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マラリア

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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マラリアはマラリア原虫(Plasmodium 属原虫)による感染症である。症状および徴候としては,発熱(周期熱のことがある),悪寒,発汗,溶血性貧血,脾腫などがある。診断は血液塗抹標本におけるマラリア原虫(Plasmodium属)の観察と迅速診断検査による。治療法と予防法は,種および薬剤感受性により異なるが,具体的にはアルテミシニン誘導体多剤併用療法(artemisinin-based combination therapy),アトバコンとプログアニルの固定配合剤や,クロロキン,キニーネ,またはメフロキンを含むレジメンなどがある。三日熱マラリア原虫(P. vivax)または卵形マラリア原虫(P. ovale)に感染した患者には,再発予防のためにプリマキンも投与する。

世界の人口の約半数に依然としてマラリアのリスクがある。マラリアは,アフリカ,インドおよび南アジアの周辺国,東南アジア,北朝鮮および韓国,メキシコ,中米,ハイチ,ドミニカ共和国,南米(アルゼンチン北部を含む),中東(トルコ,シリア,イラン,およびイラクを含む),ならびに中央アジアで流行している。CDCはマラリアの感染例がみられる具体的な国(Yellow Fever and Malaria Information, by Countryを参照のこと),マラリアの病型,耐性パターン,および推奨される予防法について情報提供を行っている(CDC: Malariaを参照のこと)。

2015年には,世界で推定2億1400万例のマラリア症例があり,438,000人が死亡したが,その大半がアフリカの5歳未満の小児である。500を超えるパートナー(流行国と様々な組織や機関)が参加したRoll Back Malaria Programが功を奏し,2000年から,マラリアによる死亡は60%超減少した。

マラリアはかつて米国で流行していた。現在,米国における年間発生例数は約1500例である。ほぼ全てが国外感染例であるが,少数は輸血に起因するほか,まれに現地の蚊が感染者の移民や帰国した旅行者を吸血して病気を伝播することもある。

病態生理

ヒトに感染するマラリア原虫(Plasmodium属)の種は以下の通りである:

  • 熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum

  • 三日熱マラリア原虫(P. vivax

  • 卵形マラリア原虫(P. ovale

  • 四日熱マラリア原虫(P. malariae

  • 二日熱マラリア( P. knowlesi)(まれ)

複数種のマラリア原虫(Plasmodium)属による同時感染はまれである。

また,ヒトでサルマラリアの報告があり,東南アジアでは,二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)が新たな病原体となっている。二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)が天然の中間宿主であるサルを介さずに,蚊によりヒトからヒトにどの程度伝播するのかについては現在研究中である。

生活環の基本的要素はマラリア原虫(Plasmodium)の全種に共通である( マラリア原虫( Plasmodium )の生活環)。伝播は,ハマダラカ(Anopheles属)の雌がマラリア感染者を吸血し,生殖母体を含む血液を摂取することで始まる。

続く1~2週間で,蚊の中の生殖母体が有性生殖し,感染性のスポロゾイトを産生する。蚊が別のヒトを吸血したときに,スポロゾイトが接種され,迅速に肝臓に達し,肝細胞に感染する。

原虫は肝細胞内で成熟して組織シゾントとなる。それぞれのシゾントが10,000~30,000のメロゾイトを産生し,1~3週間後に肝細胞が破裂するとメロゾイトが血流に放出される。それぞれのメロゾイトは赤血球に侵入して変態し,トロホゾイト(栄養型)となる。

トロホゾイトが発育すると,そのほとんどが赤血球シゾントとなり,シゾントはさらにメロゾイトを産生し,メロゾイトは48~72時間後に赤血球を破裂させて血漿中に放出される。これらのメロゾイトは直ちに新しい赤血球に侵入し,このサイクルを繰り返す。一部のトロホゾイトは生殖母体に発育し,それらがハマダラカ(Anopheles)に摂取される。生殖母体は蚊の腸内で有性生殖を行い,オーシストに発育し,感染性のスポロゾイトを放出し,これが唾液腺に移行する。

マラリア原虫( Plasmodium )の生活環

  • マラリア原虫の生活環は2種類の宿主を必要とする。マラリアに感染した雌のハマダラカ(Anopheles)が吸血時にヒト宿主にスポロゾイトを接種する。

  • スポロゾイトが肝細胞に感染する。

  • そこで,スポロゾイトはシゾントに成熟する。

  • シゾントが破裂し,メロゾイトを放出する。肝臓内でのこの最初の増殖は,赤血球外サイクル(exoerythrocytic cycle)と呼ばれる。

  • メロゾイトが赤血球に感染する。そこで,原虫は無性的に増殖する(赤血球内サイクル[erythrocytic cycle]と呼ばれる)。メロゾイトがリング期(ring-stage)のトロホゾイトに発育する。その後一部がシゾントに成熟する。

  • シゾントが破裂し,メロゾイトを放出する。

  • 一部のトロホゾイトが生殖母体に分化する。

  • ハマダラカ(Anopheles)が吸血時に雄(雄性生殖母体)および雌(雌性生殖母体)の生殖母体を摂取し,スポロゾイト形成サイクルが開始される。

  • 蚊の胃の内部で,雄性生殖母体が雌性生殖母体に入り込み,接合子を産生する。

  • 接合子は運動型となって伸長し,オーキネートに発育する。

  • オーキネートは蚊の中腸壁に侵入し,そこでオーシストに発育する。

  • オーシストが発育して破裂し,スポロゾイトを放出し,これが蚊の唾液腺に移行する。スポロゾイトが新たなヒト宿主に接種されることにより,マラリアの生活環が持続する。

マラリア原虫( <i>Plasmodium</i> )の生活環

三日熱マラリア原虫(P. vivax)および卵形マラリア原虫(P. ovale)(熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)または四日熱マラリア原虫(P. malariae)では異なる)では,組織シゾントが肝臓内でヒプノゾイトとして何年も持続する場合がある。卵形マラリア原虫(P. ovale)では症候性マラリアの発症から最長6年後に再発が認められており,その症例は,献血の7年前に曝露を受けた個人からの輸血により感染していた。これらの休眠型は,タイムカプセルのように機能して再発を引き起こし,大半の抗マラリア薬(典型的には血流中の原虫に作用する)で殺傷できないため,化学療法を複雑にする。

