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良性発作性頭位めまい症

(良性体位めまい;良性頭位めまい;BPPV)

執筆者:

Lawrence R. Lustig

, MD,

  • Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 1月
本ページのリソース

良性発作性頭位めまい症では,特定の頭位で短時間(60秒未満)の回転性めまいの発作が起こる。悪心および眼振が生じる。診断は臨床的に行う。治療は浮遊耳石置換法により行う。薬剤および手術が適応となることは,あったとしてもまれである。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は,再発性耳性めまいの最も一般的な原因である。加齢とともに発症する人が増え,高齢者では平衡機能に重度の影響が生じ,負傷しかねない転倒を招くこともある。

病因

この状態は,耳石(炭酸カルシウムの結晶で,正常では球形嚢および卵形嚢の中にある)の変位によって引き起こされると考えられている。この物質の変位により,多くは後半規管内(およびまれに上半規管内)にある有毛細胞が刺激され,動きの錯覚が生じる。病因には以下のものがある。

  • 卵形嚢の耳石膜の自然変性

  • 内耳震盪

  • 中耳炎

  • 耳の手術

  • 最近のウイルス感染(例,ウイルス性神経炎)

  • 頭部外傷

  • 長期の麻酔または床上安静

  • 過去の前庭疾患(例,メニエール病)

  • 前前庭動脈の閉塞

症状と徴候

回転性めまいは,患者の頭が動いたとき(例,ベッドで寝返りを打ったときや,何かを拾おうとして腰をかがめたとき)に引き起こされる。急性の回転性めまいの発作は数秒から数分しか続かない;発作は朝にピークとなり,その日を通して和らぐ傾向がある。悪心や嘔吐が起こることもあるが,難聴や耳鳴は起こらない。

診断

  • 臨床的評価

  • 所見が中枢神経系病変を示唆する場合,ガドリニウム造影MRI

良性発作性頭位めまい症の診断は,特徴的症状,ディックス-ホールパイク法(頭位眼振を誘発する検査)による眼振の確認,神経学的診察でその他の異常がないことに基づく。このような患者に対しては,さらなる検査は不要である。

中枢神経系病変による頭位眼振は,BPPVによる頭位眼振とは異なり以下の特徴を有する:

  • 潜時,疲労現象,および重度の自覚症状を欠く

  • その頭位が維持されている限り,持続することがある

  • 垂直性または方向交代性である

  • 回旋性の場合には予期せぬ方向であることが多い

中枢神経系病変を示唆する眼振を示唆する患者に対しては,ガドリニウム造影MRIを行う。

眼振

眼振は眼球の律動的な動きであり,様々な原因で起こりうる。前庭系と動眼神経核は相互に連絡しているため,前庭疾患により眼振を来すことがある。前庭性眼振の存在は前庭疾患の同定に有用であり,ときに中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別できる。前庭性眼振には,前庭入力によって引き起こされる緩徐相と,元に戻る急速相(逆方向への動きを引き起こす)がある。眼振の方向は急速相の方向で定義されるが,これは急速相の方が視認しやすいためである。眼振には回旋性,垂直性,水平性があり,また,自発的に起こるもの,注視により起こるもの,頭部の動きにより起こるものがある。

眼振に対する最初の視診は,患者を仰臥位にし,注視の焦点を合わせずに行う(注視の固定を防止するために,+30ジオプトリーのレンズまたはフレンツェル眼鏡を使用できる)。次に,患者の体をゆっくりと回転させて左側臥位とし,さらに回転させて右側臥位とする。眼振の方向および持続時間を観察する。眼振が検出されなければ,ディックス-ホールパイク(またはBarany)法を行う。この手技では,患者をストレッチャーに座らせ,仰向けになったら端から頭が出る位置で直立座位をとらせる。患者の体を支えながら速やかに水平まで倒し,頭を後ろに伸ばして水平線より45度下になるようにして,左側に45度回転させる。眼振の方向および持続時間と回転性めまいの発生を観察する。患者を起座位に戻し,同じ操作を右方向への回転で繰り返す。眼振を引き起こす姿勢または操作があれば,それを繰り返して疲労現象が起こるかどうか確認すべきである。

