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蜂窩織炎

執筆者:

A. Damian Dhar

, MD, JD, North Atlanta Dermatology

最終査読/改訂年月 2013年 5月
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蜂窩織炎は皮膚および皮下組織の急性細菌感染で,最も頻度の高い原因菌はレンサ球菌とブドウ球菌である。症状と徴候は,疼痛,急速に拡大する紅斑,および浮腫である;発熱や所属リンパ節腫脹が生じることもある。診断は病変の外観によるほか,培養が参考になるが,その結果を待つために経験的治療を遅らせてはならない。治療は抗菌薬による。時機を逸することなく治療すれば,予後は極めて良好である。

病因

  • 化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus

蜂窩織炎はA群β溶血性レンサ球菌(例,化膿レンサ球菌[Streptococcus pyogenes])または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が原因である場合が最も多い。レンサ球菌の感染病巣は,びまん性で急速に拡大するが,その理由は,レンサ球菌の産生する酵素(ストレプトキナーゼ,DNase(デオキシリボヌクレアーゼ),ヒアルロニダーゼ)が炎症を抑制して,感染拡大を抑えるはずの細胞成分を分解するからである。典型的には,ブドウ球菌による蜂窩織炎はレンサ球菌によるものよりも限局性で,通常は開放創または皮膚膿瘍に生じる。

近年,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)が市中で増加してきている(市中感染型MRSA[CA-MRSA])。かつては,MRSAの典型例は病院や介護施設でMRSAに曝露した患者に限定されていた。現在では,市中感染の蜂窩織炎患者,特に繰り返し生じる蜂窩織炎または単剤療法に反応しない蜂窩織炎の患者でも,MRSA感染を考慮する必要がある。

比較的頻度の低い原因菌としては,高齢の糖尿病患者におけるB群レンサ球菌(例,S. agalactiae),小児におけるグラム陰性桿菌(例,インフルエンザ菌[Haemophilus influenzae]),糖尿病または好中球減少のある患者,浴槽や公衆浴場の利用者,および入院患者における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などがある。動物咬傷で蜂窩織炎が生じることもあり,ネコ咬傷ではPasteurella multocidaが,イヌ咬傷ではCapnocytophaga属細菌が原因菌となる。淡水中での外傷ではAeromonas hydrophilaによって,また温かい塩水中での外傷ではVibrio vulnificusによって蜂窩織炎が生じることがある。

易感染性患者はグラム陰性細菌(ProteusSerratiaEnterobacterCitrobacterなど),嫌気性細菌,Helicobacter属,Fusarium属などの日和見病原体に感染することがある。まれに抗酸菌が蜂窩織炎を引き起こすこともある。

危険因子として皮膚の異常(例,外傷,潰瘍,真菌感染症,その他既存の皮膚疾患による皮膚バリアの障害)があり,これらは慢性静脈不全症またはリンパ浮腫の患者でよくみられる。心臓または血管手術で伏在静脈を除去した後に生じた瘢痕は,再発性蜂窩織炎の好発部位である(特に足白癬がある場合)。素因となった病態や侵入門戸が明らかでない場合も多い。

症状と徴候

感染は下肢で最も多く発生する。典型的な蜂窩織炎は片側性であり,うっ滞性皮膚炎は蜂窩織炎に酷似するが,通常は両側性である。主な所見は局所的な紅斑および圧痛で,リンパ管炎や所属リンパ節腫脹を伴うことが多い。皮膚は熱感,発赤,および浮腫を呈し,表面はオレンジの皮に似た外観(橙皮状皮膚)を呈することが多い。境界は通常不明瞭であるが,丹毒(蜂窩織炎の一種で,境界明瞭となる― 丹毒)の場合は例外である。点状出血がよくみられるが,大きな斑状出血はまれである。小水疱や水疱が生じて破れることがあり,ときに病変部皮膚の壊死を伴う。蜂窩織炎は深部静脈血栓症に類似することがあるが,いくつかの特徴によって鑑別できる場合が多い( 蜂窩織炎と深部静脈血栓症の鑑別を参照のこと)。皮膚所見が出現する数時間前に発熱,悪寒,頻脈,頭痛,低血圧,せん妄が生じることもあるが,多くの患者は具合が悪いようにはみえない。白血球増多がよくみられる。感染の急速な拡大,疼痛の急速な増強,低血圧,せん妄,および皮膚の剥離を伴う蜂窩織炎(特に水疱および発熱を伴う場合)は,生命を脅かす感染症を示唆する。

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蜂窩織炎と深部静脈血栓症の鑑別

特徴

蜂窩織炎

深部静脈血栓症

皮膚温

熱い

正常または冷たい

皮膚の色調

赤色

正常またはチアノーゼ

皮膚表面

橙皮状皮膚

平滑

リンパ管炎および所属リンパ節腫脹

頻繁にあり

みられない

診断

  • 診察

  • 易感染性患者では血液培養のほか,ときに組織培養

診断は診察による。皮膚および創傷(存在する場合)から培養を行っても感染した微生物を同定できることはまれであるため,一般に培養は適応とならない。易感染性患者では,菌血症を検出または除外するための血液培養が有用である。易感染性患者では,経験的治療に反応しない場合や血液培養で菌が分離されない場合は,患部組織の培養が必要となることがある。臨床所見に基づいて膿瘍を除外すべきである。