輸血または汚染された針の共用による感染伝播,あるいは先天的伝播の場合は,マラリアの生活環の前赤血球期(肝臓期)は迂回される。したがって,これらの伝播様式は潜伏感染または遅発性再発を引き起こさない。

メロゾイト放出時の赤血球の破裂は臨床症状との関連が認められる。重度の場合,溶血により貧血および黄疸が引き起こされ,これらの症状は脾臓内における感染赤血球の貪食により悪化する。貧血は熱帯熱マラリア(P. falciparum)または慢性の三日熱マラリア(P. vivax)で重度化することがあるが,四日熱マラリア(P. malariae)では軽度にとどまる傾向がある。

熱帯熱マラリア

他の病型のマラリアとは異なり,感染赤血球が血管内皮細胞に接着するため,熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は微小血管の閉塞を引き起こす。虚血を来すことがあり,結果として組織の低酸素症が特に脳,腎臓,肺,および消化管に生じる。その他に起こりうる合併症としては,低血糖や乳酸アシドーシスなどがある。

感染に対する抵抗性

西アフリカのほとんどの人々は,三日熱マラリア原虫(P. vivax)が赤血球に付着するために必要なDuffy血液型の赤血球を欠くことから,三日熱マラリア原虫(P. vivax)に対して完全な抵抗性を有する;多くのアフリカ系アメリカ人もこうした抵抗性を有する。赤血球内でのマラリア原虫(Plasmodium)の発育は,ヘモグロビンS,ヘモグロビンC,サラセミア,G6PD欠損症,または楕円赤血球症の患者において遅滞する。

感染の既往は部分免疫をもたらす。流行が激しい地域の住人がその地域を一旦離れると,獲得免疫は経時的に(数カ月~数年で)減弱し,戻ってきて再感染すると症候性のマラリアを発症することがある。

症状と徴候

通常の潜伏期間は以下の通りである:

  • 三日熱マラリア原虫(P. vivax)は12~17日間

  • 熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は9~14日間

  • 卵形マラリア原虫(P. ovale)は16~18日間

  • 四日熱マラリア原虫(P. malariae)は1カ月間(18~40日)またはそれ以上(年単位)

しかしながら,温帯気候に生息する三日熱マラリア原虫(P. vivax)株の中には,感染後数カ月から1年超にわたって臨床疾患を引き起こさないものもある。

全ての型のマラリアに共通する症候には以下のものがある:

  • 発熱および悪寒・振戦(マラリア発作[malarial paroxysm])

  • 貧血

  • 黄疸

  • 脾腫

  • 肝腫大

マラリア発作は,破裂した赤血球からのメロゾイトの放出と同時に起こる。古典的発作は,倦怠感,突然の悪寒および39~41℃に達する発熱,速くて弱い脈,多尿,頭痛,筋肉痛,ならびに悪心で始まる。2~6時間後に解熱して2~3時間にわたり多量の発汗があり,次に極度の疲労が生じる。感染症開始時の発熱はしばしば消耗性である。感染が成立すると,典型的にはマラリア発作が原虫種に応じて2~3日毎に発生するが,その間隔は厳密ではない。

通常,脾腫は臨床症状が現れて最初の1週目の終わりまでには触知可能となるが,熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)ではみられないこともある。腫大した脾臓は柔らかく,外傷性破裂を起こしやすい。免疫機能が発達するため,マラリア発作の再発に伴い脾腫は軽減する。多くの発作の後,脾臓は線維化して硬くなるか,患者によっては著しく腫大する(熱帯性脾腫[tropical splenomegaly])こともある。脾腫は通常肝腫大を併う。

熱帯熱マラリア原虫( P. falciparum )の感染でみられる臨床像

熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は微小血管に作用するため最も重度の疾患を引き起こす。治療しなければ致死的疾患を引き起こす可能性が高い唯一の種である;免疫のない患者は最初の症状出現から数日以内に死亡することがある。スパイク熱と随伴症状は,不規則なパターンで発生するのが一般的であるが,三日熱のパターン(48時間間隔で間欠的な発熱がみられる)で発生することもあり,このパターンは特に部分的な免疫をもつ流行地域の住民によくみられる。

脳マラリアの患者は,易刺激性から痙攣発作や昏睡まで様々な症状を呈する。急性呼吸窮迫症候群(ARDS),下痢,黄疸,心窩部圧痛,網膜出血,冷マラリア(algid malaria―ショック様症候群),および重度の血小板減少も起こりうる。

体液量減少,原虫が寄生した赤血球による血管閉塞,または免疫複合体の沈着から腎機能不全が生じることがある。血管内溶血に起因するヘモグロビン血症およびヘモグロビン尿症が進行すると,黒水熱(尿が暗色になることに基づいて付けられた名称)を来すことがあり,これは自発的に生じることもあれば,キニーネによる治療後に生じることもある。

低血糖症がよくみられ,キニーネによる治療およびそれに伴う高インスリン血症により悪化することがある。

胎盤に病変が及ぶと,低出生体重,自然流産,死産,または先天性感染を来しうる。

三日熱マラリア原虫( P. vivax ),卵形マラリア原虫( P.ovale ),および四日熱マラリア原虫( P. malariae )の感染でみられる臨床像

三日熱マラリア原虫(P. vivax),卵形マラリア原虫(P.ovale),および四日熱マラリア原虫(P. malariae)は,典型的には重要臓器を障害しない。死亡はまれで,ほとんどが脾破裂または無脾患者におけるコントロール不能な高度原虫血症に起因する。

卵形マラリア原虫(P. ovale)による臨床経過は,三日熱マラリア原虫(P. vivax)によるものと類似する。感染が成立すると,48時間の間隔(三日熱パターン)でスパイク熱が生じる。

