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そう痒

(そう痒症)

執筆者:

Elizabeth H. Page

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 6月
本ページのリソース

皮膚科患者の評価も参照のこと。)

そう痒は,有意な不快感の原因となりうる症状であり,皮膚科の受診理由として最も頻度が高いものの1つである。そう痒が掻破につながり,それが炎症,皮膚の劣化,および二次感染の原因となることがある。皮膚に苔癬化,鱗屑,および表皮剥離が生じることがある。

病態生理

そう痒は,軽い触覚,振動,羊毛繊維などの多様な刺激により生じる。関与する化学伝達物質はいくつかあり,そう痒の感覚が生じる機序は複数存在する。最近の研究により,そう痒の媒介を特異的に担っている感覚ニューロンが末梢に存在することが実証された。それらのニューロンは触覚や痛覚を担う感覚ニューロンとは大きく異なり,MrgA3という受容体を発現していて,この受容体が刺激されることでそう痒の感覚が惹起される。

伝達物質

ヒスタミンは最も重要な伝達物質の1つである。これは皮膚の肥満細胞で合成,貯蔵され,様々な刺激に反応して放出される。その他の伝達物質(例,神経ペプチド)は,ヒスタミンの放出を惹起する場合や,それ自体が起痒物質として作用する場合があり,このことが抗ヒスタミン薬でそう痒を緩和できる症例とできない症例があることの理由である。オピオイドには中枢性のそう痒作用があるほか,末梢でのヒスタミンによるそう痒を刺激する。

機序

そう痒には4つの機序がある:

  • 皮膚性:典型的には炎症性または病理学的変化(例,蕁麻疹湿疹)により引き起こされる

  • 全身性:皮膚以外の臓器の疾患に関連する(例,胆汁うっ滞)

  • 神経障害性:中枢または末梢神経系の疾患に関連する(例,多発性硬化症

  • 心因性:精神障害に関連する

強いそう痒は強い掻破につながり,これが二次的な皮膚障害(例,炎症,表皮剥離,感染)の原因となることがあり,それにより皮膚バリアが破綻することで,そう痒が増強する可能性がある。掻破は抑制性のニューロン回路を活性化することでそう痒の感覚を一時的に軽減できるが,同時に脳のレベルでかゆみの増幅をもたらすことで,そう痒と掻爬のサイクルを悪化させることになる。

病因

そう痒は,原発性皮膚疾患の症状であることもあれば,比較的まれであるが,全身性疾患の症状であることもある。また,薬剤がそう痒を引き起こすこともある( そう痒の原因を参照のこと)。

皮膚疾患

多くの皮膚疾患がそう痒を引き起こす。特に頻度が高い病態としては以下のものがある:

全身性疾患

全身性疾患では,そう痒に皮膚病変が伴うこともあれば,そうでないこともある。しかしながら,同定可能な皮膚病変がないにもかかわらず,そう痒が顕著な場合には,原因として全身性疾患と薬物をより強く考慮すべきである。全身性疾患のそう痒の原因としての頻度は皮膚疾患より低いが,比較的頻度の高い原因としては以下のものがある:

  • アレルギー反応(例,食物,薬物,刺咬症)

  • 胆汁うっ滞

  • 慢性腎臓病

そう痒の原因となる全身性疾患として比較的頻度が低いものには,甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,糖尿病,鉄欠乏症,疱疹状皮膚炎,真性多血症などがある。

薬物

薬物はアレルギー反応として,あるいはヒスタミン放出を直接誘発することによって,そう痒を引き起こすことがある(最も多いのはモルヒネと一部の静注造影剤)。

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そう痒の原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

原発性皮膚疾患

紅斑,ときに苔癬化,毛孔性角化症,乾皮症,デニー-モルガン線,掌紋増強の存在

通常はアトピーまたは慢性再発性皮膚炎の家族歴あり

臨床的評価

アレルゲンへの接触に続発した皮膚炎;紅斑,小水疱

臨床的評価

皮膚糸状菌症(例,頭部白癬,体部白癬,股部白癬,足白癬)

限局性のそう痒,辺縁が隆起した鱗屑を伴う環状病変,脱毛部位

好発部位は成人では陰部および足,小児では頭皮および体幹

ときに,素因(例,湿気,肥満)がみられる

KOH法による病変の擦過検体の検査

繰り返す掻破に続発する皮膚の肥厚部位

病変ははっきりした鱗屑を伴う紅色の局面と境界明瞭で粗造な苔癬化

臨床的評価

好発部位は頭皮,腋窩,腰,および陰部である

表皮剥離の領域,ときに新鮮な咬傷による点状病変,ときに両側性眼瞼炎

卵(虫卵)およびときにシラミを認める

典型的には肘関節および膝関節伸側,頭皮,ならびに体幹にみられる銀白色の鱗屑を伴う局面

そう痒は必ずしも局面に限定されない

ときに,こわばりと疼痛として現れる小関節の関節炎

臨床的評価

軽度の鱗屑を伴う最長1cmにわたる微細な波状の線を認め,その片方の末端には紅色または黒色の小丘疹がある(疥癬トンネル);指間部,ベルトライン,屈曲面,女性の乳輪,および男性の性器に生じることがある

