものではない。

浸潤性真菌性副鼻腔炎は,易感染性患者における,ときに死に至る侵襲性感染症であり,通常はAspergillus属またはMucor属によって生じる。

危険因子

副鼻腔炎の一般的な危険因子には,副鼻腔の正常な排膿を妨げる因子(例,アレルギー性鼻炎,鼻茸,経鼻胃管または経鼻気管),および易感染状態(例,糖尿病,HIV感染)などがある。他の危険因子には,長期のICU滞在,重度の熱傷,嚢胞性線維症,および線毛機能不全症などがある。

病態生理

上気道感染症(URI)においては,腫脹した鼻粘膜が副鼻腔の開口部を閉塞し,副鼻腔中の酸素が粘膜の血管に吸収される。その結果生じる副鼻腔内の相対的な陰圧(vacuum sinusitis)は痛みを伴う。この真空状態が維持されると,粘膜からの漏出液が生じて副鼻腔に充満する;副鼻腔開口部,または粘膜固有層に広がる蜂窩織炎もしくは血栓性静脈炎を経由して侵入してきた細菌にとって,この漏出液は培地として働く。その結果,感染を抑えるための血清および白血球が流出し,閉塞された副鼻腔内で痛みを伴う陽圧が生じる。粘膜は充血し浮腫状となる。

合併症

副鼻腔炎の主要な合併症は,細菌感染の局所拡大であり,眼窩周囲蜂窩織炎もしくは眼窩蜂窩織炎,海綿静脈洞血栓症,または硬膜外膿瘍もしくは脳膿瘍を引き起こす。

症状と徴候

急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎は同様の症状および徴候を引き起こし,膿性鼻漏,顔面の圧迫感および顔面痛,鼻うっ血および鼻閉,嗅覚低下,口臭,および湿性咳嗽(特に夜間)などがある。急性副鼻腔炎では,疼痛がより重度である場合が多い。罹患した副鼻腔上の領域には圧痛,腫脹,および紅斑が認められる。

  • 上顎洞炎は上顎痛,歯痛,および前頭部痛を引き起こす。

  • 前頭洞炎は,前額部の疼痛および前頭部痛を引き起こす。

  • 篩骨洞炎は眼の後方および両眼間の疼痛,しばしば「割れるような」と表現される前頭部痛,眼窩周囲蜂窩織炎,および流涙を引き起こす。

  • 蝶形骨洞炎は,局在性が比較的弱い疼痛を引き起こし,前頭部または後頭部に関連痛として生じる。

倦怠感が認められることもある。発熱および悪寒は,感染が副鼻腔を越えて拡大していることを示唆する。

鼻粘膜は発赤し腫脹する;黄色または緑色の膿性鼻漏が認められることがある。上顎洞炎,前部篩骨洞炎,または前頭洞炎の場合は中鼻道に,後部篩骨洞炎または蝶形骨洞炎の場合は中鼻甲介の正中寄りの領域に,漿液膿性または粘膿性の滲出液が認められることがある。

合併症の症状としては,眼窩周囲の腫脹および発赤,眼球突出,眼筋麻痺,錯乱または意識レベルの低下,重度の頭痛などがある。

診断

  • 臨床的評価

  • ときにCT

通常,副鼻腔感染症は臨床的に診断される。急性副鼻腔炎では,合併症を示唆する所見がみられる場合(その場合はCTを行う)以外は画像検査は適応とならない。慢性副鼻腔炎では,CTを行うことがより多く,慢性上顎洞炎の場合,根尖周囲膿瘍を除外するために,歯根尖のX線が必要になることがある。

有効な培養には副鼻腔の内視鏡検査または副鼻腔の穿刺により採取した検体が必要になるため,微生物の培養はまれにしか行わない;鼻腔拭い液の培養では不十分である。通常,培養は経験的治療が失敗した場合で,易感染性患者の場合および副鼻腔炎の原因が一部の院内感染である場合のみで実施する。

小児科

小児副鼻腔炎は,初期にはURIとの鑑別が困難なことがある。膿性鼻漏が10日間を超えて持続し,疲労感および咳嗽を伴う場合は細菌性副鼻腔炎が疑われる。発熱はまれである。局所の顔面痛または不快感がある場合がある。鼻腔の診察では排膿が明らかになり,また,異物を除外すべきである。