四日熱マラリア原虫(P. malariae)の感染は,急性症状を引き起こさない場合があるが,軽度の原虫血症が何十年も持続して,免疫複合体を介した腎炎またはネフローゼや熱帯性脾腫に至ることがある;症候性の場合は72時間の間隔(四日熱パターン)で発熱がみられる傾向がある。

化学予防を受けている患者における臨床像

化学予防( マラリアの予防)を受けている患者では,マラリアは非定型の病像を呈することがある。薬剤中止後に,潜伏期間が数週間から数カ月間延びることがある。感染者は頭痛,背部痛,および不規則な発熱を生じることがあるが,初期に血液検体中に原虫を検出することは困難な場合がある。

診断

  • 血液(薄層または厚層塗抹標本)の光学顕微鏡検査

  • 血中のマラリア原虫(Plasmodium)抗原または酵素を検出する迅速診断検査

移民または流行地域から戻った旅行者に発熱と悪寒がみられた場合は,マラリアに対する検査を直ちに行うべきである。症状は感染後6カ月以内に現れるのが通常であるが,発症までに2年,まれにそれ以上かかる場合もある。

マラリアの診断は,血液の薄層または厚層塗抹標本の顕微鏡検査で原虫を同定することで可能となる。感染種(これにより治療法および予後が決まる)は,塗抹標本の特徴により同定する( 血液塗抹標本における各種マラリア原虫( Plasmodium )の診断的特徴)。最初の血液塗抹標本が陰性の場合は,4~6時間毎に塗抹標本作製を繰り返すべきである。

ライト-ギムザ染色で染色した血液の薄層塗抹標本により,赤血球内の原虫の形態の評価,しばしば種の同定,および血中原虫率(percentage parasitemia)の決定が可能になる。厚層塗抹標本の方が感度は高いが,染色前に赤血球が溶解するため,作製および解釈がより困難である。感度および精度は検者の経験によってかわる。

マラリアに対する市販の迅速診断検査キットは,特定のマラリア原虫抗原の有無または酵素活性に基づく。検査には,マラリア原虫(特に熱帯熱マラリア原虫[P. falciparum])に関連するHRP-2(histidine-rich protein 2)の検出とマラリア原虫に関連する乳酸脱水素酵素(pLDH)の検出が必要になる場合がある。迅速診断検査は,軽度の原虫血症を検出する上で概して顕微鏡検査と同等の感度があるが,単独感染と複数種のマラリア原虫(Plasmodium属)による同時感染を鑑別することはできず,熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)を除いて種を同定することもできない。

光学顕微鏡検査と迅速診断検査は補完的な検査であり,可能であれば両方とも行うべきである。いずれも感度は同程度である。両方の結果が陰性でも,軽度の原虫血症が存在することはあり,マラリアを除外することはできない。

PCR法と種特異的DNAプローブが利用可能となっているが,多くの診療現場で利用可能になっているわけではない。これらは,マラリアの診断後に感染しているマラリア原虫(Plasmodium属)の種を同定するのに役立つ。血清学的検査は以前の曝露を反映することがあり,急性マラリアの診断には有用ではない。

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血液塗抹標本における各種マラリア原虫( Plasmodium )の診断的特徴

特徴

三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)*

熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum

Plasmodium malariae

感染赤血球の膨大

あり

なし

なし

Schüffner斑点(Schüffner dot)

あり

なし

なし

Maurer斑点(Maurer dot)またはMaurer裂(Maurer cleft)

なし

あり§

なし

赤血球への多重感染

まれ

あり

なし

2つのクロマチン斑点(chromatin dot)を有する環

まれ

頻繁にあり

なし

三日月形の生殖母体

なし

あり

なし

銃剣状または帯状の栄養型

なし

なし

あり

末梢血中のシゾント

あり

まれ

あり

シゾント1個当たりのメロゾイト数(平均[範囲])

16(12~24)

12(8~24)

8(6~12)

*卵形マラリア原虫(P. ovale)に感染した赤血球は,辺縁が襞状の卵円形を呈し,やや膨大している;この点を除けば,卵形マラリア原虫は三日熱マラリア原虫(P. vivax)と類似している。

二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)は形態学的に四日熱マラリア原虫(P. malaria)に類似しており,それと混同されている。

Schüffner斑点は,血液塗抹標本をギムザ染色した場合に最もよく観察される。

§この特徴は必ずしも見えるわけではない。

シゾントは内臓内に閉じ込められ,通常は末梢血中に存在しない。

治療

  • 抗マラリア薬

抗マラリア薬は以下に基づいて選択する:

  • 臨床像

  • 感染しているマラリア原虫(Plasmodium属)の種

  • 感染地域の株の耐性パターン

  • 利用できる薬剤の効力および有害作用

アルテメテル/ルメファントリンなどのアルテミシニン誘導体多剤併用療法(artemisinin-based combination therapy:ACT)は,最も迅速に効果が得られる治療法であり,多くの状況で第1選択とされる。アルテミシニンに対する耐性が報告されているが,まだ一般的ではない。

流行地域の一部では,現地で利用可能な抗マラリア薬のかなりの割合が模造品である。そのため,高リスクの遠隔地への旅行者に対し,予防処置を行ったにもかかわらずマラリアに感染したことが臨床的に確認された場合に使用するため,適切な治療レジメン1コース分の薬剤全てを携行するよう指導する医師もいる;この方法により,渡航国での限られた薬剤資源を不足させることも避けられる。

マラリアは5歳未満の小児(死亡率は2歳未満の小児が最も高い),妊婦,およびマラリア曝露歴のない流行地域訪問者において特に危険である。

熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)が疑われる場合は,たとえ初回の塗抹標本の結果が陰性でも直ちに治療を開始すべきである。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)と最近では三日熱マラリア原虫(P. vivax)も,抗マラリア薬に対する耐性が次第に高くなりつつある。