家族または同居する親しい者に同様の症状がみられる

夜間の強いそう痒

臨床的評価

疥癬トンネルから採取した皮膚擦過物の鏡検

一過性かつ限局性の紅斑を伴う隆起性病変で,中心は蒼白である

急性と慢性(6週間以上持続)がある

臨床的評価

乾皮症(乾燥皮膚)

冬に最も多い

そう痒および鱗屑を伴う皮膚の乾燥で,大半が下肢に生じる

乾熱により増悪する

臨床的評価

全身性疾患

アレルギー反応,全身性(多数の摂取物質)

全身性のそう痒,斑(macule)および丘疹を伴う発疹または蕁麻疹の発疹

アレルギーが既知のこともあれば,そうでないこともある

試験的な回避

ときにプリックテスト

そう痒が他の症状に先行することがある

焼けつくようなそう痒(ホジキンリンパ腫),主に下肢

入浴後のそう痒(真性多血症)

多様な皮膚病変:局面,斑(patch),腫瘍,紅皮症(菌状息肉症)

血算

血液塗抹検査

胸部X線

生検(真性多血症では骨髄,ホジキンリンパ腫ではリンパ節,菌状息肉症では皮膚病変)

胆汁うっ滞

肝臓または胆嚢の損傷または機能障害(例,黄疸,脂肪便,疲労,右上腹部痛)

通常は発疹を伴わない広範なそう痒が生じ,ときに妊娠後期に発生する

肝機能検査および黄疸の原因の評価

頻尿,口渇,体重減少,視覚の変化

尿糖値および血糖値

HbA1C

疲労,頭痛,易刺激性,運動耐容能低下,異食症,毛髪の減少

ヘモグロビン,ヘマトクリット,赤血球指数,血清フェリチン,血清鉄,鉄結合能

四肢の間欠的な強いそう痒,しびれ,チクチク感,視神経炎,視力障害,痙縮または筋力低下,回転性めまい

MRI

髄液検査

誘発電位

精神障害

線状の表皮剥離,精神障害の存在(例,臨床的な抑うつ,寄生虫妄想)

臨床的評価

除外診断

腎疾患

末期腎臓病

全身性のそう痒,透析中に悪化することがある,背部で顕著なことがある

除外診断

甲状腺疾患*

体重減少,動悸,発汗,易刺激性(甲状腺機能亢進症

体重増加,抑うつ,乾燥皮膚および毛髪の乾燥(甲状腺機能低下症

TSH,T4

薬物

薬物(例,オピオイド,ペニシリン,ACE阻害薬,スタチン系,抗マラリア薬,上皮成長因子阻害薬,インターロイキン2,ベムラフェニブ,イピリムマブ,その他の抗腫瘍薬)

摂取歴

臨床的評価

*そう痒が主訴となることはまれである。

HbA1C= 糖化ヘモグロビン;KOH = 水酸化カリウム;T4= サイロキシン;TSH = 甲状腺刺激ホルモン。

評価

病歴

現病歴の聴取では,そう痒の発症,当初の部位,経過,持続期間,そう痒のパターン(例,夜間か日中か,間欠性か持続性か,季節的変動),および発疹の有無を明らかにすべきである。薬歴を入念に聴取すべきであり,その対象には処方薬とOTC薬の両方を含め,最近開始した薬剤には特に注意を払う。保湿剤とその他の外用薬(例,ヒドロコルチゾン,ジフェンヒドラミン)の使用状況を確認すべきである。病歴聴取の対象には,そう痒の軽快因子および増悪因子を含めるべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,以下のような原因となる疾患の症状がないか検討すべきである:

  • 易刺激性,発汗,体重減少,および動悸(甲状腺機能亢進症

  • 抑うつ,乾燥皮膚,および体重増加(甲状腺機能低下症

  • 頭痛,異食症,毛髪の減少,および運動耐容能低下(鉄欠乏性貧血

  • 体重減少,疲労,および盗汗の全身症状(悪性腫瘍)

  • 間欠性の筋力低下,しびれ,チクチク感,および視覚障害または視力障害(多発性硬化症

  • 脂肪便,黄疸,右上腹部痛(胆汁うっ滞)

