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アトピー性皮膚炎(湿疹)

(アトピー性湿疹;乳児湿疹)

執筆者:

Mercedes E. Gonzalez

, MD, University of Miami Miller School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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アトピー性皮膚炎(AD,しばしば湿疹と同義)は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して発生する皮膚の慢性炎症性疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化まで様々である。診断は病歴および診察による。治療としては保湿剤の使用とアレルギー性および刺激性の誘因を回避することのほか,しばしばコルチコステロイドまたは免疫調節薬の外用薬を使用する。小児期のアトピー性皮膚炎は多くの場合,成人期までに消失するか有意に軽減する。

皮膚炎の定義も参照のこと。)

病因

アトピー性皮膚炎は,主に都市部または先進国の小児に発生し,過去30年で有病率が上昇しており,先進国の小児の最大20%と成人の1~3%が罹患している。この疾患の患者の大半は5歳までに発症し,その多くは1歳未満で発症する。未証明の仮説として,幼児期の感染因子への曝露が少なくなると(すなわち,家庭での衛生管理がより徹底的であるために)アトピー性疾患や自己タンパクに対する自己免疫が発生しやすくなるという衛生仮説があり,多くの患者やADを有するその家族には喘息アレルギー性鼻炎もみられる。

病態生理

ADの発生には以下の因子の全てが関与する:

  • 遺伝因子

  • 表皮バリアの機能障害

  • 免疫学的機序

  • 環境誘因

ADとの関連が報告されている遺伝子は,表皮および免疫系のタンパクをコードする遺伝子である。ADの重要な素因の1つに,分化途中の角化細胞が産生する周辺帯の成分であるフィラグリンタンパクの遺伝子変異があり,この変異は多くの患者でみられる。

ADによる表皮バリアの障害としては,セラミドおよび抗菌ペプチドの減少と経表皮水分蒸散量の増加も知られており,それにより環境中の刺激性物質やアレルゲン,微生物の透過量が増加することで,炎症と感作が誘発される。

急性ADの病変では,Th2細胞由来のサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-13)が優位となる一方,慢性病変ではTh1細胞由来のサイトカイン(IFN-γ,IL-12)が認められる。これらの他にも,thymic stromal lipoproteinやCCL17,CCL22など,多数のサイトカインがADの炎症反応に関与している。特定のサイトカインを標的とする新しい治療法が,ADにおける特異的な免疫経路の同定に役立っている。

よくみられる環境性の誘因としては以下のものがある:

  • 食物(例,牛乳,卵,大豆,小麦,ピーナッツ,魚)

  • 空中アレルゲン(例,チリダニ,カビ,フケ)

  • 内因性抗菌ペプチドの欠乏による黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の皮膚への定着

  • 外用製品(例,化粧品,香料,刺激の強い石鹸)

  • 発汗

  • 粗い繊維

症状と徴候

アトピー性皮膚炎は通常は乳児期に,典型的には生後3カ月までに発症する。

急性期の病変は,浮腫および鱗屑を伴う紅色の斑または局面であり,滲出液を認めることもある。ときに小水疱がみられる。

慢性期には,掻破や擦るなどの行為により皮膚病変(典型的には紅斑と丘疹で,掻破が続けば苔癬化を来す)が生じる。

病変の分布は年齢に応じて異なる。乳児では,病変が顔面,頭皮,頸部,および四肢伸側に生じるのが特徴である。より年長の小児と成人では,頸部などの屈側面と肘窩および膝窩に病変が生じる。

強いそう痒が重要な特徴である。そう痒はしばしば病変に先行し,アレルゲン曝露,乾燥した空気,発汗,局所の刺激,ウールの衣服,精神的ストレスなどにより増悪する。

合併症

二次性の細菌感染(重複感染),特にブドウ球菌およびレンサ球菌感染症(例,蜂窩織炎)と所属リンパ節のリンパ節炎がよくみられる。剥脱性皮膚炎が生じることもある。

疱疹性湿疹(eczema herpeticum)(カポジ水痘様発疹症とも呼ばれる)は,AD患者に生じるびまん性の単純ヘルペスウイルス感染症である。この疾患は,活動性の皮膚炎や最近起こった皮膚炎の部位に小水疱の集簇病変として生じるが,正常な皮膚が侵されることもある。数日後に高熱およびリンパ節腫脹を来すことがある。ときに,この感染症が全身性となることがあり,その場合は死に至ることもある。ときに眼が侵され,疼痛を伴う角膜病変が生じる。