マラリアの治療および予防に推奨される薬剤および用量については, マラリアの治療および マラリアの予防を参照のこと。頻度の高い有害作用および禁忌は 抗マラリア薬の有害反応および禁忌に記載する。CDCのウェブサイト(Malaria Diagnosis and Treatment in the United States)を閲覧するか,治療に関する緊急のコンサルテーションとしてはCDC Malaria Hotline(月曜日から金曜日,東部標準時で午前9時から午後5時の間は770-488-7788または855-856-4713,通話料無料;業務時間外,週末,または休日は770-488-7100 )に電話すること。

流行地域の旅行中に発熱性疾患を発症した場合は,専門家による医学的評価を直ちに行うことが重要である。速やかに評価を行えない場合(例,患者が僻地にいる)は,検査を待つ間にアルテメテル/ルメファントリンまたはアトバコン/プログアニルの自己投与を考慮してもよい。旅行者が流行地域から戻った後に発熱を来し,他に考えられる診断がない場合は,たとえマラリアの塗抹標本および/または迅速診断検査が陰性であったとしても,合併症のないマラリアに対する経験的治療を考慮すべきである。

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マラリアの治療

優先

薬剤a

成人用量

小児用量b

熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)またはマラリア流行地域で感染した未同定種(クロロキン感受性が確認された種は除く)によるマラリアで,合併症がみられない症例—経口薬

第1選択薬

アトバコン/プログアニルc

成人用錠剤4錠,1日1回,3日間

5kg未満:適応なし

5~8kg:小児用錠剤2錠,1日1回,3日間

9~10kg:小児用錠剤3錠,1日1回,3日間

11~20kg:成人用錠剤1錠,1日1回,3日間

21~30kg:成人用錠剤2錠,1日1回,3日間

31~40kg:成人用錠剤3錠,1日1回,3日間

41kg以上:成人用錠剤4錠,1日1回,3日間

または

アルテメテル/ルメファントリンd

6回(1回 = 4錠),3日間(0,8,24,36,48,60時間後)

成人と同様の間隔で全6回;用量 =

5~15kg:1錠

15~25kg:2錠

25~35kg:3錠

35kg以上:4錠

または

硫酸キニーネ + 以下のいずれか:

650mg塩,1日3回,3または7日間e

10mg塩/kg,8時間毎,3または7日間e

  • ドキシサイクリンf

100mg,1日2回,7日間

2.2mg/kg,1日2回,7日間

  • テトラサイクリンf

250mg,1日4回,7日間

6.25mg/kg,1日4回,7日間

  • クリンダマイシンg

7mg/kg,1日3回,7日間

7mg/kg,1日3回,7日間

代替薬(他の選択肢が使用できない場合)

メフロキンh

750mg塩,6~12時間後に500mg塩

15mg塩/kg,6~12時間後に10mg塩

クロロキン感受性地域(パナマ運河以西の中米,ハイチ,ドミニカ共和国,中東の大部分)で感染した熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および未同定種,ならびに全ての地域の四日熱マラリア原虫(P. malariae)および二日熱マラリア原虫(P. knowlesi)によるマラリアで,合併症がみられない症例—経口薬

第1選択薬

リン酸クロロキンi,j

塩として1g(塩基として600mg基),6,24,および48時間後に塩として500mg(塩基として300mg)

塩基として10mg/kg(塩基として最大600mg),6,24,および48時間後に延期として5mg/kg(最大300mg)

または

ヒドロキシクロロキンj

塩として800mg(塩基として620mg),6,24,および48時間後に塩として400mg(塩基として310mg)

塩基として10mg/kg(最大620mg),その6,24,および48時間後に5mg/kg(最大310mg)

三日熱マラリア原虫(P. vivax)(パプアニューギニアやインドネシアなどのクロロキン耐性地域を除く)または卵形マラリア原虫(P. ovale)によるマラリアで,合併症がみられない症例—経口薬

第1選択薬

リン酸クロロキンi,jまたはヒドロキシクロロキンj(用量は上記と同様)

に加えて

プリマキンk

塩基として30mg,1日1回,14日間

塩基として0.5mg/kg(最大30mg),1日1回,14日間

クロロキン耐性三日熱マラリア原虫(P. vivaxlが報告されている地域(パプアニューギニア,インドネシア)で感染した三日熱マラリア原虫によるマラリアで,合併症がみられない症例—経口薬

第1選択薬

A. 硫酸キニーネ + 以下のいずれか:

650mg塩,1日3回,3または7日間e

10mg塩/kg,1日3回,3または7日間e

  • ドキシサイクリンf

100mg,1日2回,7日間

2.2mg/kg,1日2回,7日間

  • テトラサイクリン系薬剤f

250mg,1日4回,7日間

6.25mg/kg,1日4回,7日間

または

B. アトバコン/プログアニルc

成人用錠剤4錠,1日1回,3日間

5kg未満:適応なし

5~8kg:小児用錠剤2錠,1日1回,3日間

9~10kg:小児用錠剤3錠,1日1回,3日間

11~20kg:成人用錠剤1錠,1日1回,3日間

21~30kg:成人用錠剤2錠,1日1回,3日間

31~40kg:成人用錠剤3錠,1日1回,3日間

41kg以上:成人用錠剤4錠,1日1回,3日間

または

C. メフロキンh

750mg塩,6~12時間後に500mg

15mg塩/kg,6~12時間後に10mg/kg

三日熱マラリア原虫(P. vivax)または卵形マラリア原虫(P. ovale):レジメンA,B,またはC +

プリマキンk

塩基として30mg,1日1回,14日間

塩基として0.5mg/kg(最大30mg),1日1回,14日間

重症マラリア,全てのマラリア原虫—注射薬

第1選択薬

グルコン酸キニジンm + 以下のいずれか(用量は上記と同様):

