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自由生活性アメーバ

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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自由生活性アメーバは,土壌または水中で独立して生息する原虫であり,ヒトまたは動物の宿主を必要としない。腸管感染症の一般的な原因で寄生性アメーバである赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)とは対照的に,疾患の原因となることはまれである(アメーバ症)。病原性の自由生活性アメーバは,Naegleria属,Acanthamoeba属,Balamuthia属,Sappinia属のいずれかに含まれる。

以下の3つの主要な症候群がみられる:

  • 原発性アメーバ性髄膜脳炎

  • 肉芽腫性アメーバ性脳炎

  • アメーバ性角膜炎

Acanthamoeba属およびBalamuthia属原虫は,易感染者では皮膚病変または播種性疾患も引き起こす可能性があり,またAcanthamoeba属原虫は副鼻腔または肺の感染症も引き起こしうる。

原発性アメーバ性髄膜脳炎

原発性アメーバ性髄膜脳炎は,一般に死に至る急性中枢神経系感染症であり,Naegleria fowleriによって引き起こされる。

Naegleria fowleriは世界中の暖かい淡水に生息する。汚染された水中での水泳により鼻粘膜が原虫に曝露され,嗅上皮および篩板を介して原虫が中枢神経系に侵入する。ほとんどの患者は健常な小児または若年成人である。

症状と徴候

原発性アメーバ性髄膜脳炎の症状は曝露から1~2週間で症状が始まり,ときに嗅覚および味覚が変化する。頭痛,髄膜症,および精神状態の変化を伴う劇症髄膜脳炎が発症し,通常は脳ヘルニアから10日以内に死に至る。生存した患者はごく少数である。

診断

  • 髄液検査

原発性アメーバ性髄膜脳炎の診断は,淡水中での水泳歴から疑われるが,CTおよびルーチンの髄液検査は他の病因を除外するために必要ではあるが,特異度が低いため,診断の確定は困難である。

髄液の直接鏡検標本を作製すべきであり,これにより運動性を示すアメーバの栄養型を証明できることがある(栄養型アメーバはギムザ染色では見えるが,グラム染色では破壊される)。

髄液および/または脳生検検体での免疫組織化学検査,アメーバ培養,およびPCR検査は,基準となる検査施設で実施できる。

治療

  • 多様な治療レジメン

  • 複数の薬剤(miltefosine + 抗真菌薬および抗菌薬など)

最適な治療法は不明である。

妥当なレジメンの1つには抗リーシュマニア薬であるmiltefosineが含まれ,この薬剤は肉芽腫性アメーバ性脳炎の治療に使用されて治療を収めている。miltefosineはコンサルテーションを通じてCDCから入手可能である(CDC information on Naegleriaを参照のこと)。

Naegleria属原虫に対する併用治療レジメンに使用される他の薬剤としては,以下のものがある:

  • アムホテリシンB

  • リファンピシン

  • アゾール系薬剤(フルコナゾール,ボリコナゾール,またはケトコナゾール)

  • アジスロマイシン

痙攣発作および脳浮腫をコントロールするために,しばしば抗てんかん薬およびデキサメタゾンが必要になる。

要点

  • 原発性アメーバ性髄膜脳炎は通常は死に至る。

  • 汚染された淡水中で水泳により感染が生じるが,Naegleria fowleriは嗅上皮と篩板を介して中枢神経系に侵入する。

  • 診断検査には,髄液標本の直接鏡検およびギムザ染色などがある。

  • 適切な抗微生物薬で治療するほか,必要であれば,痙攣発作および脳浮腫を抗てんかん薬およびデキサメタゾンで治療する。

肉芽腫性アメーバ性脳炎

肉芽腫性アメーバ性脳炎は,Balamuthia mandrillarisまたは(易感染性宿主もしくは衰弱した宿主では)Acanthamoeba属原虫によって引き起こされ,一般に死に至る亜急性中枢神経系感染症である。

Acanthamoeba属原虫とBalamuthia mandrillarisは世界中の水中,土壌中,塵埃中に存在する。ヒトへの曝露はよくみられるが,感染はまれである。Acanthamoebaの中枢神経系感染はほとんどの場合,易感染性患者かそうでなければ衰弱した患者でしかみられないが,B. mandrillarisは正常宿主にも感染することがある。Sappinia pedataは,テキサス州におけるアメーバ性脳炎の1症例で関与が確認された。