真菌やヘルペス以外のウイルス(例,尋常性疣贅伝染性軟属腫)による皮膚感染症も生じうる。

罹病期間の長いAD患者は,20代または30代に白内障を発症することがある。

外用製品を頻繁に使用すると,多くの潜在的アレルゲンに曝露されることになるが,それらの患者でよくみられる全身性の乾燥皮膚がADを増悪させ,複雑化させるのと同様に,それらの製品により生じる接触皮膚炎もまたADを増悪させ,複雑化させる要因となる。

診断

  • 臨床的評価

  • ときにプリックテスト,放射性アレルゲン吸着試験(RAST),またはパッチテストによるアレルギーの誘因の検査

アトピー性皮膚炎は,しばしば他の皮膚疾患(例,脂漏性皮膚炎接触皮膚炎貨幣状湿疹乾癬)との鑑別が困難であるが,アトピーの家族歴と病変の分布が鑑別に役立つ。以下の分布パターンが鑑別に役立つことがある:

  • 乾癬は通常,屈側よりも伸側に分布し,手指の爪を侵すことがあり,より厚く白い(雲母状)鱗屑を伴う。

  • 脂漏性皮膚炎は顔面(例,鼻唇溝,眉毛,眉間部,頭皮)に好発する。

  • 貨幣状湿疹は屈側に生じず,苔癬化はまれである。

他の皮膚疾患が発生する可能性もあるため,続発する皮膚症状が全てADに由来するというわけではない。

パール&ピットフォール

  • アトピー性皮膚炎の手がかりとしては,屈側に生じる病変の分布と,アレルギー性鼻炎,喘息,またはアレルギーの既往歴または家族歴がある。

  • アトピー性皮膚炎では,細菌の重複感染がよくみられる合併症であり,これは疱疹性湿疹と混同されやすい。

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アトピー性皮膚炎の診断につながる臨床的特徴*

必須の特徴

そう痒

皮膚炎(湿疹)―急性,亜急性,または慢性で以下がみられる:

  • 典型的な年齢別のパターン

  • 慢性または再燃歴

重要な特徴

発症年齢が低い

アトピー性疾患の既往歴または家族歴

IgE高値

乾皮症

付随してみられる特徴(本疾患の診断の参考になる)

白色皮膚描記症

白色粃糠疹

掌紋増強

青白い顔

眼窩下縁の皮膚の溝

乳頭湿疹

Perifollicular accentuation

苔癬化

痒疹病変

遅発性の退色反応

特定の局所的変化(例,口囲の変化,耳周囲の変化)

乳児および小児では顔面,頸部,および伸側面;年齢層を問わず屈側面;鼠径部および腋窩は侵されない。

ADは確定的な臨床検査が存在しない。それでも,ADを誘発する環境アレルゲンについては,皮膚テスト,アレルゲン特異的IgE値の測定,またはその両方により同定できる。黄色ブドウ球菌(S. aureus)の培養については,AD患者の75%以上で皮膚病変に黄色ブドウ球菌がみられることから(患者以外では25%未満),ルーチンには行われていない。ただし,抗菌薬耐性の可能性がある反応のない再発感染例では,鼻腔および間擦部の検体で培養を行う。

予後

小児のアトピー性皮膚炎は5歳までに軽快する場合が多いが,青年期を通じて,さらには成人期まで増悪が続くこともよくある。女児および重症患者,発症年齢の低い患者,家族歴のある患者,およびアレルギー性鼻炎または喘息を合併している患者では,疾患の経過が長引く可能性が高い。たとえこのような患者でも,ADは成人期になるまでに消失するか,有意に軽減することが多い。小児患者は目に見え,ときに生活に支障を来す皮膚疾患を抱えながら人格形成期を過ごす過程で数多くの困難に直面するため,ADは長期に及ぶ心理的後遺症を残す可能性がある。

