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褥瘡

(圧迫性潰瘍;とこずれ;褥瘡性潰瘍)

執筆者:

Daniela Kroshinsky

, MD, MPH, Harvard Medical School;


Lauren Strazzula

, MD, Massachusetts General Hospital

最終査読/改訂年月 2013年 3月
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本ページのリソース

褥瘡とは,骨突出部と硬い表面の間で組織が圧迫された領域に生じる壊死および潰瘍である。この病変は圧迫に摩擦,ずれ力,湿潤が組み合わさって生じる。危険因子としては,年齢65歳以上,循環障害,体動不能,低栄養,失禁などがある。重症度としては,圧迫しても消退しない皮膚の紅斑から,広範な軟部組織壊死を伴う皮膚の全層欠損までの範囲がある。診断は臨床的に行う。予後は早期の潰瘍では極めて良好であるが,放置された潰瘍や進行した潰瘍では,重篤な感染のリスクが生じ,治癒困難となる。治療法としては,除圧,摩擦およびずれ力の回避,入念な創傷ケアなどがある。ときに,治癒を促進するために植皮または筋皮弁の作製が必要になる。

褥瘡を発症した入院患者の数は,1993年から2006年までの間に75%以上増加しており,この増加率は全入院件数の増加率の5倍を上回っている。増加率は入院中に褥瘡を発症した患者で最も高かった。現在,米国では130~300万人の患者が褥瘡を有していると推定されており,患者および医療施設にとって大きな経済的負担となっている。

病因

褥瘡の危険因子としては以下のものがある:

  • 年齢65歳以上(皮下脂肪および毛細血管血流の減少が原因の可能性がある)

  • 体動の減少(例,長期入院,床上安静,脊髄損傷,鎮静,自発運動の減少につながる筋力低下,認知障害などによるもの)

  • 皮膚刺激物に対する曝露(例,失禁によるもの)

  • 創傷治癒能力の障害(例,低栄養,糖尿病,末梢動脈疾患,静脈不全などによるもの)

リスクの予測を目的とした評価尺度( 褥瘡のリスク予測のためのNortonスケール(Norton Scale)*を参照のこと)がいくつか開発されている。こうした評価尺度の使用は標準診療の一部とみなされているが,熟練者による臨床的評価単独と比較して褥瘡の減少につながると示されているわけではない。したがって,熟練者による臨床的評価とともにリスク評価尺度を使用することが推奨される。

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褥瘡のリスク予測のためのNortonスケール(Norton Scale)*

基準

スコア

身体的状態

4 = 良好

3 = 普通

2 = 不良

1 = 非常に不良

精神的状態

4 = 意識清明

3 = 無関心

2 = 錯乱

1 = 昏迷

活動性

4 = 歩行可能

3 = 介助ありで歩行

2 = 車椅子に依存

1 = 寝たきり

移動

4 = 通常通り

3 = わずかに障害

2 = 大きく制限

1 = 不動状態

失禁

4 = なし

3 = ときにあり

2 = 普段からあり/尿

1 = 便尿失禁

*5つの領域全てのスコアの合計値として算出する。14点未満のスコアは褥瘡の発生リスクが高いことを示唆する。

Adapted from Norton, D: Calculating the risk: Reflections on the Norton Scale. Decubitus 2:24, 1989.

病態生理

褥瘡の発生に寄与する主な因子としては,以下のものがある:

  • 圧迫:骨突出部と接触面の間で軟部組織が圧迫されると,微小血管の閉塞により,組織の阻血および低酸素症が生じる;圧迫が解除されないと,3~4時間で褥瘡が発生する可能性がある。これは仙骨部,坐骨結節,大転子部,外果部,および踵部に好発するが,褥瘡はどこにでも生じうる。

  • 摩擦:摩擦(衣服や寝具へのこすれ)は,表皮および真皮上層の局所にびらんや破綻を引き起こすことにより,皮膚潰瘍の誘因となる可能性がある。

  • ずれ力:ずれ力(例,傾斜した面の上に患者の体が置かれた場合)は,重力により下方に引かれる筋および皮下組織と外部の面との接触が維持される表層組織にそれぞれ逆向きの力を生じさせることにより,支持組織に応力を加えて損傷をもたらす。ずれ力は褥瘡の発生に寄与するが,直接的な原因ではない。