Acanthamoeba属原虫の生活環は,シストと栄養型(感染型)の2つの段階のみで構成される。栄養型は,除菌に対する抵抗性を付与する二重壁をもったシストを形成する。侵入門戸は皮膚または下気道と考えられ,その後中枢神経系への血行性播種が起こる。感染した患者では,組織内にシストと栄養型が発見されることがある。

症状

潜行性に発症し,しばしば局所的な神経症候を呈する。精神状態の変化,痙攣発作,および頭痛がよくみられる。

Acanthamoeba属およびB. mandrillarisは皮膚病変を引き起こすこともある;まず潰瘍性の皮膚病変が出現し,続いて神経系の症候がみられることがある。AIDS患者の少数では,播種性アカントアメーバ感染症[disseminated Acanthamoeba infection]により皮膚だけが侵される。

生存率は非常に低く,通常は発症後7~120日で死に至る。

診断

  • 造影CTと単純MRI

  • 髄液検査

  • 皮膚病変の生検

肉芽腫性アメーバ性脳炎の診断はしばしば死後に下される。

アカントアメーバ( Acanthamoeba )感染症の診断

アカントアメーバ(Acanthamoeba)感染症の患者では,造影CTおよび単純MRI上で,側頭葉および頭頂葉に好発し,リング状に造影される単一または複数の占拠性病変を認めることがある。髄液中では,白血球数(主にリンパ球)は増加するものの,栄養型を観察できることはまれである。これらの検査は,他の原因を除外するのに役立つが,通常は診断を確定することはできない。

目に見える皮膚病変にはアメーバが存在する場合が多いため,生検を行うべきであり,アメーバが検出されれば,培養して薬剤感受性試験を行うことがある。脳生検がしばしば陽性となる。

基準となる検査施設でPCR法が実施できる。

B. mandrillaris 感染症の診断

B. mandrillaris感染症の患者では,CTおよびMRIにより,典型的にはリング状に造影される節性病変が複数認められる。病変内の出血は,画像上重要な手がかりである。

治療

  • 複数の薬剤の併用(通常はmiltefosineを含む)

  • CDCへのコンサルテーション

アカントアメーバ(Acanthamoeba)脳炎に対する至適な治療法は不明である。典型的には複数の薬剤(6つ以上のことが多い)が併用される。miltefosineを含むレジメンにより治療された患者は少ないが,miltefosineにより生存期間が延長すると考えられる。miltefosineはCDCから直接入手できる。

アカントアメーバ(Acanthamoeba)脳炎の治療で併用される他の薬剤としては,ペンタミジン,スルファジアジンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾール,フルシトシン,アゾール系薬剤(フルコナゾール,イトラコナゾール,またはボリコナゾール),リファンピシンおよびアムホテリシンBなどがある。

B. mandrillaris脳炎には,miltefosineと他の薬剤の併用(フルシトシン,ペンタミジン,フルコナゾール,スルファジアジンなど) + アジスロマイシンまたはクラリスロマイシンの一方 + 外科的切除が行われてきた。

Sappinia pedata脳炎の1例では,アジスロマイシン,ペンタミジン,イトラコナゾール,およびフルシトシンと中枢神経系病変の外科的切除の併用で治療が成功した。このレジメンへのmiltefosineの追加を考慮してもよい。

アメーバ性脳炎については,全例で直ちにCDCに相談することが推奨される(CDC Emergency Operations Center[770-488-7100]に電話する)。

Acanthamoeba属原虫または B. mandrillarisにより引き起こされる皮膚感染症は,通常は同じ薬剤と外科的デブリドマンの併用により治療する。

要点

  • 肉芽腫性アメーバ性脳炎は,まれであるが通常は致死的な中枢神経系感染症である。

  • アカントアメーバ(Acanthamoeba)脳炎はほとんどの場合,易感染性患者かそうでなければ衰弱した患者でしかみられないが,B. mandrillarisは正常宿主に感染することがある。