治療

  • 支持療法(例,保湿剤とドレッシング,そう痒に対する抗ヒスタミン薬)

  • 誘発因子の回避

  • コルチコステロイドの外用

  • 免疫調節薬の外用

  • 重症例では免疫抑制薬の全身投与

  • ときに紫外線療法

  • 重複感染の治療

治療は通常,患者の自宅で行えるが,剥脱性皮膚炎蜂窩織炎,または疱疹性湿疹を来した患者では入院が必要になることもある。

(American Academy of Dermatology Associationの Guidelines of Care for Atopic Dermatitisも参照のこと。)

支持療法

スキンケアによる対策として以下の方法がある:

  • 水による加湿

  • 中性から低pHの低アレルギー性で香料を含有しない,石鹸ではない洗浄剤の使用

  • 希釈した漂白剤またはコロイド状オートミールによる入浴

  • 保湿剤(例,白色ワセリンの軟膏またはクリーム)の塗布

  • ウェットラップ療法

入浴は1日1回までにすべきである。希釈した漂白剤での週2回の入浴とムピロシンの塗布を行うことで,黄色ブドウ球菌(S. aureus)の定着を減らし,ADの重症度を低減することが可能である(1)。コロイド状オートミールはそう痒をいくらか和らげる。タオルで乾燥させる場合は,皮膚を擦るのではなく,水分を吸い取るか,軽く叩くようにすべきである。

入浴直後に保湿剤(白色ワセリンや親水ワセリンなどの軟膏[ラノリンに対するアレルギーがない場合のみ]または粘稠なクリームなど)を塗布することが,皮膚の水分を保ち,そう痒を抑えるのに役立つ。

重度かつ難治性の厚い病変には,ウェットラップ療法(湿った状態の皮膚にコルチコステロイドまたは免疫調節薬の外用薬を塗布してからラップで覆うことで湿潤した層を作り,さらにその上に乾燥した層を作る)が役立つ。

抗ヒスタミン薬は,その鎮静作用によりそう痒の軽減に役立つ。抗ヒスタミン薬の選択肢としては,ヒドロキシジン25mg,経口,1日3回または1日4回投与(小児では,0.5mg/kgを6時間毎,または2mg/kgを就寝時に単回投与)やジフェンヒドラミン25~50mg,経口,就寝時などがある。鎮静作用の弱いH1受容体拮抗薬(ロラタジン10mg,経口,1日1回,フェキソフェナジン60mg,経口,1日2回または180mg,経口,1日1回,セチリジン5~10mg,経口,1日1回など)が有用となりうるが,その効力はまだ確立されていない。ドキセピン(H1および H2受容体拮抗活性も有する三環系抗うつ薬)25~50mg,経口,就寝時も有用となりうるが,12歳未満の小児では推奨されない。掻破による表皮剥離や二次感染を最小限にとどめるため,手指の爪は短く切っておくべきである。

治療に関する参考文献

  • Huang JT, Abrams M, Tlougan B, et al: Treatment of Staphylococcus aureus colonization in atopic dermatitis decreases disease severity. Pediatrics 123(5):e808-814, 2009. doi: 10.1542/peds.2008-2217.

誘発因子の回避

家庭内の抗原は以下の方法によりコントロール可能である:

  • 合成繊維の枕および不透過性のマットレスカバーの使用

  • 熱湯による寝具の洗浄

  • 布張り家具,ぬいぐるみ,カーペットをなくし,ペットを飼わない(チリダニと動物のフケを減らすため)

  • 寝室および他の頻繁に過ごす居住区域でのHEPA(high-efficiency particulate air)フィルター付きエアサーキュレーターの使用

  • 地階や通気が悪く湿気の多いその他の部屋での除湿機の使用(カビを減らすため)

精神的ストレスの軽減は有用であるが,しばしば困難である。食物アレルゲンへの曝露を除去するために食習慣を大幅に変えることは不要であり,おそらく無効であり,食物過敏症が小児期を過ぎても持続することはまれである。

