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男性型多毛症

執筆者:

Wendy S. Levinbook

, MD, Hartford Dermatology Associates

最終査読/改訂年月 2016年 6月
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男性型多毛症(hirsutism)は,女性において男性に典型的な発毛パターン(例,口髭,顎髭,胸毛,肩,下腹部,背部,大腿内側)で太い毛や濃い毛が過剰に成長する状態である。過剰とみなされる発毛量は,民族的背景や文化的な解釈によって異なってくる。

多毛症(hypertrichosis)は,独立した別の病態である。これは単に,体のあらゆる部分で毛髪の成長量が増加する状態である。多毛症は,全身性の場合と限局性の場合がある。

男性では,体毛量にかなり大きな個人差があり,非常に毛深い者もいるが,それを理由に医療機関を受診することはまれである。

病態生理

毛髪の成長はアンドロゲン(例, テストステロン,デヒドロエピアンドロステロン硫酸[DHEAS],ジヒドロテストステロン[DHT]),および エストロゲンのバランスに依存する。アンドロゲンは太く濃い毛の成長を促進するのに対し, エストロゲン は毛髪の成長を緩徐にしたり,細い毛または薄い毛となるように修飾したりする。

男性型多毛症は,血中アンドロゲン濃度の上昇またはアンドロゲンに対する標的臓器の反応性亢進によって発生する。 テストステロンは陰部および腋窩の毛髪の成長を刺激する。ジヒドロテストステロンは顎髭の成長と頭髪の脱落を促進する。

男性型多毛症がアンドロゲン濃度の上昇により引き起こされる場合は,男性化を合併することが多いが,これは無月経,筋肉量の増加,声の低音化,ざ瘡,アンドロゲン性脱毛症,および陰核肥大として現れることがある。

病因

男性型多毛症には,いくつかの原因がある( 男性型多毛症の原因)。全体として最も頻度の高い原因は以下のものである:

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男性型多毛症の原因

原因

副腎疾患

副腎腫瘍

先天性または遅発性副腎過形成

アンドロゲン薬

タンパク同化ステロイド(ダナゾールを含む)

経口避妊薬(高プロゲステロン型)

異所性ホルモン産生

肺癌および肺カルチノイド腫瘍(異所性 ACTH分泌)

絨毛癌(β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン)

家族性男性型多毛症

家族性にみられる正常濃度の血中アンドロゲンに対する標的臓器の反応性亢進に続発することがある

卵巣疾患

卵巣の卵胞膜細胞増殖症

卵巣腫瘍

PCOS

下垂体疾患

先端巨大症

クッシング病

薬剤

プロラクチン分泌性下垂体腺腫

アンドロゲン過剰

男性型多毛症は,典型的にはアンドロゲン産生の増加(例,卵巣または副腎疾患によるもの)または末梢での5α還元酵素による テストステロンからDHTへの転換の増加によってアンドロゲン濃度が異常に高くなる結果として生じる。高インスリン血症や高プロラクチン血症などの様々な疾患あるいはアンドロゲン過剰それ自体により性ホルモン結合グロブリンの産生が低下する結果として,遊離アンドロゲン濃度が上昇する場合もある。しかしながら,毛包のアンドロゲン感受性には個人差があることから,男性型多毛症の重症度はアンドロゲンの血中濃度と相関しない。

アンドロゲン過剰なし

アンドロゲン過剰を伴わない男性型多毛症は,正常な血漿中濃度のアンドロゲンに対する標的臓器の反応性亢進の結果として発生する場合があり,また地中海,南アジア,または中東に祖先をもつ人々では家族性の現象として生じる場合がある。妊娠中および閉経期の男性型多毛症は,アンドロゲン濃度の一時的かつ生理的な変動に起因する。

多毛症(hypertrichosis)は,アンドロゲンに依存することなく毛髪が成長する病態であり,通常は薬剤,全身性疾患( 多毛症の原因),または腫瘍随伴症候群によって引き起こされる。また,先天性多毛症と呼ばれる,まれな家族性疾患として発生することもある。

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多毛症の原因

原因

疾患

肢端疼痛症

食欲不振,過食症,低栄養

中枢神経系疾患

皮膚筋炎

家族性

進行している場合のHIV感染症

腫瘍随伴症候群

ポルフィリン症

脛骨前粘液水腫

反復される皮膚外傷,摩擦,および/または炎症(例,ギプス除去後)