  • ドキシサイクリンf,n

  • テトラサイクリン系薬剤f

  • クリンダマイシンg,o

負荷投与として10mg塩/kgを生理食塩水に溶解して1~2時間かけて投与し,その後0.02mg塩/kg/分で24時間以上かけて持続注入

または

負荷投与として24mg塩/kgを4時間かけて投与し,その8時間後から12mg塩/kgを8時間毎に4時間かけて注入

寄生虫の濃度が1%未満となり,経口薬を服用できるようになったら,上記と同様の用量で経口キニーネによる治療を完了する

成人と同じ(ただし,8歳未満の小児にはドキシサイクリンおよびテトラサイクリン系薬剤は使用しない)

または(研究中)

artesunatep,qに続いて,以下のいずれか(用量は上記と同様):

  • アトバコン/プログアニルc

  • ドキシサイクリンf,n

  • クリンダマイシンg,o

  • メフロキンh

治験薬のプロトコルに従う(薬剤および用量に関する情報についてはCDCに連絡のこと)

成人と同じ(ただし,小児にはドキシサイクリンは使用しない)

再発予防:三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫のみ

第1選択薬

プリマキン

塩基として30mg,経口,1日1回,流行地域を出てから14日間

塩基として0.5mg/kg(最大30mg),経口,1日1回,流行地域を出てから14日間

a有害反応および禁忌については 抗マラリア薬の有害反応および禁忌を参照のこと。予防的薬物療法の施行中にマラリアが発生した場合は,その使用薬剤は治療レジメンに含めるべきではない。

b小児用量が成人用量を超えないようにすべきである。

cアトバコン/プログアニルの用量固定合剤:成人用錠剤(アトバコン250mg/プログアニル100mg)および小児用錠剤(アトバコン62.5mg/プログアニル25mg)が利用できる。吸収を高めるために,食品または乳飲料とともに服用させるべきである。この組合せは,クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の患者では禁忌である。一般に,この組合せは安全性データが不十分であるため,妊婦(特に妊娠第1トリメスター)には推奨されない;他の選択肢が利用できないか忍容性がなく,かつベネフィットがリスクを上回る場合には使用してもよい。食品または牛乳と一緒に服用することのほか,1日2回に分けて投与することでも,悪心および嘔吐が軽減する。患者が服用後30分以内に嘔吐した場合は,再度服用させるべきである。

dアルテメテル/ルメファントリンの固定用量20mg/120mgの配合錠が利用可能である。一般に,この組合せは安全性データが不十分であるため,妊婦(特に妊娠第1トリメスター)には推奨されない;他の選択肢が利用できないか忍容性がなく,かつベネフィットがリスクを上回る場合には使用してもよい。この薬剤は食品または全乳と一緒に服用させるべきである。患者が服用後30分以内に嘔吐した場合は,再度服用させるべきである。

e米国では,硫酸キニーネカプセルの含量は324mgであるため,成人には2カプセルで十分である。カプセル以外のキニーネ製剤が利用できないため,小児への投与はより困難となりうる。東南アジアでは,キニーネに対して相対的に耐性が増加しているため,治療は7日間継続すべきである。その他の地域では,治療は3日間だけ継続すべきである。消化管への有害作用のリスクを低減するため,キニーネは食品と一緒に服用させるべきである。キニーネ + ドキシサイクリンまたはテトラサイクリン系薬剤は,効力に関するデータがより多く得られているため,キニーネ + クリンダマイシンよりも一般に望ましい。

fテトラサイクリン系薬剤の使用は妊娠中および8歳未満の小児では禁忌である。クロロキン耐性の三日熱マラリア原虫(P. vivax)に感染した8歳未満の小児には,メフロキンが推奨される。これらの薬剤が利用できない,または忍容性がない場合で治療のベネフィットがリスクを上回る場合は,代わりにアトバコン/プログアニルまたはアルテメテル/ルメファントリンを使用できる。

g妊娠中および8歳未満の小児には,クリンダマイシンを使用する。

hメフロキンは,他の選択肢に比べて重度の精神神経系有害反応の発生率が高いため,他の選択肢が使用できない場合を除いて推奨されない。メフロキンは,うつ病症状,最近のうつ病の既往,全般不安症,精神病,統合失調症,その他の重大な精神障害,または痙攣発作がみられる患者では禁忌である。東南アジアの一部の地域(例,ミャンマーとタイ,中国,およびラオスとの国境地域,タイとカンボジアの国境地域,ベトナム南部)では,メフロキン耐性が報告されているため,メフロキンは東南アジアで発生した感染症には推奨されない。

i消化管への有害作用のリスクを低減するため,リン酸クロロキンは食品と一緒に服用させるべきである。

jクロロキン感受性の感染症には,クロロキンまたはヒドロキシクロロキンが推奨される;しかしながら,クロロキン耐性の感染症の治療に使用されるレジメンの方が簡易であるもしくは好まれる場合,またはクロロキンが利用できない場合には,これを使用することもある。

kプリマキンは,肝臓内で休眠している可能性のあるあらゆるヒプノゾイトを駆除するため,三日熱マラリア原虫(P. vivax)および卵形マラリア原虫(P. ovale)による感染症の再発予防に用いられる。プリマキンはG6PD欠損症患者で溶血性貧血を引き起こす可能性があるため,プリマキンによる治療を開始する前にG6PDのスクリーニングを実施しなければならない。G6P欠乏症の境界例に対し,または上述のレジメンの代替薬として,プリマキン45mg,経口,週1回,8週間の投与を行うことがある;G6PD欠損症患者に対してこの代替レジメンを考慮する場合は,感染症および/または熱帯医学の専門家へのコンサルテーションを行うべきである。プリマキンは妊娠中に使用してはならない。

lクロロキン耐性三日熱マラリア原虫( P. vivax)による感染症が報告されていない地域で三日熱マラリア(P. vivax)が発生した場合は,クロロキンにより治療を開始すべきである。効果がみられない場合は,クロロキン耐性三日熱マラリア原虫(P. vivax)に対するレジメンに治療を変更し,CDC Malaria Hotlineに問い合わせるべきである(月曜日から金曜日,東部標準時で午前9時から午後5時の間は770-488-7788または855-856-4713,通話料無料;営業時間外,週末,または休日は770-488-7100 )。

