慢性中耳炎は,急性中耳炎,耳管閉塞,機械的外傷,熱傷もしくは化学熱傷,爆傷,または医原性の原因(例,鼓膜チューブ留置後)などに起因しうる。さらに,頭蓋顔面異常(例,ダウン症候群,5p欠失症候群,口唇裂および/または口蓋裂,軟口蓋心臓顔貌症候群[Shprintzen症候群])の患者ではリスクが高い。
慢性中耳炎は,上気道感染後,または入浴もしくは水泳の際に鼓膜穿孔を通って水が中耳に入ったときに増悪することがある。感染はグラム陰性桿菌または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)によって起こることが多く,痛みがなく膿性でときに悪臭を伴う耳漏を生じる。慢性中耳炎が持続すると,中耳での破壊的変化(キヌタ骨長脚の壊死など)または耳のポリープ(鼓膜穿孔を通って外耳道へ脱出した肉芽組織)が生じる場合がある。耳のポリープは重篤な徴候であり,ほぼ必ず真珠腫を示唆する。
真珠腫は,慢性中耳炎後に中耳,乳突部,または上鼓室に形成される上皮細胞の増殖である。真珠腫により産生されるコラゲナーゼなどの溶解酵素は,隣接する骨および軟部組織を破壊することがある。真珠腫は感染病巣でもある;化膿性内耳炎,顔面神経麻痺,頭蓋内膿瘍が生じることもある。
症状と徴候
診断
治療
シプロフロキサシン溶液10滴を患耳に1日2回,14日間点耳する。
肉芽組織が存在する場合は,それをマイクロサージャリ―用の手術器具で除去するか,硝酸銀棒で焼灼する。次いで, シプロフロキサシン0.3%およびデキサメタゾン0.1%を7~10日間,外耳道に注入する。
重度の増悪では,アモキシシリン250~500mgを経口にて8時間毎に10日間投与,または第3世代のセファロスポリン系薬剤を用いた全身性抗菌薬療法が必要であり,その後は培養結果および治療への反応により変更する。
辺縁穿孔または上鼓室穿孔および慢性的な鼓膜の中心穿孔がある患者では,鼓室形成術が適応となる。鼓室形成術で,離断した耳小骨連鎖が修復されることもある。
真珠腫は外科的に除去しなければならない。再発がよくみられるので,通常,中耳の再建は6~8カ月後に二期的手術(外科手術によるアプローチまたは小径の内視鏡を用いる)が実施されるまで保留される。