皮膚はしばしば,背景にある内科疾患の徴候として機能する。典型的には,皮膚病変の種類は特異的な疾患や疾患の病型と関連する。
(皮膚科患者の評価 皮膚科患者の評価 多くの 皮膚病変は病歴聴取と身体診察で十分に診断できる。一方で,生検やその他の検査が必要になるものもある。 病歴から得るべき重要な情報としては以下のものがある: アトピーの個人歴または家族歴( アトピー性皮膚炎を示唆する) 職業曝露( 接触皮膚炎) 日光または他の種類の放射線に対する長期曝露(良性および... さらに読む も参照のこと。)
内臓の悪性腫瘍
40歳以上の 皮膚筋炎 自己免疫性筋炎 自己免疫性筋炎は,筋肉(多発性筋炎)または皮膚および筋肉(皮膚筋炎)の炎症性変化および変性変化を特徴とする。症状としては,対称性の筋力低下,ときに圧痛,筋肉の線維組織への置換などがあるほか,ときに萎縮を伴い,それは主として肢帯の近位筋にみられる。診断は臨床所見,および筋肉の検査(筋酵素[アルドラーゼおよびクレアチンホスホキナーゼ],MRI,筋電図検査,筋生検など)における異常による。いくつかの型の筋炎では,肺および心臓の症状がみられる。... さらに読む 患者は,乳癌,肺癌,卵巣がん,および消化器癌のリスクが高い。
多発性の 脂漏性角化症 脂漏性角化症 脂漏性角化症は,しばしば色素沈着を伴う表在性の上皮性病変で,通常は疣状であるが,平滑な丘疹として生じることもある。 脂漏性角化症の原因は不明であるが,特定の病型では遺伝子変異が同定されている。一般的に病変は中年以降に生じ,体幹および側頭部に好発する。皮膚の色の濃い人々では,1~3mm大の病変が頬骨上に多発することがあり,この病態は黒色丘疹性皮膚症(dermatosis papulosa... さらに読む の急性発症(Leser-Trélat徴候)は,背景にある内臓の悪性腫瘍(特に腺癌)の存在を示唆している場合がある。ただし,脂漏性角化症は健康成人における有病率が高いため,この徴候は過剰診断につながることがある。
急性熱性好中球性皮膚症 急性熱性好中球性皮膚症 急性熱性好中球性皮膚症(acute febrile neutrophilic dermatosis)は,圧痛と硬結を伴う暗赤色の丘疹および局面を特徴とし,真皮上層には著明な浮腫が生じ,密な好中球浸潤が認められる。原因は不明である。しばしば基礎に悪性腫瘍(特に造血器腫瘍)を伴って発生する。診断は通常,皮膚生検による。治療はコルチコステロイドまたは(代替薬として)コルヒチンもしくはヨウ化カリウムの全身投与である。... さらに読む (スウィート症候群)は,ときに造血器悪性腫瘍を合併する。
黒色表皮腫はがんと関連し,発症が急激で,とりわけ広範に拡大することがある。後天性魚鱗癬や明らかな皮膚炎を欠いたそう痒は,潜在がん(多くはリンパ腫)を示唆している場合がある。
腫瘍随伴性天疱瘡は,比較的まれな自己免疫性水疱症であり,白血病など様々な腫瘍との関連が報告されている。
カルチノイド症候群 カルチノイド症候群 カルチノイド症候群は, カルチノイド腫瘍患者の一部に発生する病態で,皮膚紅潮,腹部痙攣,および下痢を特徴とする。右側の心臓弁膜症が数年後に生じることがある。本症候群は,腫瘍によって分泌される血管作動性物質(セロトニン,ブラジキニン,ヒスタミン,プロスタグランジン,ポリペプチドホルモンなど)に起因し,その腫瘍は典型的には転移性の消化管カルチノイドである。診断は臨床的に,また尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の高値を示すことによる。腫瘍の局在... さらに読む (頸部の紅潮および紅斑)は,カルチノイド腫瘍と関連する。
匍行性迂回状紅斑はまれな発疹で,木目に似た同心円状に分布する紅斑性病変で構成され,様々な悪性腫瘍との関連が報告されている。
内分泌障害
多くの皮膚所見に内分泌障害との関連がみられるが,いずれも特異的ではない。
糖尿病患者は黒色表皮腫,リポイド類壊死症,穿孔性皮膚症,浮腫性硬化症を合併していることがある。
甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。サイロキシン投与などにより管理を行う。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺機能低下症は以下に分類される: 原発性:甲状腺の疾患に起因する... さらに読む であれ, 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む
であれ,甲状腺疾患では毛髪,爪,皮膚に影響が出ることがある。
消化器疾患
消化器疾患の合併頻度が高い皮膚疾患としては以下のものがある:
扁平苔癬 扁平苔癬 扁平苔癬は,そう痒を伴う再発性の炎症性発疹が生じる疾患で,平坦に隆起した多角形で紫色のはっきりした小丘疹を特徴とし,それらが融合して表面のざらざらした鱗屑を伴う局面を形成することがあり,しばしば口腔病変や性器病変を伴う。診断は通常臨床的に行い,皮膚生検で裏付けが得られる。一般に,治療にはコルチコステロイドの外用または病変内注射が必要となる。重症例では光線療法,またはコルチコステロイド,レチノイド,もしくは免疫抑制薬の全身投与が必要になる... さらに読む
および 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症 晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)は比較的頻度の高い肝性ポルフィリン症であり,主に皮膚が侵される。肝疾患も一般的である。PCTは,ヘム生合成経路の酵素である肝臓のウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の活性の後天性または遺伝性の低下に起因する( ヘム生合成経路の基質および酵素の表を参照)。ポルフィリンが蓄積するのは,特に,肝細胞に酸化ストレスの亢進が存在する場合であり,この亢進は通常,肝臓の鉄増加に起因するが,アルコール,喫煙,エストロゲン,... さらに読む
:C型肝炎
糖尿病患者におけるびまん性色素沈着(青銅色糖尿病[bronze diabetes]として知られる):ヘモクロマトーシス