予後

蜂窩織炎の大半は,抗菌薬療法で速やかに消退する。ときに局所的な膿瘍が形成され,切開排膿が必要になる。重篤であるが,まれにしか起こらない合併症として,重症の壊死性皮下組織感染症( 壊死性皮下組織感染症)および転移性感染病巣を伴う菌血症がある。

同一部位に再発することが多く,ときに重篤なリンパ管損傷,慢性リンパ管閉塞,およびリンパ浮腫を来す。

治療

  • 抗菌薬

治療は抗菌薬による。地域での皮膚原因菌頻度が分かっている場合は,経験的治療は最も可能性の高い病原体を対象として行うべきである。大半の患者には,A群レンサ球菌と黄色ブドウ球菌(S. aureus)の両方に効果的な経験的治療を選択する。軽度の感染症には通常,ジクロキサシリン250mgまたはセファレキシン500mgを1日4回投与する経口療法で十分である。1日に複数回服用する投与スケジュールを遵守する可能性が低い患者には,レボフロキサシン500mg,経口,1日1回またはモキシフロキサシン400mg,経口,1日1回が有用であるが,フルオロキノロン系薬剤に対する耐性菌が増えつつある。ペニシリンアレルギーのある患者では,クリンダマイシン300~450mg,経口,1日3回またはマクロライド系薬剤(クラリスロマイシン250~500mg,経口,1日2回またはアジスロマイシンを初日に500mgに続いて250mg,経口,1日1回)が代替薬となる。

リスクが特に高い場合(例,確定診断された症例との接触,確認されたアウトブレイクに対する曝露,培養で確認された地域での保菌率が10%または15%を超える)以外は,通常はMRSAに対する経験的治療を最初から選択することは推奨されない。高リスクの症例では,トリメトプリム/スルファメトキサゾール2倍量(トリメトプリム160mg/スルファメトキサゾール800mg),経口,1日2回,クリンダマイシン300~450mg,経口,1日3回,およびドキシサイクリン100mg,経口,1日2回が外来患者に対する妥当な経験的治療である。

より重篤な感染症では,患者を入院させて,オキサシリンまたはナフシリン(1g,静注,6時間毎)またはセファロスポリン系薬剤(例,セファゾリン1g,静注,8時間毎)を投与する。ペニシリンアレルギーのある患者とMRSA感染症が疑われるか確認された患者では,バンコマイシン(15mg/kg,静注,12時間毎)が選択すべき薬剤である( 抗菌薬耐性)。通常,高度耐性のMRSAに対する治療では,リネゾリド600mg,静注,12時間毎,10~14日間が別の選択肢である。ダプトマイシンを4~6mg/kg,静注,1日1回で使用することもできる。テイコプラニンはバンコマイシンと同様の作用機序をもつ。テイコプラニンは米国外ではMRSA感染症の治療に広く使用されており,通常の用量は6mg/kg,静注,12時間毎で2回に続いて,6mg/kg(または3mg/kg),静注または筋注,1日1回である。患部の安静と挙上が浮腫の軽減に役立ち,冷たく湿らせたドレッシング剤を適用すれば,局所の不快感を軽減できる。

好中球減少がみられる患者の蜂窩織炎には,血液培養の結果が得られるまで,緑膿菌に有効な抗菌薬による経験的治療(例,トブラマイシン1.5mg/kg,静注,8時間毎およびピペラシリン3g,静注,4時間毎)が必要である。

哺乳類の咬傷により軽度の蜂窩織炎が生じた患者は,アモキシシリン/クラブラン酸(ペニシリンアレルギーがある場合は,フルオロキノロン系薬剤とクリンダマイシンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールの併用)による外来治療が可能である。

汽水または塩水への曝露後に生じた蜂窩織炎は,ドキシサイクリン100mg,経口,1日2回およびセフタジジムまたはフルオロキノロン系薬剤により治療すべきである。淡水への曝露後に生じた蜂窩織炎は,セフタジジム,セフェピム,またはフルオロキノロン系薬剤で治療すべきである。汽水と淡水とでは,可能性の高い感染微生物が概ね同じである場合が多い(例,Vibrio属,Aeromonas属,Shewanella属,Erysipelothrix rhusiopathiae[豚丹毒菌],Mycobacterium marinumStreptococcus iniae)。

再発を繰り返す下肢の蜂窩織炎は,合併した足白癬を治療することで予防でき,これにより,炎症を起こし浸軟した組織への細菌の供給源がなくなることが多い。このような治療が不成功に終わった場合や適応がない場合は,ベンジルペニシリンベンザチン120万単位,筋注,月1回,またはペニシリンVもしくはエリスロマイシン250mg,経口,1日4回,1週間/1カ月の投与により,ときに再発性の蜂窩織炎を予防できる。これらのレジメンが無効に終わった場合は,組織培養が必要となることがある。

要点

  • 蜂窩織炎全体で最も多い頻度の高い原因菌は化膿レンサ球菌(S. pyogenes)と黄色ブドウ球菌(S. aureus)である。

  • MRSAを考慮すべきであり,アウトブレイクが判明している場合や地域の保菌率が高い場合は,特に重要である。

  • 下肢の蜂窩織炎は,皮膚の熱感,発赤,橙皮状皮膚,およびリンパ節腫脹の存在により,深部静脈血栓症と鑑別する。

  • 皮膚培養や創傷培養は行わないが,重度の感染や合併症を伴う感染がみられる患者では,血液培養のほか,場合により組織培養を行う。

  • 抗菌薬療法では最も可能性が高い病原体を標的とする。

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