  • 頻尿,過度の口渇,および体重減少(糖尿病

既往歴の聴取では,既知の原因疾患(例,腎疾患,胆汁うっ滞性疾患,化学療法により治療中の悪性腫瘍)を同定し,患者の精神状態を確認すべきである。社会歴の聴取では,同様のそう痒および皮膚症状(例,疥癬,シラミ症)がある家族の有無,そう痒と職業または植物,動物,もしくは化学物質に対する曝露との関係,ならびに最近の旅行歴に焦点を置くべきである。

身体診察

身体診察はまず,黄疸,体重減少または増加,および疲労を示唆する臨床所見の検討から始める。詳細な皮膚の診察を行い,病変の有無,形態,範囲,および分布に注目すべきである。皮膚の診察では,二次感染の徴候(例,発赤,腫脹,熱感,黄色または蜂蜜色の痂皮形成)にも注目すべきである。

診察では,悪性腫瘍を示唆する有意なリンパ節腫脹に注目すべきである。腹部の診察では,臓器腫大,腫瘤,および圧痛に焦点を置くべきである(胆汁うっ滞性疾患または悪性腫瘍)。神経学的診察では,筋力低下,痙縮,およびしびれに焦点を置くべきである(多発性硬化症)。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 体重減少,疲労,および盗汗の全身症状

  • 四肢の筋力低下,しびれ,またはチクチク感

  • 腹痛および黄疸

  • 頻尿,過度の口渇,および体重減少

所見の解釈

薬物の使用直後に始まった全身性のそう痒は,その薬物によって生じたものである可能性が高い。また,問題の物質と接触した部位に生じた限局性のそう痒(しばしば発疹を伴う)は,その物質によって生じたものである可能性が高い。しかしながら,患者は典型的にそう痒が発生する前に複数の食物を摂取し,また多数の物質と接触していることから,多くの全身性アレルギーは同定が困難となる可能性がある。同様に,複数の薬剤を服用している患者で原因薬剤を同定することも困難となる場合がある。ときに反応が発生する前に数カ月,さらには数年にわたって原因薬剤を摂取していることもある。

病因がすぐに明らかとならない場合は,皮膚病変の外観と部位から診断が示唆されることがある( そう痒の原因)。

皮膚病変が明らかではない少数の患者では,全身性疾患を考慮すべきである。そう痒を引き起こす疾患の中には,評価で容易に明らかとなるものもある(例,慢性腎不全,胆汁うっ滞性黄疸)。そう痒を引き起こすその他の全身性疾患は,所見により示唆される( そう痒の原因)。まれに,そう痒が重大な全身性疾患の最初の症状となることもある(例,真性多血症,特定の悪性腫瘍,甲状腺機能亢進症)。

検査

多くの皮膚疾患は臨床的に診断される。ただし,そう痒とともに病因不明のはっきりした皮膚病変が認められる場合は,生検が適切となることがある。アレルギー反応が疑われるが,原因物質が不明の場合には,しばしば皮膚テスト(疑われる病因に応じてプリックテストまたはパッチテスト)が行われる。全身性疾患が疑われる場合,検査は疑われる原因に応じて異なり,通常は血算,肝機能,腎機能,および甲状腺機能の測定,ならびに基礎疾患としての悪性腫瘍に対する適切な評価を行う。

治療

基礎疾患があれば治療する。支持療法として以下を行う( そう痒に対する治療アプローチも参照のこと):

  • 局所のスキンケア

  • 外用治療

  • 全身治療

スキンケア

そう痒には,その原因を問わず,入浴時の冷たい水またはぬるま湯(熱い湯は不可)の使用,低刺激性の石鹸または保湿用石鹸,入浴時間および頻度の制限,頻回の潤滑剤の使用,乾燥した空気の加湿,ならびに刺激のある衣服やきつい衣服の回避が有効である。刺激物(例,ウールの衣服)の接触を回避することも助けになる場合がある

外用薬

限局性のそう痒には外用薬が有用となりうる。選択肢としては,カンフルおよび/またはメントール,pramoxine,カプサイシン,もしくはコルチコステロイドを含有するローションまたはクリームなどがある。コルチコステロイドは炎症によるそう痒の緩和には効果的であるが,炎症所見のない状態では使用を控えるべきである。アミノ安息香酸エチル,ジフェンヒドラミン,およびドキセピンの外用薬は,皮膚を感作することがあるため,避けるべきである。