  • 湿潤:湿潤(例,発汗,失禁)は組織の損傷および浸軟につながり,それらにより褥瘡が発生または悪化する可能性がある。

筋組織は皮膚よりも圧迫による虚血に弱いため,長時間の圧迫により生じた褥瘡の基礎には筋組織の虚血および壊死が存在する可能性がある。

症状と徴候

褥瘡はどの段階でも疼痛またはそう痒を伴うことがあるが,意識または感覚が鈍化した患者は気づいていない場合もある。

病期分類

いくつかの病期分類が存在する。最も広く用いられている分類は,National Pressure Ulcer Advisory Panel(NPUAP:米国褥瘡諮問委員会)が開発したもので,潰瘍を軟部組織損傷の深さにより分類する。

ステージIの褥瘡は,圧迫しても消退しない紅斑として,通常は骨突出部に生じる。皮膚の色が濃い患者では,色調の変化が視認できないこともある。病変部には,隣接組織や対側の組織と比べて熱い,冷たい,硬い,軟らかい,圧痛が強いなどの変化がみられる。このステージについては,実際の潰瘍(真皮に達する皮膚欠損)はまだ生じていないという意味において,誤った名称である。しかしながら,進行を止めて回復に向かわせなければ,潰瘍が発生することになる。

ステージIIの褥瘡は,表皮の欠損(びらん)として生じ,真の潰瘍(表皮を越える深さの欠損)を伴う場合と伴わない場合がある;皮下組織は露出していない。潰瘍は浅く,底部はピンク色から赤色である。ステージIIには,圧迫に続発した無傷または部分的に破れた水疱も含まれる。(:スキンテア[皮膚裂傷],テープかぶれ,浸軟,表皮剥離など,びらん,潰瘍,または水疱形成の原因のうち圧迫に関連しないものは,ステージIIから除外される。)

ステージIIIの褥瘡は,皮膚の全層欠損として現れるが,下床の筋肉や骨は露出しない。

ステージIVの褥瘡は,皮膚の全層欠損として現れ,下床の骨,腱,または筋肉が露出する。

病期判定不能(unstageable)の褥瘡は,壊死組織片または痂皮に覆われているために深さが評価できないものである。乾燥した痂皮を伴い波動を認めない安定した踵部病変には,決して病期診断のためにデブリドマンを行ってはならない。

深部組織損傷疑い(suspected deep tissue injury)は,下部組織の損傷を示唆する所見の新しいカテゴリーである。具体的な所見としては,破綻のない紫色から栗色の皮膚領域や,血液で充満した小水疱または水疱などがある。この領域には,周辺組織と比較して硬い,強い波動を伴う,熱い,冷たいなどの変化がみられることがある。

褥瘡は,常にステージIから始まって以降の病期へ進行していくわけではない。ときに,壊死を起こしたステージIIIまたはIVの深い潰瘍が褥瘡の最初の徴候となることもある。急速に発症する褥瘡では,表皮にびらんが生じる前に皮下組織が壊死を来すことがある。そのため,小さな潰瘍でも,実際には皮下に広い壊死および損傷が生じている場合がある。

パール&ピットフォール

  • 褥瘡を有する患者では,臨床的に明らかなものよりも深い組織損傷を疑う。

合併症

褥瘡は院内感染を起こす抗菌薬耐性菌の病原巣となる。創傷内の細菌数が多くなると,組織の治癒が妨げられる可能性がある。適切な治療を行っても創傷治癒が遅れる場合は,基礎にある骨髄炎(最大32%の患者でみられる)またはまれに潰瘍内の有棘細胞癌(Marjolin潰瘍)を考慮すべきである。褥瘡が治癒しない場合にみられる他の局所合併症として瘻孔,蜂窩織炎,および石灰化があるが,瘻孔は浅在性のこともあれば,潰瘍から深部の隣接構造に連絡していることもある(例,仙骨部潰瘍から腸管に至る瘻孔)。全身性または転移性の感染合併症として,菌血症,髄膜炎,心内膜炎などがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 栄養評価

診断は臨床的評価に基づく。動脈および静脈不全または糖尿病性神経障害を原因とする潰瘍は,褥瘡に類似することがあり(特に下肢に生じたもの),また褥瘡の発生または悪化の原因となる力によって悪化する可能性もある。

