咽後膿瘍

執筆者:Clarence T. Sasaki, MD, Yale University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 11月
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咽後膿瘍は幼児に最も頻度が高く,咽頭痛,発熱,項部硬直,および吸気性喘鳴を生じうる。診断には頸部X線(側面像)またはCTが必要である。治療には気管挿管,排膿,および抗菌薬を用いる。

咽後膿瘍は,脊椎に隣接する咽頭後部の咽頭後リンパ節に発生する。咽後膿瘍は咽頭,副鼻腔,アデノイドまたは鼻の感染によって播種しうる。咽頭後リンパ節が4~5歳までに退縮し始めるため,咽後膿瘍は主に1~8歳の小児に発症する。しかしながら,成人では異物の摂取や器具操作の後に感染を起こす場合がある。一般的な起因微生物には,好気性細菌(レンサ球菌[Streptococcus]属およびブドウ球菌[Staphylococcus]属)および嫌気性細菌(Bacteroides属およびFusobacterium属),ならびに成人と小児において増加しているHIVおよび結核菌などがある。

最も重篤な結果には,気道閉塞,敗血症性ショック,誤嚥性肺炎または窒息に至る気道内への膿瘍破裂,縦隔炎,頸動脈破裂,および内頸静脈の化膿性血栓性静脈炎(レミエール症候群)などがある。

咽後膿瘍の症状と徴候

通常,症状および徴候は,小児においては急性の上気道感染症が先行し,成人においては異物摂取または器具操作が先行する。小児では,嚥下痛,嚥下困難,発熱,頸部リンパ節腫脹,項部硬直,吸気性喘鳴,呼吸困難,いびきもしくは大きな音の呼吸,または斜頸が生じることがある。成人では重度の頸部痛がみられることがあるが,吸気性喘鳴の頻度が低い。咽頭後壁が片側に膨隆することがある。

咽後膿瘍の診断

  • X線

  • CT

診断は,重度の原因不明の咽頭痛および項部硬直,吸気性喘鳴,または呼吸音の増大がみられる患者で疑われる。

可能な限り頸部を伸展させて吸気時に撮影した頸部の軟部組織のX線側面像では,脊椎前方の軟部組織の限局性の拡幅,正常な頸椎前弯の逆転,脊椎前方の軟部組織における空気,または近隣の椎体の侵食が示されることがある。

CTは,疑わしい症例の診断,および蜂窩織炎と膿瘍との鑑別に役立ち,膿瘍の範囲を評価できる。

咽後膿瘍の治療

  • 抗菌薬(例,セフトリアキソン,クリンダマイシン)

  • 通常は外科的排膿

小さい膿瘍を有する小児に対して,ときに広域スペクトルのセファロスポリン系(例,セフトリアキソン50~75mg/kg,静注にて1日1回)またはクリンダマイシンなどの抗菌薬で十分なことがある。しかしながら,大半の患者には,咽頭後壁の切開による排膿も必要である。気管挿管は手術前に行い,24~48時間継続する。

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