小児での急性副鼻腔炎の診断は臨床的に行う。CTは,放射線曝露に対する懸念があるため,眼窩もしくは頭蓋内の合併症の徴候(例,眼窩周囲の腫脹,視力障害,複視,眼筋麻痺)がみられる場合,治療に反応しない慢性副鼻腔炎がみられる場合,またはまれな上咽頭癌に関する懸念(例,片側性の鼻閉,疼痛,鼻出血,顔面の腫脹,または,特に懸念される視力低下を根拠とする)がある場合を除いて避ける。小児に眼窩周囲の浮腫がみられる場合,眼窩蜂窩織炎について迅速な評価が必要であり,視覚障害および頭蓋内感染症を予防するために外科的介入が必要な可能性がある。

治療

  • 排膿を促進する局所的な処置(例,蒸気,血管収縮薬の外用剤)

  • ときに抗菌薬(例,アモキシシリン/クラブラン酸,ドキシサイクリン)

急性副鼻腔炎においては排膿の促進および感染の制御が治療の目的である。蒸気吸入,患部の副鼻腔上への熱い濡れタオル,および熱い飲み物が,鼻腔の血管収縮を緩和し,排膿を促進するのに役立つ。

0.25%フェニレフリンの3時間毎噴霧またはオキシメタゾリンの8~12時間毎投与などの血管収縮薬の外用剤は効果的であるが,使用は最長5日間,または副鼻腔炎が治癒するまで3日間の投与と3日間の休薬の反復周期とするべきである。プソイドエフェドリン30mgの4~6時間毎経口投与(成人の場合)などの血管収縮薬の全身投与は,比較的効果的でない。

生理食塩水による鼻洗浄は,症状に対してわずかに役立つ場合があるが,煩雑で不快であり,適切に実行するために患者への指導が必要である;したがって,再発性の副鼻腔炎を有し,その手法を習得する(およびそれに耐えられる)可能性が比較的高い患者でより好ましいと考えられる。

コルチコステロイドの鼻噴霧は症状を緩和するのに役立つ場合があるが,通常は効果がみられるまで少なくとも10日かかる。

抗菌薬治療

市中感染の急性副鼻腔炎の大半はウイルス性であり,自然に治癒するが,かつてはウイルス感染症と細菌感染症を臨床的に鑑別することが困難であったため,多くの患者に抗菌薬が投与されていた。しかし,現在では抗菌薬耐性菌が生み出されることに対する懸念があるため,抗菌薬はより選択的に使用されるようになっている。Infectious Diseases Society of Americaは,以下の特徴が抗菌薬を開始すべき患者を同定するのに役立つと提唱している:

  • 10日以上持続する,軽度から中等度の副鼻腔症状

  • 3~4日以上の重度の症状(例,39°以上の発熱,重度の疼痛)

  • 典型的なウイルス性URIが最初改善した後に悪化する副鼻腔症状(「double sickening」,つまり二相性の経過)

多くの起因菌がかつて使用されていた薬剤に対して耐性を有するため,アモキシシリン/クラブラン酸875mgの12時間毎経口投与(小児では25mg/kgの12時間毎経口投与)が現在の第1選択薬である。抗菌薬耐性のリスクがある患者には,より高用量の2gを12時間毎経口投与する(小児では45mg/kgを12時間毎経口投与)。耐性のリスクがある患者は,2歳未満または65歳以上の患者,過去1カ月に抗菌薬の投与を受けた患者,過去5日間に入院した患者,および易感染状態の患者などである。

ペニシリンアレルギーを有する成人には,ドキシサイクリンまたはレスピラトリーキノロン系薬剤(例,レボフロキサシン,モキシフロキサシン)を投与可能である。ペニシリンアレルギーを有する小児には,レボフロキサシン,またはクリンダマイシン + 経口第3世代セファロスポリン系薬剤(セフィキシムまたはセフポドキシム)を投与可能である。