褥瘡の深さと範囲は判断が難しい場合がある。潰瘍の進行または治癒をモニタリングするためには,創傷の病期診断と写真撮影を繰り返し行うことが不可欠である。治癒評価用の多くの尺度が利用可能である。そのうちPUSHは,NPUAP病期分類と併せて使用するべく設計されたもので,多くの施設で採用されている。(Pressure Ulcer Scale for Healing[PUSH]を参照のこと。)

褥瘡にはいずれも細菌が多数定着しているため,ルーチンの創面培養は推奨されない。

褥瘡患者,特にステージIIIまたはIVの褥瘡患者では,栄養評価が推奨される。推奨される検査項目としては,ヘマトクリット,トランスフェリン,プレアルブミン,アルブミン,総リンパ球数,CD4陽性リンパ球数などがある。低栄養があれば,さらなる評価および治療が必要である( 低栄養)。

治癒しない潰瘍については,治療が不十分である可能性があるが,合併症の可能性も疑うべきである。圧痛,周囲皮膚の紅斑,滲出液,および悪臭は,下床の感染を示唆する。発熱と白血球増多がみられる場合は,蜂窩織炎,菌血症,または下床にある骨髄炎を疑うべきである。骨髄炎が疑われる場合は,血算,血液培養,および赤沈またはC反応性タンパクの測定が推奨される。骨髄炎の確定診断は理想的には骨生検および培養によるが,これは必ずしも可能ではない。画像検査は高い感度および特異度を併せもっていない。MRIは感度は高いが特異度が低く,褥瘡の進展範囲の判定に有用となりうる。ガドリニウム造影MRIは排膿または連絡する瘻孔の同定に有用となりうる。

予後

早期の褥瘡であれば,時機を逸することなく適切な治療を行えば予後は非常に良好であるが,典型的には治癒には数週間を要する。6カ月の治療後には,ステージIIの褥瘡は70%超,ステージIIIは50%,ステージIVは30%が消失に至る。褥瘡は至適なケアを受けていない患者では高い頻度で発生する。ケアを改善できなければ,たとえ短期的に創傷治癒が得られたとしても,長期的な転帰は不良である。

治療

  • 除圧

  • 直接的な潰瘍のケア

  • 疼痛管理

  • 感染制御

  • 栄養必要量の評価

  • 補助療法または手術

除圧

組織にかかる圧迫の軽減は,注意深い体位変換,保護具,および体圧分散用具の使用により達成される。

頻回の体位変換(および至適な体位の選択)が最も重要である。体位変換を指示および記録するため,書面のスケジュール表を使用すべきである。寝たきりの患者は少なくとも2時間毎に体の向きを変え,側面を下にする場合(側臥位)は,大転子部が直接圧迫されないように,マットレスに対して30°の角度をつけて臥床させるべきである。また,ずれ力が生じないように,ベッドの頭側の挙上は最小限に制限すべきである。体位変換を行う際には,不要な摩擦を避けるため,患者の体を引きずるのではなく,つり上げ装置(例,Stryker frame)または寝具を使用すべきである。車椅子に座っている患者には1時間毎に体位変換を行うとともに,15分毎に自分で体位を変えるよう促すべきである。

仰臥位または側臥位では保護用パッド(枕,フォーム素材のベッドウェッジ,踵の保護具など)を膝,足首,および踵の間に配置することができる。骨折のため動けない患者では,ギプスの圧迫部位に窓状に孔を開けておくべきである。椅子に座れる患者には軟らかいシートクッションを提供すべきである。

寝たきりの患者では,体の下に敷く体圧分散用具(support surface)を変えることで圧迫を軽減できる。褥瘡の治療においては,これらを他の手段と併用することが多い。

体圧分散用具は操作に電気を必要とするかどうかに基づいて分類されている。静止型の体圧分散用具は電気を必要としないが,電動型の用具は電気を必要とする。圧切替型の体圧分散用具は一般に比較的重度の褥瘡に対して推奨されるが,静止型より電動型の方が優れていることを示した決定的なエビデンスは得られてない。