mCDCは,重症マラリア患者にはキニジン注射剤(静注)の負荷投与を直ちに開始し,積極的に治療することを推奨している。48時間以内に40mg/kgを超えるキニーネを投与された患者または12時間以内にメフロキンを投与された患者には,キニジンの負荷投与を省略すべきである。心臓専門医および重症マラリア治療の専門知識を有する医師へのコンサルテーションが推奨される。血圧モニタリングによる低血圧の確認,心臓モニタリングによるQRS波拡大またはQTc間隔延長の確認,および血糖モニタリングによる低血糖の確認が必要である。患者に以下の1項目以上がみられる場合,重症マラリアとみなされる:意識障害,昏睡もしくは痙攣発作,重度の正球性貧血,腎不全,肺水腫,急性呼吸窮迫症候群,ショック,播種性血管内凝固症候群,自然出血,アシドーシス,ヘモグロビン尿症,黄疸,または血中原虫率5%超。重症マラリアは,熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)により引き起こされることが最も多い。

n患者がドキシサイクリンを服用できない場合は,100mgを12時間毎に静脈内投与し,その後,服用可能となり次第,直ちに経口投与に切り替える。急速静注は避けるべきである。治療コースは7日間である。

o患者がクリンダマイシンを服用できない場合は,負荷量として10mg塩基/kgを静脈内投与し,その後5mg塩基/kgを8時間毎に投与してから,服用可能となり次第直ちに経口投与に切り替える。急速静注は避けるべきである。治療コースは7日間である。

p米国では,artesunateは静注用製剤が治験薬としてのみ入手可能である(CDC Malaria Hotline[770-488-7788または855-856-4713;営業時間外,週末,休日は770-488-7100]に電話してCDCを介して入手する)。

qartesunateとの併用で以下のいずれか(治療用量の経口薬を使用)を投与すべきである:

  • 成人の場合:アトバコン/プログアニル,ドキシサイクリン,クリンダマイシン(妊婦),またはメフロキン

  • 小児の場合:アトバコン/プログアニル,クリンダマイシン,またはメフロキン

G6PD = グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ。

Adapted from the Centers for Disease Control and Prevention: Malaria diagnosis and treatment in the United States.

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抗マラリア薬の有害反応および禁忌

薬剤

主な有害反応

禁忌

アルテメテル/ルメファントリン

頭痛,食欲不振,めまい,無力症(通常は軽度)

ルメファントリンではQT延長

妊娠中は,潜在的なベネフィットが胎児への潜在的なリスクを上回る場合にのみ使用する

メフロキンの予防投与

artesunate

アルテメテルと同じ

遅発性溶血(1)

アルテメテルと同じ

アトバコン/プログアニル

消化管障害,頭痛,めまい,発疹,そう痒

妊娠中は,他に選択肢がなく,潜在的なベネフィットが胎児への潜在的なリスクを上回る場合にのみ使用する

過敏症,授乳*,重度の腎障害(クレアチニンクリアランスが30mL/min未満)

リン酸クロロキン

クロロキン塩酸塩

ヒドロキシクロロキン硫酸塩

消化管障害,頭痛,めまい,霧視,発疹またはそう痒,乾癬の増悪,血液疾患,脱毛,心電図変化,網膜症,精神病症状(まれ)

過敏症,網膜変化または視野変化

クリンダマイシン

低血圧,骨髄毒性,腎機能障害,発疹,黄疸,耳鳴,Clostridium difficile感染症(偽膜性大腸炎)

過敏症

ドキシサイクリン

消化管不調,光線過敏症,腟カンジダ症,C. difficile感染症(偽膜性大腸炎),びらん性食道炎

妊婦,8歳未満の小児

ハロファントリン

PR間隔およびQT間隔の延長,不整脈,低血圧,消化管障害,めまい,精神状態変化,痙攣発作,突然死

妊娠中は,潜在的なベネフィットが胎児への潜在的なリスクを上回る場合にのみ使用する

心筋伝導障害,家族性QT延長,QT間隔に影響する薬剤の使用,過敏症

メフロキン

悪夢,精神神経症状,浮動性めまい,回転性めまい,錯乱,精神病症状,痙攣発作,洞徐脈,消化管障害

過敏症,痙攣発作または精神障害の病歴,心筋伝導障害または不整脈,心筋伝導を延長させうる薬剤の併用(例,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,キニーネ,キニジン,ハロファントリン),巧緻協調運動および空間認識を要する職業,めまいが生命の危険につながる職業,妊娠第1トリメスター

硫酸キニーネ

塩酸キニーネ

消化管障害,耳鳴,視覚障害,アレルギー反応,精神状態変化,不整脈,心毒性

過敏症,G6PD欠損症,視神経炎,耳鳴,妊娠(相対的禁忌),キニーネによる過去の有害反応(心電図,血圧[静脈内投与時],および血糖値の継続的なモニタリングが推奨される)

グルコン酸キニジン

不整脈,QRS波の拡大,QTc間隔延長,低血圧,低血糖

過敏症,血小板減少症(心電図,血圧,および血糖値の継続的なモニタリングが推奨される)

48時間以内に40mg/kgを超えるキニーネを投与された患者または12時間以内にメフロキンを投与された患者には,負荷投与なし

リン酸プリマキン

G6PD欠損症患者での重度の血管内溶血,消化管障害,白血球減少,メトヘモグロビン尿症

キナクリンまたは溶血を引き起こしうるもしくは骨髄抑制作用のある薬剤の併用投与,G6PD欠損症,妊娠(胎児のG6PDの状態が不明であるため)

ピリメタミン/スルファドキシン

多形紅斑,スティーブンス-ジョンソン症候群,中毒性表皮壊死融解症,蕁麻疹,剥脱性皮膚炎,血清病,肝炎,痙攣発作,精神状態変化,消化管障害,口内炎,膵炎,骨髄毒性,溶血,発熱,ネフローゼ