3~5日以内に改善がみられた場合は,薬剤を継続する。耐性の危険因子がない成人には合計5~7日間投与し,それ以外の成人には7~10日間投与する。小児には10~14日間投与する。3~5日以内に改善がみられない場合は,異なる薬剤を使用する。マクロライド系薬剤,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,およびセファロスポリン系薬剤の単剤療法は,細菌耐性のために,もはや推奨されていない。視力障害がみられるか,または視力障害が切迫している場合は緊急手術が必要である。

急性副鼻腔炎における抗菌薬の使用アルゴリズム

急性副鼻腔炎における抗菌薬の使用アルゴリズム

Adapted from Chow AW, Benninger MS, Brook I, et al: IDSA clinical practice guideline for acute bacterial rhinosinusitis in children and adults. Clinical Infectious Diseases 54 (8):1041–5 (2012).

小児または成人の慢性副鼻腔炎の増悪では,同じ抗菌薬を使用するが,投与は4~6週間とする。副鼻腔滲出液から分離された病原体の感受性および治療に対する患者の反応により,引き続いて行う療法が決定される。

抗菌薬療法に反応しない副鼻腔炎は,換気および排膿を改善し,濃縮した粘膿性の物質,上皮残屑,および肥厚粘膜を除去するために手術(上顎洞手術,篩骨洞手術,または蝶形骨洞手術)を必要とすることがある。通常,これらの手技は内視鏡補助下に鼻腔内で行う。慢性前頭洞炎は,前頭洞の骨形成性の閉塞によって,または選択された患者では内視鏡的に治療することがある。疾患を限局させ,隣接する構造(眼および脳など)の損傷を防ぐために,ナビゲーションガイド下手術が一般的になっている。

要点

  • 免疫能正常な患者の急性副鼻腔炎は大半がウイルス性である。

  • 易感染性患者は,真菌または細菌の侵襲性感染のリスクがより高い。

  • 診断は臨床的に行う;CTおよび培養(内視鏡検査または副鼻腔の穿刺により採取)は,主として慢性例,難治例,または非定型例で行う。

  • 抗菌薬は対症療法の試行中は控えることができ,対症療法の期間は,症状の重症度および出現時期に依存する。

  • 第1選択の抗菌薬はアモキシシリン/クラブラン酸であり,ドキシサイクリンまたはレスピラトリーキノロン系薬剤が代替薬である。

易感染性患者における侵襲性の副鼻腔炎

侵襲性で死に至ることもある真菌性または細菌性副鼻腔炎が,コントロール不良の糖尿病,好中球減少症,またはHIV感染を原因とする易感染状態の患者において生じうる。

ムコール症

ムコール症(接合菌症,ときにフィコミコーシスとも呼ばれる)は,ケカビ目の真菌(Mucor属,Absidia属,およびRhizopus属の菌種など)による真菌症である。この真菌症は,コントロール不良の糖尿病患者で生じる場合がある。ムコール菌症は,鼻腔内の黒色の壊死組織,および頸動脈系における逆行性の血栓性動脈炎に続発する神経学的徴候を特徴とする。

診断は無血管化した組織内の菌糸の病理組織学的証明に基づく。組織検査および培養のため迅速な鼻腔内組織の生検が必要である。

治療には,基礎疾患のコントロール(糖尿病におけるケトアシドーシスの回復など),壊死組織の外科的デブリドマン,およびアムホテリシンB静注療法が必要である。

アスペルギルス症およびカンジダ症

Aspergillus属およびCandida属は,細胞傷害性薬剤による療法,または白血病,リンパ腫,多発性骨髄腫,およびAIDSなどの免疫抑制疾患で二次性に易感染状態となった患者の副鼻腔に感染する場合がある。これらの感染は,肥厚粘膜だけでなく鼻腔中のポリープ様組織として出現することがある;組織は診断のために必要となる。

しばしば致死的となるこれらの感染を制御するために,積極的な副鼻腔手術およびアムホテリシンB静注療法が行われる。ムコール症が除外された場合,アムホテリシンの代わりにボリコナゾールを使用でき,場合によってはキャンディン系薬剤(例,カスポファンギン,ミカファンギン,anidulafungin)を併用する。

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