静止型の体圧分散用具としては,エア,フォーム,ゲル,ウォーターの上敷マットレスおよびマットレスなどがある。凹凸状のマットレスには利点がない。一般に,静止型の体圧分散用具は支持面積を増加させ,圧迫とずれ力を軽減する。静止型の体圧分散用具は従来,褥瘡の予防とステージIの褥瘡に対して使用されてきた。

電動型の体圧分散用具としては,圧切替型エアマットレス,ローエアロス型マットレス,空気流動型マットレスなどがある。圧切替型エアマットレスは,複数のエアセルがポンプによって交互に膨張・収縮することにより,支持圧のかかる部位を次々に移動させる。ローエアロス型マットレスは,空気を通す巨大な枕であり,常時空気で膨張している;気流により組織を乾燥させる効果がある。これらの特殊なマットレスは,静止型の体圧分散用具では充血を来すステージIの褥瘡がある患者と,ステージIIIまたはIVの褥瘡患者が適応となる。空気流動型(ハイエアロス型)マットレスは,内部にシリコンコーティングされたビーズが入っており,それらのビーズは,ポンプによって空気がベッド内を通過する際に液状となる。利点として,湿潤の軽減と冷却がある。これらのマットレスは,治癒しないステージIIIおよびIVの褥瘡を有する患者と体幹に多数の潰瘍が生じた患者が適応となる( 体圧分散用具の選択肢を参照のこと)。

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体圧分散用具の選択肢

静止型

電動型

標準的な病院のマットレス

フォーム

静止型,流動性(エアまたはウォーター)

圧切替型

ローエアロス型

空気流動型(ハイエアロス型)

支持面積の増加

なし

あり

あり

あり

あり

あり

圧迫の軽減

なし

あり

あり

あり

あり

あり

ずれの軽減

なし

なし

あり

あり

不明

あり

熱の軽減

なし

なし

なし

なし

あり

あり

低湿度環境の維持

なし

なし

なし

なし

あり

あり

価格

Adapted from Bergstrom N et al: US Agency for Health Care Policy and Research. Pressure Ulcer Treatment (Quick Reference Guideline Number 15). AHCPR Publication No. 95-0653, December 1994.

直接的な潰瘍のケア

適切な潰瘍のケアとしては,洗浄,デブリドマン,およびドレッシングを行う。

洗浄は最初の処置時と毎回のドレッシング交換時に行うべきである。通常は生理食塩水が最善の選択肢である。洗浄では,組織を損傷することなく細菌を除去できるだけの圧力で加圧洗浄することが多く,市販の注射器,スクイーズボトル,または電動式の加圧機器を使用することができる。加圧洗浄は壊死組織の除去(デブリドマン)にも有用となりうる。あるいは,35mLの注射器と18Gの静脈カテーテルも使用できる。加圧洗浄は,新たな組織片が剥がれなくなるまで続けるべきである。消毒剤(ヨード,過酸化水素)および消毒洗浄剤は,健康な肉芽組織を破壊する可能性があるため,使用は避けるべきである。

壊死組織を除去するにはデブリドマンが必要である。壊死組織は細菌にとって増殖用の培地となり,正常な創傷治癒を妨げる。方法としては以下のものがある:

  • 機械的デブリドマン:この種の方法としては,水治療法(渦流浴)と最も一般的なwet-to-dryドレッシングがある。十分な水圧での加圧洗浄による創傷洗浄でも,機械的デブリドマンを達成することができる。機械的デブリドマンは,創傷面の壊死組織片を除去する処置であり,滲出液の粘稠度が非常に低い創傷に限定して行うべきである。Wet-to-dryドレッシングは,交換時にしばしば疼痛を伴い,下にある健康な肉芽組織を除去してしまうことがあるため,慎重に採用する必要がある。

  • 外科的(sharp)デブリドマン:無菌のメスまたは剪刀を用いて痂皮と厚い壊死組織を除去する方法である。痂皮または組織が中等量であればベッドサイドでデブリドマンを行ってもよいが,対象領域が広範または深い場合(例,下床の骨,腱,または関節が露出している場合)は,手術室でデブリドマンを行うべきである。進行を続ける蜂窩織炎と敗血症の原因になっていることが疑われる病変については,緊急に外科的デブリドマンを施行すべきである。