過敏症,葉酸欠乏性貧血,生後2カ月以下の乳児,妊娠,授乳

*プログアニルはヒト乳汁中に排泄される;アトバコンがヒト乳汁中に排泄されるかどうかは不明である。これらの薬剤の安全性および有効性は,体重5kg未満の小児では確立されていない。

G6PD = グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ。

治療に関する参考文献

  • 1.Aldámiz-Echevarría LT, López-Polín A, Norman FF et al: Delayed haemolysis secondary to treatment of severe malaria with intravenous artesunate: Report on the experience of a referral centre for tropical infections in Spain. Travel Med Infect Dis 2016. pii: S1477–8939(16)30166-1. doi: 10.1016/j.tmaid.2016.10.013. [Epub ahead of print]

三日熱マラリア原虫( P. vivax )および卵形マラリア原虫( P. ovale )によるマラリアの再発予防

三日熱マラリア原虫(P. vivax)または卵形マラリア原虫(P. ovale)の再発を予防するには,プリマキンにより肝臓からヒプノゾイトを駆除しなければならない。プリマキンの投与はクロロキンと同時でも後からでもよい。一部の株の三日熱マラリア原虫(P. vivax)は,感受性が比較的低く,再発して再治療を要することがある。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)または四日熱マラリア原虫(P. malariae)は肝臓に持続感染しないため,これらのマラリア原虫種に対してプリマキンは不要である。三日熱マラリア原虫(P. vivax)または卵形マラリア原虫(P. ovale)に対して強いまたは長期間の曝露を受けたか,旅行者が無脾である場合は,旅行者が帰国してからリン酸プリマキンによる14日間の予防コースを開始することが再発リスクの軽減に役立つ。主な有害作用は,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症の人々でみられる溶血である。プリマキンを投与する前にG6PD濃度を測定しておくべきである。

プリマキンは,妊娠中および授乳期(乳児にG6PD欠損症がないことが判明している場合は除く)には禁忌である。妊婦には,残りの妊娠期間にわたってクロロキンの週1回投与による化学予防を施行でき,分娩後は女性にG6PD欠損症がなければプリマキンを投与できる。

予防

流行地域に渡航する人には化学予防を行うべきである( マラリアの予防)。マラリアの流行国に関する情報はCDCから入手でき(Yellow Fever and Malaria Information, by CountryおよびCDC: Malariaを参照のこと),具体的には,マラリアの病型,耐性のパターン,地理的分布,推奨される予防法などの情報が提供されている。

妊娠中のマラリアは母体および胎児の双方にとって深刻な脅威である。マラリア原虫(Plasmodium)にクロロキン感受性がみられる地域では,妊娠中にクロロキンを使用できるが,他に安全かつ効果的な予防レジメンが存在しないため,妊婦は可能な限り,クロロキン耐性の地域に旅行することを避けるべきである。妊娠中のメフロキンの安全性は立証されていないが,ベネフィットがリスクを上回ると判断される場合に使用してもよいことが,限られた経験から示唆されている。ドキシサイクリン,アトバコン/プログアニル,およびプリマキンは,妊娠中に使用してはならない。

アルテミシニンは半減期が短く,予防投与には有用でない。

蚊に対する予防対策としては以下のものがある:

  • ペルメトリンまたはピレスラムを含有する残留性殺虫スプレー(作用持続時間が長いもの)を使用する

  • 戸口および窓に網戸を張る

  • ベッドの周囲に蚊帳(ペルメトリンまたはピレスラムを浸透させたものが望ましい)を使用する

  • 衣服や備品(例,ブーツ,ズボン,靴下,テント)を0.5%ペルメトリンを含有する製品で処理するべきであり,一度処理すれば数回洗っても保護作用が残る(前処理された衣服もあり,保護効果がより長く持続する可能性がある)

  • 露出部の皮膚に25~35%DEET(ジエチルトルアミド)などの防蚊剤を塗布する

  • 肌を防護できる長袖のシャツと長ズボンを着用する(特にハマダラカ(Anopheles)が活動的となる夕暮れから夜明けまで)

DEETを含有する防虫剤を使用する予定のある人には,以下のことを指示する:

  • 防虫剤は添付文書の指示に従って露出部の皮膚にのみ塗布し,耳の周囲には少なめに使用する(防虫剤は眼や口に塗布・噴霧してはならない)。

  • 塗布後は手を洗うこと。

  • 子供には防虫剤を取り扱わせない(最初に大人が防虫剤を自分の手に塗布してから,それを子供の皮膚にやさしく広げる)。

  • 露出部を覆うのに過不足のない量の防虫剤を塗布する。

  • 屋内に戻ったら防虫剤を洗い流す。

  • 製品の添付文書に別の指示がある場合を除き,衣類は再度着用する前に洗濯する。

大半の防虫剤は乳児および生後2カ月未満の小児に使用できる。Environmental Protection Agencyは,認可を受けた防虫剤を小児または妊婦もしくは授乳婦に使用する際にその他の予防措置を取ることを推奨していない。

マラリアワクチンが開発中である。熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)のスポロゾイト周囲のタンパクをベースとした組換えワクチンRTS,Sの多施設臨床試験では,短期間の部分的な効力が示され,アフリカの流行地域に居住する幼児の臨床的マラリアの症例数が46%低下したが,長期的な予防効果は認められなかった。ワクチンが利用可能になる時期は不明である。