  • 造影CT,MRI,および髄液検査を行って他の原因を除外するとともに,皮膚病変があれば生検を行って,アメーバの有無を確認する。

  • 至適な治療法についてCDCに相談する。

  • miltefosine + その他の薬剤(例,ペンタミジン,スルファジアジン,フルシトシン,アゾール系薬剤)により治療する。

アメーバ性角膜炎

アメーバ性角膜炎は,Acanthamoeba属原虫による角膜の感染症であり,典型的にはコンタクトレンズ使用者に発生する。

Acanthamoeba属原虫は,正常宿主では慢性かつ進行性の破壊的な角膜炎を引き起こす。主な危険因子(全症例の85%)はコンタクトレンズの使用であり,特に水泳中にレンズを着用したり,滅菌されていないレンズ洗浄液を使用したりする場合に多い。角膜上皮剥離後に感染することがある。

Acanthamoeba属原虫は世界中の水中,土壌中,塵埃中に存在する。Acanthamoeba属原虫の生活環は,シストと栄養型(感染型)の2つの段階のみで構成される。栄養型は,除菌に対する抵抗性を付与する二重壁をもったシストを形成する。どちらの形態も様々な経路(例,眼,鼻粘膜,皮膚の損傷部)で体内に侵入できる。Acanthamoeba属原虫が眼に入ると,重度の角膜炎を引き起こす。感染した患者では,組織内にシストと栄養型が発見されることがある。

症状と徴候

病変は典型的に激しく痛み,異物感を伴う。初期には,病変は単純ヘルペス角膜炎に類似する樹枝状の外観を呈する。その後角膜実質に斑状の浸潤が生じ,ときとして特徴的な輪状病変が現れる。通常は前部ぶどう膜炎も存在する。視力が低下する。

診断

  • 角膜擦過物の検査および培養

診断および治療では,眼科医へのコンサルテーションが重要である。

アメーバ性角膜炎の診断は,ギムザ染色またはトリクローム染色した角膜擦過物の観察と特殊培地上での培養により確定される。ヘルペスの疑いがある場合はウイルス培養を行う。

治療

  • 角膜デブリドマン

  • クロルヘキシジン,ポリヘキサメチレンビグアナイド,またはこれらの両方の点眼薬

  • 重症例では,イトラコナゾールまたはケトコナゾールの全身投与

初期の表在性感染症は,治療に対する反応がより良好である。生活環の内でアメーバがシスト化している時期が最も問題となるようである。

角膜上皮の病変を切除して集中的な薬物療法を適用する。最初に選択すべきものは以下の通りである:

  • 0.02%クロルヘキシジンの点眼薬

  • 0.02%ポリヘキサメチレンビグアナイドの点眼薬

  • 両剤

最初の3日間は,1~2時間毎に薬剤を投与する。補助的に使用されるその他の点眼薬として,プロパミジンやジイセチオン酸ヘキサミジンなどがある。

点眼薬と併用してイトラコナゾールまたはケトコナゾールの全身投与が行われており,特に前部ぶどう膜炎または強膜病変を有する患者に用いられる。ケトコナゾールの全身投与は,重度の肝障害や副腎の異常につながる可能性があるため,他の抗真菌薬が利用できないか患者が耐えられない場合にのみ使用すべきである(FDA Drug Safety Communication: Ketoconazoleを参照のこと)。

早期発見と早期治療がなされれば,ほとんどの症例で角膜移植による治療の必要はなくなるが,薬物療法が失敗に終わった場合には,角膜移植は依然として選択肢の1つとなる。最初の1カ月間は集中的治療が必要である;臨床反応に応じて漸減中止するが,しばしば6~12カ月継続する。時期尚早に治療を止めると再発することがよくある。

予防

コンタクトレンズ液は清潔に保つべきである。手作りの滅菌されていないコンタクトレンズ液は使用すべきではない。水泳またはシャワー中にコンタクトレンズを着用することは避けるべきである。

要点

  • Acanthamoeba属原虫は,他の点では正常な宿主(主にコンタクトレンズ使用者)に慢性かつ進行性の破壊的な角膜炎を引き起こす。

  • 管理について眼科医にコンサルテーションする。

  • 診断は,角膜擦過物のギムザまたはトリクローム染色下での観察,および特殊培地における培養による。

  • 単純ヘルペス角膜炎でも同様の病変が生じることがあり,その可能性がある場合は,ウイルス培養を行う。

  • 角膜病変のデブリドマンを行い,クロルヘキシジン,ポリヘキサメチレンビグアナイド,またはその両方の点眼により治療する。

  • 重症感染症はイトラコナゾールの全身投与により治療し,イトラコナゾールが無効であるか患者が耐えられない場合は,ケトコナゾールを考慮する。

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