末梢神経系疾患に続発する眼振には3~10秒の潜時があり,急速に疲労するが,これに対して中枢神経系に続発する眼振は潜時がなく,疲労しない。誘発眼振中は,ある物体に焦点を合わせるよう患者に指示する。末梢前庭障害による眼振は固視により抑制される。フレンツェル眼鏡は固視を妨げるため,固視を評価する際には外さなければならない。

前庭系に障害がなければ,外耳道の温度刺激検査により眼振が誘発される。眼振が誘発されない場合や,両側で持続時間に20~25%を超える差がある場合には,反応が弱い側の病変が示唆される。温度反応の定量は,正式な(コンピュータ式)電気眼振検査により行うのが最善である。

末梢刺激に対する前庭系の反応能力はベッドサイドで評価できる。鼓膜穿孔または慢性感染症が判明している耳には注水しないように注意すべきである。患者を仰臥位にし,頭部を30°挙上して,それぞれの耳に3mLの氷水を順次注入する。代わりに240mLの温水(40~44℃)を使用してもよいが,その場合は温度が高すぎて熱傷を引き起こさないように注意する。冷水は対側への眼振を引き起こし,温水は同側への眼振を引き起こす。覚え方はCOWS(Cold to the Opposite and Warm to the Same)である。

治療

  • 症状を減衰させるための誘発操作

  • 浮遊耳石置換法

  • 通常,薬物療法は推奨されない

通常,BPPVは数週間から数カ月で自然に治まるが,数カ月から数年間続くこともある。この状態は長期にわたる可能性があるため,薬物療法(メニエール病において用いるような)は推奨されない。しばしば薬物の有害作用により平衡障害が悪化する。

BPPVは疲労性があるため,1つの治療法として,患者に対して日中早いうちに安全な環境で誘発操作を行う方法がある。そうすると,その日1日,症状は最小となる。

浮遊耳石置換法(最も一般的にはエプリー法,またはその代わりにSemont法もしくはBrandt-Daroff法)では,一連の特定の位置をとるように頭を動かし,位置がずれた耳石を卵形嚢に戻す。エプリー法またはSemont法を実施した後は,患者は1~2日間,直立または半直立の姿勢を保ち,頸部の屈曲または伸展を避けるべきである。これらの手技は,必要に応じて繰り返すことができる。対照的に,Brandt-Daroff法は患者が5回連続,1日3回自宅で行う。

エプリー法

この手技は,変位した耳石を後半規管から卵形嚢に戻すことにより,良性発作性頭位めまい症を治療するために用いられる。回転性めまいが発生する頭位があれば,回転性めまいが治まるまで,その頭位を維持する。

エプリー法

Semont法では,患者をストレッチャーの中央に上体を直立にして座らせる。患者の頭を健側耳の方へ回転させる;操作中回転させた状態を維持する。次に,患耳の方の体側を下にして鼻が上を向いて横たわるように,患者の胴体を横向きにストレッチャーの上に倒す。この姿勢を3分間保った後,頭の位置は戻さずに患者の上体を素早く起こし,今度は反対側に横向きに倒す(このとき,鼻は下を向く)。この姿勢を3分間保った後,患者の上体をゆっくりと直立に戻し,頭を回転させて正常な位置へ戻す。

Brandt-Daroff法は,患者に教えることができる。患者は,直立座位をとった状態から側方に横たわり,鼻を45度上方に向ける。約30秒間または回転性めまいが消失するまでこの体位を維持した後,座位に戻る。反対側でも同じ動きを行う。このサイクルを5回連続繰り返し,1日3回,約2週間またはこの運動を行っても回転性めまいが出なくなるまで続ける。

要点

  • 回転性めまいは耳石が半規管内に変位することで生じ,頭部の運動によって症状が誘発される。

  • 通常,悪心および嘔吐がみられるが,耳鳴または難聴はみられない。

  • 診断は臨床的に行うが,その他の疾患を除外するために,MRIを必要とする患者もいる。

  • 治療は浮遊耳石置換法による。

  • 薬剤はまれにしか有用でなく,また症状を悪化させる場合もある。

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