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マラリアの予防

薬剤a

投与

成人用量

小児用量

備考

アトバコン/プログアニルb

全ての地域

成人用錠剤1錠,1日1回

5~8kg:小児用錠剤の2分の1錠,1日1回

8~10kg:小児用錠剤の4分の3錠,1日1回

10~20kg:小児用錠剤1錠,1日1回

20~30kg:小児用錠剤2錠,1日1回

30~40kg:小児用錠剤3錠,1日1回

> 40kg:成人用錠剤1錠,1日1回

旅行の1~2日前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから7日間毎日継続する

リン酸クロロキン

クロロキン感受性のマラリア原虫(Plasmodium)が存在する地域のみ

塩として500mg塩(塩基として300mg),経口,週1回

塩として8.3mg/kg(塩基として5mg/kg),塩として最大500mg(塩基として300mg),経口,週1回

旅行の1~2週間前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから4週間毎週継続する

ドキシサイクリンc

全ての地域

100mg,経口,1日1回

8歳以上:2.2mg/kg(最大100mg),経口,1日1回

旅行の1~2日前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから4週間継続する

ヒドロキシクロロキンd

クロロキン感受性のマラリア原虫(Plasmodium)が存在する地域でのみクロロキンの代替薬とされる

塩として400mg(塩基として310mg),経口,週1回

塩として6.5mg/kg(塩基として5mg/kg),塩として最大400mg(塩基として310mg),経口,週1回

旅行の1~2週間前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから4週間継続する

メフロキンe

メフロキン感受性のマラリア原虫(Plasmodium)が存在する地域

250mg塩(228塩基),経口,週1回

9kg以下:5mg塩(4.6mg/kg塩基),週1回

9~19kg:4分の1錠,週1回

19~30kg:2分の1錠,週1回

30~45kg:4分の3錠,週1回

45kg以上:1錠,週1回

旅行の2週間以上前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから4週間継続する

うつ病,その他の精神医学的問題,または痙攣発作の既往がある患者では禁忌;心伝導異常を有する患者には推奨されない

プリマキンf

主に三日熱マラリア原虫(P. vivax)が存在することが知られている地域への短期間の旅行時の予防のため

塩基として30mg(塩として52.6mg),経口,1日1回

塩基として0.5mg/kg(塩として0.8mg/kg)から成人用量まで,経口,1日1回

旅行の1~2日前に開始し,滞在中および流行地域を離れてから7日間毎日継続する

使用前にG6PD濃度が正常であることを確認し記録する

G6PD欠損症患者ならびに妊婦および授乳婦(母乳育児でも乳児のG6PD濃度が正常である場合を除く)では禁忌

三日熱マラリア原虫(P. vivax)もしくは卵形マラリア原虫(P. ovale)に長期間曝露された人または過去に感染した人における感染症の再発予防を目的とした最終期予防(terminal prophylaxis)のため

上記と同様に投与

上記と同様に投与

流行地域からの出発後14日間にわたり連日投与する。使用前にG6PD濃度が正常であることを確認し記録する

禁忌は上記と同様

a有害反応および禁忌については 抗マラリア薬の有害反応および禁忌を参照のこと。

bアトバコン/プログアニルの用量固定合剤が利用できる:成人用錠剤(アトバコン250mg/プログアニル100mg)および小児用錠剤(アトバコン62.5mg/プログアニル25mg)がある。吸収を高めるため,薬剤は食品または乳飲料とともに服用させるべきである。アトバコン/プログアニルは,クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の患者では禁忌である。この併用療法は,体重が5kg未満の小児または妊婦もしくは授乳婦には推奨されない。

cテトラサイクリン系薬剤の使用は,妊娠中および8歳未満の小児では禁忌である。

d医師はヒドロキシクロロキンを処方する前に,添付文書を確認すべきである。

eメフロキンは,妊娠中の投与の承認が得られていない。この薬剤は,活動性の抑うつ,最近のうつ病の病歴,全般不安症,精神病,統合失調症,その他の重大な精神障害,または痙攣発作を有する患者では禁忌である;患者に精神障害またはうつ病の既往がある場合は慎重に使用すべきである。この薬剤は,心伝導異常を有する患者には推奨されない。

fプリマキンは,クロロキンまたはクロロキン耐性マラリアへの活性を有する薬剤を服用し,三日熱マラリア原虫(P. vivax)および/または卵形マラリア原虫(P. ovale)へ長期間曝露された患者において,再発のリスクを低下させるための最終期予防(terminal prophylaxis)として使用する。プリマキンの単剤投与は,マラリア(特に三日熱マラリア[P. vivax])のリスクがある個人の一次予防にも使用できる。G6PD欠損症患者および妊婦または授乳婦(乳児のG6PD濃度が正常である場合を除く)では禁忌である。

G6PD = グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ。

Adapted from the CDC's Yellow Book: Infectious diseases related to travel: Malaria.

要点

  • 2015年には,全世界でのマラリア患者数は推定2億1400万人で,約43万8000人が死亡したが(多くはアフリカの5歳未満の小児),マラリアによる死亡は2000年から約60%減少した。

  • 熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は微小血管閉塞および組織の虚血を引き起こし(特に免疫のない乳児および成人の脳,腎臓,肺,および消化管において),患者は最初の症状出現から数日以内に死亡することがある。

  • 三日熱マラリア原虫(P. vivax),卵形マラリア原虫(P. ovale),および四日熱マラリア原虫(P. malariae)は,典型的には重要臓器を障害せず,死亡はまれである。

  • 症状としては繰り返す発熱および悪寒・振戦,頭痛,筋肉痛,悪心などがあり,溶血性貧血と脾腫もよくみられる。

  • 血液(薄層または厚層塗抹)の光学顕微鏡検査および/または迅速診断検査を用いて診断する。

  • 感染が発生した地域の種(判明している場合)および薬剤耐性パターンに基づいて抗マラリア薬により治療する。

  • アルテミシニン誘導体多剤併用療法(例,アルテメテル/ルメファントリン)は最も迅速に作用が現れる治療法であり,世界中で利用可能である;アトバコン + プログアニルは,合併症のないマラリア患者における選択肢の1つである。

  • 三日熱マラリア原虫(P. vivax)および卵形マラリア原虫(P. ovale)による感染が確定するか疑われる場合は,妊婦またはG6PD欠損症患者でない限り,再発予防のためにプリマキンを使用する。

  • 流行地域に渡航する人には化学予防を行い,蚊の刺咬を予防する方法を指導する。

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