コルチコステロイド

治療の中心はコルチコステロイドの外用である。軽症から中等症の患者の大半では,クリームまたは軟膏の1日2回塗布が効果的である。全ての皮膚にコルチコステロイドを塗布した後,保湿剤を大量に塗布する。コルチコステロイドによる全身療法については,しばしば重度の反跳現象がみられ,外用療法の方が安全であるため,可能な限り避けるべきである。外用も長期間続けると,皮膚の菲薄化および皮膚線条につながる可能性がある。乳児に対して長期かつ広範に強力なコルチコステロイドクリームまたは軟膏を使用することは,副腎抑制の合併を招くことがあるため避けるべきである。

その他の治療法

外用薬のタクロリムスおよびピメクロリムスは,ADに効果的なT細胞阻害薬である。これらの薬剤は,軽度から中等度のADに使用できるほか,皮膚萎縮,皮膚線条の形成,副腎抑制などのコルチコステロイドの有害作用が懸念される場合に使用できる。タクロリムスまたはピメクロリムスの軟膏またはクリームを1日2回塗布する。塗布後の灼熱感またはチクチク感は通常一過性であり,数日後には軽減する。紅潮の頻度はあまり高くない。

角層およびバリア機能の修復がADの緩和に役立つことがある。ADに侵された皮膚はセラミドが欠乏しており,それにより経表皮水分蒸散量が増加していることが研究により示されている。セラミドを含有するいくつかの皮膚軟化製剤がADのコントロールに有用と考えられている。

光線療法は広範なADに有用である。自然の日光を浴びることで,小児を含む多くの患者で病勢が緩和される。あるいは,紫外線A波(UVA)または紫外線B波(UVB)を用いた治療法も用いられる。ナローバンドUVB療法は,従来のブロードバンドUVB療法より効果的であることが証明されつつあり,小児でも効果的である。ソラレンとUVAの併用療法(PUVA療法― 乾癬 : 光線療法)は,病変が広範囲に及んだ難治性ADのみに用いられる。有害作用として日光障害がある(例,PUVA黒子,非黒色腫皮膚癌[nonmelanoma skin cancer])。このような有害作用のため,小児または若年成人では光線療法(特にPUVA療法)は可能であれば避けられる。

少なくとも一部の患者で効果的な全身性の免疫調節薬としては,シクロスポリン,インターフェロンγ,ミコフェノール酸,メトトレキサート,アザチオプリンなどがある。いずれの薬剤もT細胞の機能を抑制または阻害して,抗炎症効果を発揮する。これらの薬剤は,外用療法および光線療法で軽減しなかった病変が広範であるか,難治性であるか,生活に支障を来しているADで適応となる。

ブドウ球菌に有効な抗菌薬は,外用薬(例,ムピロシン,フシジン酸[塗布は2週間以内])と経口薬(例,ジクロキサシリン,セファレキシン,エリスロマイシン[いずれも250mg,1日4回投与を1~2週間])の両方があり,膿痂疹毛包炎せつ腫症など皮膚の細菌性重複感染の治療に使用する。黄色ブドウ球菌(S. aureus)の保菌量とADの重症度を低下させるためにムピロシンの点鼻薬も使用できる。

疱疹性湿疹はアシクロビルで治療する。乳児では10~20mg/kgを8時間毎に静注し,軽症の児童および成人では200mg,経口,1日5回で投与することができる。眼病変は眼科救急疾患とみなされており,眼病変が疑われる場合は,眼科医へのコンサルテーションを行うべきである。

要点

  • アトピー性皮膚炎(AD)は特に先進国で多くみられ,小児の15~30%および成人の2~10%が罹患する。

  • 一般的な誘因として,空中アレルゲン(例,花粉,ほこり),汗,刺激の強い石鹸,粗い繊維,香料などがある。

  • よくみられる所見として,肘窩,膝窩,眼瞼,頸部,手関節のそう痒,紅斑,紅色局面,苔癬化などがある。

  • 重複感染(特に黄色ブドウ球菌[S. aureus]感染症と疱疹性湿疹)がよくみられる。

  • ADは成人期までに改善する場合が多い。

  • 第1選択の治療法としては,保湿剤,コルチコステロイドの外用,そう痒に対する必要に応じた抗ヒスタミン薬などがある。

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