  • 自己融解によるデブリドマン:合成の閉鎖性(ハイドロコロイド/ハイドロゲル)または半閉鎖性(透明フィルム)ドレッシング材を使用することにより,通常はすでに創内に存在する酵素による壊死組織の消化を促進させる。自己融解によるデブリドマンは,滲出液がほとんどない比較的小さな創傷に用いることができる。創傷感染が疑われる場合は,この方法を用いてはならない。

  • タンパク分解酵素によるデブリドマン:この手法(コラゲナーゼ,パパイン,フィブリノリジン,デオキシリボヌクレアーゼ,ストレプトキナーゼ/ストレプトドルナーゼを使用)は,潰瘍内に軽度の線維化または壊死組織がある患者に用いることができる。また,処置を行う者が機械的デブリドマンの訓練を受けていない場合と患者が手術に耐えられない場合にも用いることができる。酵素の浸透を高めるため,メスで創面に注意深く適切に網目状の切れ目を入れてから行うと,最も効果的となる。

  • Biosurgery:壊死組織を選択的に除去する方法として,医療用ウジを用いるマゴット療法が有用である。この方法は,創傷内で骨,腱,および関節が露出しており,外科的デブリドマンの禁忌がある患者で最も有用となる。

ドレッシング材は,創傷を保護し,治癒を促進するのに有用である( 褥瘡のドレッシングの選択肢を参照のこと)。

摩擦または失禁に曝されるステージIの褥瘡とその他の全ての褥瘡には,ドレッシング材を使用すべきである( 褥瘡のドレッシングの選択肢を参照のこと)。摩擦の増加が予想されるステージIの褥瘡では,透明フィルムで十分である。滲出液がごく少量の褥瘡には,透明フィルムまたはハイドロゲル(架橋ポリマーのドレッシング材であり,シートまたはゲルの形態で市販されている)を使用して,創傷を感染から保護し,湿潤環境を生み出す。透明フィルムまたはハイドロゲルは3~7日毎に交換すべきである。ハイドロコロイド(ゼラチン,ペクチン,カルボキシメチルセルロースを組み合わせたもので,ウエハーおよびパウダーの形態がある)は,軽度から中等度の滲出液を伴う褥瘡が適応であり,3日毎に交換する必要がある。アルギン酸塩(アルギン酸を含有する多糖類の海藻由来物質)は,パッド,ロープ,リボンの形態で市販されており,滲出が著しい場合の吸収や外科的デブリドマン後の出血管理に適応がある。アルギン酸塩は最長7日間適用できるが,飽和した場合はより早く交換しなければならない。フォームドレッシング材は,様々な量の滲出液を伴う創傷に使用でき,創傷治癒に適した湿潤環境を作り出す。フォームドレッシング材は3~4日毎に交換する必要がある。防水タイプの製品では,皮膚を失禁から保護できる。

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褥瘡のドレッシングの選択肢

潰瘍の種類*

説明

目的

使用材料

選択肢

浅い(ステージII)

滲出液はごく少量で乾燥している

湿潤環境を作る,または維持する

感染から保護する

透明フィルムまたはハイドロゲル

被覆する場合:透明フィルム,薄いハイドロコロイド,薄いポリウレタンフォーム

包み込む場合:非固着性ガーゼによるドレッシング

中等量から大量の滲出液で湿潤している

滲出液を吸収する

自己融解を促進する

湿潤環境を維持する

感染から保護する

ハイドロコロイド(滲出液が少量から中等量の場合)またはフォームドレッシング材

被覆する場合:アルギン酸塩(滲出液が大量の場合),ハイドロコロイド(単独またはペーストもしくはパウダーを併用),ポリウレタンフォーム

包み込む場合:非粘着性のガーゼによるドレッシングまたは吸収性の被覆材

深い(ステージIII~IV)