全身性疾患

外傷性脳損傷

低栄養

アンドロゲン以外の薬剤

アセタゾラミド

ベノキサプロフェン

ビマトプロストおよびラタノプロスト(点眼用のプロスタグランジン製剤)

セツキシマブ

コルチコステロイド(全身または外用)

シクロスポリン

ジアゾキシド

フェノテロール

ヘキサクロロベンゼン

インターフェロンα

ミノキシジル

ペニシラミン

フェニトイン

プロスタグランジンE1

ソラレン

ストレプトマイシン

評価

病歴

現病歴の聴取では,過剰な毛髪の成長の範囲,部位,および急性度と発症時年齢を対象に含めるべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,男性化の症状がないか調べ,月経歴と妊孕性に関係する病歴を検討すべきである。多尿(糖尿病),過食と自己誘発性嘔吐(摂食障害),ならびに体重減少および発熱(癌)など,原因疾患の症状を検索すべきである。

既往歴の聴取では,内分泌疾患,副腎または卵巣の病態,各種の癌など,既知の原因疾患について特に評価すべきである。

家族歴の聴取では,家族内での過剰な毛髪の成長について尋ねるべきである。薬歴の聴取では,あらゆる処方薬について検討するとともに,タンパク同化ステロイドを隠れて使用していないか具体的に質問すべきである。

身体診察

太い毛や濃い毛の過剰な成長の有無について,顔面,胸部,下腹部,背部,殿部,大腿内側など複数の部位で評価すべきである。以下に示す男性化の徴候がないか調べるべきである:

全般的な身体診察では潜在的な原因疾患の徴候に注意すべきである。

  • 全身の体型を評価して,脂肪の分布を検討すべきである(特に丸い顔と後頸部の付け根の脂肪の蓄積)。

  • 皮膚を診察して,腋窩,頸部,および乳房下部のビロード状の黒い色素沈着(黒色表皮腫),上記の男性化徴候,ならびに皮膚線条がないか調べるべきである。

  • 眼を診察して外眼筋運動を調べ,視野の評価を行うべきである。

  • 乳房を診察して,乳汁漏出症がないか調べるべきである。

  • 腹部を診察して(内診を含む),腫瘤がないか調べるべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 男性化

  • 過剰な毛髪の突然の出現と急速な成長

  • 骨盤内または腹部の腫瘤

所見の解釈

タンパク同化ステロイドやその他の原因薬剤( 男性型多毛症の原因および 多毛症の原因)の使用後に他の点では健康な女性で過剰な毛髪の成長が始まった場合は,その薬剤が原因である可能性が高い。ときに症状と徴候から診断が示唆されることもある。( 男性型多毛症の所見の解釈)。

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男性型多毛症の所見の解釈

所見

考えられる原因

突然発症した男性型多毛症,側腹部または骨盤内の腫瘤

副腎癌または卵巣癌

黒色表皮腫

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)または高インスリン血症を来すその他の病態

中心性肥満,満月様顔貌,皮膚線条,高血圧,近位筋の萎縮および筋力低下

クッシング症候群

乳汁漏出症,無月経(視野欠損を伴う場合と伴わない場合がある)

高プロラクチン血症を引き起こす下垂体疾患

思春期以降に始まった不規則な月経または無月経,ざ瘡,肥満,男性型多毛症

PCOS

低栄養の徴候,歯列不良(特に青年期の女性)

摂食障害

体重減少,発熱

潜在癌による腫瘍随伴症候群

男性型多毛症または多毛症の突然の発症は,癌の前兆である場合がある。男性型多毛症の突然の発症は,副腎,卵巣,または下垂体腫瘍が原因である場合や,これら以外の腫瘍からの異所性ホルモン産生に起因している場合がある。毳毛性多毛(malignant down)は,短期間のうちに全身に細い毛髪の成長がみられる病態であるが,軽症型では顔面に限局する場合もある。

検査

他の疾患の徴候を認めない男性では,診断のための検査は不要である。

女性では,以下を含むホルモンの血清中濃度を測定する臨床検査を行うべきである:

  • 遊離および総 テストステロン

  • DHEAS

  • 卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)

臨床所見によっては,アンドロステンジオン値,プロラクチン値,またはその両方の測定を行ってもよい。

テストステロンが高値でDHEASは正常値の場合は,副腎ではなく,卵巣で過剰なアンドロゲンが産生されていることが示唆される。 テストステロンが高値でDHEASは中等度の高値となる場合は,男性型多毛症が副腎由来であることが示唆される。

