扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎

執筆者:Clarence T. Sasaki, MD, Yale University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 11月
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扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎は,青年および若年成人で最も頻度が高い急性咽頭感染症である。症状は重度の咽頭痛,開口障害,「熱いポテトが口に入っているような」声("hot potato" voice),および口蓋垂の偏位である。診断には穿刺吸引を必要とする。治療には,広域抗菌薬,膿があれば排膿,水分補給,鎮痛薬,およびときに緊急の扁桃摘出術などを用いる。

扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎の病因

膿瘍(扁桃周囲膿瘍)および蜂窩織炎は,扁桃および咽頭の細菌感染が軟部組織に拡大していく,同一過程のスペクトラムをおそらく表している。感染は実質的には常に片側性であり,感染部位は扁桃と上咽頭収縮筋の間である。通常,複数の細菌が関与する。レンサ球菌(Streptococcus)およびブドウ球菌(Staphylococcus)が最も頻度の高い好気性の病原菌であり,Bacteroides属が主な嫌気性の病原菌である。

扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎の症状と徴候

症状としては,徐々に現れる重度かつ片側性の咽頭痛,嚥下困難,発熱,耳痛,非対称性の頸部リンパ節腫脹などがある。開口障害,「熱いジャガイモが口に入っているような」声("hot potato" voice)(あたかも熱い物が口腔内に入っているかのように話す),重症感(toxic appearance)(例,アイコンタクトが乏しいまたは欠如,親に気づかない,易怒性,慰めまたは気をそらすことが不可能,発熱,不安),流涎,重度の口臭,扁桃発赤,および滲出液が一般的にみられる。膿瘍および蜂窩織炎では,ともに罹患した扁桃の上に腫脹が認められるが,膿瘍では軟口蓋および口蓋垂の偏位ならびに著明な開口障害を伴う限局した膨隆がより強く認められる。

扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎の診断

  • 穿刺吸引

  • ときにCT

扁桃周囲炎は,重度の咽頭痛があり,開口障害,「熱いジャガイモが口に入っているような」声("hot potato" voice),および口蓋垂の偏位がみられる患者において認識される。そのような患者は全て,扁桃腫脹部の穿刺吸引および培養が必要である。膿の吸引により膿瘍と蜂窩織炎を鑑別する。診断のため,および吸引または切開排膿に至適な部位を決定するために,ポイントオブケア超音波検査を用いることができる。

身体診察が困難な場合や診断に疑いがある場合(特に本疾患と副咽頭間隙感染症または他の深頸部感染症との鑑別が必要な場合)には,頸部CTが確定診断に役立つ可能性がある。

扁桃周囲膿瘍および蜂窩織炎の治療

  • 抗菌薬

  • 膿瘍の排膿

蜂窩織炎は,水分補給および高用量ペニシリン投与(例,200万単位,4時間毎に静注,または1g,経口にて1日4回)により,通常,48時間以内に消退する;代替薬には第1世代セファロスポリン系薬剤またはクリンダマイシンなどがある。その後,培養結果に基づいた抗菌薬を10日間分処方する。

膿瘍は,救急外来において局所麻酔およびときに処置のための鎮静を用いて切開排膿を行う;多くの医師は,穿刺吸引単独で十分に排膿できると考えている。超音波ガイドがしばしば用いられる。大半の患者は外来で治療しうるが,抗菌薬非経口(parenteral)投与,静注による水分補給,および気道モニタリングのために,短期間の入院が必要な患者もいる。特に若年または非協力的で他に待機的な扁桃摘出術の適応(例,頻回に再発する扁桃炎または閉塞性睡眠時無呼吸症候群の既往)がある患者において,まれに緊急の扁桃摘出術を行う。それ以外の場合,膿瘍の再発を予防するため,4~6週間後に待機的な扁桃摘出術を行う。

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