滲出液はごく少量で乾燥している

空洞を充填する

湿潤環境を作る,または維持する

感染から保護する

ハイドロコロイド,ハイドロゲル,またはフォームドレッシング材

充填する場合:コポリマーのスターチ,ハイドロゲル,または湿ガーゼ

覆う場合:薄い透明フィルム,ポリウレタンフォーム,またはガーゼパッド

中等量から大量の滲出液で湿潤している

空洞を充填する

滲出液を吸収する

浸潤環境を維持する

感染から保護する

アルギン酸塩またはフォームドレッシング材

充填する場合:コポリマーのスターチ,デキストラノマービーズ,アルギン酸カルシウム,ハイドロファイバー,ハイドロセルのガーゼまたはフォーム

覆う場合:薄い透明フィルム,ポリウレタンフォーム

*ステージIの褥瘡には通常,ドレッシングは不要である。

疼痛管理

褥瘡は有意な疼痛を引き起こすことがある。疼痛スケールを用いて定期的に疼痛をモニタリングすべきである。疼痛に対する一次的な治療は褥瘡そのものに対する治療であるが,軽度から中等度の疼痛にはNSAIDまたはアセトアミノフェンが有用である。オピオイドは,鎮静により体動を減少させるため,可能であれば避けるべきである。しかしながら,ドレッシングの交換時やデブリドマンの施行時には,オピオイドあるいは非オピオイドの外用剤(局所麻酔薬の混合剤など)が必要になる場合がある。認知障害のある患者では,バイタルサインの変化を疼痛の指標として用いることができる。

感染制御

褥瘡には,紅斑の増大,悪臭,熱感,排膿,発熱,白血球数増加など,細菌感染の徴候を検出するための評価を継続的に行うべきである。創傷治癒に障害がみられる場合にも,感染を考慮すべきである。これらの異常所見があるときは創面培養を行うべきである。ただし,褥瘡には全て微生物が定着しているため,結果の解釈には注意が必要であり,細菌の有無ではなく,細菌の数を参考にして治療方針を決定すべきである。

局所的な創傷感染症は,スルファジアジン銀,ムピロシン,ポリミキシンB,メトロニダゾールなどの外用で治療できる。スルファジアジン銀やこれと同様の不透明な外用薬は,下床創面の観察を困難にする可能性があり,また除去が困難となることもあるため,慎重に使用すべきである。適切な褥瘡治療を2~4週間行っても治癒しない,清潔なあらゆる褥瘡には,2週間にわたる外用抗菌薬の試験的投与が推奨される。蜂窩織炎,菌血症,または骨髄炎がある場合は,抗菌薬を全身投与すべきであり,その用法については,組織培養,血液培養,もしくは両方の結果,または疑わしい臨床症状を参考に決定すべきであり,創面の培養結果を参考にしてはならない。

栄養必要量の評価

褥瘡患者では低栄養状態がよくみられるが,これは治癒遷延の危険因子である。低栄養状態の目安としては,アルブミン値 < 3.5g/dL (< 35g/L) や体重 < 理想体重の80%。至適な治癒を得るには1.25~1.5g/kg/日のタンパク摂取が望ましいが,ときに経口,経鼻,または静脈栄養が必要になる。最新のエビデンスは,栄養欠乏の徴候のない患者へのビタミン類またはカロリーの補給を支持していない。

補助療法

褥瘡の治癒を促進する目的で多くの補助療法が試みられている:

  • 陰圧閉鎖療法:陰圧閉鎖療法(vacuum-assisted closure[VAC])では,創傷に吸引をかける。創傷の洗浄に利用することができる。陰圧閉鎖療法については,効力を示した質の高いエビデンスはまだ得られていないが,複数の小規模研究である程度有望な結果が示されている。

  • 遺伝子組換え成長因子の外用:遺伝子組換え成長因子製剤(例,神経成長因子,血小板由来増殖因子)の外用と人工皮膚の使用が創傷治癒を促進することを示唆したエビデンスがある。

  • 電気刺激療法:電気刺激療法を標準の創傷治療と併用することで,創傷治癒を促進することができる。

  • 超音波療法:ときに超音波が用いられるが,有益性や有害性を示した良好なエビデンスは存在しない。

  • 電磁波療法,温熱療法,マッサージ療法,高圧酸素療法:これらの治療法の効力を裏付けたエビデンスは存在しない。

手術

大きな組織欠損,特に筋骨格構造が露出しているものには,外科的な閉鎖が必要である。大きく浅い欠損には植皮が有用である。ただし,移植片は血液の供給を増やすわけではないため,虚血やさらなる組織破綻を来す程度まで圧迫が強くならないように対策を講じる必要がある。筋皮弁は,圧迫を分散できる大きな体積をもち,血管構造が豊富であることから,大きな骨突出部(通常は仙骨部,坐骨部,大転子部)の閉鎖では第1選択の方法となる。手術により褥瘡患者の生活の質が急速に改善することがある。手術成績は,事前に低栄養状態と併存症に対して至適な治療を行った場合に最良となる。