全身薬

全身薬は,全身性そう痒または外用薬に抵抗性の局所性そう痒に使用する。抗ヒスタミン薬は効果的で(特に夜間のそう痒),最も頻用されているが,なかでも最も有名なものがヒドロキシジンである。鎮静性抗ヒスタミン薬は,転倒につながる可能性があるため,高齢患者では注意して使用しなければならず,日中のそう痒にはロラタジン,フェキソフェナジン,セチリジンなど新しい非鎮静性抗ヒスタミン薬が有用となりうる。その他の薬剤としては,ドキセピン(高度の鎮静作用があるため,通常は夜間に服用する),コレスチラミン(腎不全,胆汁うっ滞,および真性多血症に使用する),ナルトレキソンなどのオピオイド拮抗薬(胆汁性そう痒に用いる)などがあり,ガバペンチン(尿毒症性そう痒に用いる)も有用となる可能性がある。

そう痒に効果的となりうる物理的治療法として,紫外線療法などがある。

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そう痒に対する治療アプローチ

薬剤/治療法

通常のレジメン

備考

外用療法

カプサイシンクリーム

神経障害性のそう痒がある領域に限定して,必要な期間にわたり定期的に塗布する

効果が得られるまでに2週間以上かかることがある

除去に植物油が役立つことがある

最初に生じる灼熱感は時間とともに消失する

コルチコステロイドクリームまたは軟膏

患部に1日2回,5~7日間塗布する

顔面と湿潤した皮膚のひだは避ける

長期間(2週間以上)使用してはならない

メントールおよび/またはカンフル含有クリーム

緩和に必要なだけ患部に塗布する

これらの製剤には強い匂いがある

pramoxineクリーム

必要に応じて4~6回/日塗布する

適用部位に乾燥または刺激を引き起こすことがある

タクロリムス軟膏またはピメクロリムスクリーム

患部に1日2回,10日間塗布する

長期間使用してはならず,また2歳未満の小児にも使用してはならない

B波による紫外線療法

そう痒が緩和するまで週1~3回

治療はしばしば数カ月続く

サンバーン様の有害作用が生じることがある

長期的には皮膚癌(黒色腫など)のリスクがある

全身療法

セチリジン*

5~10mg,経口,1日1回

高齢患者ではまれに鎮静作用が生じることがある

コレスチラミン(胆汁うっ滞性そう痒)

4~16g,経口,1日1回

アドヒアランス不良となることがある

便秘,味が悪い

他の薬物の吸収を阻害する可能性がある

シプロヘプタジン

4mg,経口,1日3回

鎮静作用があり,就寝前投与でも有用

ジフェンヒドラミン

25~50mg,経口,4~6時間毎(24時間で最大6回)

鎮静作用があり,就寝前投与でも有用

ドキセピン

25mg,経口,1日1回

重度および慢性のそう痒に有用

鎮静作用が非常に強いため,就寝時に服用する

フェキソフェナジン*

60mg,経口,1日2回

有害作用として頭痛が生じることがある

ガバペンチン(尿毒症性そう痒)

血液透析後に100mgを経口投与する

鎮静作用が問題となりうる

低用量で開始し,臨床効果が得られるまで漸増する

ヒドロキシジン

25~50mg,経口,4~6時間毎(24時間で最大6回)

鎮静作用があり,就寝前投与でも有用

ロラタジン*

10mg,経口,1日1回

高齢患者ではまれに鎮静作用が生じることがある

ナルトレキソン(胆汁うっ滞性そう痒)

12.5~50mg,経口,1日1回

オピオイド耐性のある患者では離脱症状につながる可能性がある

*非鎮静性抗ヒスタミン薬。

鎮静性抗ヒスタミン薬。

老年医学的重要事項

高齢者ではそう痒の有病率が高いが,この傾向には免疫系と神経線維に生じる加齢変化が関与している可能性がある。

高齢患者では乾燥性湿疹の頻度が非常に高い。そう痒が主に下肢に生じている場合は,特にその可能性が高くなる。

高齢者の重度かつびまん性のそう痒は,悪性腫瘍の可能性を考えるべきである(特に他の病因がすぐに明らかにならない場合)。

高齢者の治療では,抗ヒスタミン薬による鎮静が大きな問題となることがある。鎮静の合併症を回避する上では,日中は非鎮静性抗ヒスタミン薬を使用し,夜間は鎮静性抗ヒスタミン薬を使用すること,軟膏の外用薬と外用コルチコステロイド(適切な場合)を十分に活用すること,ならびに紫外線療法を考慮することが役立つ場合がある。

要点

  • そう痒は通常,皮膚疾患または全身性アレルギー反応の症状であるが,全身性疾患によって生じることもある。

  • 皮膚病変が明らかではない場合は,全身的な原因を検索すべきである。

  • スキンケア(例,入浴の制限,刺激物の回避,定期的な保湿,環境の加湿)を遵守すべきである。

  • 症状は外用薬または全身薬で軽減することができる。

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