多嚢胞性卵巣症候群の女性では,しばしばLH値の上昇とFSH値の低下がみられ,したがってLH/FSH比が上昇する(多嚢胞性卵巣症候群では3を超えるのが一般的である)。

画像検査

骨盤内の癌と副腎癌を除外するために骨盤内超音波検査,CT,またはその両方を施行す る べきであり,とりわけ骨盤内腫瘤が疑われる場合,総♦テストステロン♦値が150ng/ dL(5.2 nmol/L)(閉経後女性では100ng/dL[3.5 nmol/L])を超える場合,DHEAS値が700μ g/dL(19μmol/L)(閉経後女性では400μg/dL[10.8 μmol/L])を超える場合は特に重 要 である。>しかしながら,DHEAS値が上昇している患者の大部分では,副腎癌ではなく,副腎過形成が生じている。

画像検査でクッシング症候群または副腎腫瘤の徴候を認めた患者については,尿中 コルチゾール 値を24時間測定するべきである。

治療

  • 基礎疾患の治療

  • 毛髪除去

  • ホルモン療法

原因薬剤の中止または変更を含め,基礎疾患の治療を行うべきである。男性型多毛症自体に対する治療は,患者が過剰な毛髪を美容上好ましくないと考える場合にのみ必要となる。

多毛症などのアンドロゲン依存性ではない過剰な毛髪の成長は,主に物理的な脱毛法によって治療する。アンドロゲン依存性の男性型多毛症がみられる患者には,脱毛と抗アンドロゲン療法の併用が必要である。

毛髪除去

いくつかの手法がある。

除毛(depilation)は,皮膚表面から毛髪を除去するもので,剃毛や一般用医薬品の除毛クリーム(硫酸バリウムおよびチオグリコール酸カルシウムを含有するものなど)がある。

脱毛(epilation)は,完全な毛髪を毛根ごと除去するもので,機械的手段(例,ピンセット,毛抜き,ワックス)または家庭用脱毛機器により行うことができる。電気分解,熱分解,レーザー脱毛などの永久脱毛法では,より長期的な毛髪除去が得られるが,しばしば複数回の治療が必要となる。

男性型多毛症が過度ではない場合は,毛髪除去の代替法として,毛髪の脱色が安価でかつ効果が高い。脱色により毛髪の色が薄くなり,目立たなくなる。市販の毛髪脱色剤にはいくつかの種類があるが,大半は有効成分として過酸化水素が使用されている。

eflornithine外用薬の1日2回塗布により,毛髪の成長速度が遅くなり,長期使用すれば毛髪除去治療の施行間隔を延長できる可能性がある。

ホルモン療法

アンドロゲン過剰により生じる男性型多毛症は,過剰なアンドロゲンの原因を永続的に除去できることがまれであるため,通常は長期の治療が必要になる。ホルモン療法としては以下のものがある:

  • 経口避妊薬

  • 抗アンドロゲン薬

  • ときにその他の薬剤

卵巣アンドロゲン過剰により引き起こされる男性型多毛症に対しては,しばしば標準用量の経口避妊薬が最初の治療となる。経口避妊薬は卵巣からのアンドロゲン分泌を減少させ,性ホルモン結合グロブリンを増加させることによって,遊離 テストステロン値を低下させる。

抗アンドロゲン療法も用いられ,フィナステリド(5mg,経口,1日1回),スピロノラクトン(25~100mg,経口,1日2回),フルタミド(125mg,経口,1日1回または1日2回)などが使用できる。これらの薬剤は男子胎児に女性化を引き起こすことがあるため,避妊を行わない限り,妊娠可能年齢の女性では禁忌である。

メトホルミンなどの インスリン抵抗性改善薬は, インスリン抵抗性を低下させることにより, テストステロン値の低下を引き起こす。しかしながら,この種の薬剤は他の抗アンドロゲン薬ほど効果的ではない。副腎でのアンドロゲン産生を抑制するために必要な場合は,コルチコステロイドが使用される。重症型の卵巣アンドロゲン過剰には,ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(例,酢酸リュープロレリン,ナファレリン,triptorelin)を婦人科医または内分泌医の指示の下で使用することができる。

要点

  • 男性型多毛症は家族性の場合があり,毛髪の成長の程度には民族差がある。

  • 男性型多毛症の原因として最も頻度が高いものは,多嚢胞性卵巣症候群である。

  • 男性化は,さらなる評価を要するアンドロゲン性の疾患を示唆する。

  • 男性型または無性毛型多毛症の突然の発症は,癌を示唆している場合がある。

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