予防

予防には以下が必要である:

  • 高リスク患者の同定

  • 体位変換

  • 入念なスキンケアと衛生管理

  • 不動状態の回避

患者のリスクは,熟練した臨床医による評価とリスク評価尺度( 褥瘡のリスク予測のためのBraden Scaleおよび 褥瘡のリスク予測のためのNortonスケール(Norton Scale)*を参照のこと)の使用によって推定すべきである。

治療と予防はかなりの部分で重複する。予防の中心は頻回の体位変換である。骨突出部では,圧迫が2時間以上かかる状況を持続させるべきではない。自力で動けない患者には,体位変換を行い,枕をクッションとして使用する必要がある。圧迫を低減するマットレスを使用する場合でも,体位変換は必要である。圧迫のかかる部位については,少なくとも1日1回,十分な照明下で紅斑や外傷の有無を確認するべきである。患者とその家族には,潰瘍形成の可能性がある部位について視診と触診を毎日行う習慣をつけるよう指導する必要がある。

浸軟および二次感染を予防するため,衛生状態と乾燥に日々注意することが必要である。保護用パッド,枕,および羊皮は皮膚と皮膚が接触しないようにするために使用できる。寝具と衣服は頻回に交換すべきである。失禁のみられる患者では,潰瘍を汚染から保護すべきであり,合成のドレッシング材が有用となりうる。皮膚の破綻は,皮膚を注意深く洗浄して乾燥させ(皮膚を擦らず,軽く叩くように拭き取る),抗カンジダ薬のクリーム剤とモイスチャーバリアクリームまたは皮膚保護剤を含有する拭布を使用することで予防できる。接着テープの使用は,刺激をもたらし,脆弱な皮膚に裂傷を生じることもあるため,最小限に抑えるべきである。摩擦の生じやすい部位には単タルクパウダーを適用してもよい。コーンスターチの使用は,微生物を増殖させることがあるため,推奨されない。

最も重要なこととして,不動状態を回避すべきである。鎮静薬の使用は最小限に抑えるべきであり,患者にはできるだけ迅速かつ安全に動くように勧めるべきである。

要点

  • 褥瘡は不動状態や入院に続発することがあり,特に高齢患者,失禁のある患者,および低栄養患者ではその傾向が強い。

  • 褥瘡のリスクは,熟練した医師の評価のみならず,標準化された尺度に基づいて判断する。

  • 褥瘡の病期は潰瘍の深さに従って分類されるが,実際の組織損傷は,身体診察で判断できる水準よりも深く,より重度である場合がある。

  • 褥瘡患者に対しては,局所的な創傷感染(ときに治癒が得られないことで明らかとなる),瘻孔,蜂窩織炎,菌血症の拡大(例,心内膜炎または髄膜炎の発症),骨髄炎,および低栄養の有無について評価を行う。

  • 褥瘡は皮膚の除圧,頻回の体位変換,ならびに保護用パッドおよび体圧分散用具(電動型と非電動式の静止型がある)の使用により治療するとともに,これらを予防にも役立てる。

  • 細菌数を減らし,創傷治癒を促進するため,褥瘡には洗浄とドレッシングを頻回に行う。

  • 透明フィルムもしくはハイドロゲル(滲出液がごく少量の場合),ハイドロコロイド(滲出液が少量から中等量の場合),アルギン酸塩(滲出液が大量の場合),またはフォームドレッシング材(様々な量で滲出液がみられる場合)を適用する。

  • 疼痛は鎮痛薬により,局所的な創傷感染症は抗菌薬の外用により,蜂窩織炎または全身性感染症は抗菌薬の全身投与により治療する。

  • 大きな組織欠損,特に筋骨格構造が露出しているものは,外科的に閉鎖する。

  • 手術の前に栄養状態と併存症の治療を最適化しておく。

  • リスクのある患者における褥瘡の予防には,綿密な創傷ケア,除圧,そして不必要な体動制限の回避が助けとなる。

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